不倫相手がストーカーになる理由と対処法を専門弁護士が解説
最終更新日: 2024年01月27日
「不倫相手が豹変し、毎日執拗にメールが届き、何度も電話がかかってくる。」
「別れたはずの不倫相手が、自宅や勤務先でも待ち伏せするようになった。」
不倫をしていたことの代償なのか、時に、不倫相手がストーカー化してしまうことがあります。当然、そのような事態になるとは誰も想像もせず不倫を始めているでしょう。
しかしながら、いざそのような事態に陥ったとき、不倫という事の性質上、誰にも相談できず一人で悩む方も少なくありません。
愛が憎しみに変わったとき、楽しかった男と女の関係は激変し、恐怖と後悔の毎日が始まります。この場合、どのようにすれば平穏な日常を取り戻せるのでしょうか。
不倫相手のストーカー化という困難な問題について、不倫問題を100件以上解決した専門弁護士が、その対処方法を解説します。
不倫相手によるストーカー被害の実態
ストーカーの定義
ストーカーとは、広辞苑には「特定の個人に異常なほど関心を持ち、しつこく跡を追い続ける人。」と書いてあります。もともとは、一方的な好意を寄せる異性に執拗につきまといを行うことに対する被害のことを、社会一般で「ストーカー」と呼ぶようになったことから、このような言葉が定着しました。
また、「ストーカー」を法律で定義し、それを規制する法律も実は存在します。それが「ストーカー行為等の規制等に関する法律」、いわゆるストーカー規制法です。
言うまでもなく、ストーカー行為は相手に多大な精神的苦痛を与える行為であり、逸脱したストーカー行為の結果、被害者の生命身体に危険が生じたとのニュースも後を絶ちません。
このことから、ストーカー行為に対しては、刑罰をもって対応する必要もありますが、「ストーカー」という言葉だけでは、何をもって処罰の対象となるのか極めて不明確であることから、ストーカー規制法では、処罰の対象となるストーカー行為の類型を細かく規定しているのです。
不倫相手による執拗な脅迫行為の発生
ストーカー化した不倫相手は、相手との交際関係を継続することしか頭になくなってしまい、犯罪行為に手を染めることも厭わなくなります。
代表的なものは、なぜ連絡が付かないのか、常に連絡して居場所を知らせるよう求めることから始まり、これに従わないと、配偶者へ不貞関係を全てばらす、会社へ二人の交際関係を全て告げるなどの脅迫行為です。
相手からの執拗な連絡・脅迫的言辞を拒絶・無視することができずに、一度でも相手の要求に従ってしまうと、ストーカー行為には拍車がかかり、相手から支配されることになってしまいます。一度支配関係が構築されてしまうと、いつまでたっても支配関係が終わることはなく、簡単に交際を解消することはできません。
不倫相手による不当な金銭要求
金銭要求を目的として、ストーカー行為が繰り返されることもあります。
金銭を目的としたストーカー行為としては、配偶者あるいは勤務先に不倫の事実を告げられたくなければ、手切れ金としていくら支払うことができるのか?
不倫に巻き込んで人の人生を破壊しておきながら、誠意をみせることもできないのか?などといって金銭を要求するケースがあります。
当然、このような要求をされた人は、恐怖心で頭が一杯になりますので、本当に自分の配偶者・関係者へ告げられるのでは、と怯えてしまい、相手の要求通りに金銭を支払うしか打開策はないと考えてしまいます。
そして、一度、相手の要求に応じて金銭を支払ってしまえば、関係が解消するどころか、不倫相手からの要求は次第に無理を強いるようになり、法外な金員を要求されることになります。そうなってしまうと、泥沼状態に陥ってしまい、経済的に破綻することも少なくありません。
報告行為を目的としたストーカー行為
関係継続を諦めた不倫相手からは、相手への報復を目的としたストーカー行為に移行することも考えられます。
例えば、配偶者に不貞関係を全て伝える、会社に全てを伝える、インターネット上に不倫交際の事実を実名で記載する、などの脅迫です。
このようなケースでは、既に不倫相手は、交際継続は困難と考えていますので、脅迫による支配関係から交際継続を求めるというより、実際に、勤務する会社へ過去の交際中の写真や手紙などのプライバシー性の高い情報をばら撒いてしまうなど、名誉棄損行為を実際に行うことで、相手を社会的破滅に追いやろうとします。
このような心理状態に陥った不倫相手は、自身が刑事罰や損害賠償責任を負ってしまうのでやめようなど考えられる冷静な状態な状態にはありませんので、いわば捨て身で報復行為に及ぶことになります。このような相手への報復を最優先に考えるようになってしまったストーカー行為は、最も危険な類型といえます。
不倫相手がストーカーになる3つの理由
それでは、なぜ、不倫相手はストーカー化してしまうのでしょうか。考えられる理由は以下の3つです。
不倫相手が選ばれなかったことによるストーカー化
1つ目の理由は、自分が最終的に交際相手から伴侶として選ばれなかったことで、不倫交際に要した時間、交際に消費したお金について返してほしい気持ちからストーカー化することです。
そもそも不倫の当事者は、大抵は互いに最初は惹かれ合ったことから交際が始まっています。
また、妻や夫とはうまくいっていないなどと相手へ伝えることから、交際が開始継続するケースもままあります。
しかし、夫婦関係の不和を誇張し不倫に及んだ者が、配偶者とそう簡単に離婚できるはずもありません。実際には、いつまでたっても配偶者とは離婚せずに、一方で夫婦関係を継続することになりますので、不倫相手は不倫相手の立場のまま交際が長期間続くこともあります。
不倫相手も最初は、いずれ相手は配偶者と離婚し、自分と結婚してくれるのではと信じていますが、いつまでも相手からは煮え切らない対応が続き、結果、都合よく利用されたことに気づき始めるので、次第に相手への愛情が憎しみへと変わっていきます。
そして、不倫交際中、待っていた時間とお金を返してほしい、利用された、騙された、などとして、相手への愛情は憎悪へと変わり、ストーカーとなってしまうのです。
別れ方に問題があることによるストーカー化
2つ目の理由は、配偶者のある人と不倫をしていた相手が不倫関係を解消されたときに、交際相手に対して復讐しようとするケースです。
互いに納得して交際解消ができればよいのですが、不倫交際の性質上、一方的に交際解消を告げられた、配偶者に交際が発覚したことで突然態度が豹変し交際解消を申し入れられた、不倫相手が妊娠した途端、中絶を強要された、などといった原因により、交際が突然幕引きとなるケースも少なくはありません。
いずれの場合でも、突然に別れが訪れ、その際の相手の対応により大きく傷つけられたことの怒りに起因するものです。不倫相手は、突然の「別れ」という現実に心が耐え切れず、相手に対して報復行為に出ることになります。
金銭目的のストーカー化
3つ目の理由は、不倫交際という倫理的に許されない行為をしたという相手の弱みに付けこみ、金銭要求を目的とするストーカー化です。
このような金銭要求は、自身の社会的地位が高いために社会に不貞が発覚することに強い恐怖を覚えている人や、自身の配偶者に不倫関係が発覚することを強く恐れている人に対して最も効果的であり、交際中の対応から容易に金銭要求が可能と不倫相手に判断されることもあります。
一度、相手の要求に従い金銭を支払ってしまえば、際限なく金銭要求が続いてしまうことは、既に説明した通りです。
不倫相手がストーカー化した場合の法的規制
ストーカー行為を行った者に対しては、損害賠償請求といった裁判所の手続をはじめ、ストーカー規制法による取り締まりなどが予定されています。では、実際にどのようにしてストーカー行為の規制がなされているのでしょうか。
ストーカー規制法
ストーカーに該当する行為類型は、既に紹介したストーカー規制法第2条で規定されている8つとなりますが、この中でも最も多いのは、相手に対して対応がないのに繰り返し電話する、電子メール送信する、LINEメッセージ送信するといった行為です。
仮に、不倫相手の行為がストーカー規制法に該当すると認められると、ストーカー行為をした者に対しては、最大で二年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処される可能性があります。
また、ストーカー規制法に該当するだけでなく、行為によっては、刑法に規定された脅迫罪、暴行罪、強要罪などに該当することも考えられます。
ストーカー化した不倫相手への損害賠償請求
このように、ストーカー行為は刑事罰に該当するだけでなく、民法で定められた不法行為として、損害賠償請求の対象ともなりえます。
例えば、交際相手の勤務先へ、ストーカー化した不倫相手が不倫の事実を広めた場合、その行為態様や損害の程度に照らし、不法行為として損害賠償請求が可能となります。
そして、被害者から弁護士を通じた損害賠償請求により交渉での和解に至らなければ、被害者から民事訴訟を提起されることも考えられます。
民事訴訟でストーカー行為による不法行為成立が認定されれば、ストーカー化した不倫相手は、裁判所から慰謝料の支払いを命じられることになるのです。
例えば、不倫相手から職場に不倫関係をばらされた結果、職場を辞めることになってしまったときは、不倫をばらした人に対して半年分や1年分の給料相当額の損害賠償請求ができる可能性がありますし、名誉棄損が認定されればその慰謝料も請求できる可能性があります。
接近等禁止の仮処分
また、ストーカー行為が悪質かつ危険と判断されれば、裁判所による接近等禁止の仮処分命令が出されることもあります。
ただし、仮処分命令は、裁判所の命令にもかかわらず、短期間の審理で発令可能なので、「保全の必要性」を疎明(※ある程度、証拠で証明すること)が必要となります。
そのため、仮処分を申し立てる場合には、事前に、不倫相手のストーカー行為の証拠を大量に残しておく必要があります。
不倫相手がストーカー化した場合の対処方法
では、不倫相手がストーカー化してしまった場合に、どのように対処すればよいのでしょうか。
ストーカー行為をやめさせるための交渉
ストーカー行為をやめさせるためには、まずは、相手の行為が明確にストーカー行為、犯罪行為に該当し、刑事罰の対象になること、あるいは、民事でも損害賠償請求の対象となることについてしっかりと理解させる必要があります。
弁護士を通じストーカーへ警告することで、ストーカー行為が止まることも多くあります。相手への憎悪の念に駆られ、冷静さを失ってしまったストーカーに対しては、自身の行為には法的にどのような問題があるのか、しっかりと理解させることが重要です。
不倫問題においては不倫という人には知られたくない弱みがあることから、不倫当事者間であれ、不倫された配偶者と不倫相手との関係であれ、脅す人と脅される人との関係は対等ではありません。
そのため、当事者間で解決しようとしても、弱い立場にある脅されている側としては、どうしても強い態度で応じることは困難であるため、一方的な支配関係が構築されがちです。
しかし、このような支配関係に身を置くことを一度でも許してしまえば、相手のストーカー行為は止まるどころかエスカレートすることになります。
ストーカー化した不倫相手に対しては、毅然とした態度で対応することが重要となります。
とはいえ、不倫相手のストーカー行為に対しては、当事者間で対応しても解決に向かうことは困難ですので、代理人として弁護士を立てることが最も有効な対処法となります。
法律の専門家である弁護士へ依頼し、弁護士からストーカーへ警告を与えることで、ストーカー行為の継続は困難となります。これにより、ストーカー化した不倫相手は冷静さを取り戻し、平穏な解決に向けた話し合いが可能になるケースは多くあります。
場合によっては解決金を提示することも有効
例えば、交際中に不倫相手を妊娠させてしまった、既婚者と秘して長年交際継続した結果、配偶者の存在が明らかになったなど自身に非が大きいケース、あるいは、社会的地位が非常に高く、万が一世間に不倫交際を周知されてしまうと回復不可能な損害が生じてしまうケースなどでは、解決金を不倫相手に支払うことで解決を図ることが得策である場合もあります。
このような場合には、ただ単に解決金を支払うのではなく、専門家である弁護士が作成した書面を交わすことで、根本的に紛争解決を図り、紛争を二度と蒸し返すことのない形で不倫関係を解消することが重要となります。
話し合いに応じない場合には警察とも連携
もう一つは警察に助けを求める対処法です。ストーカー行為と認められれば、警察により警告・行政処分・刑事罰が与えられる可能性があります。
現に警察が検挙に動くためにはストーカー行為または犯罪行為に該当するという証拠が必要ではありますが、ストーカー行為は、その危険性から比較的簡単に警告を与えてくれることもあります。
また、明らかに証拠が存在しないような場合であっても、警察から不倫相手に連絡をして注意を与える場合もあります。
相手としても、警察から連絡を受けたことで、このままストーカー行為を続けることはまずいと冷静になれば、ストーカー行為をやめることが期待できます。
弁護士へ依頼した場合であっても、弁護士からの警告に加えて、弁護士により警察へ協力を求めることが可能です。
まとめ
以上、不倫相手がストーカー化する代表的なケース、その対処法などについて解説しました。
不倫相手がストーカーになってしまった時には、できるだけ早期の段階で不倫問題を専門とする弁護士に相談することが最善の解決につながります。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。