暴行で逮捕された場合の刑罰とは?逮捕の要件・流れとリスクを詳しく解説
最終更新日: 2023年03月25日
- 相手に暴行を加えてしまったが、穏便に解決できる方法はないか
- 暴行を加えた場合、どのような罪になってしまうのか
- 暴行で逮捕されたときの社会的影響とは
駅や電車内という公共の場で発生した他人とのトラブル、またはお勤め先での上司や同僚・部下とのトラブルが原因で、暴行を加えてしまう事態が発生するかもしれません。暴行を加えて逮捕されてしまうと、重い刑罰はもちろん法的・道義的責任を負います。
そこで本記事では、多くの暴行事件に携わってきた刑事事件の専門弁護士が、暴行で逮捕された場合どのような罪に問われるのか、そして穏便に解決する方法とは何か等を詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 暴行は不法な有形力の行使なので怪我がなくとも暴行になる
- 暴行罪の示談交渉を弁護士に相談すると法的なサポートを受けられる
- まずは暴行事件の実績が豊富で適切な対処ができる弁護士に依頼する
暴行で逮捕される前に整理しておきたい前提の知識
相手と何らかのトラブルが起き、暴行を加えてしまったという事件は、TV報道や新聞でよく見聞きします。ここでは、そもそも暴行とはどのような行為なのか、暴行の例について解説しましょう。
暴行とは
暴行とは「人に対する不法な有形力の行使」と定義されています。暴行を受けた被害者は、暴行した自分以外の人が該当します。
つまり、面識のなかった他人はもちろん、お勤め先の上司・同僚・部下、自分の親族も含まれます。たとえば家庭内暴力で妻や子を殴った場合、暴行罪が成立する可能性もあるのです。
怪我がなくとも暴行になる
暴行は一般的に相手を殴ったり蹴ったりする等、暴力行為をイメージする人がほとんどでしょう。
しかし、暴行にあたるのは不法な有形力の行使なので、意外な行為も暴行と認められる可能性があります。
以下に3つ挙げます。
- 興奮状態となり相手の衣服をつかんで引っ張った行為
- 太鼓を打ち鳴らし相手を困惑させ、意識を朦朧とさせたり、息を詰まらせたりした行為
- 相手に塩を振りかけた行為
このように、暴行と判断される範囲は非常に広いです。
暴行で逮捕された場合の刑罰
暴行事件を起こし逮捕された場合、発生した結果により次のような刑罰を受ける可能性があります。以下、3つについて詳しく解説します。
- 暴行罪
- 傷害罪
- 傷害致死罪や殺人罪
暴行罪
暴行罪は相手に不法な有形力を行使したとき成立します。この罪は相手が負傷しなかった場合が前提です。
暴行罪となった場合、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金または拘留若しくは科料に処されます(刑法第208条)。
具体的には次のような刑罰を受けることになります。
- 2年以下の懲役:最長2年間、刑事施設で生活しつつ刑務作業を行う
- 30万円以下の罰金:1万円~30万円の罰金を支払う
- 拘留:1日~30日未満の身柄拘束を受ける
- 科料:1,000円~1万円未満の金銭を支払う
暴行罪では2年以下の懲役が最も重い刑罰です。
傷害罪
傷害罪は暴行により相手が負傷したとき成立する罪です。
傷害罪は相手を殴る・蹴るといった暴力や、凶器の使用により外傷を負わせた場合の他、毎日怒鳴り続けて相手がノイローゼ・うつ病になったというケースも該当します。
傷害罪が成立すると15年以下の懲役または50万円以下の罰金(刑法第204条)に処され、暴行罪よりも重い刑罰を受けます。
傷害致死罪や殺人罪
暴行により相手が死亡した場合、「傷害致死罪」または「殺人罪」が成立します。
- 傷害致死罪:相手を殺害する意図がなかった場合に成立、3年以上の懲役に処される(刑法第205条)
- 殺人罪:相手を殺害する意図があった場合に成立、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処される(刑法第199条)
相手を死に至らしめている以上、いずれも非常に重い刑罰を受けます。なお、無期とは無期懲役刑を指し、刑の満期が設定されていない懲役刑です。
暴行で逮捕される要件
暴行による逮捕は、次の要件全てに該当する必要があります。
- 罪を犯したと疑われても仕方のない相当な理由がある
- 罪証隠滅を図る可能性がある
- 逃亡する可能性がある
この3要件を満たしてはじめて被疑者の逮捕が可能となります。
暴行で逮捕されるケース
暴行で逮捕される場合、「通常逮捕」「現行犯逮捕」「緊急逮捕」の3つのケースが考えられます。
- 通常逮捕:被害者が警察署の窓口に被害届や告訴状を提出後、警察が捜査し証拠を揃えた上で、逮捕令状を持参した警察官に逮捕される
- 現行犯逮捕:通報を受け駆けつけた警察官が暴行現場で逮捕する方法、逮捕令状がなくても逮捕でき、私人が暴行犯を逮捕し警察に引き渡す場合もある
- 緊急逮捕:警察・検察にしかできない方法で、逮捕令状が後回しでも逮捕が可能
なお、現行犯逮捕と緊急逮捕は逮捕令状がなくても逮捕できる点は同じです。しかし、緊急逮捕は逮捕状を請求する余裕がなく、かつ重大な犯罪者を逮捕する場合に限定して認められる方法です。
暴行で逮捕されたときの社会的な影響
暴行で逮捕された場合、刑罰に服するのはもちろん、被害者への法律的な賠償責任の他、自分の家庭や職場にも大きな影響が及ぶ事態となります。以下、4つについて詳しく解説します。
- 身柄拘束により職場・学校に知られる
- 起訴され有罪になる可能性がある
- 前科がつく可能性がある
- 被害者への賠償責任が出てくる
身柄拘束により職場・学校に知られる
暴行により逮捕・勾留されると、起訴されるまで長期間(最長23日)にわたり身柄を拘束される場合もあります。警察が積極的に加害者の職場や学校へ、その事実を報告するとは限りません。
しかし、勾留中は職場への出勤も学校への登校も不可能です。令和4年版犯罪白書にある「検察庁既済事件の身柄状況(罪名別)」の統計表によると、暴行で逮捕された場合、身柄の拘束率は34.2%に達しています。
何日も勾留されてしまうと職場や学校から自宅に連絡が入り、そのときに暴行で逮捕された事実が発覚する場合もあります。
出典:第2章検察 第3節被疑者の逮捕と勾留 令和4年版犯罪白書|法務省法務総合研究所
起訴され有罪になる可能性がある
刑事事件で起訴された場合、裁判所で有罪・無罪の判断が下されます。有罪判決になれば、相応の刑罰を受けなければいけません。
相手が負傷せず暴行罪となっても悪質と判断された場合、2年以下の懲役を言い渡される可能性もあります。
この場合、最長2年間は自宅に戻れないばかりか、職場への復帰や学校への復学は非常に難しくなるでしょう。
前科がつく可能性がある
暴行で逮捕された場合には、前歴や前科が付いてしまいます。それぞれ次のような意味があります。
- 前歴:起訴・不起訴を問わず捜査対象とされた場合に付く
- 前科:起訴され、裁判所から有罪判決を受けた場合に付く
前歴や前科が付いても、公的な機関から積極的にその事実を開示されることはないでしょう。
しかし、就職の際に前歴や前科を尋ねられ「そのような事実はない。」と回答した場合、経歴詐称となり解雇されるケースも想定されます。
また、前歴や前科が付いた後、再び刑事事件を起こしてしまうと、裁判所から更生は難しいと判断され、重い刑罰を受ける可能性もあります。
被害者への賠償責任が出てくる
加害者は刑罰に服するだけでなく、被害者への賠償責任(民事責任)も負わなければいけません。
特に被害者が負傷した場合は、数百万円を超える賠償金額を支払うケースも考えられます。 加害者は預金や財産を処分する等して、賠償金を支払っていきます。
加害者が収入を得て、家族を支えているならば、家族の生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。
暴行で逮捕されたときの弁護のポイント
暴行で逮捕されたときは警察官に抵抗したり、逃亡を試みたりしてはいけません。まずは速やかに弁護士へ相談し、そのアドバイスの下で最適な行動をとっていきましょう。
以下、3つについて詳しく解説します。
- 早急に弁護士に相談する
- 示談に向けた交渉をする
- 弁護士と共に自首する
早急に弁護士に相談する
暴行事件を起こし、逮捕された直後から始まる弁護活動によってその後に受ける処分が大きく変わります。逮捕される前であれば、後述する示談が成立する可能性もあります。
そのため、早急に家族または友人等に弁護士へ連絡してもらい面談をします。弁護士を刑事弁護人として選任し、どのような対応をしていくか話し合います。
示談に向けた交渉をする
加害者が逮捕されていない場合、弁護士に示談を依頼し、なるべく早く被害者との交渉を開始しましょう。
暴行で逮捕される前に被害者と示談が成立すれば、被害届は提出されないので逮捕もされません。たとえ逮捕されても起訴前に示談が成立し、被害者が嘆願書の提出をしてくれるならば、不起訴処分となる可能性があります。
弁護士と共に自首する
暴行で警察に逮捕されておらず、被害者が被害届を提出していない状況なら、弁護士と共に自首するのも一つの方法です。
暴行が捜査機関に発覚する前に自首すれば、減刑してもらえる可能性があります。
ただし、被害届の提出で捜査が開始されてしまうと、刑罰の減刑は期待できません。 自首をするべきか悩んでいる場合も弁護士に相談し、対応を冷静に話し合いましょう。
暴行で逮捕されたあとの流れ
暴行で逮捕された場合、次の手順で刑事手続きが進められます。
- 逮捕され警察から身柄を拘束された後、警察署内の留置所に収監
- 捜査官が加害者を取り調べる
- 逮捕後、48時間以内に検察官へ身柄を送致する
- 送致後、24時間以内に検察官は裁判所へ勾留を請求する
- 勾留が認められれば原則10日間(最長20日間)にわたり身体拘束、勾留請求が却下されると釈放される
- 起訴するか不起訴とするかを判断
- 起訴後、勾留が認められれば原則2か月間(1か月毎に更新が可能)にわたり身体を拘束される
- 刑事裁判開始
逮捕、起訴されるとこれだけの拘束期間が待っているため、弁護士に依頼して弁護活動を速やかに行ってもらうことが大切です。
まとめ
今回は多くの暴行事件に携わってきた刑事事件の専門弁護士が、暴行で逮捕された場合の刑罰や社会的影響、暴行を行ってしまった場合の対応策について詳しく解説しました。相手とのトラブルがあっても理性を保つのは大切です。
しかし、暴行の加害者となった場合は冷静かつ適切な対応が求められます。暴行事件を引き起こしたら、弁護士に相談して早期の問題解決を目指してみてはいかがでしょうか。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。