大麻所持の初犯の拘留期間は?釈放される?専門弁護士が解説
最終更新日: 2023年12月17日
- 大麻所持での逮捕から釈放までは何日なのか
- 大麻所持での逮捕後の流れを知りたい
- 大麻所持での逮捕後に依頼した弁護士はどのようなことをしてくれるのか
大麻に手を染めてしまった人が「もし犯罪が発覚し逮捕されたら」と考えて、不安に駆られるのはよくあることでしょう。大麻所持はたとえ初犯の場合であったとしても、薬物犯罪だけにどのような処分になるのか心配は尽きません。
そこで今回は、刑事事件に精通していて実績のある専門弁護士が、大麻所持に関わる法律・大麻所持で逮捕された場合の身柄の措置・釈放されるために必要な要件・弁護士が介入することのメリット、などについて解説します。
大麻所持の初犯も逮捕?基礎知識を確認
大麻所持での逮捕から釈放までは何日なのかが気になる方が知っておくべきことを3つ解説します。
- 大麻に関わる法律を解説
- 大麻所持は初犯でも逮捕されるのか
- 逮捕の種類は
1つずつ解説します。
大麻に関わる法律を解説
1つ目は、大麻に関わる法律についてです。
大麻に関わる法律は、大麻取締法という法律です。大麻取締法で規制対象とされている「大麻」とは、大麻取締法第1条にある通り、大麻草(カンナビス・サティバ・エル)およびその製品をいいます。
大麻に含まれるテトラヒドロカンナビノール(THC)と呼ばれる物質が幻覚作用をもたらす本体だといわれています。そのため、テトラヒドロカンナビノールが含まれない大麻草の成熟した茎やその製品(樹脂を除く)・種子およびその製品は、「大麻」に含まれません。
大麻取締法は、都道府県知事の免許を受けた大麻取扱者である大麻栽培者及び大麻研究者でなければ、大麻を所持し、栽培し、譲り受け、譲り渡し、または研究のため使用してはならないと規定しています。
大麻取締法では、所持・譲渡・譲受・栽培・輸出入が罰せられますが、使用(吸引)についての処罰規定はありません。言い換えれば、使用したかどうかは関係なく、大麻を所持しているだけで犯罪を犯しているということになります。
大麻所持は初犯でも逮捕されるのか
2つ目は、大麻所持は初犯でも逮捕されるのかということについてです。
刑事手続きについて定めた刑事訴訟法では、明らかに逮捕の必要がないと認めるときは逮捕状を発してはならない、としています。さらに、逮捕の理由があると認める場合においても、被疑者が逃亡するおそれがなく、かつ、罪を隠滅するおそれがないなど、明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、逮捕状の請求を却下しなければなりません。
以上のことは初犯かどうかは問われていません。そのため、大麻所持の初犯の場合でも、逃亡や罪証隠滅のおそれがあれば逮捕されますが、そのいずれのおそれがなければ逮捕はされないといえます。
大麻取締法全体の統計がありますので、確認しておきましょう。
令和元年の統計がまとめられている令和2年版犯罪白書(以下「犯罪白書」)という)によれば、大麻取締法違反の罪での身柄状況は、総数6,237人、逮捕されない者が2,288人、警察等で逮捕後釈放が44人、警察等で逮捕・身柄付送致が3,905人、検察庁で逮捕が0人です。
身柄率(検察官に送致および検察庁で逮捕された事件の比率)は62.6%となっており、大麻取締法違反の被疑者となった人のうち約6割以上が逮捕されていることがわかります。
逮捕の種類は
3つ目は、逮捕の種類は何があるのかについてです。逮捕には、以下のの3種類があります。
- 現行犯逮捕
- 後日逮捕(通常逮捕)
- 緊急逮捕
それぞれの逮捕について、見てみましょう。
【現行犯逮捕】
現行犯逮捕とは、逮捕状がない状態で逮捕することをいいます。
現行犯人とは、現に罪を行い、または現に罪を行い終わった者を指します(刑事訴訟法第212条1項)。たとえば、被疑者の自宅を捜索した際に大麻の栽培が確認されたり、職務質問の際に車やカバンの中から大麻が発見されたりして逮捕する場合です。
【後日逮捕(通常逮捕)】
後日逮捕(通常逮捕)とは、被疑者が罪を犯したことを疑うに相当する理由があるときに、裁判官があらかじめ発する逮捕状に基づいて被疑者を逮捕することをいいます。
たとえば、大麻の栽培や大麻所持を目撃した者からの情報に基づいて捜査を開始し、容疑が固まったところで、裁判官から逮捕状の発付を得て被疑者を後日逮捕する場合です。
【緊急逮捕】
緊急逮捕とは、検察官、検察事務官または司法警察員が、殺人罪・窃盗罪・大麻所持の罪のような「死刑又は無期若しくは長期3年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができない」ときに、その理由を告げて被疑者を逮捕することです(刑事訴訟法第210条1項)。
たとえば、巡回中の警察官が大麻所持を目撃したという通報者の目撃情報に沿う人相、服装、年齢、カバン携帯の者を発見しました。職務質問をしようとしたところ逃走しようとしたので、通報を受けた犯人と確信し、容疑が充分であること、および急速を要する状況があることを被疑者に告げて逮捕する場合です。
逮捕後は直ちに裁判官の逮捕状を求める手続きをしなければならず、逮捕状が発せられないときは直ちに被疑者を釈放しなければなりません。
大麻所持の初犯の拘留期間は?
大麻所持での逮捕後の流れや何日の間勾留されるのか、司法警察員が後日逮捕した場合について解説をします。
大麻所持での逮捕後の流れは以下です。
- 逮捕
- 48時間以内に検察官へ送致
- 勾留勾留決定での10日間勾留
- 10日間勾留期間延長
- 最大で23日間の身柄拘束が可能
1つずつ解説します。
逮捕
1つ目は、逮捕です。
司法警察員は、逮捕状により被疑者を逮捕したときは、被疑者に対して直ちに犯罪事実の要旨および弁護人を選任することができる旨を告げた上、弁解の機会を与えなければなりません。弁解の聴取やそれと並行して行われる捜査の結果、留置(身柄拘束の継続)の必要がないと判断すれば、直ちに被疑者を釈放する必要があります。
犯罪白書によれば、大麻取締法違反の罪で警察等で逮捕・身柄付送致された3,905人のうち、警察等で逮捕後釈放されたのは44人と非常に低い数字になっています。
48時間以内に検察官へ送致
2つ目は、48時間以内に検察官へ送致です。
司法警察員は、留置の必要があると判断すれば、被疑者が身体を拘束された時点から48時間以内に、書類および証拠物とともに被疑者を検察官に送致する手続きをします。
被疑者を受け取った検察官は弁解の機会を与えて弁解録取書を作成し、留置の必要がないと判断すれば直ちに被疑者を釈放します。
一方で留置の必要があると判断すれば、検察官は被疑者を受け取った時点から24時間以内かつ最初に被疑者が身体を拘束された時点から72時間以内に、裁判官に被疑者の勾留を請求します。
勾留決定での10日間勾留
3つ目は、勾留決定での10日間勾留です。
検察官の勾留請求を受けた裁判官は、勾留質問を行って審査します。被疑者に罪を犯した疑いがあり、住居不定や罪証隠滅・逃亡のおそれのいずれかがあり、捜査を進める上で身柄の拘束が必要となると、検察官の請求の日から10日間被疑者の勾留を認めます。
10日間勾留期間延長
4つめは、10日間の勾留期間延長です。
検察官は、裁判官に対して勾留期間の延長を請求できます。裁判官がやむを得ない事由(事件の複雑・困難、証拠収集の遅延・困難、証拠隠滅のおそれ、期間満了時における起訴不起訴決定の困難など)があると認めるとき、裁量で必要と思われる日数だけ最大10日間勾留期間が延長されます。
最大で23日間の身柄拘束が可能
5つめは、最大で23日間の身柄拘束が可能ということについてです。
ここまでの日数(勾留請求の日から最大で20日間の勾留、逮捕による最大72時間の拘束時間)を合わせると、大麻所持での逮捕では最大で23日間の身柄拘束されることが分かります。
大麻所持の初犯で逮捕されて釈放する方法
大麻所持での逮捕による勾留期間の何日かで弁護士ができることは、以下の3つです。
- 司法警察員に対する働きかけで逮捕の回避
- 検察官、裁判官に対する働きかけで勾留を回避
- 勾留決定がなされた後は勾留延長に準抗告(不服申立て)をして勾留期間を短縮
1つずつ見ていきましょう。
司法警察員に対する働きかけで逮捕の回避
弁護士ができることの1つ目は、司法警察員に対する働きかけで逮捕を回避することです。
犯罪白書によれば、大麻事件の被疑者6,237人中逮捕されない者は2,288人となっており、4割近くの被疑者が逮捕されていないことが分かります。また、警察等で逮捕後釈放の者は少ないとはいえ44人います。
最終的な身柄の処分は検察官が行いますが、司法警察員も被疑者に留置の必要がないと判断すれば釈放できる立場にあります。
弁護士としてはまず、逮捕の有無にかかわらず、被疑者と面会して事実関係や職業を含む身上関係を確認するとともに、家族からも家族状況などを聴取します。
そして被疑者には、「捜査機関からの出頭要請があれば必ず出頭する」旨の誓約書を作成します。また、親族・雇用主・職場の上司などの中から1人または複数の適切な身元引受人を確保し、「被疑者を監督し、捜査機関からの出頭要請に応じて被疑者を捜査機関に出頭させる」旨の身元引受書を作成してもらいます。その上で、弁護士は司法警察員に面談を申し入れ、上記の誓約書や身元引受書を提出します。
同時に、被疑者が逮捕されないように、または逮捕されているときは釈放するように働きかけます。その場合には、被疑者が大麻所持の事実を認め、証拠物である大麻も押収されていて罪証隠滅のおそれがなく、定まった住居があり、その上逃亡のおそれもない旨を訴えます。
検察官・裁判官に対する働きかけで勾留を回避
弁護士ができることの2つ目は、検察官・裁判官に対する働きかけで勾留を回避することです。
犯罪白書によれば、大麻取締法違反の罪の「勾留関係」では、検察官の勾留請求の総数が3,849人で、警察等で逮捕・身柄付送致の者が3,905人ですから、検察官の段階で56人が釈放されていることになります(勾留請求率は98.6%)。このことから、大麻事件では通常、検察官は逮捕されたほとんどの被疑者の勾留を請求していることがわかります。
しかし、検察官の段階で釈放される被疑者がいることも事実です。
弁護士は検察官に面談を申し入れ、上記の誓約書や身元引受書(身元引受人を同行する場合もあります)、弁護士の主張を記載した意見書を提出します。その上で、被疑者が大麻所持の事実を認めていて勾留の理由や必要性がないことを訴え、勾留請求をしないように働きかけます。
勾留請求がされた場合には勾留担当裁判官に面談を申し入れ、上記の誓約書、身元引受書や弁護士の意見書を提出して、勾留の理由や必要性がないことを訴え、勾留決定をしないように働きかけます。
勾留決定がなされた後は、勾留延長に準抗告(不服申立て)をして勾留期間を短縮
弁護士ができることの3つ目は、勾留決定がなされた後は、勾留延長に準抗告(不服申立て)をして勾留期間を短縮することです。
弁護士は、勾留決定や勾留期間延長決定がされた場合は、その取消し・変更を求めて準抗告を申し立てます。これによって勾留が取り消されたり、勾留期間が短縮される場合があります。
まとめ
今回は、刑事事件に精通していて実績のある専門弁護士が、大麻所持に関わる法律・大麻所持で逮捕された場合、身柄の処置はどうなるのか・釈放されるにはどのような要件が必要か・弁護士が介入するとどのようなメリットがあるのかなどのポイントについて解説しました。
大麻所持の罪では、その所持量が大きなウエイトを占めますが、大麻に対する親和性の度合いや犯行の動機に加え、他の犯罪歴の有無もその処遇には影響します。したがって、大麻所持が初犯だからといって軽い処分で終わるという保障はありません。
一方で、弁護士が早い段階から介入することで、大麻所持で逮捕された者にとって有利な結果が得られることも多いのです。大麻所持で逮捕され、ご自分の今後の処遇に不安のある方は、ぜひ一度専門の弁護士に相談してください。