公務員が盗撮で捕まるとどうなる?職場・家族への影響と取るべき対応策を解説

2025年02月23日

公務員が盗撮で捕まるとどうなる?職場・家族への影響と取るべき対応策を解説

  • 公務員でありながら、仕事のストレス発散のため盗撮をしてしまった。発覚したらどのような事態になるのだろう?
  • 公務員が盗撮で逮捕されたら、即失職や免職となってしまうのだろうか?
  • 盗撮で逮捕されたら公務員である自分の他に、家族はどうなってしまうだろう?不安で仕方がない。

公務員は「国家公務員法」「地方公務員法」により身分が保障されています。

一方で、公務員法は、私生活上の非行を理由として懲戒処分できると規定している点に注意が必要です。

会社員と比較すれば、公務員は盗撮による懲戒処分を受ける可能性が高いのです。

そこで今回は、数多くの刑事事件に携わってきた専門弁護士が、公務員が盗撮事件を起こしたときに問われる罪、公務員法による懲戒処分等を詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • 公務員が盗撮事件を起こせば、性的姿態撮影等処罰法等で処罰される
  • 公務員が盗撮で有罪になると失職や免職となる可能性がある
  • 公務員である自分が盗撮で逮捕されるか不安なときは、速やかに弁護士と相談する

刑事事件に強い弁護士はこちら

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

公務員が盗撮事件を起こしたら問われる罪

公務員であっても、盗撮事件が発覚したら、性的姿態撮影等処罰法や軽犯罪法等で処罰される可能性があります。

また、盗撮対象が児童の場合は、児童ポルノ禁止法の罰則が適用されます。

性的姿態撮影等処罰法

公務員が盗撮行為をした場合、「撮影罪」に問われる可能性があるでしょう。

撮影罪を処罰する法律として、「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(性的姿態撮影等処罰法)」が、2023年7月13日に施行されています。

撮影罪は非親告罪です。盗撮された被害者が被害届や告訴状を警察署に提出しなくとも、警察が捜査を開始する場合があります。

性的姿態撮影等処罰法で処罰される行為は、主に次の通りです。

  • 勝手に人の性的な部位・下着等を撮影した、撮影データを提供した:3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(性的姿態撮影等処罰法第2条、第3条第1項)
  • 盗撮データを不特定多数に提供した等:5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金または併科(同法第3条第2項)
  • 盗撮データの提供のため保管した:2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金(同法第4条)
  • 盗撮データの消去命令違反:1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(同法第43条)
  • 盗撮の事実を隠した等:50万円以下の罰金(同法第44条)

出典:性的姿態撮影等処罰法|e-GOV法令検索

迷惑防止条例

公務員が盗撮行為をすれば、公衆に対して著しく迷惑をかけたという理由で、地方自治体の「迷惑防止条例」違反となる可能性があります。

47都道府県全てで迷惑防止条例は制定されており、被害者が被害届や告訴状を警察署に提出しなくとも、盗撮した公務員の公訴が可能です。

常習的に盗撮行為をしていた場合、2年以下の懲役(2025年6月1日以降は拘禁刑)または100万円以下の罰金に処される場合があります。

軽犯罪法

公務員が正当な理由がないにもかかわらず、更衣室やトイレ等を盗撮した場合、軽犯罪法違反となる可能性があります。

盗撮行為をした公務員は軽犯罪法上の「ひそかにのぞき見た者」に該当し、有罪となれば1〜30日未満の拘留、または1,000〜1万円未満の科料に処されるでしょう。

出典:軽犯罪法|e-GOV法令検索

住居侵入・建造物侵入

公務員の盗撮行為には刑法が適用される場合もあります。

公務員が盗撮行為を目的に、他人の自宅や寮等に無断で侵入したという場合、3年以下の懲役(2025年6月1日以降は拘禁刑)または10万円以下の罰金(刑法第130条)に処される可能性があります。

出典:刑法|e-GOV法令検索

児童ポルノ禁止法

18歳未満の児童を盗撮対象とした場合、児童ポルノ禁止法で処罰されます。

盗撮は児童ポルノの「製造」に該当し、盗撮した画像や動画を所持する行為も処罰対象です。
主に次の刑罰を受ける可能性があります(懲役刑は2025年6月1日以降は拘禁刑へ移行)。

  • 自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の盗撮データを所持した等:1年以下の懲役または100万円以下の罰金(児童ポルノ禁止法第7条第1項)
  • 児童の盗撮データを提供した等:3年以下の懲役または300万円以下の罰金(同法第7条第2~5項)
  • 児童の盗撮データを不特定多数に提供した等:5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金または併科(同法第7条第6~8項)

出典:児童ポルノ禁止法|e-GOV法令検索

公務員が盗撮してしまった後の影響

盗撮行為をした公務員は個別の法律で処罰される他、公務員に適用される法律で懲戒処分を受ける場合があります。

盗撮行為は国家公務員法・地方公務員法上、「私生活上の非行」に該当し懲戒処分が可能です(国家公務員法第82条、地方公務員法第29条)。

公務員が禁錮(2025年6月1日以降は拘禁刑)以上の刑(執行猶予付き判決を含む)に処されると、基本的に失職します(国家公務員法第76条・38条、地方公務員法第28条4項・16条)。

なお、懲戒免職の場合は退職金を受け取れない可能性があり、失業給付も得られません。

出典:国家公務員法|e-GOV法令検索

出典:地方公務員法|e-GOV法令検索

公務員の盗撮が職場に知られる可能性

公務員が犯した盗撮は、様々なきっかけで職場に知れ渡るケースがあります。

警察から職場に問い合わせがあるときや、盗撮した公務員本人が無断欠勤したとき、発覚する可能性が高いです。

職場内で盗撮した場合

職場内での盗撮が発覚し、盗撮犯として知れ渡るケースです。

一般市民の入室が困難な更衣室等に隠しカメラを仕込んだ場合、犯人は庁内で勤務している公務員に限定されるでしょう。

警察等が映像を確認したところ、カメラを設置している盗撮犯が映り込んでいる場合もあります。

この場合、警察から庁内の関係者に確認を求められ、盗撮した公務員は誰であるかが職場に知れ渡ってしまいます。

身元引受人が職場の人間の場合

盗撮した公務員(被疑者)の身元引受人が、職場の上司等であったとき職場に知れ渡るケースです。

被疑者は警察署で事情聴取を受けた後に、必ず逮捕・勾留されるというわけではありません。

警察官は被疑者が反省していて、証拠隠滅や逃亡のおそれがないと判断したときは、在宅事件として捜査を進める場合があります。

この場合は事情聴取後、被疑者の家族が身元引受人となるのが一般的です。

ただし、家族と連絡がつかないときは、職場の上司が身元引受人となる可能性もあります。

実名報道

マスメディアの実名報道で、盗撮の事実が職場に知れ渡るケースです。

職場に警察から報告がなくても、公務員が盗撮で現行犯逮捕された場合、TVやインターネット上で実名を報道される可能性があります。

実名報道の場合は「〇〇市役所職員」等と勤務先などが報道されることがあるため、すぐ職場内に知れ渡る事態となるでしょう。

無断欠勤

無断欠勤の状態が続いてしまい、盗撮の事実が職場に知れ渡るケースです。

盗撮した公務員が逮捕されると、スマートフォンの使用は認められないため、職場を無断欠勤する状態となります。

捜査機関(警察・検察)が勾留するかどうかで、無断欠勤となる期間に差が出てしまいます。

  • 逮捕後に勾留しない:1~3日で釈放
  • 勾留が決定された:原則10日、最長20日にわたり身柄を拘束される

勾留されない場合、家族が職場に本人の体調不良を連絡すれば、盗撮の事実を隠せるかもしれません。

しかし、勾留されると長期の身柄拘束となるので、いずれ職場に盗撮の事実が知れ渡ってしまうでしょう。

本人と連絡が取れない場合

盗撮した公務員が逮捕されない場合で、家族が身元引受人となったときでも、盗撮行為が職場に知れ渡る可能性はあります。

在宅事件として盗撮の捜査を継続する場合、警察は事情聴取するときに、電話連絡して呼び出すのが一般的です。

呼び出しても公務員本人につながらず、家族を通じて連絡もできなければ、職場に連絡がいくこともあり得ます。

公務員の盗撮で家族が負うリスク

盗撮した事実が発覚すれば、公務員本人だけではなく家族にも大きな影響が及ぶことでしょう。

場合によっては、引っ越しを余儀なくされることもあります。

職場にバレる

家族が勤務する会社等に、盗撮事件が知れ渡る可能性もあります。家族の出世に影響が出る場合もあるかもしれません。

また、同僚や上司が盗撮事件の話題を直接口にしなくても、次のような陰口や噂が広まる場合もあるでしょう。

  • 「息子は国立大学を出て官僚になったと自慢していたが、盗撮で逮捕とは恥ずかしいよな」
  • 「〇〇さんの公務員だった息子さん。成人女性だけじゃなく幼女の裸も盗撮していたようね。ただの変態だわ」

家族も職場で白い目で見られるようになり、肩身の狭い思いをすることでしょう。

学校にバレる

盗撮した公務員に子どもがいる場合、同級生から「いじめ」られる可能性があります。

マスメディアの報道や、盗撮した公務員と同じ職場に勤める親から話を聞いて、噂が広がってしまうことがあり得るのです。

いじめを受けた子どもは不登校となり、次第に学校や同級生、そして盗撮という犯罪を犯した親に対し、強い恨みを抱くかもしれません。

近所にバレる

近所の人に盗撮事件の噂が広まり、家族全員が肩身の狭い思いをするかもしれません。

親しい付き合いをしてきた近所の人から相手にされなくなり、現在の住居に居辛くなる場合もあるでしょう。

そのため、家族が引っ越しを余儀なくされ、最悪の場合は一家離散となることもあるでしょう。

損害賠償

盗撮された被害者から損害賠償(慰謝料)請求を受ける可能性があります。

請求を受けるのは盗撮した本人ですが、本人にお金の余裕がない場合は、家族が支払う場合もあるでしょう。家族の金銭的負担にも注意が必要です。

盗撮事件の損害賠償(慰謝料)金額の相場は約10〜50万円です。ただし、精神的苦痛の大きさによっては、更に高額となることもあり得ます。

公務員が盗撮してしまったらすべきこと

公務員本人が盗撮行為を後悔し、逮捕される不安を感じているときは、速やかに弁護士と相談しましょう。

弁護士は法律に則った有益なアドバイスができる頼もしいサポート役になります。

信頼できる弁護士への相談

弁護士に相談すれば、今後どのように対応を進めていくのかがわかります。

  • 警察から任意の呼び出しを受けた場合の対応
  • 盗撮はどれくらい重い罪に問われるか
  • 逮捕後、どのように刑事手続が進むか
  • 盗撮被害者と示談を行う有効性
  • 起訴された後の弁護活動について 等

相談のうえ逮捕前に委任契約を締結すれば、弁護士は私選弁護人として警察・検察への対応や、被害者との示談交渉も可能です。

示談交渉

被害者との示談交渉を成功させれば、不起訴処分または減刑や執行猶予付き判決を得られる可能性があります。

被害者が同じ職場にいる場合や、被害届や告訴状を提出している場合は、被害者の特定が可能でしょう。

被害者を特定できる場合は弁護士を交渉役に立てて、示談交渉を申し出ましょう。被害者が交渉に応じるときは、速やかに話し合いを進めます。

弁護士は法律に精通し、刑事事件の被害者との交渉経験も豊かなので、交渉はスムーズに進むでしょう。

被害者が示談内容に同意したときは、弁護士は示談書(合意書)を作成し、次のような内容を明記します。

  • 加害者は被害者に誠心誠意謝罪する。二度と盗撮行為をしないと誓う
  • 示談金に関する詳細(金額・支払方法や期限)を明記する
  • 被害者は被害届や告訴状を取り下げる
  • 被害者が検察官に寛大な処分を求める(嘆願書を提出等)
  • 加害者と被害者は示談後、問題を蒸し返さない

示談書は2通作成し、加害者・被害者が1通ずつ大切に保管します。

ただし、盗撮に関する罪(撮影罪)は非親告罪のため、示談が成立しても、起訴するか不起訴処分にするかは検察官の判断次第です。

また、不起訴処分になっても、懲戒処分を受ける可能性は残ります。

公務員の盗撮でお困りなら春田法律事務所まで

今回は多くの刑事事件を担当してきた専門弁護士が、公務員が盗撮事件を起こしたときの対応方法等について詳しく解説しました。

春田法律事務所は刑事事件に関する示談交渉、裁判に実績のある法律事務所です。盗撮の疑いで逮捕されそうなとき、今後どうするかを弁護士とよく話し合いましょう。

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