立退き問題を徹底解説|知っておくべき権利と対処法

最終更新日: 2026年06月04日

立退き問題を徹底解説|知っておくべき権利と対処法

「突然、立退きを求められた」「老朽化を理由に退去をお願いされた」──
立退きに関するトラブルは、賃貸住宅や店舗を借りている人だけでなく、貸しているオーナー側にとっても深刻な問題です。

しかし、立退きは単なる「お願い」や「契約終了」ではなく、法律(借地借家法など)で厳密にルールが定められている行為です。
特に居住用物件や店舗の場合、貸主が一方的に追い出すことはできず、「正当事由」と「補償(立退き料)」が求められます。

本記事では、立退き問題に関する基本的な法律の仕組みから、貸主・借主それぞれの立場での対応方法、補償金の考え方までを総合的に解説します。

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士 春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内法律事務所勤務
当事務所開設
資格
宅地建物取引士
情報処理安全確保支援士
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立退きとは?法律上の意味と前提

「立退き」とは、賃貸借契約に基づき建物を使用している借主に対し、貸主が「契約を終了させて退去してほしい」と求めることを指します。

ただし、借主には「居住の安定」や「営業継続の自由」があるため、貸主が自由に契約を打ち切ることはできません。
この点を定めているのが借地借家法です。

借地借家法では、貸主が契約更新を拒否したり、解約を申し入れたりする場合、正当事由」が必要とされています(同法28条)。
つまり、貸主に十分な理由がなければ、契約を終了できない仕組みになっています。

また、立退きには以下のようなケースがあります。

  • 契約期間満了による更新拒絶
  • 契約途中の解約申し入れ
  • 家賃滞納など借主側の契約違反
  • 建物の老朽化や再開発による建て替え

居住用か事業用(店舗・オフィス)かによって、補償の内容や判断基準も変わります。

立退きが発生する主なケース

立退きが求められる背景には、さまざまな事情があります。主なパターンを見てみましょう。

建物の老朽化・建て替え

耐震性や老朽化を理由に「建て替えをしたい」というケース。
この場合、立退きを求める貸主側には一定の正当性がありますが、補償金の支払いが条件となることが多いです。

家賃滞納など借主の債務不履行

家賃の未払いが続いた場合、貸主は契約解除をして明渡請求を行うことが可能です。
ただし、滞納が一時的であれば債務不履行解除が認められない可能性もあるため、状況に応じた判断が求められます。

契約期間満了と更新拒絶

契約期間が終わったからといって自動的に退去させられるわけではありません。
更新を拒否するには正当事由が必要であり、裁判でも「補償金を支払っていない」「使用目的があいまい」といった場合は、更新拒絶が認められないことがあります。

貸主自身や家族が使用する場合

「息子が住む家として使いたい」など、自己使用を理由に退去を求めるケース。
自己使用の必要性が具体的であれば正当事由として認められることもありますが、借主の生活への影響も考慮されます。

再開発・行政による立退き

都市計画や再開発事業に伴うケースでは、行政やデベロッパーが関与するため、補償金の算定や手続が複雑になる傾向があります。

貸主が立退きを求める場合のルール

貸主が借主に退去を求めるには、次の2つの条件を満たす必要があります。

  1. 正当事由があること
    建物の老朽化・自己使用・借主の契約違反などがこれにあたります。
    ただし、単に「新しい人に貸したい」「家賃を上げたい」といった理由では認められません。
  2. 補償金(立退き料)による補完
    正当事由が弱い場合でも、補償金を支払うことで「正当事由が補完」されるケースがあります。

裁判では、「貸主の必要性」「借主の生活への影響」「補償金の額」「交渉の経緯」などを総合的に判断します。

弁護士を通じて交渉すれば、法的リスクを減らし、円滑な手続きを進めることができます。

借主が立退きを求められたときの対応

借主が立退きを求められた場合、まず冷静に状況を確認することが重要です。

  1. 契約書を確認する
    更新拒絶や解約申し入れの根拠があるかをチェック。
  2. 通知書の内容を確認する
    「いつまでに退去してほしい」「理由は何か」が明確かどうかを見ます。
  3. 正当事由の有無を判断する
    老朽化や再開発など、法律上妥当な理由があるかどうか。
  4. 立退き料の提示額を検討する
    金額が相場より極端に低い場合は、交渉の余地があります。

不当な要求を受けた場合は、「応じる義務があるのか」「補償金はいくらが妥当か」を弁護士に確認し、法的な対処を進めるのが安全です。

立ち退きの流れ(解約通知→交渉→裁判)

賃貸物件から立ち退きを要求されると、賃借人側に様々な不測の事態が起きるリスクもあります。

賃貸人側は自分の都合だけを考えず、賃借人に配慮して立ち退き交渉を進める必要があります。

解約通知

立ち退きに正当事由がある場合、賃貸借契約満了の1年前から6か月前までに、賃貸人側から賃借人側へ賃貸借契約の解約通知(更新拒絶通知)を行います。

解約通知書では特に決まった書式がないものの、主に次のような内容を記載する必要があります。

  • 契約当事者:賃貸借契約の当事者を明記
  • 契約内容:どのような契約だったかを明記
  • 通知書提出日:解約通知書の提出日
  • 契約締結日:賃貸物件の契約日
  • 解約予定日:賃貸借契約の解除予定日
  • 解約理由:理由を簡潔に明記

通知書を受け取った賃借人は、内容に漏れや、誤りがないか必ずチェックしましょう。

交渉

賃貸人側は自分の都合ばかりを主張せず、賃借人の主張・要望をしっかり聴いたうえで、交渉を進める必要があります。

以下のポイントに留意し交渉を行いましょう。

交渉のポイント

内容

立ち退きの理由を説明

賃借人側に立ち退きの正当事由(例:倒壊のおそれがあるため等)を告げ、立ち退きの予定時期を伝える

賃借人側の事情も聴く

・賃借人の移転の不安(例:どこに引っ越ししたらよいかわからない、引っ越し費用の余裕がない等)を聴く

・不安の解消に努める(例:移転先の候補や家賃を代わりに調べる等)

解決案の提示

・賃借人側に配慮した立ち退き料を提示する(例:立ち退き料「賃料6か月分+引越し代」分、等)

・その他、立ち退き前に賃借人が移転先へ支払う敷金・礼金等の初期費用分を、立ち退き料の一部から前払いするよう工夫し、賃借人の費用負担の軽減に努める

・解決案の内容は口頭で行うと、当事者の記憶も曖昧になるので、文書で提示する

事前に代替策も検討

交渉が不調に終わった場合の代替策を考慮しておく

次のような対応が想定される

・立ち退きを求める裁判を起こす

・賃借人が自主的に物件を退去するまで待つ

・賃貸人が賃貸物件を第三者へ売却し、賃貸借の関係から離脱する 等

裁判

立ち退き交渉が決裂した場合は、基本的に賃貸人側が裁判を起こし(賃貸物件明渡請求訴訟)、問題の解決を図ります。

訴訟の際、裁判所で争点となる内容は主に次の通りです。

  • 賃貸人に正当事由はあるのか否か
  • 立ち退き料の金額はどれくらいが妥当か

内容によっては賃借人側の主張が通り、立ち退きは認められない旨の判決が下る可能性もあります。

なお、賃借人側とまだ交渉の余地は残っていると感じる場合は、裁判所で調停を行い、和解を目指す方法もあります。

立ち退きの強制執行の流れはこちらで解説しています。

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立退き料(補償金)とは?相場と交渉の実態

立退き料とは、退去に応じてもらう代わりに貸主が支払う補償金です。
法的な定めはありませんが、裁判実務では「正当事由の補完」として重視されます。

一般的な相場

  • 居住用物件:家賃の6〜12か月分程度
  • 店舗・事業用:売上や移転費用を考慮し数百万円以上になるケースも

金額が上がる要素

  • 借主の居住期間が長い
  • 建物の立地が良い・移転が困難
  • 建て替えに貸主の都合が強く出ている

金額が下がる要素

  • 借主が家賃滞納をしている
  • 貸主の必要性が高く、事前説明も丁寧である

立退料の提示に納得できない場合は、安易に合意せず、弁護士に交渉を依頼することで適正な金額を得られる可能性があります。

立退料が発生しない・不要なケース

立ち退き料は、いかなる場合でも発生するわけではありません。賃借人側に非がある場合や当時の契約内容等によっては、立ち退き料が発生しないケースもあります。

債務不履行

債務不履行とは、賃貸借契約を締結していたのに、契約当事者が契約内容を守らない状態のことです。この場合は賃貸人側から契約解除を通知されるおそれがあり、立ち退き料も期待できません。

賃借人が債務不履行に該当するケースは、主に次のような内容があげられます。

  • 家賃の滞納が長期化している
  • 賃貸物件を破壊するような行為があった
  • カフェの店舗として契約したのに性風俗店を経営していた

ただし、賃料の滞納が1か月程度であれば、まず契約は解除されません。賃料に関する債務不履行は3か月分以上の滞納があった場合、解約または更新拒絶の可能性があります。

家賃滞納による立ち退きはこちらで解説しています。

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定期建物賃貸借契約

定期建物賃貸借契約(定期借家契約)とは、契約期間の満了で賃貸借関係が確定的に終了する契約です。

契約更新がないので正当事由は不要、立ち退き料も賃借人へ支払う必要がありません。合意した契約期間満了で当然に契約関係を終了できます。

定期建物賃貸借契約は賃借人にとって不利な契約と言えますが、賃料は普通借家契約よりも安く設定されている賃貸物件が多いです。

賃借人側も契約締結前に定期建物賃貸借契約か、それとも普通借家契約かをよく確認する必要があるでしょう。

ただし、契約のときは次のような厳格な要件が適用されます。

  • 建物の賃貸借契約である
  • 契約の更新がない旨を明記する
  • 期間の定めを明記する
  • 書面によって契約する
  • 賃貸人が期間の満了で賃貸借は終了する旨を、明確に記載した書面を交付し説明する

このような要件を欠いたため、賃借人が定期建物賃貸借契約である事実を知らなかったときは、退去のときに立ち退き料を支払わなければならない可能性もあります。

一時使用目的の賃貸借

一時使用目的を定めた賃貸借契約も、正当事由は不要で立ち退き料も賃借人へ支払われない可能性があります。

一時使用目的(短期的な使用)で契約を締結する場合、過剰に賃貸人側が有利となるおそれはあるでしょう。

そのため、この契約には厳格な要件設定があります。

  • 法令または契約で建物の取壊し予定が明記されている
  • 賃貸人に賃貸建物を取り壊す義務がある
  • 一定の期間経過後、建物を取り壊す予定である
  • 取壊しの事実(特約)
  • 建物を取り壊すべき事情について書面化している

つまり、近々取り壊す予定である事実を賃借人に口頭で告げても、一時使用目的を定めた賃貸借契約を締結したとはいえません。

要件を欠いた契約の場合、やはり賃借人に立ち退き料を支払わなければいけない可能性があります。

合意解約

賃借人が立ち退き料は受け取らない旨を承知し、解約しても構いません。

たとえば、賃借人が賃貸人から借りている建物の老朽化等の現状を把握し、退去を望んでいるケースがあげられます。

合意解約をした賃借人の中には、賃貸人に「退去を命じられたら当然、解約するもの。」と信じ込まされ、合意してしまった可能性もあります。

賃貸借に関する知識のない賃借人からすれば、「合意契約書」のような書面が送付され、安易に書類へ署名・押印してしまう場合もあるでしょう。

このような場合であっても、賃借人が賃貸人から騙されたり脅されたりして、合意解約をさせられたと主張して退去を拒否することによって立ち退き料を支払ってもらうよう交渉できます。

とはいえ、合意契約書を作成してしまうと、一般的にはその効力を否定するのは困難であるため、賃貸人から明渡訴訟を提起されてしまうと敗訴する可能性は非常に高いのが実情です。

店舗・事業用物件の立退き

事業用物件の立退きでは、居住用よりも交渉が複雑になります。
なぜなら、退去によって営業損失や顧客離れといった金銭的損害が発生するからです。

補償金の内容には以下のような要素が含まれることがあります。

  • 改装・移転費用
  • 営業損失補償(売上・利益減少分)
  • 顧客移転告知費用

店舗やオフィスの場合、「営業を維持できるまでの期間的余裕」も交渉ポイントになります。

立退きトラブルを防ぐためにできること

立退き問題を未然に防ぐには、契約時からの備えが大切です。

  • 契約書に「更新・解約の条件」を明確に定める
  • 通知ややり取りは書面・メールで記録する
  • 定期借家契約の場合は説明義務を守る
  • 問題が発生したら早めに弁護士へ相談する

「長年の付き合いだから」と口約束で対応してしまうと、後にトラブルが複雑化することもあります。

立退き問題を弁護士に相談すべきケース

次のような場合は、早めに弁護士への相談を検討しましょう。

  • 立退料の提示額が妥当かわからない
  • 貸主と連絡が取れない・強制的に追い出されそう
  • 交渉が長引いて精神的に負担を感じる
  • 明渡し後に原状回復費などをめぐって争いが起きた

弁護士が介入することで、法的根拠に基づく主張が可能になり、相手との交渉を有利に進めることができます。

よくある質問(FAQ)

Q. 正当事由があれば必ず退去しなければなりませんか?

いいえ。裁判所は、補償金や生活状況なども含めて総合的に判断します。

Q. 貸主が勝手に鍵を替えるのは違法?

違法です。不法侵入や器物損壊に該当する可能性があります。

Q. 店舗の場合、営業補償を請求できる?

売上減少や移転費用などを根拠に請求できる場合があります。

Q. 弁護士費用はどのくらい?

相談料無料の事務所も多く、交渉や訴訟は成果報酬制を採用していることもあります。

Q. 立退料に相場はありますか?

立退料には明確な算定式や「賃料〇か月分が相当」といった相場はありません。賃貸人側の建物使用の必要性、賃借人側の建物使用の必要性などの諸事情を総合的に考慮して算定されるので、立退料も事案ごとに異なります。

まとめ:立退きトラブルは早めの法的対応が重要

立退きは、貸主・借主のどちらにとっても大きな決断を伴います。
法的ルールを無視した対応をすると、補償を受け損ねたり、訴訟トラブルに発展するリスクもあります。

老朽化・再開発・家賃滞納など理由を問わず、まずは正当事由の有無と補償内容を専門家に確認することが重要です。
早い段階で弁護士へ相談すれば、交渉をスムーズに進め、最適な解決を目指すことができます。

 

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