浮気が離婚調停に発展?離婚調停の内容や流れを弁護士が解説します。

最終更新日: 2022年11月02日

浮気が離婚調停に発展?離婚調停の内容や流れを弁護士が解説します。配偶者の浮気が発覚した場合,浮気をされた当事者は離婚を決断するかもしれません。
また,浮気をしてしまったものの,浮気相手と一緒になりたいと望み,配偶者に対して離婚を申し出る場合もあるでしょう。

今回は,男女問題や離婚事件を多く取り扱う弁護士が,浮気を原因として離婚する場合について,特に「離婚調停」という手続に着目しながら,説明をしたいと思います。

早速参りましょう。

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この記事を監修したのは

弁護士 南 佳祐
弁護士南 佳祐
大阪弁護士会 所属
経歴
京都大学法学部卒業
京都大学法科大学院卒業
大阪市内の総合法律事務所勤務
当事務所入所

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浮気が原因で離婚調停に発展するまでの大まかな流れ

浮気が原因で離婚調停に発展するまでの大まかな流れまずは,浮気が発覚してから,離婚調停に至るまでの流れを大まかに確認してみましょう。

離婚調停の流れ
  1. 浮気・不倫の発覚
  2. 離婚協議
  3. 離婚調停
  4. 離婚審判
  5. 離婚訴訟

 

浮気・不倫の発覚

浮気や不倫が発覚するところからスタートです。

偶然,浮気や不倫に気付いてしまうこともあるでしょうし,疑わしい配偶者を調査して浮気や不倫が発覚することもあるでしょう。

いずれの場合も,可能限り多くの証拠を確保しておくことが重要です。

では,浮気・不倫が発覚し,離婚へと進む場合には,どのような流れになるのでしょうか。

離婚協議

まずは,夫婦間で離婚について協議をすることになるでしょう。
これを離婚協議といい,協議によって離婚することを協議離婚といいます。

協議はあくまでも夫婦間で行うものであり,裁判所の介入などはありません。
当事者は,それぞれ弁護士に依頼して協議を進めることも可能です。

離婚をするか否かということだけでなく,子どもがいる場合にはどちらが親権を取得するのかという点を決めておくことも不可欠です。

また,慰謝料や財産分与などの金銭面の条件については離婚までに決めることが不可欠ではありませんが,可能な限り,せっかく協議の機会が存在する以上,離婚までに協議を進めておくことが望ましいといえます。

離婚調停

条件がまとまらない場合や相手方がそもそも協議には応じてくれない場合など夫婦間の話合いでは離婚自体や離婚の条件について合意に至らないときは,離婚調停へと進むことになります。

離婚調停は,家庭裁判所で行う離婚手続です。
日本では,(後で説明する)離婚訴訟を行う前の段階として,必ず離婚調停を経なければならないとする「調停前置主義」を採用しています。

離婚調停は,裁判所を介して行う協議の場であり,調停委員を仲介役として,当事者双方が話合いを続け,話合いでの解決を目指します。

離婚審判

裁判所を介した協議の場である離婚調停でも話合いがまとまらない場合には,調停に代わって「審判」という手続がなされます。

これは,裁判所が双方の主張をもとに一定の判断を下すものです。
もっとも,2週間以内に異議を申し立てることで訴訟の場で争うことが可能であり,訴訟に進む可能性が高いことから,審判での離婚はあまり利用されていない印象です。

離婚訴訟

調停がまとまらない場合(不調といいます)や,審判に不服がある場合には,離婚訴訟(裁判)へと進むことになります。

離婚訴訟が,離婚調停とは大きく異なる点は,法律上定められた「離婚事由」の存在が認められなければ,離婚できない点です。

具体的には,民法770条1項各号に定められた次の事由のいずれかが存在する必要があります。

  1. 不貞行為
  2. 悪意の遺棄
  3. 配偶者の生死が3年以上明らかでない
  4. 配偶者が強度の精神病にかかり,回復の見込みがない
  5. その他婚姻を継続し難い重大な事由がある

この記事では,浮気があることを前提としていますので,基本的には,「1不貞行為」に該当するものであり,離婚事由があると考えられます。

ただし,訴訟ですので,十分に浮気(不貞行為)を立証できるだけの証拠が不可欠ですので,その点はご留意頂く必要があります。

浮気を原因として離婚調停を申し立てる方法

浮気を原因として離婚調停を申し立てる方法離婚に関する各手続を概観したところで,離婚調停に話を戻し,離婚調停を申し立てるための具体的な方法について説明していきます。

  • 調停申立書に記載する内容
  • 申立時に必要となる書類
  • 浮気をした側から離婚調停を申し立てることはできるのか?
  • 浮気の証拠なしでも,離婚調停を申し立てることができるのか?

調停申立書に記載する内容

離婚調停を行うには,まず,申立書を家庭裁判所に提出する必要があります。
家庭裁判所のホームページからもダウンロード可能ですし,弁護士に依頼すれば,弁護士が作成してくれます。

原則として,相手方の住所地を管轄とする家庭裁判所に申し立てる必要がありますので,相手方が別居などにより遠隔地にいる場合には,遠方の裁判所で調停が実施されることになります。
このような場合に,弁護士に依頼すると出張費や日当などが発生することもあるので,事前に確認してみてください。

申立書には,主として以下の事項を記載します。

  • 事件名
  • 申立人の名前と押印
  • 申立人・相手方の本籍,住所,氏名,生年月日
  • 未成年の子の名前と生年月日
  • 申立ての趣旨
  • 申立ての理由

申立ての趣旨は,丸印を付すだけの書式となっていますので,ご本人でも比較的容易に作成が可能です。

申立ての理由には,同居時期・別居時期を記載したうえで,動機欄に丸印を付します。
浮気が原因の離婚調停であれば,「異性関係」に丸を付す必要があります。

以下は東京家庭裁判所の書式案内です。参考までにご確認ください。

申立時に必要となる書類

調停申立書以外にも必要な書類があります。

まず,戸籍謄本が必要です。
また,収入印紙を貼り,郵便切手(郵券といいます)を先に納めておく必要もあります。

それ以外の書類は,調停で求める内容次第ですが,たとえば年金分割を求めるのであれば,年金分割の情報提供通知書などが必要となります。

個別具体的な必要書類については,事前に弁護士や家庭裁判所に尋ねてみましょう。

浮気をした側から離婚調停を申し立てることはできるのか?

では,浮気をした側の配偶者から,離婚調停を申し立てることはできるのでしょうか?
少し身勝手なのではないかと感じる方もいらっしゃると思います。

結論としては,浮気をした側からも,離婚調停を申し立てることは可能です。
調停は,あくまでも調停委員(裁判所)を仲介役とした話合いの場ですから,浮気をした配偶者からも話合いの機会を持つべく,離婚調停を申し立てること自体は可能なのです。

また,調停での話合いの結果,浮気をされた配偶者が離婚に応じるとの選択をするのであれば,離婚が成立することもあり得ます。

他方で,浮気をされた配偶者が,離婚には応じないとの意向を確定的に示したり,そもそも調停に出席せず,調停が不成立に終わった場合に,その後に,どのように進めていくのかということは,また別の問題です。

自ら不貞行為や浮気をした配偶者(有責配偶者といいます)からの離婚請求については,原則として,裁判所は離婚を認めない方向の判断を示しています。

例外もありますが,有責配偶者からの離婚については,相当厳しい条件が課されています。

つまり,浮気をした有責配偶者は離婚調停を申し立てることはできますが,話合いが奏功しない場合には,その時点では離婚をすることが極めて難しいと考えた方がよいでしょう。

その意味で,浮気をした側からの離婚調停の申立てについては慎重になる必要がありそうです。

浮気の証拠なしでも,離婚調停を申し立てることができるのか?

次に,浮気の証拠がない場合でも,浮気に気付いた当事者は離婚調停を申し立てることができるのでしょうか。

これも,結論としては,申し立てることができます。

そして,協議の結果,相手方が離婚に応じるのであれば,調停が成立することもあるでしょう。

ただし,以下の点に注意が必要です。

不倫による慰謝料が認められない可能性がある

相手方が離婚に応じるにせよ,浮気の証拠がない以上,浮気については認めないとの対応をされることもあり得るでしょう。
その場合,相手方は浮気に関する慰謝料を支払わないとの態度を示す可能性が高いですから,離婚に至ったとしても,不倫の慰謝料が認められないおそれがあります。

訴訟に至った場合,離婚できないおそれがある

さきほども説明したとおり,訴訟においては,民法770条1項各号が定める離婚事由が存在することが認められなければ,離婚が認められません。
そのため,浮気の証拠がなければ,「不貞行為」があると認められない可能性も高く,その結果,裁判所が離婚事由なし(つまり,離婚はできない)との判断をするおそれがあるのです。

浮気をされたとしても,怒りのあまり証拠なしに,離婚調停を進めた結果,進むことも戻ることもできないような事態に陥ってしまうおそれがあるのです。

浮気を原因とする離婚調停で話し合われる主な内容

浮気を原因とする離婚調停で話し合われる主な内容これまでは,離婚調停の申立てについて説明をしてきました。
では,実際に離婚調停が開始された後,どのような内容が話し合われるのでしょうか。

中心的な協議事項を確認してみましょう。

  • 離婚をするか否か
  • 慰謝料が発生するか否か
  • 親権

離婚をするか否か

まずは,中心となるテーマとして双方が離婚についてどのように考えているのかを確認することになります。

両者が離婚については(条件次第で)応じるとの意向であれば,話合いを継続することになりますが,どちらか一方が,離婚はしないとの確定的な意向を持っていれば,話合いを継続できず,調停が不成立となります。

慰謝料が発生するか否か

浮気や不倫を理由に離婚調停に進む場合には,慰謝料が発生するか否か,またその金額についても協議の対象となるでしょう。

浮気や不倫の事実について争いがなければ,慰謝料が発生する方向で話合いを進めることが容易だと思います。

他方で,浮気や不倫の事実そのものが争われる場合には,浮気・不倫の証拠が重要になります。この場合には,適切に証拠を示すことで,調停委員に正しく事案を認識してもらい,相手方を説得してもらうことが重要です。

親権

親権についても協議の対象となります。
親権者がどちらになるのか話合いで決められに場合には,調停が不成立となります。

 

浮気で離婚調停をする前に確認するべき3つのポイント

浮気で離婚調停をする前に確認するべき3つのポイントこれまで説明したとおり,離婚調停の申立書は比較的容易に作成できます。
また,証拠がない場合や有責配偶者からであっても,協議が上手く進めば,離婚に至る可能性もあります。

このように,離婚調停は,申立てのハードルが低く,利用しやすい手であるように思います。

しかし,話合いの場である以上,離婚調停が不成立となる場合も当然に存在します。
そのため,きちんと見通しや方針を検討しておかなければ,身動きがとれないような事態に陥ってしまいます。

そのため,離婚調停をする前に,きっちりと確認しておくべきポイントがあります。

調停前に確認すべき3つのポイント
  1. 浮気の証拠があるのかどうか
  2. 浮気が離婚原因となり得るものなのかどうか
  3. 慰謝料額がどの程度なのか

浮気の証拠があるのかどうか

まず,浮気の証拠があるのかどうかです。

浮気の証拠がなくても,離婚調停をすることは可能です。
しかし,浮気の証拠がなければ,慰謝料請求は難しいといえます。

また,浮気をした配偶者が離婚に応じてくれるのであれば問題にはなりませんが,
離婚に応じない場合には,訴訟に進む可能性を視野に入れておく必要があります。
そして,訴訟に進むのであれば,民法が定める離婚事由が存在しなければ,離婚できないおそれもあるのです。

浮気が離婚原因となり得るものなのかどうか

仮に,浮気の証拠があるとしても,それが民法上の「不貞行為」の証拠として評価できるのかどうかという点もポイントです。

たとえば,親しいやり取りをしているLINEやメールや,食事に行ったという事実だけでは,不貞行為(一般的には肉体関係やそれに類似する関係を指すと考えられています)の証拠とは言い難いでしょう。

つまり,浮気の証拠と不貞行為の証拠は必ずしもイコールではないのです。

そして,「不貞行為」の証拠と評価される証拠がなければ,1つ前の項目でもお伝えしたとおり,離婚訴訟に進んだ場合に,離婚できないリスクがあるのです。

慰謝料額がどの程度なのか

最後に,自身が持っている証拠を前提に,どの程度の慰謝料が認められるのか,おおよその金額を把握しておく必要があります。

慰謝料は,幅のある概念ですので,ある程度幅をもって慰謝料額を把握しておくことが肝要です。

離婚調停において,実務上,相当とされる慰謝料額を大きく上回る金額を提示しても,相手方が応じる可能性は乏しく,話合いでの解決が困難になるおそれすらあります。

他方,相手方からの提示が低廉な額にとどまったとしても,慰謝料額の見通しがなければ,その低廉な金額を了解してしまうかもしれません。

したがって,適切に離婚調停を進めていくためにも,自身が確保した証拠を前提に,妥当な慰謝料額がどの程度かを把握しておく必要があるのです。

離婚調停中に浮気が発覚したら?

離婚調停中に浮気が発覚したら?これまでは,浮気が発覚した後,離婚のために離婚調停を利用する場合を念頭において説明をしてきました。

最後に,これとは逆で,既に離婚調停中の夫婦間において,離婚調停中に配偶者の浮気が発覚した場合はどうでしょうか。

配偶者への対応

まずは,調停中の配偶者への対応について考えてみます。

以下のとおり,場合分けが必要です。

既に離婚自体は合意に至っている場合
既に,調停において離婚自体については合意に至っている場合には,原則として,婚姻関係は破綻していたものと考えられます。

その結果,特に,この不貞は慰謝料請求の対象とはならず,不倫をした当事者も有責配偶者とは評価されないだろうと考えます。

離婚調停中ではあるが,離婚自体の合意がない場合
離婚調停中ではあるものの,離婚自体の合意がない場合には,いまだなお,婚姻関係が破綻には至っていないと評価される可能性があります。

したがって,不貞慰謝料の請求があり得ます。

離婚調停前からの不貞関係であった場合
浮気,不貞の発覚が離婚調停中のことであったとしても,その浮気・不倫が離婚調停前から続いているものであれば,答えは変わるでしょうか。

結論として,不貞を開始した時点で,婚姻関係が破綻していたのであれば,請求は認められず,破綻に至っていなければ慰謝料請求が認められる方向となるでしょう。

浮気相手への対応

離婚調停中に浮気が発覚した場合,浮気相手への対応は,どうすればよいでしょうか。

基本的には,配偶者への対応と同様に,場合分けをして考える必要があります。
つまり,婚姻関係が破綻していたと評価できるか否かが決定的に重要な事項です。

ただ,浮気相手の場合には,実際には婚姻関係が破綻していないと評価される場合であっても,浮気相手自身が,婚姻関係破綻を過失なく信じていたと主張立証できた場合には,責任を免れる可能性があり,この点が配偶者への対応との相違点です。

まとめ

今回は,浮気が発覚した場合の離婚について,離婚調停手続を中心に説明をしてきましたが,いかがだったでしょうか。

離婚調停を申し立てることは比較的容易ですが,その後の見通しも考慮した慎重な対応が必要と考えます。
そして,そのためには,証拠の評価や想定される慰謝料額の把握など専門的な判断も不可欠です。

浮気による離婚調停を考えた場合には,あまり結論を急ぎすぎることなく,まずは専門家である弁護士のアドバイスを受けることをおすすめいたします。

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