刑事事件で逮捕されたら99.9%有罪?回避を目指すためにできること
最終更新日: 2023年11月29日
- 刑事事件で逮捕されたら99.9%有罪というのは本当なのか
- 刑事事件で被疑者になっても逮捕回避ができるのか
- 逮捕回避を目指すためにできることを知りたい
刑事事件で逮捕されたら、ほぼ有罪になってしまうというのは本当なのでしょうか。本人や家族が刑事事件の被疑者になってしまった場合、有罪になってしまうのか不安に思っている方は多いでしょう。
そこで今回は、刑事事件に精通している専門の弁護士が、刑事事件における有罪率や逮捕後の流れ、逮捕を回避するためにできることについて解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 裁判確定における有罪率は99.80%
- 刑事事件で被疑者になっても逮捕回避は可能
- まずは刑事事件での対応実績が豊富な弁護士に相談することが大切
逮捕後の刑事裁判での有罪率は99.9%?
まずは逮捕後の刑事裁判での有罪率について実際に99.9%なのか、犯罪白書の統計データで確認していきます。
令和4年版犯罪白書によると、通常第一審における有罪率は99.25%となっています。
- 総数 48,537人
- 有罪 48,175人(99.25%)
- 無罪 91人(0.19%)
- その他 271人(0.56%)
出典:令和4年版犯罪白書 「通常第一審における終局処理人員(罪名別、裁判内容別)」2-3-3-1表(令和3年の統計)|法務省
また、裁判確定における有罪率は、99.80%という高い確率を示しています。
- 総数 46,342人
- 有罪 46,248人(99.80%)
出典:令和4年版犯罪白書 裁判確定人員の推移(裁判内容別)」の2-3-2-1表(令和3年の統計)|法務省
刑事事件での逮捕の種類
刑事事件での逮捕の種類について3つ解説します。
- 現行犯逮捕
- 通常逮捕(後日逮捕)
- 緊急逮捕
1つずつ解説します。
現行犯逮捕
1つ目は、現行犯逮捕についてです。
現行犯逮捕とは、現に罪を行っている、あるいは行い終わった直後の者(現行犯人)の場合に逮捕状がなくても逮捕できることをいいます。
現行犯逮捕の性質上、捜査機関に限らず私人でも逮捕できます。
現行犯逮捕については、「犯罪」が行われたことおよび被逮捕者が「犯人」であることが、逮捕者にとって明白であること(犯罪及び犯人の明白性)が必要です。
通常逮捕(後日逮捕)
2つ目は、通常逮捕(後日逮捕)についてです。
通常逮捕(後日逮捕)とは、検察官、検察事務官または警察官が裁判官からあらかじめ逮捕状の発付を受けて被疑者を逮捕することをいいます。
逮捕状の請求を受けた裁判官は、逮捕状請求書および疎明資料に基づき逮捕の要件の存否を審査し、審査の結果、逮捕の理由があると認めた場合には逮捕状を発付します。
通常逮捕(後日逮捕)の要件としては、「逮捕の理由」と「逮捕の必要」とがともに備わっていなければなりません。
「逮捕の理由」とは、「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」です。また裁判官は、明らかに逮捕の必要がないと認めるときは請求を却下します。
「逮捕の必要」については、被疑者が逃亡したり、罪証を隠滅するおそれがある場合は逮捕が必要だと判断されます。
緊急逮捕
3つ目は、緊急逮捕についてです。
緊急逮捕とは、一定以上の重大な罪の嫌疑が高い場合に、まず被疑者の身柄を確保した上で直ちに裁判官の逮捕状を請求することです。
緊急逮捕は、通常逮捕(後日逮捕)の場合よりも要件が加重されます。具体的には、対象犯罪が「一定の重大な罪」に限られている他に、高度な嫌疑である「充分な理由」が要求され、裁判官に逮捕状を求めることができないほどの「緊急性」が必要とされます。
刑事事件で逮捕された後の流れ
刑事事件で逮捕された後の流れについて5つ解説します。
- 警察による取り調べ
- 検察への送検
- 勾留
- 起訴・不起訴の処分
- 刑事裁判
1つずつ解説します。
警察による取り調べ
1つ目は、警察による取り調べについてです。
まず警察官は、逮捕した被疑者に対してすぐに犯罪事実についての要旨を説明し、同時に弁護人を選任できる旨を伝えて弁解の機会を与えなければなりません。その上で、弁解録取書を作成します。この弁解録取の手続きは、取り調べとは異なります。
警察官は、被疑者の逮捕期間中も、被疑者の取り調べを行うことができ、その取り調べを行った場合には、供述調書を作成します。
検察への送検
2つ目は、検察への送検についてです。
警察官は、被疑者に対して留置の必要があると判断した場合は、被疑者が身体を拘束されたときから48時間以内に検察官に送致する手続きをとります。この手続きを「送検」と呼びます。
検察官は、警察官から送致された被疑者を受け取ると弁解の機会を与えます。捜査を進める上で引き続き被疑者の身柄の拘束が必要であると判断した場合には、被疑者を受け取ったときから24時間以内、かつ最初に被疑者が身体を拘束されたときから72時間以内に、被疑者の勾留を裁判官に請求します。
勾留
3つ目は、勾留についてです。
裁判官は、検察官の勾留請求を受け、被疑者に勾留質問を行った上で当否を審査します。被疑者に罪を犯した疑いがあり、かつ、住居不定・罪証隠滅のおそれ・逃亡のおそれのいずれかがあった場合、裁判官は勾留の必要があると判断して勾留状を発付します。
被疑者の勾留期間は10日間ですが、やむを得ない事情がある場合は、検察官の請求により、裁判官が更に10日間以内で勾留期間の延長を認めることもあります。
起訴・不起訴の処分
4つ目は、起訴・不起訴の処分についてです。
検察官は、原則として10日間の勾留期間内、あるいは勾留期間が延長された場合にはその勾留期間内で、起訴・不起訴の判断をしなければなりません。
検察官は、受理した事件の被疑事実について、的確な証拠に基づき有罪判決を得られる見込みが高い場合、原則として起訴することになります。
一方で、検察官は、起訴しない場合には被疑事実について、「嫌疑なし」「嫌疑不十分」「起訴猶予」などの理由で、不起訴の処分をします。
刑事裁判
5つ目は、刑事裁判についてです。
検察官が起訴することを相当と考え、裁判所に起訴状を提出し、公訴を提起すると、刑事事件の裁判手続きが開始されます。被疑者は、起訴されることで被告人になります。
刑事裁判の手続きは、大別して、
- 冒頭手続き
- 証拠調べ手続き
- 弁論手続き
- 判決宣告手続き
からなります。
冒頭手続き | 被告人かどうかを確認する人定質問、起訴状の朗読、黙秘権などの権利告知、被告人および弁護人の被告事件についての陳述がなされます。 |
証拠調べ手続き | 検察官が冒頭陳述をし、事件の全貌と審理の対象を明らかにします。被告人側も冒頭陳述を行う場合もあります。 検察官が取り調べを請求し、被告人側の意見を聴いて裁判所が採用した証拠を取り調べます。 検察官の立証の後に、被告人側が取り調べを請求し、検察官の意見を聴いて裁判所が採用した証拠を取り調べます。最後に、被告人質問が行われます。 |
弁論手続き | 検察官が、事件に対する事実面・法律面の意見を述べます(論告)。その中でいわゆる刑の重さに関する意見「求刑」も述べます。 それに対して弁護人は、被告人の立場から見た事件に対する事実面・法律面の意見を述べます。最後に、最終陳述で被告人が事件についての意見を述べます。 |
判決宣告手続き | 裁判所が判決の言い渡しをします。起訴事実が刑罰法令に触れるときは、有罪判決が言い渡され罪とならないとき、または犯罪の証明がないときは無罪判決が言い渡されます。 |
刑事事件で被疑者になっても逮捕回避可能か?
刑事事件で被疑者になっても逮捕回避は可能です。逮捕回避について理解するために以下の2つを解説します。
- そもそもなぜ逮捕されるのか?
- 逮捕されなかったらどうなるのか?
1つずつ解説します。
そもそもなぜ逮捕されるのか?
1つ目は、そもそもなぜ逮捕されるのかについてです。
逮捕する理由は、「被疑者には逃亡のおそれがある」「被疑者が証拠隠滅する可能性がある」と判断され、それらを防止するためです。
ただし、例外的に30万円(刑法犯等以外は2万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる軽微な事件での罪においては、強制的な処分である逮捕ができる場合は制限されています。
逮捕されなかったらどうなるのか?
2つ目は、逮捕されなかったらどうなるのかについてです。逮捕しない場合の処理として、在宅捜査と書類送検があります。
在宅捜査
被疑者に逃亡のおそれも証拠隠滅のおそれもない場合は、在宅捜査になります。
在宅捜査とは、被疑者が身体の拘束を受けない状態で、捜査が行われることをいいます。
在宅捜査では、被疑者は基本的に事件以前と変わらず、普段通りの生活を送ることができ、学校に通ったり、会社にも行くことが可能です。また、被害者のいる犯罪では、被疑者は被害者と示談交渉を進めることもできます。
書類送検
いわゆる「送検」とは、警察が捜査した事件を検察官に送ることです。「送検」はマスコミ用語で、刑事訴訟法では「検察官送致」といいます。
書類送検とは、被疑者を逮捕しない場合や逮捕後に釈放した場合に、犯罪の捜査で収集した書類および証拠物のみで事件を検察官に送ることをいいます。
刑事事件で逮捕回避を目指すなら弁護士に相談がおすすめ!
刑事事件は、罪質・態様・結果の重大性等によっては、証拠隠滅や逃亡のおそれがあるため、逮捕して身柄を確保する必要性が高い事犯があるのも事実です。
しかし、刑事事件では6割を超える人が逮捕回避をしているのが事実です。
- 刑法犯と特別法犯を合計した総数 271,489人
- 逮捕された者 99,331人(36.6%)
- 逮捕されなかった者 172,158人(63.4%)
出典:令和4年版検察統計年報「 罪名別 既済となった事件の被疑者の逮捕及び逮捕後の措置別人員―自動車による過失致死傷等及び道路交通法等違反被疑事件を除くー」統計表(令和3年の統計)|法務省
刑事事件であっても逮捕回避を実現することは可能です。逮捕回避を目指すなら、事件を起こした早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
まとめ
刑事事件を起こしたとしても必ず逮捕されるとは限りません。しかし、被疑者本人や家族の力だけで逮捕を回避するには限界があります。
刑事事件に関する被疑者の逮捕を回避できる可能性はありますので、お悩みの方はぜひ一度専門の弁護士にご相談ください。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。