サイバーセキュリティ基本法 解説:企業が知っておくべき法的責任とリスク対策のポイント
2025年12月09日

デジタル化が進む現代社会では、企業を取り巻くサイバーセキュリティの脅威が年々深刻化しています。サイバー攻撃や情報漏えいが発生すれば、技術的な問題にとどまらず、企業の信用や顧客情報、さらには事業の継続性にも重大な影響を及ぼします。
こうした背景のもと、企業が取り組むべき基本的な枠組みを定めているのが「サイバーセキュリティ基本法」です。本法は、国全体のサイバーセキュリティ施策を支える重要な法律であり、企業の法務対応においても理解が欠かせません。
本コラムでは、サイバーセキュリティ基本法の概要を解説するとともに、企業が留意すべき法的責任や、弁護士によるサイバーセキュリティ 法務支援の一般的な内容について説明します。
サイバーセキュリティ基本法 解説:制定の目的と基本理念
サイバーセキュリティ基本法は、2014年(平成26年)に制定され、日本全体のサイバーセキュリティを総合的かつ効果的に推進することを目的としています。
法律の第3条では、次のような基本理念が掲げられています。
- 情報の自由な流通を前提とすること
- 官民が連携し、積極的にセキュリティを確保すること
- 国民一人ひとりが重要性を認識し、自主的に対応すること
- 国際的な協調のもとで施策を進めること
このように、サイバーセキュリティは国家や一部の機関に限らず、社会全体で取り組むべき責務と位置づけられています。
企業に課される「努力義務」と法的リスク
サイバーセキュリティ基本法は、国や重要インフラ事業者に対して明確な責務を定める一方で、民間企業(事業者)にも「努力義務」を課しています(第6条、第7条)。
事業者は、サイバーセキュリティの重要性を理解し、その確保に努めるとともに、国や地方公共団体の施策に協力するよう努めなければならない。
この努力義務は、業種や規模を問わず、すべての企業に適用されます。
努力義務を怠った場合に考えられるリスク
「努力義務」という表現であっても、実質的には軽視できない法的責任を伴う可能性があります。
損害賠償責任の増加
情報漏えいなどが発生した場合、基本法上の努力義務を怠っていたと判断されると、損害賠償請求において過失の有無を判断する重要な要素となる場合があります。
信用の失墜
セキュリティ体制の不備が原因で社会的信用を損なうこともあります。
他の法令違反への波及
個人情報保護法、不正競争防止法、刑法など、他の法令違反に発展する可能性もあります。
弁護士によるサイバーセキュリティ 法務支援の役割
サイバーセキュリティ対策というと技術的な防御を想像しがちですが、法務の観点からの備えも不可欠です。情報処理安全確保支援士などの資格をもつ専門弁護士は、法律や契約関係、組織体制の整備といった側面から、企業がリスクを未然に防ぐ支援を行います。
弁護士が一般的に行う支援内容
法的リスクと体制の点検
サイバーセキュリティ基本法や個人情報保護法などの法令に基づき、企業の現行対策が適法かどうかを確認し、改善点を提案します。
契約・規程類の整備支援
取引先との契約書におけるセキュリティ条項の見直し、社内規程(情報セキュリティポリシー、インシデント対応マニュアルなど)の策定を法務の観点から支援します。
インシデント対応に関する助言
サイバー攻撃や情報漏えいが発生した際には、被害拡大防止、行政機関への報告、顧客・取引先への通知など、法的観点から適切な対応を助言します。
よくある質問(FAQ)
Q:サイバーセキュリティ基本法は中小企業にも関係ありますか?
A:はい。企業の規模にかかわらず、すべての民間事業者に努力義務が課されています。サプライチェーン全体の安全性を確保するためにも、中小企業が対策を怠ることは社会的な影響を及ぼすおそれがあります。
Q:サイバーセキュリティ対策の法務とは、具体的にどんな内容ですか?
A:「予防」と「事後対応」の二つの側面があります。
予防
各種契約書、規程の整備、組織的・技術的なセキュリティ対策を実施すること。
事後対応
インシデントが発生した際、行政報告や通知、損害賠償対応などを法的に適切に行うことです。
Q:弁護士に相談するとどんなメリットがありますか?
A:技術的対策ではカバーしきれない法的リスクの把握・軽減が可能です。損害賠償や契約違反、行政処分などのリスクを最小限に抑えるため、技術と法務の両面からセキュリティ体制を強化できます。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。




