失踪で離婚を進める方法とは?必要な条件と手続きを詳しく解説

最終更新日: 2024年11月08日

失踪で離婚を進める方法とは?必要な条件と手続きを詳しく解説

  • 配偶者が何年も行方不明のままだ、現在は離婚を検討している
  • 配偶者の失踪が原因で離婚を進めるときの条件について知りたい
  • 配偶者の失踪が原因で離婚を進めるとき、事前に弁護士へ相談した方がよいのだろうか?

配偶者が何年も行方不明の場合に、あなたの申し立てで離婚が可能なケースがあります。

ただし、配偶者の失踪を理由としたケースで離婚手続きを円滑に進めたいなら、条件をよく確認しておく必要があります。

そこで今回は、離婚問題の解決に携わってきた専門弁護士が、失踪による離婚手続きを進める方法、失踪が原因で離婚するときの注意点等を詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • 失踪が原因で離婚するには、配偶者が3年以上生死不明、悪意の遺棄等いずれかの条件に該当する必要がある
  • 失踪が原因で離婚する場合、離婚訴訟を提起し、離婚手続きを進める必要がある
  • 離婚問題に詳しい弁護士からアドバイスやサポートを受け、離婚の手続きを進めよう

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

失踪で離婚できる条件

失踪が原因で離婚したい場合は、一定の期間を経過している、配偶者が失踪したままでは婚姻が継続できない等、いずれかの条件に該当する必要があります。

配偶者が行方不明の場合は、離婚できる条件に当てはまる状況であるかをよく確認しましょう。

出典:民法|e-GOV法令検索|法務省

3年以上の生死不明

配偶者が生きているかどうか、3年以上明らかでないケースが該当します(民法第770条第1項第3号)。

次のような場合は、3年以上の生死不明には該当しません。

  • 居場所はわからないが、自分とメールや電話で連絡が取れる状態である
  • 配偶者が親族や友人・知人の誰かと会ったり、連絡を取ったりしている
  • メールや電話で連絡は取れないが、自分以外の親族や知人、友人が3年以内に配偶者を目撃した

配偶者と3年以上会わずに連絡も取れないと、焦ってしまうことでしょう。

しかし尚早な判断は避け、配偶者の親族や友人・知人等に、3年以内に配偶者と面会したり、連絡を取ったりしたかどうか、慎重に確認する必要があります。

失踪宣告

失踪宣告後に婚姻解消の手続きを行えば、離婚と同様の状態にできます。

ただし、失踪宣告をするには配偶者の失踪後7年が経ってから、家庭裁判所に申し立てなければいけません(民法第30条)。

なお、配偶者が地震・津波等の大きな天災に遭った場合、例外として生死不明から1年で失踪宣告を行える可能性があります。

失踪宣告後は、配偶者は死亡扱いになるので、遺産相続手続きや別の相手との再婚も可能性です。

悪意の遺棄

配偶者の生死が3年以上不明である場合だけでなく、配偶者からの「悪意の遺棄」と認められれば離婚は可能です(民法第770条第1項第2号)。

「悪意の遺棄」とは次のような行為が該当します。

  • あなたや子どもに生活費・養育費等を全く渡さない
  • 健康なのに働きもせず、ギャンブルにはまっている
  • やむを得ない理由がないのに、同居を拒否したり、家に寄りつかなかったりする 等

ただし、あなたと会ったり連絡が取れなかったりしても、配偶者から毎月定期的にまとまったお金の振込があるという場合は、悪意の遺棄に該当しない可能性があります。

婚姻を継続し難い重大な事由

すでに夫婦関係は破綻しており、今後修復できる見込みがない場合、「婚姻を継続し難い重大な事由」と判断されるケースもあるでしょう(民法第770条第1項第2号)。

3年以上失踪している状態でなく、一応メールや電話で連絡はあるものの、配偶者が「もうあんな家には二度と帰らない」「すでに別の家を購入したためそこへ住む」等と発言し、配偶者本人に帰宅の意思が全くない場合が該当します。

メールや電話で連絡が取れる状態ならば、夫婦間で何とか話し合いを行い、離婚の合意を図った方がよいでしょう。

失踪と不貞行為が絡む場合の離婚

配偶者が家に帰らず連絡も取れなくなり、失踪の心配をしていたが、実は不倫相手の家で生活していた、というケースもあります。

不倫は不貞行為に当たるので、あなたは離婚の訴えを提起できます(民法第770条第1項第1号)。

ただし、離婚の訴えを提起できる場合でも、家庭裁判所の調停を経ておかなければいけません(調停前置主義)。

あなたが調停を申し立て、家庭裁判所から配偶者に呼び出しの通知をしても、無断で欠席を繰り返したならば、調停不成立となり訴訟提起が可能です。

家庭裁判所で離婚訴訟を行いますが、あなたに有利な判決を受けるためには、不貞行為の証拠を掴む必要があります。

配偶者と不倫相手の性行為画像・動画や、2人でラブホテルや不倫相手宅へ出入りする画像・動画等の撮影に成功すれば、裁判官から有力な証拠と認められる可能性が高いです。

離婚前に失踪した配偶者を調査する方法

離婚前に失踪した配偶者を何とか探し出したいときは、まず配偶者の親族・友人等に居場所を尋ねてみましょう。

たとえ配偶者があなたと会いたくなくとも、周囲からの説得で面談や連絡を取れる可能性があります。

配偶者の親族・友人等も居場所がわからない場合は、探偵事務所に調査を依頼しましょう。

探偵の中には警察OBも多く、培ってきた経験や独自の情報網で、配偶者を発見できる可能性があります。

ただし、調査期間・調査人数によっては調査費用が高額となり、100万円〜数百万円に達する場合もある点に注意が必要です。また、配偶者が成人であっても何らかの事件に巻き込まれたおそれがあるなら、警察に相談し「行方不明届」を提出しましょう。

提出すれば「行方不明者データベース」に登録されるので、全国の警察に情報が共有されます。行方不明届が受理されたら、配偶者の発見に役立つことでしょう。

失踪で離婚するときの手続き

3年以上配偶者が失踪した状態のまま離婚手続きに進む場合、もはや夫婦で話し合うことは不可能です。

そのため、配偶者との協議や調停を省略し、家庭裁判所に離婚訴訟を提起します。

離婚訴訟の提起

原則として、夫または妻の住所地を受け持つ家庭裁判所に、離婚訴訟を提起します。

離婚訴訟を提起するときは、主に次の書類が必要です。

  • 訴状:2部
  • 夫婦の戸籍謄本とそのコピー
  • 源泉徴収票、預金通帳等の証拠書類のコピー:2部
  • 収入印紙、切手

また、配偶者が失踪しているため、「公示送達」の申立ても同時に行います。公示送達とは、裁判所の掲示板に掲示し、訴訟相手(配偶者)に送達した扱いとする方法です。

公示送達を行えば訴訟相手が欠席していても、支障なく手続きが進められます。

なお、離婚訴訟の提起自体は申立人本人だけで行えるので、弁護士を代理人にしていなくとも構いません。

ただし、弁護士のサポートがあれば、書類の作成や手続きをスムーズに行えます。

尋問

訴状を提出してから約1か月後に「第1回口頭弁論」が開かれます。

まず裁判官が問題の争点を整理し、原告であるあなたには失踪の事実を証明する証拠の提出が求められます。

失踪に関する証拠となり得るのは次の書類です。

  • 警察への行方不明届
  • 配偶者の親類や友人、知人や同僚等の陳述書
  • 住民票が失踪前から動いていない証明となる書類
  • 配偶者の携帯電話の契約内容が、失踪前から変更されていないことを証明する書類

被告である配偶者が失踪している場合、訴状陳述・書証取調べの後、すぐに本人尋問が行われます。あなたは「陳述書」を事前に用意し尋問へ臨みます。

原告であるあなたが真実を主張し、それを裏付ける証拠書類を提出しているなら、裁判所は離婚を相当と判断することになるでしょう。尋問は1時間もかからずに終了します。

判決

第1回口頭弁論の日に弁論終結となり、判決期日は1〜2か月後に指定されます。

判決期日に裁判所から判決が言い渡され、判決書は原告であるあなたの代理人(弁護士)の事務所に送達されます。

送達後2週間は被告の控訴期間となるものの、期間内に控訴されるケースはほんどないといえます。2週間が経過すれば判決は確定します。

あなたは判決が確定してから10日以内に、離婚届を市町村役場に提出しなければいけません。離婚届の他、次の書類が必要です。

  • 判決謄本
  • 確定証明書
  • 本籍地以外の市町村役場に提出するなら従前の戸籍謄本

失踪で離婚するときのポイント

配偶者の失踪が原因で離婚手続きを行い、離婚成立後にあなたが必要と感じたら、配偶者に慰謝料や養育費の請求もできる場合があります。

ただし、請求する前に配偶者の住所を特定しておかなければいけません。

慰謝料請求

探偵の調査活動等で配偶者の住所を特定できたら、慰謝料請求が可能です。失踪が原因で離婚に至った責任を金銭で償わせます。

ただし、離婚の成立日から3年以内に慰謝料を請求しなければいけません。協議がうまくいかない場合は、審判の申立てや裁判で解決を図っていきます。

養育費請求

離婚成立後、配偶者の住所を特定できたら子どもの養育費の請求も可能です。

養育費の場合、経済的に自立していない子どもがいる限り時効はなく、いつでも請求できます。

養育費の支払額は裁判所が公表している「養育費・婚姻費用算定表」を参考にしながら、あなたが養育する子どもの数・年齢を考慮し、請求額を決めても構いません。

配偶者と養育費の話し合いがつかなければ、家庭裁判所で養育費請求調停・審判を申し立て、問題の解決を図ります。

離婚後の生活設計

離婚後どのように生計を立てていくのか、よく検討しておく必要があります。

次のような生活設計を考えておきましょう。

  • 安定した収入を得る:あなたが専業主婦(主夫)・パート従業員なら、正社員になるための就職活動
  • 経済的な困窮を避ける:生活保護制度の利用条件をチェックする
  • 子どもの困窮を避けたい:児童手当・児童扶養手当の給付条件の確認
  • 当面の生活資金の確保:配偶者への養育費請求等

専門弁護士への相談

離婚問題の解決に実績豊富な弁護士へ、失踪を原因とする離婚手続きの方法、離婚後の生活設計に関するアドバイスを受けるのもよい方法です。

弁護士はあなたの相談をヒアリングし、離婚手続き等に最適なアドバイスを提供します。

  • 失踪を原因とする離婚手続きの進め方
  • 配偶者の居場所を調査する方法
  • 配偶者の居場所が判明した場合の慰謝料・養育費の請求方法 等

離婚訴訟では弁護士のサポートが不可欠ですが、訴訟前からサポートを依頼すれば、離婚手続きを円滑に進められます。

失踪で離婚を考えたらまず無料相談

今回は離婚成立に尽力してきた専門弁護士が、失踪を原因とする離婚手続きの方法や、条件等について詳しく解説しました。

法律事務所の中には、無料で初回の相談サービスに対応しているところもあります。まずは気軽に相談し、配偶者が失踪した事実を伝え、今後の対処方法を話し合いましょう。

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