モラハラで離婚するには?専門弁護士が解説

最終更新日: 2023年12月12日

    • モラハラでの離婚は可能なのか
    • モラハラで離婚する方法は?
    • モラハラでの離婚を考えたときにやるべきこと

モラハラは目には見えにくい被害の1つといわれています。モラハラをされている本人にも、自分がされていることがモラハラだと気づいていない場合もあるのです。

モラハラをされている本人は、自分が我慢すればいい、耐えられないのは自分に我慢がたりないから、などと自分を犠牲にしてしまい、心身ともに疲弊させてしまう傾向があります。

モラハラは我慢するべきことではなく、離婚という決断をして、相手と距離を置くことを検討してもよいといえるでしょう。

そこで今回は、モラハラで離婚するための基礎知識・方法・必要な準備について解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • モラハラでの離婚は、相手も合意すればできる。できない場合は調停・裁判へと発展する可能性もある
  • モラハラで離婚する主な方法は「協議離婚」「調停離婚」「審判離婚」「離婚裁判」の4つ
  • モラハラでの離婚を考えているなら、「証拠を確保する」「家を出る準備をする」「弁護士に相談する」の3つが大切

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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モラハラによる離婚が増えています

そもそも「モラハラ」とはどのような特徴があるのでしょうか。ここでは、家庭内におけるモラハラについて、以下の3点から詳しく解説します。

    • 直接的な被害が分かりにくい
    • されている側・している側の本人が気づけない
    • 相談する相手がいない

1つずつ、見ていきましょう。

直接的な被害が分かりにくい

家庭内におけるモラハラの特徴の1つ目は、直接的な被害が分かりにくいことです。

モラハラは、暴力とは違い外見上に跡が残りません。そのため第三者から見てもわからない場合があります。また、被害者は、その場の空気を読んだり、相手の機嫌を損ねないようにしたりすることが上手、という特徴があり、被害が顕在化しない傾向があるのです。

被害者は、加害者の機嫌が悪くならないよう、また、雰囲気を壊さないために、加害者に言いたいことを言わずに自分の中にため込んでしまいます。

その結果、被害の実態がわからないまま1人で悩みを抱え続ける傾向があります。

されている側・している側の本人が気づけない

家庭内におけるモラハラの特徴の2つ目は、されている側・している側の本人が気づけないことです。

モラハラをする加害者は「自分は正しい」と思い込んでいる場合が少なくありません。また、被害者よりも優位な立場でいたいと思っていることもあるため、常に被害者を自分より下に見ることがあります。このような行為がモラハラだとは、加害者は気づかない傾向にあるのです。

また、モラハラをされている側も、自分に自信がなくて自己主張を苦手としていたり、真面目で謙虚なタイプの場合が多く、モラハラの加害者の言っていることを真に受けて、「自分はダメな人間なんだ」「自分ができないから言われるんだ」と自分を責めてしまう傾向があります。

これらの理由から、されている側・している側の双方がモラハラだとは思っていない可能性があります。

相談する相手がいない

家庭内におけるモラハラの特徴の3つ目は、相談する相手がいないことです。

暴力と違い、モラハラは表面化しにくいといえます。家庭内のモラハラの特徴としては、モラハラの加害者は外面がよいことが多いため、第三者からは「感じのよい人」と思われている可能性があります。

また、モラハラ加害者は世間体を気にするため、「よい夫(妻)」を演じ切ってしまう傾向があるのです。

そのため、何も知らない第三者に相談しても「まさかあの人が」「それはあなたに非があるのでは」などと思われてしまう可能性があり、結果として誰にも相談できなくなってしまうという悪循環が生まれてしまいます。

モラハラで離婚する方法

モラハラ夫(妻)と離婚を考えたとき、どのような方法で離婚が可能かを知っておく必要があります。ここでは、モラハラ夫(妻)と離婚する方法を、以下の4つの方法から解説します。

    • 協議離婚
    • 調停離婚
    • 審判離婚
    • 裁判離婚

1つずつ見ていきましょう。

協議離婚

モラハラ夫(妻)と離婚する方法の1つ目は、協議離婚です。

協議離婚とは、夫婦が話し合いをして、離婚の合意をすることです。合意したらお互いが離婚届にサインをして、市区町村役場に提出し受理されることで離婚が成立します。

モラハラ夫(妻)との離婚は、加害者は体裁を気にする傾向があるため、話し合いによる合意は難しい傾向があります。また、被害者はうまく伝えることができず、上手にまるめこまれてしまい、結果として離婚に至らないこともあります。

モラハラ夫(妻)に離婚を切り出すと、急に優しくなって謝ってくることもありますが、これも一時的であるという特徴があります。

調停離婚

モラハラ夫(妻)と離婚する方法の2つ目は、調停離婚です。

調停離婚とは、夫婦間での合意が難しい場合に、裁判所に申立てを行い、調停委員の調整によって離婚の合意を目指す手続きです。

調停離婚のメリットの1つとして、お互いが顔を合わせることなく、調停委員が双方の意見を聞いて離婚を調整してくれるため、本音が言いやすいということがあります。

しかし、調停離婚は、双方が調停期日に家庭裁判所へ出頭する必要があり、モラハラの加害者の協力も必要になるため、協力が得られないと調停が不成立となります。

審判離婚

モラハラ夫(妻)と離婚する方法の3つ目は、審判離婚です。

審判離婚とは、調停離婚の手続きにおいて概ね合意ができ、あと一息で、離婚が成立するという場合、裁判所の職権で審判を下すことができる手続きです。「調停に代わる審判」は、家事事件手続法第284条に定められています。

モラハラ夫(妻)との離婚は、「合意」することが難しく、そもそも審判離婚に至らない可能性が高いといえます。

出典:家事事件手続法 | e-Gov法令検索

裁判離婚

モラハラ夫(妻)と離婚する方法の4つ目は、裁判離婚です。

裁判離婚とは、民法第770条に定める「裁判上の離婚」の事由に該当する場合に可能な手続きです。

裁判上の離婚が認められる事由としては、以下の5つがあります。

一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

出典:民法 | e-GOV法令検索

モラハラで離婚するのに必要な準備

モラハラでの離婚を実際にするためには、事前準備が重要です。ここでは、モラハラでの離婚に必要な準備を、以下の3点から解説します。

    • 証拠を確保する
    • 家を出る準備をする
    • 弁護士に相談する

1つずつ見ていきましょう。

証拠を確保する

モラハラでの離婚に必要な準備の1つ目は、証拠を確保することです。

モラハラは目に見えない被害が多いため、証拠を残すことが難しい傾向があります。実際にモラハラをされている状況を動画撮影したり、音声を録音することがおすすめですが、困難な場合も多いでしょう。

撮影・録音が難しい場合は、メールなどに送られてきたメッセージがあれば、それを保存しておくことがおすすめです。メールにあるメッセージによって精神的なダメージを受けてきたということを日記に残すことで、証拠としては効果的といえます。

証拠としてのポイントは、このようなモラハラが「日常的に」行われている、ということを主張することです。モラハラという言葉が近年一般化し、些細なことでもモラハラと主張されることもあるため、頻度が異常であることを明確にすることが重要です。

家を出る準備をする

モラハラでの離婚に必要な準備の2つ目は、家を出る準備をすることです。

モラハラは耐える必要はありません。モラハラに対して言い返すことで、暴力をふるわれる可能性もあり、耐えることや勇気を出して本音を伝えることが身に危険をおよぼす可能性があります。

少しでも早くモラハラ夫(妻)から距離を置き、心身の健康を維持して離婚を進めるだけのエネルギーを温存しましょう。

そのためにも、実家・友人の家など、身を寄せる場所を確保しておくことが重要です。

緊急性が高い場合は、民間団体が運用している「シェルター」の活用もおすすめです。シェルターでは、被害者の一時的な保護に加えて、相談対応・被害者の自立支援など、さまざまなサポートが受けられます。

自身で身を置く場の確保が難しい場合は、シェルターなどの利用も検討するとよいでしょう。

弁護士に相談する

モラハラでの離婚に必要な準備の3つ目は、弁護士に相談することです。

モラハラで離婚をしたいと考えても、相手が話し合いに応じなかったり、離婚を切り出したことでよりモラハラの被害が悪化したりすることも考えられます。

このような場合、離婚を相手に切り出す前にまずは、弁護士に相談することがおすすめです。

弁護士に相談すれば、心身ともに安全な状態で離婚を進めることができるでしょう。また、弁護士が代理で離婚の手続きを進めてくれるため、言いたいことを我慢することなく、相手に伝えられます。

離婚の専門弁護士であれば、多くの事例を経験しているため、円滑に離婚を進めてくれることが期待できます。

まとめ

今回は、モラハラで離婚するための基礎知識・方法・必要な準備について解説しました。

モラハラは受けている側もしている側も当事者であることに気づきにくい傾向があります。そのため、している側は「自分が正しいことをしている」、されている側は「私が我慢しなければならない」と思いこみ、被害が顕在化しないことが少なくありません。

モラハラは、見た目にわからない分、長期化しやすい傾向があり、被害者は心身ともに疲弊してしまう可能性があります。「離婚をする」という決断をするための判断力を失ってしまうことも考えられます。

もしかしたらモラハラの被害を受けているかもしれない、と感じる場合、すぐに専門家に相談するのがおすすめです。少しでも早く加害者から距離を置き、冷静になれる場所と時間を確保することが必要といえます。

離婚の専門弁護士であれば、モラハラ夫(妻)との離婚にも対応してくれます。我慢せず、早めに専門家に相談しましょう。

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