離婚後の住宅ローンの扱いで後悔しないために!選択肢と注意点・対応策を解説
最終更新日: 2025年03月31日
- まだ住宅ローンを返済中だが、離婚後はどのようにすればよいのだろう?
- 離婚後も住宅ローンが残ってしまう。住宅へ住み続けるしかないのだろうか?
- 住宅ローンについて誰に相談すればよいのだろう。
夫婦が離婚するときに直面するのが、これまで住んできた自宅をどうするかという問題です。特に住宅ローンが残っていると、どのように対応すべきか悩むでしょう。
そこで今回は、数多くの離婚問題に携わってきた弁護士が、離婚後の住宅ローンはどうなるか、住宅ローンが残っている場合の選択肢等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談できます。
- 住宅ローンの返済義務を負うのは離婚後もローン名義人である
- パートナーと離婚を協議するとき、住宅ローンの残債も忘れずに確認しよう
- 住宅ローンが残る自宅を売却したくとも、すぐに買い手がつくとは限らない
離婚後の住宅ローンはどうなる?
離婚後も住宅ローンを払い続ける必要がある場合、誰がその義務を負うのか気になるところでしょう。
「名義人」「連帯保証人」「連帯債務者」に分けて解説します。
名義人
住宅ローンの返済義務を負うのは「住宅ローン」の名義人です。
離婚しても住宅ローンの名義人が変わらなければ、ずっと名義人本人は返済し続ける必要があります。
たとえ住宅ローンの名義人が離婚後に家を出ても、その家の所有者や同居人が代わりに返済する義務はありません。
連帯保証人
たとえば、住宅ローンの名義人が夫なら、妻は連帯保証人になっているケースが多いでしょう。
返済義務を負うのは、住宅ローンの名義人ですが、名義人の支払いが滞れば、連帯保証人が代わりにローンを返済しなければなりません。
家を出ていった場合でも連帯保証人である以上、代わりにローンを返済する義務があります。
連帯保証人の責任を免れるには、新たな連帯保証人を立てる必要があります。
連帯債務者
婚姻中、夫婦2人の名前で住宅ローンを組んでいた場合、「連帯債務」となります。
連帯債務では夫婦のどちらかが「主債務者」で、もう1人が「連帯債務者」です。主債務者・連帯債務者は共に支払い義務を負います。
つまり、連帯債務者は住宅ローン名義人(主債務者)と同じく、独立して債務の全責任を負わなければならないのです。
夫婦のどちらかが連帯債務者から外れるには、住宅ローンを引き継ぐ者が再審査を行い、新たなローン契約を締結する必要があります(借り換え)。
その他、新しい連帯債務者と交代するという方法も検討してみましょう。
離婚時に確認すべき住宅ローンの重要項目
離婚を協議するときは、慰謝料や財産分与・子どもの親権等が焦点になりがちです。
しかし、住宅ローンの状況も十分に把握しておかなければなりません。
家の名義人
家の名義人は誰かを確認しましょう。家の名義人と住宅ローン名義人が同じで、離婚後に名義人本人が家に住み続ける場合は、名義人が従来通り返済を進めていきます。
ただし、たとえば家の名義人兼住宅ローン名義人である夫が家を出て、妻が家の名義人となる場合、住宅ローンの返済を誰が継続するか協議しなければなりません。
仮に住宅ローン名義人を妻にすると、新たなローン契約を締結する必要があります(借り換え)。しかし、妻に収入がなければ、審査に落ちてしまう可能性が高いでしょう。
もしも、夫が原因で離婚するのであれば、妻は慰謝料を請求しない代わりに、住宅ローンの返済は引き続き夫に任せるという提案もできます。
夫婦間で後々トラブルとならないよう、双方が納得できる対応を検討しましょう。
残債額
住宅ローンの残債がどれくらいあるのか、確認しておきましょう。
住宅ローンの残債が数万円程度なら、家の名義人が夫婦のどちらであっても、住宅ローンの名義人がそのまま返済を継続した方が無難です。
一方、住宅ローンの残債が相当額残っていても、売却して完済できるのであれば、家の売却を検討してみましょう。
契約内容
住宅ローンの契約条件を慎重に確認する必要があります。
たとえば、家の名義人と住宅ローン名義人は夫になっていて、連帯保証人が夫の父親の場合、家を出ていく妻はローン返済に無関係です。
ただし、ケースによっては次のような対応が必要となります。
- 家を出ていく方が連帯保証人になっていた→代わりの連帯保証人を立てる
- 夫婦2人の名前で住宅ローンを組んだ(連帯債務)→借り換えまたは新しい連帯債務者と交代
- ペアローンを組んだ→借り換えまたは夫婦のどちらか一方が住宅ローンを引き受ける
代わりの連帯保証人や新しい連帯債務者と交代、借り換えによる方法はいずれも、変更する人物に十分な収入がなければ、債権者(金融機関)側は納得しないでしょう。
離婚時に住宅ローンが残っている場合の選択肢
離婚時に住宅ローンが残っていても、いろいろな選択肢があります。
夫婦の希望やそれぞれの経済事情を踏まえ、ニーズに合った方法を選びましょう。
住み続ける
家の名義人と住宅ローン名義人が同じで、離婚後に名義人本人が住み続けるという選択肢です。
ただし、家を出た配偶者が連帯保証人の場合、迷惑がかからないように親族の誰かから、新たな連帯保証人を選んだ方がよい場合もあるでしょう。
一方、住み続ける本人が非親権者の場合、住宅ローンの返済の他に子の養育費も支払う可能性があります。
住宅ローンや子の養育費等の負担が大きければ、親権者に養育費の減額を申し込むか、家の売却を検討してみましょう。
売却する
離婚する夫婦それぞれに実家や新たな住居(賃貸物件等)があるのであれば、ローン付きの住宅を売却し一気に完済する方法も有効な選択肢です。
売却方法は「仲介」「買取」の2種類が考えられます。
- 仲介:不動産会社に仲介を依頼し売却する方法。希望の売却価格で買い手がつく可能性がある。ただし、住宅が市街地から離れていると、なかなか売れない場合もある。
- 買取:不動産会社に買取を依頼する方法。不動産会社が直接購入するので、買い手を探す手間や時間がかからない。ただし、仲介で売るときよりも価格は安くなる傾向がある。
いずれの場合も希望した売却価格で売れず、残債が発生するリスクもあります。
名義人ではない元配偶者が住む
家の名義人・住宅ローンの名義人ではない元配偶者や子どもを住まわせても構いません。
たとえば、なるべく子どもを同じような環境で育成できるように、非親権者の夫が家を出て住宅ローンの返済継続、親権者である妻・子どもが住み続けるケースです。
ただし、家の名義人が依然として夫である以上、いきなり家を売却されてしまうリスクは残ります。
次のような対応が可能か検討してみましょう。
- 夫と協議し家の名義人を妻に変更する(ただし、金融機関の承認や贈与税の問題等を要確認)
- 離婚協議書を作成し、夫が妻に無断で家を売却しないと明記する
離婚時の住宅ローンに関するリスクと注意点
離婚時に住宅ローンをどうするか、夫婦でよく協議しておかないと、後々、深刻なトラブルに発展する可能性があります。
家の名義や住宅ローンの状況をしっかりと把握しておかなければいけません。
支払いが滞る
住宅ローンの名義人や連帯保証人等を変更したいときは、誰が新たに返済義務を負うのか取り決めが必要です。
それ以前に、そもそも、金融機関がローン名義人や連帯保証人等の変更を認めるかといった問題や税務上の問題もあります。
もしも、住宅ローンを誰が払うのかで揉めてしまい、支払いが滞ると、金融機関や保証会社は次のような措置をとるでしょう。
2.一括返済を求められる:滞納が6か月程度続くと、金融機関から住宅ローン残債の一括返済を求められる
3.代位弁済が行われる:一括返済ができなければ、金融機関が保証会社へ返済を請求する
4.競売の申し立て:代位弁済から1か月後、保証会社は競売の申立てを行う
5.競売開始:現況調査や期間入札の公告後、家の競売が開始される
住宅ローンが一括返済されない限り、強制的に手続きは進められるので注意しましょう。
退去を拒む
売却をしたいのに、名義人ではない元配偶者が居座ってしまうおそれもあります。
家の名義人が自分であるときは、それでも売却できます。しかし、なるべく穏便に元配偶者に退去してもらいたいものです。
そのため、離婚協議書を作成し「令和〇年〇月〇日までに当事者双方が退去する」と明記しておきましょう。
口約束だけで済ませると、「約束した覚えがない」と退去を拒否されてしまうかもしれません。
簡単に売却できない
家を夫婦の共有名義で所有しているときは、離婚時に単独名義へ変更することも検討してみましょう。
共有名義のままだと、家の売却時にもう1人の名義人の同意が必要となります。そのため、単独名義に変更しないと次のようなトラブルが発生するかもしれません。
- 元配偶者と連絡がつかなくなり同意を得られない
- 元配偶者が嫌がらせ目的で同意を拒否している
話し合って離婚条件にお互いが納得したら、迅速に単独名義への変更を検討した方がよいです。その場合、税法などの問題がないか注意しましょう。
養育費の支払金への影響がある
元配偶者(親権者)と子どもが家に住み続け、住宅ローンの名義人である非親権者が返済し続ける方向で離婚条件を取り決める場合、元配偶者(親権者)は注意が必要です。
なぜなら養育費には住居費も含まれているからです。非親権者は次のような主張をする可能性があります。
- 住宅ローンは子どもの住居費を支払っているのと同じなので、養育費は支払いたくない
- 住宅ローンの返済額を考慮し、養育費を減額してもらいたい
非親権者の主張を容認するかどうかは親権者次第です。ただし、養育費を減額した場合、子どもの生活費や学費の負担が厳しくならないか、よく考慮しておく必要があるでしょう。
離婚時の住宅ローンに関してすべき対応
離婚条件の協議は、住宅ローンを含め、財産分与や親権の決定等、数多くの作業を必要とします。
夫婦だけでは離婚の協議や手続きが進まない場合、弁護士に相談してみましょう。
弁護士への相談
弁護士に相談すれば、住宅ローン等に対する解決策のアドバイスを受けられます。
住宅ローンを含めた離婚協議や手続きは、不動産の所有権移転登記等、家に関する権利変動が伴います。
そのうえ財産分与や親権・養育費、慰謝料等も取り決める必要があり、複雑な要素が絡んできて、話し合いがこじれてしまうかもしれません。
しかし、弁護士が提案した解決策を参考に協議していけば、円滑に住宅ローンを含めた離婚問題を解決できるでしょう。
名義人変更の検討
家の名義人兼住宅ローン名義人だった配偶者が家を出る場合、家に残る側が新たな住宅ローン名義人となれるか検討してみましょう。
住宅ローンの返済中に名義人を変更する方法は、原則的として認められません。
とはいえ夫婦が離婚し、住宅ローンの名義人でなかった人が住み続ける場合、例外的に変更が認められる可能性もあります。
ただし離婚後、家に残る人が安定的な収入を得られていないと、債権者(金融機関)側は了承しない可能性が高いです。
離婚時の住宅ローンの扱いにお困りの方は春田法律事務所へご相談を
今回は数多くの離婚問題に尽力してきた弁護士が、離婚時の住宅ローンの扱いに関するリスクと注意点等を詳しく解説しました。
春田法律事務所は離婚時の交渉やアドバイスに実績豊富な法律事務所です。離婚時の住宅ローン問題で悩むときは、弁護士と対応の仕方を相談しましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。