暴力を理由に離婚するときの慰謝料はいくら?金額に影響する要素や請求までの流れを弁護士が徹底解説
最終更新日: 2023年02月17日
- 暴力が理由で離婚した場合、慰謝料はどれくらいになるだろう?
- 暴力を理由に離婚する場合、何が慰謝料に影響するのだろう?
- 暴力を理由に離婚する場合の慰謝料請求の流れを知りたい
暴力を受けて離婚したいと考えている方の中には、慰謝料がいくらになるのか、気になる方も多いでしょう。あなたが受けた大きな苦しみは、金額には変え難いものです。しかし、離婚で後悔しないように手続きを進めて、慰謝料に関しても相当の金額を受け取ることが必要です。
そこで本記事では、暴力が理由で離婚するときの慰謝料について、離婚に詳しい専門弁護士が、相場・影響する要素・請求の流れについて詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 暴力で離婚する際の慰謝料の相場は50万〜300万程度だが被害者の状況によってさまざま
- 暴力で離婚する際の慰謝料額を決める要素として「怪我の酷さ」「精神病発症の有無」「期間」「年収」「子どもの有無」などがある
- 暴力を理由にした離婚で慰謝料を請求する一般的な流れは、別居→交渉→離婚調停・訴訟
暴力で離婚する際の慰謝料相場はいくらぐらい?
まずは、暴力で離婚する際の慰謝料相場について説明していきます。
離婚事案における慰謝料額の一般的な目安は、50万~300万円です。
幅が大きい理由として、慰謝料は離婚することになった原因・結婚期間の長さ・子どもの有無などが関係するためです。事案によって理由や状況がさまざまといえます。
あなたが受けた暴力の程度・不貞行為の有無など、状況に応じて300万円以上にも50万以下にもなる可能性があり一概にいくら、とはいえません。
慰謝料については、以下のとおり民法709条・710条で定められており、不法行為に基づく損害賠償として請求するものです。
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
(財産以外の損害の賠償)
第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
配偶者から暴力を受けて離婚する場合、法的な知識を元に適正額を知って、相手に請求することが必要です。
暴力による離婚で慰謝料が認められる主なケース
暴力による離婚で慰謝料が認められるケースにはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、以下2つのケースについて説明していきます。
- 肉体的な苦痛が見られたとき
- 精神的な苦痛が見られたとき
肉体的な苦痛が見られたとき
1つ目のケースは、肉体的な苦痛が見られたときです。
配偶者から叩かれたり殴られたり蹴られたり、あるいはそれ以上の身体的な暴力を受けると、あなたの身体は大きな苦痛を感じます。
相手の暴力を受けると痛みを感じますし、酷いときにはあなたの身体に怪我の跡や痣、火傷などができるかもしれません。
肉体的な苦痛が見られたことを、あなたの怪我と相手から暴力を受けている映像などと合わせて証拠として裁判所に提示することで、相手から肉体的な苦痛を受けたと判断でき、慰謝料請求が認められるでしょう。
精神的な苦痛が見られたとき
2つ目のケースは、精神的な苦痛が見られたときです。
あなたが配偶者から暴言や経済的DV、モラハラなどを受けて、精神的な苦痛を感じている場合も、謝料請求が可能です。
言葉による暴力は形には残らないものの、あなたが受けた被害の程度が酷い場合、慰謝料請求ができるケースもあります。
たとえば、日常的に配偶者から「嫌がらせを受けている」「人格を否定されている」「悪口を周囲に言いふらしている」などはありませんか?
あなたが精神的な苦痛を感じ、精神科や心療科へ通院している証拠があれば、第三者からみても精神的な苦痛を受けていることがわかり、慰謝料請求が認められるでしょう。
暴力による離婚で慰謝料額に影響する要素
ここからは、暴力による離婚で慰謝料額に影響する要素について、以下7点を説明していきます。
- 回数
- 怪我の酷さ
- 精神病発症の有無
- 暴力を受けた期間
- 婚姻期間
- 年収
- 子どもの有無・年齢
回数
1つ目の要素は、回数です。
あなたが配偶者から受けた暴力の回数はどれくらいでしょうか?仮に100回以上とすると、数回に比べて痣も酷く、誰がみても身体的ダメージが大きいと判断できます。また、あなたの精神的ストレスも計り知れないものでしょう。
加害者からの暴力回数が多いと、慰謝料が高額となる可能性もあります。
怪我の酷さ
2つ目の要素は、怪我の酷さです。
配偶者から暴力を受けてできた怪我・痣や火傷の酷さが影響します。
傷が完治するまでの期間が長い・完治後も後遺症があり治る見込みがないなどがわかると、怪我がより酷いとみなされ、一般よりも高い慰謝料額を請求できる可能性が高まるでしょう。
暴力を受けた時期が過去であり、怪我がほとんど見られない場合は、証拠として弱いと思われるかもしれません。そのような場合、専門家は暴力を受けている映像などを元に暴力の酷さを判断します。
精神病発症の有無
3つ目の要素は、精神病発症の有無です。
相手から暴力を受けてうつ病などの精神病を発症した場合、精神的なダメージの大きさと、離婚後も治療が必要なため、慰謝料が高額となる可能性もあります。
その場合、あなたが暴力を受けた後精神科に通院していることがわかる書類、領収書や医者からの診断書、あるいは処方されている薬などが重要な証拠となるでしょう。
暴力を受けた期間
4つ目の要素は、暴力を受けた期間です。
暴力を受けた期間が長ければ長いほど、あなたが感じる精神的な苦痛も大きく、慰謝料も多く請求できるでしょう。
あなたが受けた暴力の期間によっても、請求可能な慰謝料額が変わります。
婚姻期間
5つ目の要素は、婚姻期間です。
婚姻期間が長いと夫婦の歴史も長く、その分離婚後の生活への影響が大きいとされています。
年収
6つ目の要素は、年収です。
暴力による離婚のケースでは、被害者が受けた暴力の程度(肉体的な苦痛・精神的な苦痛)が慰謝料額を大きく左右しますが、加害者・被害者の年収が多少なりとも影響します。
加害者側の年収・保有資産が高い場合、高額の慰謝料を請求できるかもしれません。加害者側に支払い能力がない」と主張する場合においても、弁護士に相談すれば相手の資力を調査するなど、適正額を請求できるように行動してくれます。
子どもの有無・年齢
7つ目の要素は、子どもの有無と年齢です。
配偶者からの暴力の影響は、子どもにも大きなダメージを与えています。子どもの年齢が幼ければ幼いほど、暴力が子どもの心を暗くして、成長を阻害する要因になるかもしれません。
暴力が理由の離婚における慰謝料請求までの流れ
ここからは、暴力が理由の離婚における慰謝料請求までの流れについて、以下3点を説明していきます。
- 相手との別居
- 交渉
- 離婚調停・訴訟
相手との別居
暴力を振るう相手から離れて、安全な環境で慰謝料を請求するためには、できるだけ早く別居することが大切です。
別居することで、暴力を振るわれる危険性が低下しますし、配偶者との出来事を客観的に見られます。
一緒に暮らしていると、相手に振り回される一方で、落ち着いて考える暇もありません。相手と離れることで冷静な判断が可能となるでしょう。
別居してあなたに収入がない場合は、民法760条で
夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。
と定められています。相手に婚姻費用(別居期間中の生活費・養育費)を請求することが可能です。
交渉
離婚事案では、一般的に弁護士を立てて相手と協議・交渉して、離婚を成立させることがほとんどです。
交渉の中で、慰謝料額や子どもの親権や養育費、財産分与などの条件を定めていきます。
暴力を理由として離婚する場合、本人同士が直接交渉するのではなく、弁護士を立てて行うことが望ましいです。本人同士だと、相手が感情的になってしまい、暴力を振るう可能性が高く、交渉もなかなか進まないことでしょう。
離婚であなたの負担を軽減させるためにも、必ず弁護士を立てて交渉代理などを依頼することが大切です。
離婚調停・訴訟
相手と交渉・協議が進まない場合、話し合いができない場合は、家庭裁判所で離婚調停の申立てを行う必要があります。
調停とは、裁判所で調停委員会を仲介して、お互いの合意を成立させるための手続きです。調停委員を介して交渉し、加害者と直接話すことはありません。
特に、暴力事案の場合は「別室調停」で対応してくれるため、裁判所内で偶然顔を合わせることもありません。
調停でも合意できなかった場合は、離婚訴訟を提起して、離婚手続き・慰謝料請求を進めることになります。
暴力による離婚の慰謝料を請求・増額するポイント
ここまで暴力が理由の離婚について、慰謝料の相場・認められる主なケース・金額に影響する要素・慰謝料請求の流れについて解説しました。ここからは、慰謝料を相場よりも増額して請求するポイントについて説明していきます。
- 証拠を残す
- 弁護士へ相談
証拠を残す
1つ目のポイントは、暴力を受けたことが証明できる証拠を残すことです。
一般的に以下のような内容が証拠として認められることがあります。
- 病院からの診断書(うつ病など)
- 暴力を受けてできた傷・痣などの写真
- 自分が暴力を受けた記録・メモなど
- 暴力を受けている映像・動画・音声記録などなど
- 暴力を相談したことがわかる記録(警察・公的機関)
- 暴力が行われているとわかる加害者からのメール・SNSなどのやりとり
ささいな内容でも専門家から見ると重要な証拠として認められる可能性もあるため、できるだけ証拠を残しておくようにしましょう。
ただし、映像や音声などについては、加害者にわかるとより暴力が酷くなる可能性もあるため、無理して記録する必要はありません。
弁護士へ相談
2つ目のポイントは、弁護士への相談です。
配偶者の暴力が理由で離婚したい・慰謝料を請求したいなどという場合、すぐに離婚の実績が豊富な弁護士に相談することをおすすめします。
離婚を成立させることはもちろん、慰謝料額に関してもあなたに損をさせないように、離婚のための手続きを進めてくれるでしょう。
また、弁護士はあなたの味方として、精神的なサポートもしてくれます。暴力から離れて安心に暮らすための最適な提案をしてくれて、あなたにとって心強い存在になるでしょう。
暴力による離婚慰謝料を請求するなら弁護士へ相談を
本記事では、暴力が理由で離婚する際の慰謝料相場・影響する要素・請求の流れなどについて解説しました。
相手の暴力から離れて離婚したい、慰謝料はどれくらいだろうと考えているなら、離婚に強い専門弁護士への相談をおすすめします。
あなたが受けた被害の重さとそれに相当する適正な慰謝料額を判断してくれますし、なによりもあなたの精神面をサポートしてくれる頼もしい味方となるでしょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。