子なし夫婦が離婚したい時にすべきことは?理由・メリット・方法も解説
最終更新日: 2023年09月28日
- 配偶者との間に子はいないが、離婚するときに注意すべき点はあるだろうか?
- 子がいない状態で離婚することにはどのようなメリットがあるのか?
- 子がいない夫婦が円満に離婚できるポイントを知りたい
子なし夫婦の場合、親権をどちらにするかや養育費支払いのような、子に関する問題を話し合う必要がないので、離婚が成立しやすい印象を受けます。
しかし、子がいなくても財産分与や慰謝料等取り決めるべき内容はいろいろあり、話し合いがまとまらない可能性もあります。何らかの方法で解決を図る必要があるでしょう。
そこで今回は、多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、子なし夫婦の離婚原因、離婚するメリット、円満離婚のコツ等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 子なし夫婦の離婚原因は子どもに関する意見不一致等があげられる
- 離婚すれば子がいないため、仕事や趣味に没頭できるメリットがある
- 子なし夫婦が円満離婚するには、事前の準備や弁護士への相談が大切
子なし夫婦の主な離婚理由
子なし夫婦は、子ども中心の生活を送る必要もないので、夫婦ともにストレスがない生活を送れそうですが、次のような理由で離婚する可能性があります。
子どもに関する意見不一致
子どもをいずれつくりたい、逆に子どもはずっといらない、と夫婦間で意見が一致していれば基本的に問題はないでしょう。
しかし、夫婦の一方が子どもをつくりたいのに、もう一方はつくりたくないと思っていたら、次第に夫婦の溝が深まる可能性はあります。
また、子どもをつくりたいと夫婦が思っていても、長年子宝に恵まれない場合は、互いのせいにして、夫婦関係が冷え込むかもしれません。
性格の不一致
夫婦それぞれの性格や価値観があまりにも違う、という理由で離婚する可能性もあります。
交際していたころは自分に合わせて対応してくれたのに、結婚した途端、考え方を一方的に押し付けるケースなどが考えられます。
性格や価値観の不一致は、DVやモラハラほど深刻な夫婦の問題ではないとしても、同居していると大きなストレスになってくることもあります。
生活のすれ違い
子なし夫婦は、それぞれが仕事を持っている場合が多いでしょう。夫婦が別々の事業所に勤めていても、出勤時間や帰宅時間がほぼ同じであれば、すれ違いは少ないかもしれません。
しかし、夫婦の出勤時間や帰宅時間が大幅に異なると、次のような生活が常態化しかねません。
- 夫(または妻)の早朝からの出勤で、二人そろって朝食を摂れない
- 妻は夕方には帰宅できるが、夫は深夜まで勤務し、帰宅する頃には妻が就寝中
このようなすれ違いの生活が続くと、夫婦でいる意味がわからなくなることもあるでしょう。
また妻が専業主婦であっても、夫が単身赴任が多い職業(例:国家公務員、銀行員、全国展開の大手企業の総合職等)であれば、生活のすれ違いが生じる可能性があります。
DV・モラハラ
DVやモラハラは夫婦が婚姻を継続し難い深刻なケースです。
DVとは、「domestic=家庭内の」「violence=暴力」の略で、子なし夫婦の場合は夫から妻、妻から夫への暴力を指します。
殴る蹴る、物を投げつける等の暴力だけでなく、相手が拒否しているにもかかわらず、強引な性行為を行うことも性暴力です。
一方、モラハラとは、「モラルハラスメント」の略で、道徳・倫理に反するいやがらせをして相手を精神的に追い詰める行為です。
モラハラは主に次のような言葉の暴力が該当します。
(1)夫から妻へのモラハラ
- なんで男の言うことが聞けない、馬鹿野郎
- お前がそんなだから子どもができない
- 女のくせに生意気だ、消え失せろ
(2)妻から夫へのモラハラ
- いつ昇給できるの、あんたは無能だわ
- 少しは家事でもしたら、この役立たず
- あんたが不能だから子どもができない
子なし夫婦が離婚するメリット
子なし夫婦が離婚するメリットは以下の通り数多いです。また、離婚する場合は、子どもの親権で争ったり、養育費の支払で揉めたりする必要はありません。、
ストレスを抱えなくて済む
精神的なストレスから解放されます。
愛情がすっかりなくなり、同居しているだけで気が滅入るような生活では、いつかいがみ合うようになり、更に深刻な事態へ発展するかもしれません。
離婚してそれぞれの道を進めば、互いに気分が楽になり、新たな生活を充実したものにできるでしょう。
自由にお金を使える
離婚すれば、それぞれ自分のためだけにお金を使えます。
子どもがいないので、子どもの学費や養育費を心配する必要はありません。双方が仕事を持っていて独自の収入があれば、相手に気兼ねせず服飾や娯楽・旅行などを思う通りに楽しめます。
ただし、恒常的な収入がない専業主婦(または主夫)であったときは、なるべく早く就職活動を行い、収入の安定に努めるべきでしょう。
仕事に没頭できる
離婚すれば出勤時間・帰宅時間を気にせず、仕事に集中できます。同僚と呑み会をして、夜遅くに帰宅しても怒られることはありません。
転勤も抵抗なく行えるので、仕事が原因で配偶者と口論やケンカが絶えなかった人には、離婚は仕事に没頭できるよい機会となるでしょう。
やりたいことに取り組める
離婚すれば誰にも気兼ねせず、自分の趣味に没頭できます。
配偶者がいたときは、自分の趣味(例:プラモデルやエアガン、テレビゲーム等)を理解してもらえず、「そんな物にお金を使うくらいなら、生活費に回して!」と、度々口論になっていたかもしれません。
離婚した後は、何をするかも、いくら使うかもすべて自分次第です。税金や生活費等を支払いお金が余ったら、その分を趣味につぎ込んでも文句を言われることはありません。
子なし夫婦が離婚する方法
子なし夫婦であっても、財産分与や、慰謝料等の話し合いが難航する可能性はあります。
そこで、離婚問題の解決方法を「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」にわけて解説しましょう。
協議離婚
まずは夫婦で離婚の条件を話し合いましょう。
子どもに関する話し合いは不要でも、次のような内容を取り決めておく必要があります。
- 財産分与:婚姻期間に夫婦で協力して得た財産の配分を決める
- 慰謝料:夫婦の一方が離婚原因をつくった場合、支払う慰謝料の金額等を決める
- 年金分割:夫婦が婚姻中に納めた保険料に対応する厚生年金は共有財産として扱われるので、離婚時に厚生年金を分割する
- 夫婦間の金銭貸借の清算:婚姻中、夫婦でお金の貸し借りをしていたときは、その清算も行う
ただし、離婚の条件を決めるときに、話し合いがまとまらない場合もあるでしょう。その場合は、家庭裁判所に調停を申し立て(調停離婚)、調停でも和解できないときは訴訟で解決を図ります(裁判離婚)。
調停離婚
協議離婚が不成立に終わった場合は、調整調停で解決を図ります。
調停を行う場合、相手方の住所地または当事者が合意した家庭裁判所に、「夫婦関係調整調停(離婚)の申立」をします。
提出する書類は主に次の通りです。
- 調停申立書とその写し1通
- 夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書):本籍地の市区町村役場で取得
- 年金分割のための情報通知書:年金分割割合についての申立てが含まれている場合に必要、年金事務所で取得
調停は非公開で行われ、原則として夫婦双方が出頭しなければなりません。
まず家庭裁判所から選出された調停委員が夫婦それぞれの意見を聴き、アドバイスや解決案の提示等を行い、合意するように働きかけます。
調停成立までは、半年から1年近くかかる可能性があります。
裁判離婚
調停も不成立だった場合は、裁判離婚で解決を図ります。
離婚のための訴訟を提起するためには、次の5つの事由のいずれかに該当する必要があります(民法第770条)。
- 配偶者に不貞行為があった:夫婦の一方が浮気相手と肉体関係を持った場合等
- 配偶者から悪意で遺棄された:正当な理由がないのに、夫婦の一方に生活費を与えない等
- 配偶者の生死が3年以上明らかでない
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
- その他婚姻を継続し難い重大な事由がある:DVやモラハラ等で夫婦関係が破綻している
なお、離婚訴訟では有責配偶者(離婚の原因をつくった配偶者)からの申立ては原則として認められません。
提出する書類は主に次の通りです。
- 離婚訴状:2部
- 夫婦の戸籍謄本とコピー
- 年金分割のための情報通知書
- 源泉徴収票・預金通帳等の証拠書類のコピー:2部
裁判は公開の法廷で行われ、原告・被告となった夫婦それぞれが、自分の主張、証拠の提出を行います。
判決が言い渡されるまで、半年から2年近くかかる可能性があります。
出典:離婚 | 裁判所
子なし夫婦が円満離婚するためにすべきこと
離婚の協議がこじれてしまっても、調停離婚や裁判離婚で解決を目指す方法があります。
しかし、できるだけ早く新たな生活を始めたいのであれば、夫婦の話し合いで円満に解決した方がよいでしょう。
こちらでは、円満に離婚するポイントを取り上げます。
準備の徹底
何も準備しないまま話し合いを始めても、円滑に離婚の手続きが進まない恐れが高いでしょう。
協議をする前に、次の点を確認しましょう。
- 婚姻費用:離婚前に別居する場合、別居する側が生活費を請求する
- 共有財産がどれくらいあるのか:財産分与をするため、財産に関する資料を集める
- 離婚後の居住先をどうするか:家を出る方が、実家に戻るか、アパート・マンションを借りて住むかなどについて決める
- 離婚後の氏名をどうするか:旧姓に戻るか、婚姻中の姓をそのまま利用するかを決める
- ペットの引き取りをどうするか:夫婦でペットを飼っているときは、どちらが引き取るか決める
- 慰謝料請求の証拠集め:相手の浮気やDV等が原因で離婚する場合、その証拠を集める
- 夫婦間の金銭貸借の有無:夫婦の貸し借りの有無と金額を確認する
状況に応じて別居
同居しながら離婚を協議するとエキサイトしてしまい、冷静な対応ができなくなる恐れもあります。
互いが何回か話し合うためには、別居した方がよい場合もあるでしょう。
そのときは婚姻費用の分担を行います。婚姻費用は、家を出る配偶者の生活に必要な費用全部が対象です。主に次のような費用を分担します。
- 家族の生活費:食費や水道光熱費等
- 家賃や税金等
- 交際費、娯楽費:常識的に必要と考えられる範囲
分担する割合は夫婦で自由に決められますが、それぞれの資産や収入等を考慮して決定しましょう。
対応実績豊富な弁護士への相談
たとえ調停離婚や裁判離婚に進まなくても、夫婦の話し合いのために弁護士を立てれば、円滑に双方の条件の調整ができます。実績豊富な弁護士に前もって相談しましょう。
弁護士は、相談者の希望をよく聴いたうえで、的確なアドバイスを行います。また、弁護士を代理人にすれば、配偶者との交渉もスムーズにできます。
弁護士を選ぶのであれば、法律事務所のホームページを参考にしましょう。
ホームページに離婚に関する相談実績等が明示されており、離婚に関する事例・話題が豊富に掲載されていれば、協議離婚や調停離婚、裁判離婚の経験豊かな法律事務所とわかります。
まとめ
今回は多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、子なし夫婦が支障なく離婚手続きを進めるポイント等について詳しく解説しました。
弁護士のサポートも借りながら、夫婦が互いに納得のいく離婚条件をよく話し合っていきましょう。
子なし夫婦が離婚をしたい場合、まずは弁護士と相談して今後の対応を話し合いましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。