大麻の所持、使用で不起訴になるケース
最終更新日: 2021年07月08日
はじめに
大麻所持に関する罰則を定めている法律、大麻取締法第24条1項は、「大麻を、みだりに、栽培し、本邦若しくは外国に輸入し、又は本邦若しくは外国から輸出した者は、七年以下の懲役に処する」と規定しています。
薬物事件のなかでも大麻所持に関する弁護士への相談・依頼は非常によくあるものです。
そこで今回は、大麻所持、使用について法律の規制や所持概念についてご説明します。
大麻の所持と使用
所持と使用の違い
大麻の所持は法律違反となりますが、他の薬物事件とは異なり、大麻の使用(吸う行為、食べる行為)自体は法律違反とはなりません。
なぜ、大麻の使用自体を規制対象としていないのかについては、書物、文献にも明記が見当たりません。大麻取締法の前身である大麻取締規則には大麻の「施用」が規制対象となっていましたが、大麻取締法になってその規定は削除されました。
インターネット上には、大麻取締法は成熟した茎と種子は精神作用を起こすTHC(テトラヒドロカンナビノール)を含まず、「大麻」の定義から除外しているが、稀に成熟した茎や種子からも微量のTHCが検出されることがあるため、被疑者の尿から検出されたTHCが茎や種子から体内に取り込まれたものなのか、葉っぱや樹脂から取り込まれたものなのか判別できないから大麻の使用を規制対象外としていると説明するものがありますが、真偽は不明です。
使用自体は規制対象となっていないとはいえ、通常大麻の使用にはその直前の所持を伴いますから状況証拠から大麻所持について検挙、起訴される可能性はあります。
所持せず使用?
職務質問された時や、逮捕された時の尿検査の結果、尿から大麻成分が検出された場合、大麻を使用していたことがわかります。
ところが、その時点では大麻自体は所持しておらず、自宅などからも大麻が押収されなかったというケース、あるいはそれ自体では所持罪として立件できないほどの大麻の残りカスがパケについていたというケースがあります。
このような場合、大麻所持で起訴することは容易ではありません。もっとも、このようなケースでも被疑者の供述、関係者の供述、尿の鑑定結果といった状況証拠から大麻所持が立証できる可能性があります。
また、他人の大麻を1,2服吸わせてもらっただけどいう場合、所持は認められず、使用をしただけということになる可能性があります。
どこからが大麻所持になるのか?
所持の基準
「所持」とは、大麻を自己の実力的支配内に置く行為、つまり自分の判断で大麻を管理、処分できることをいいます。
所持の方法
所持の方法としては、大麻を自分の手に持っている、自分のポケットやカバンに入れている、自宅に隠しているなど、直接その実力的支配内に置いている場合は、当然「所持」に該当します。
また、大麻の保管を他人に依頼している場合も、間接的にその実力的支配内に置いているといえ、「所持」に該当します。
海外旅行先での大麻の使用・所持は逮捕されるのか
大麻取締法違反で逮捕された被疑者が海外ではマリファナを使ったことがあると被疑者(被告人)が供述することがよくあります。
確かに、海外では例えば、アメリカの一部の州では医療用大麻や娯楽用の大麻を合法化されていますし、カナダのように国単位で娯楽用大麻を合法化した国もありますが、日本人が海外で所持・使用する分には合法なのでしょうか。
大麻取締法は、「第二十四条、第二十四条の二(所持、譲渡譲受)、第二十四条の四、第二十四条の六及び前条の罪は、刑法第二条の例に従う」と規定しています(第24条の8)。
そして、刑法第2条は、「この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯したすべての者に適用する。」と規定しています。
つまり、マリファナが合法化されている海外の国で日本人が大麻を所持した場合も、日本の大麻取締法違反になるということです。なお、大麻の使用行為自体は日本の法律も直接的には規制対象としていませんので、海外での使用行為も法律違反とはなりません。
もっとも、海外には日本の捜査権も裁判権も及びませんので、逮捕、起訴するためには、当該国に対して犯罪人の引渡しを要請し、日本に連れてくる必要があります。
微量の大麻所持について
所持していた大麻が微量であった場合には、逮捕、起訴されないのではないかという弁護士への相談がしばしばあります。
実際、空のパケやパイプに残りカス程度の大麻が付着していたというケースであれば、逮捕されなかったり、起訴されなかったりすることがあります。
裁判例の中にも、覚醒剤に関するものですが、0.0031gの覚せい剤所持について、「所持」には該当しないとして無罪を言い渡したものがあります。
しかし、他方で、0.001gの覚醒剤所持について「所持」に該当すると判断した裁判例
もありますから、微量であれば無罪、不起訴になると考えるのは早計でしょう。
大麻取締法が規制対象とする所持量を定めているわけではありませんし、たとえ微量
であっても大麻であることに変わりはありませんので、起訴され、有罪判決を受けるのが原則です。
大麻の共同所持の罪で不起訴処分になるケース
共同所持のケースとは、例えば、複数人で車に同乗していたときに、警察官から職務質問を受け、車内から大麻が発見されたというケースです。
共同所持のケースでは、1人が自分の物であると言い、他は皆、自分は知らないと言ったとしても全員が被疑者として逮捕されることが通常です。
なぜなら、逮捕した後に、自分の物だと言っていた被疑者が、実は自分の物ではないと言い始めた場合、他の者は逃げてしまい逮捕や証拠収集が困難になる可能性が高いからです。
大麻所持は薬物犯罪の中でも不起訴処分になる割合が高い犯罪ですが、中でも共同所持罪で不起訴処分になるケースはよくあります。
では、どのようなケースで不起訴処分になるのでしょうか。
彼氏(彼女)と同棲してるケース
彼氏(彼女)と同棲をしている自宅から大麻が発見された場合、ともに被疑者として逮捕されることが多くあります。
共同所持といえるためには、二人がともに大麻の存在を認識していたことと、両人の実力的支配内にある、つまり相手の許可なく自由に大麻を使用できる状態だったことが必要です。
つまり、この二つの要件のうちいずれかが欠ける者については、不起訴処分となる可能性が高いといえます。
同棲している場合には、生活空間を共有しているわけですから、ともに大麻の存在を認識していることが多いでしょう。
しかし、大麻の存在を認識している場合であっても、彼氏が大麻を主に使用しており、彼女は彼氏から誘われたときだけ使用したことがあり、自分だけで使用することはなかったという場合には、彼女の実力的支配内にあったとはいえず、彼女は不起訴処分になる可能性があります。
友人・友達と一緒にいたケース
友人・友達と複数人で集まっていたところで、大麻が発見されたというケースです。
この場合もやはり共同所持の成立には前記の2つの要件が必要となります。
例えば、その場にいた人のうち一人が大麻を持ち込み、他の友人はそれをタダで吸わせてもらっていたという場合、大麻を管理、処分できるのはその持ち主の人だけで、他の友人たちの実力的支配内に大麻があるとはいえませんので、他の友人たちは不起訴処分となる可能性があります。
一方、皆でお金を出し合って、うち一人が大麻を買いに行って、それを皆で吸っていたというような場合には、全員の実力的支配内にあるといえますので、共同所持罪として全員が起訴処分となる可能性があるでしょう。
最後に
以上、大麻の所持、使用についてご説明しました。
大麻を含め、初犯の薬物事件は起訴処分となったとしても執行猶予判決となる可能性が高いことから、敢えて私選の弁護士を依頼する必要性は高くないとも思えます。
しかし、近時は、薬物犯罪であったとしても起訴前に勾留を解くことができる可能性がありますし、特に共同所持の事案では取り調べ対応によっては不起訴処分となる可能性があります。
大麻所持の被疑者となった場合は、刑事事件の経験豊富な弁護士にご相談ください。
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