万引きの身元引受人|示談・費用は?弁護士相談までの流れを解説

最終更新日: 2025年11月24日

家族が万引きしたらどう対応する?弁護士ができる活動・必要な家族のサポートを徹底解説

ご家族や大切な方が万引きで逮捕された際、警察から「身元引受人」になるよう求められることがあります。突然の連絡に動揺し、「身元引受人」という言葉の重みに不安を感じる方も少なくないでしょう。この記事では、万引き事件における身元引受人の法的な役割と責任の範囲、いつ身元引受人が必要になるのか、そして示談交渉の重要性から弁護士に相談するまでの具体的な流れを詳細に解説します。早期の身柄解放や不起訴処分に向けて何をすべきか、費用相場も含めて網羅的に説明することで、突然の事態に直面した皆様の不安を解消し、適切な対応を取るための一助となることを目指します。

刑事事件に詳しい弁護士はこちら

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
宅地建物取引士

詳しくはこちら

目次

家族が万引きで逮捕されたら|まず知っておくべきこと

ご家族が万引きで逮捕されたという一報は、計り知れない動揺と不安をもたらすものです。しかし、この最初の段階での冷静かつ的確な対応が、その後の展開を大きく左右します。まず、警察からの連絡で確認すべきは、逮捕された警察署の名称と所在地、逮捕された罪名(万引きの場合、窃盗罪)、そして「接見禁止」が付されているか否かです。接見禁止が付されている場合、弁護士以外は面会ができません。

次に、本人との面会(接見)についてですが、逮捕後すぐに面会することはできません。一般的に、警察での取り調べが終わってから面会が可能になることが多いです。面会時には、本人が万引き行為を認めているのか、どのような状況だったのか、被害店舗はどこか、といった事実関係を把握することが重要です。また、この段階で弁護士に相談しているかどうか、もししていなければすぐに弁護士に連絡するよう伝えることも大切です。

この逮捕直後の段階で最も重要な行動は、できる限り早く刑事事件に詳しい弁護士に相談することです。弁護士は逮捕されている本人に速やかに面会し、今後の手続きの流れや取り調べに対する適切なアドバイスを伝えることができます。これにより、精神的に不安定な状況にある本人が、誤った供述をして不利益を被ることを防ぎ、早期の身柄解放に向けた活動を迅速に開始することが可能になります。

万引き事件における「身元引受人」とは?役割と責任範囲

家族や知人が万引きで逮捕された際、「身元引受人」となるよう求められることがあります。身元引受人とは、単に保証人として金銭的な責任を負うものではなく、被疑者・被告人の身柄を監督し、逃亡や証拠隠滅を防ぐとともに、警察や裁判所からの呼び出しに確実に応じさせることを約束する役割を担います。これは、被疑者・被告人が社会に戻るための重要な橋渡し役であり、刑事手続きの各段階でその存在が大きく影響します。

身元引受人の本質的な役割は、捜査機関や裁判所に対し、被疑者・被告人が真摯に事件と向き合い、更生することをサポートするという意思を示す点にあります。この約束は、被疑者・被告人の処遇に大きな影響を与えるため、その意味合いと責任範囲をしっかりと理解しておくことが重要です。

身元引受人の役割と責任

身元引受人の役割は、主に3つの側面から構成されます。1つ目は「身柄監督」です。これは、被疑者や被告人が逃亡したり、証拠を隠滅したりといった行動を起こさないように、日常生活を通じて監督する責任です。具体的には、同居している場合は生活状況を把握し、そうでない場合でも定期的に連絡を取り、問題行動の兆候がないかを見守ることが求められます。

2つ目は「出頭の確保」です。警察、検察庁、裁判所といった捜査機関や司法機関から呼び出しがあった際に、被疑者・被告人が必ず指定された期日に出頭するよう促し、その確実性を保証する責任です。身元引受人がこの責任を果たすことで、捜査機関や裁判所は被疑者・被告人を信頼し、身柄拘束の必要性が低いと判断する材料となります。

3つ目は「更生のサポート」です。これは法的な責任というよりも、人として、そして家族としての重要な役割です。被疑者・被告人が二度と罪を犯さないよう、生活環境を整える手助けをし、精神的な支えとなることで、社会復帰を支援します。身元引受人がこうしたサポートを約束することは、被疑者・被告人が抱える問題を解決し、更生への意欲を高める上で不可欠です。これらの責任は法的な強制力を持つものではありませんが、約束を破った場合には、被疑者・被告人が再逮捕されたり、保釈が取り消されたりするなど、本人にとって重大な不利益が生じる可能性があります。

身元引受人になるための条件|家族や友人でもなれる?

身元引受人になるために、法律で明確な資格が定められているわけではありません。しかし、捜査機関や裁判所が「信頼できる人物」と判断するための、いくつかの一般的な条件が存在します。例えば、被疑者・被告人との関係性においては、配偶者、親、兄弟姉妹といった近しい親族が最も望ましいとされますが、場合によっては友人や会社の同僚、上司なども身元引受人となることが可能です。重要なのは、監督義務を適切に果たせるかどうかという点です。

その他、安定した職業に就いており収入があること、定まった住居があること、そして身元引受人自身に前科・前歴がないことなども、信頼性を測る上で考慮される要素です。特に、被疑者本人と同居し、日常的に生活を監督できる環境にあるかどうかが重視される傾向にあります。遠方に住む親族でも身元引受人になれるケースはありますが、その場合でも、定期的な連絡や訪問を通じて監督責任を果たす意思と能力が求められます。

身元引受人に法的な支払い義務はない

「身元引受人」という言葉の響きから、借金の連帯保証人のように金銭的な責任を負うのではないかと心配される方もいらっしゃいます。しかし、万引き事件における身元引受人は、被害店舗への賠償金や、被疑者・被告人に科される可能性のある罰金などを肩代わりする法的な義務は一切ありません。これは、民法上の「身元保証人」とは全く異なる制度であり、その点についてご安心ください。

ただし、実際には、家族が身元引受人となる場合、示談交渉の窓口になったり、示談金や弁護士費用を立て替えたりするケースが多く見られます。これは、あくまで家族としての支援であり、法的な義務ではありません。身元引受人になることで金銭的な不安を感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、法的に賠償義務が発生することはないという点を理解しておくことが大切です。

【時系列】万引きで逮捕されてから身元引受人が必要になる流れ

家族や知人が万引きで逮捕された際、身元引受人が必要となるタイミングは、刑事手続きの進行状況によって異なります。逮捕直後から検察官への送致、そして勾留期間を経て起訴・不起訴の判断が下されるまで、さらに起訴後の保釈や判決に至るまで、身元引受人の存在が被疑者や被告人にとって極めて重要な意味を持ちます。このセクションでは、万引き事件で逮捕されてから、身元引受人がいつ、どのように関わり、どのような役割を果たすのかを時系列に沿って詳しくご説明します。各フェーズで身元引受人がいることによって得られる具体的なメリットも簡潔に示し、不安な状況にある皆様が、今後の見通しを立てる一助となることを目指します。

①逮捕〜送検(最大72時間):警察での取り調べ

万引きで逮捕された場合、警察は被疑者を最大48時間拘束し、取り調べを行います。その後、検察官に事件を送致(送検)し、検察官は被疑者を受け取ってから原則24時間以内に、引き続き身柄を拘束するかどうか(勾留請求するかどうか)を判断します。この逮捕から送検までの最大72時間は、刑事手続きの初期段階であり、身元引受人の存在がその後の展開を大きく左右する重要な期間となります。

この段階で身元引受人がいれば、被疑者に逃亡や証拠隠滅のおそれがないと判断されやすくなり、検察官が勾留請求せずに、在宅事件として捜査を進める可能性が高まります。特に、被害額が僅少である場合や、被疑者が初犯であるような軽微な万引き事件では、身元引受人がすぐに被疑者の身柄を引き取りに来ることで、検察官に送致されることなく、警察限りで事件が終了する「微罪処分」となる可能性も期待できます。微罪処分となれば、前科が付くことなく事件は解決するため、身元引受人の迅速な対応が不可欠となります。

②勾留決定〜起訴/不起訴(最大20日間):早期釈放を目指す

検察官が勾留請求を行い、裁判所がそれを認めて勾留が決定されると、被疑者はさらに最大20日間、身体の拘束を受けることになります。この勾留期間は、検察官が被疑者を起訴するか、不起訴とするかを判断するための重要な期間です。この段階における身元引受人の最大の役割は、不起訴処分、特に起訴猶予を獲得し、被疑者が前科を背負うことを避けるための環境を整えることにあります。

身元引受人が存在し、被害店舗との間で示談交渉を進めているという事実は、検察官が「当事者間で紛争解決の見込みがあり、被疑者の更生環境も整っている」と判断するための、非常に有力な材料となります。検察官は、再犯のおそれが低いと判断すれば、起訴猶予処分とする可能性が高まります。また、勾留決定に対して不服を申し立てる「準抗告」を行う際にも、身元引受人がいることは、被疑者が釈放されたとしても逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを裁判所に示す有利な事情となり、身柄解放が認められる可能性を高めます。この期間に身元引受人が積極的に関与することで、早期の身柄解放と不起訴処分獲得に向けた大きな前進が期待できます。

③起訴後:保釈や執行猶予付き判決のために

もし万引き事件で検察官が被疑者を起訴した場合、被疑者は「被告人」となり、刑事裁判を受けることになります。起訴されてしまうと、多くの場合、身柄拘束が継続されますが、この段階でも身元引受人の役割は非常に重要です。まず、起訴後すぐに検討すべきなのが「保釈請求」です。身元引受人がいることは、被告人が裁判から逃亡したり、証拠を隠したりしないことを裁判所に示す有力な材料となり、保釈が認められやすくなります。

さらに、刑事裁判の判決において、身元引受人の存在は「被告人の監督環境」として非常に高く評価されます。裁判官は、被告人の反省の態度だけでなく、社会に戻った後の更生環境も重視するため、身元引受人が被告人の監督を約束し、再犯防止に協力する姿勢を示すことで、実刑判決を回避し、執行猶予付き判決を得られる可能性が高まります。執行猶予付き判決となれば、すぐに刑務所に入る必要はなく、社会内で更生を目指すことができるため、被告人にとって大きなメリットとなります。

万引き事件の示談|身元引受人が知るべきポイントと費用相場

万引き事件の解決において、示談交渉は極めて重要な活動です。もしご家族が万引きで逮捕され、身元引受人となることを求められた場合、示談が刑事処分に与える影響やその具体的な進め方、そして示談金の相場について深く理解しておく必要があります。このセクションでは、なぜ示談が不可欠なのか、示談金はどのくらいになるのか、そして交渉を弁護士に任せるべき理由を詳しく解説していきます。示談は、早期の身柄解放や前科を避けるための不起訴処分、あるいは裁判になった場合の減刑に向けて、最も効果的な手段の一つです。

なぜ示談が重要なのか?不起訴や減刑の可能性

万引き事件における示談とは、加害者が被害店舗に対して謝罪し、盗んだ品の弁償(被害弁償)を行うことで、当事者間の民事上の紛争を解決する合意のことです。この示談が成立し、特に被害店舗から「加害者を許す(宥恕する)」という意思表示が示談書に盛り込まれると、その後の刑事処分に大きな影響を与えます。

具体的には、検察官が起訴・不起訴を判断する際に、示談が成立していることは「処罰の必要性が低い」と判断される非常に重要な要素となります。特に初犯で被害額が少額の場合、示談の成立は不起訴処分(起訴猶予)につながる可能性を飛躍的に高めます。これにより、前科が付くことを回避できるだけでなく、早期に事件が解決し、社会生活への影響を最小限に抑えられます。もし起訴されてしまった場合でも、示談の成立は裁判官が量刑を判断する上で有利な情状として考慮され、実刑判決を回避し、執行猶予付き判決を得る可能性が高まります。

示談金の費用相場と内訳

万引き事件における示談金は、主に「被害品の価格(実費弁償)」と、店舗が被った「迷惑料(慰謝料)」で構成されます。被害品の弁償は当然行われるべきですが、迷惑料については、万引きの状況や被害額、店舗の方針によって大きく変動するのが実情です。

例えば、数千円程度の少額万引きで初犯の場合、示談金全体としては数万円から20万円程度が相場となることが多いです。しかし、被害額が高額である場合や、組織的な犯行、常習性が見られるようなケースでは、迷惑料も高くなり、示談金総額が数十万円に及ぶこともあります。示談金はあくまで目安であり、最終的には被害店舗側の意向や交渉によって決まりますが、弁護士が介入することで、法的に妥当な範囲での解決を目指すことが可能です。

示談交渉は弁護士に依頼すべき理由

万引き事件における示談交渉は、加害者本人やそのご家族が直接行うには非常に高いハードルがあります。特に大手チェーン店などの場合、加害者側からの直接の交渉には一切応じない方針の企業も少なくありません。また、直接被害者と接触しようとすると、被害感情を逆なでしてしまい、かえって交渉がこじれるリスクも伴います。

弁護士に示談交渉を依頼する最大のメリットは、被害店舗が専門家である弁護士相手であれば交渉に応じてくれる可能性が格段に高まる点です。弁護士は、加害者の代理人として冷静かつ法的な根拠に基づいた示談金額を提示し、円滑に交渉を進めることができます。さらに、示談が成立した際には、不起訴処分や減刑に効果的な「宥恕(ゆうじょ)条項」、つまり「加害者を許し、刑事処分を望まない」旨を明記した示談書を適切に作成し、確実に刑事手続きに有利に働くよう手配してくれます。このような専門的な知識と交渉力を持つ弁護士に任せることで、示談成立の可能性を高め、ご家族の精神的な負担も大きく軽減されます。

身元引受人になることで期待できる3つのメリット

万引き事件でご家族が逮捕され、身元引受人となることを検討されている方は、ご自身の行動がご家族にとってどのような影響を与えるのか、具体的なメリットについて知りたいことでしょう。身元引受人が存在することで、被疑者・被告人にとっては、早期の身柄解放、不起訴処分、そして執行猶予付き判決という、非常に大きな成果が期待できます。ここでは、身元引受人の役割が刑事手続きの各段階でどのようにプラスに作用するのか、3つの具体的なメリットを整理してご説明します。

メリット1:微罪処分・不起訴処分になる可能性が高まる

身元引受人の存在は、ご家族が万引きで逮捕された際に前科が付くことを回避するために、極めて重要な要素となります。逮捕直後の警察の段階で、被疑者にしっかりとした身元があり、監督してくれる人がいると判断されれば、「微罪処分」として事件が警察限りで終了する可能性が高まります。これは、検察官に事件が送致されることなく、刑罰も前科も付かないまま解放されることを意味します。

さらに、事件が検察官に送致された後、起訴・不起訴の判断が下される際にも、身元引受人の存在は大きなプラス評価となります。身元引受人がいることは、検察官に対して「被疑者に再犯のおそれが低く、社会で更生できる環境が整っている」という印象を与え、不起訴処分、特に起訴猶予の判断を促す強力な材料となります。これまでの説明でも触れたように、示談交渉が進んでいることと並行して、身元引受人が監督を誓約している状況は、検察官が「処罰の必要性が低い」と判断する上で決定的な要因となることが多いのです。

メリット2:早期の身柄解放(釈放・保釈)が期待できる

身元引受人の存在は、被疑者・被告人が身柄拘束から解放される可能性を直接的に高めます。逮捕された直後、検察官が勾留請求(身柄拘束の延長)を行うかどうかを判断する際、身元引受人がいることで「逃亡や証拠隠滅のおそれがない」と判断されやすくなり、勾留されずに釈放される可能性が高まります。早期に身柄が解放されれば、会社や学校への影響を最小限に抑えることができます。

仮に勾留されてしまった場合でも、身元引受人がいることは勾留決定に対する準抗告(不服申し立て)が認められやすくなる理由の一つです。そして、最も重要なのは、起訴された後に「保釈」を請求する際です。裁判所は保釈を許可するかどうかを判断する際に、被告人に逃亡のおそれがないか、証拠隠滅のおそれがないかを最も重視します。身元引受人がいて、被告人の身柄を監督することを誓約していれば、裁判所は「逃亡のおそれが低い」と判断し、保釈が認められやすくなります。身柄拘束が長期化することによる精神的・肉体的負担、そして社会的・経済的な不利益を避ける上で、身元引受人の役割は非常に大きいと言えるでしょう。

メリット3:執行猶予付き判決を得やすくなる

万が一、万引き事件で起訴されてしまい、有罪判決が避けられない状況になったとしても、身元引受人の存在は実刑判決を回避し、社会内での更生を目指す「執行猶予付き判決」を獲得するために極めて重要な役割を果たします。裁判官が執行猶予を付すかどうかを判断する際には、被告人の反省の態度や被害者との示談の有無と並んで、「今後の監督環境が整っているか」という点を非常に重視します。

身元引受人が裁判に出廷し、「情状証人」として、被告人の監督を今後も継続していくことを誓約することで、裁判官に対して「社会内で十分な監督のもと、更生できる環境が整っている」という心証を与えることができます。これにより、実刑判決ではなく執行猶予付き判決を得られる可能性が格段に高まります。執行猶予付き判決となれば、刑務所に入ることなく社会生活を続けることができ、ご家族の社会復帰にとって大きな助けとなるでしょう。

万引きの身元引受人に関するよくある質問

万引き事件は突然発生し、身元引受人として何ができるのか、どのような責任を負うのかといった疑問が次々と湧いてくることでしょう。このセクションでは、これまで解説してきた内容を踏まえ、身元引受人になることを検討している方が抱きがちな、より具体的な疑問についてQ&A形式で詳しくお答えします。ご自身の状況と照らし合わせながら、具体的な行動を起こす際の不安や疑問を解消するための一助となれば幸いです。

Q. どうしても身元引受人がいない場合はどうなりますか?

万引き事件で被疑者が逮捕された際、身元引受人を頼める親族や知人が一人もいないという状況は、本人にとって非常に不利に働く可能性が高まります。身元引受人がいない場合、捜査機関や裁判所は「逃亡や証拠隠滅のおそれがある」と判断しやすくなるため、身柄拘束が長期化するリスクが大幅に上昇します。具体的には、勾留されやすくなり、起訴後に保釈を請求しても認められにくくなるでしょう。これは、社会生活への影響だけでなく、精神的な負担も大きくなることを意味します。

このような状況に直面した際の対策としては、まず弁護士に依頼することが非常に重要です。弁護士は、身元引受人がいなくても、本人の反省の深さ、定職に就いていること、家族との関係性などを具体的に主張し、勾留決定に対する準抗告や保釈請求を通じて、早期の身柄解放を目指してくれます。また、NPO法人などが提供する身元引受支援サービスも存在します。これは、身元引受人がいない場合の最後の手段として検討できる選択肢です。ただし、これらのサービスは必ず利用できるわけではないため、まずは刑事事件に強い弁護士に相談し、最善の策を講じることが重要になります。

Q. 子供が未成年の場合、親は必ず身元引受人になる必要がありますか?

未成年者(少年)が万引きで逮捕された場合、成人の刑事事件における「身元引受人」とは少し異なり、親権者である親が「引受人(付添人)」となることが原則です。少年事件では、少年の健全な育成と更生を目的として、家庭裁判所が保護者の監督能力を非常に重視します。そのため、親が引受人となることは、少年が家庭に戻り、適切な保護の下で生活を立て直すために不可欠であると考えられます。

もし親が引受人になることを拒否した場合、家庭裁判所は少年の監督環境が不十分であると判断し、少年鑑別所への収容である「観護措置」を決定する可能性が非常に高くなります。これは、少年が社会から隔離され、自由な行動が制限されることを意味します。法的な強制義務があるわけではありませんが、子供の将来や更生を考えれば、親が引受人の役割を担うことが強く期待されるとともに、事実上、その役割を全うすることが最も良い選択となります。

Q. 身元引受人を引き受けた後、辞退することはできますか?

一度、身元引受人になることを承諾した後でも、それを辞退することは法的に可能です。しかし、身元引受人を辞退することは、被疑者・被告人にとって非常に重大な不利益が生じることを意味します。捜査機関や裁判所は、身元引受人が辞退することで「監督者がいなくなった」と判断するため、再び「逃亡や証拠隠滅のおそれがある」とみなされる可能性が高まります。

その結果、身柄拘束が継続されたり、一度認められた保釈が取り消されて再収容されたりする可能性が非常に高くなります。これは、本人の社会復帰や更生環境に大きな影響を与えるだけでなく、精神的な負担も増大させることになります。身元引受人の辞退を検討する際は、必ず弁護士に相談し、辞退が本人に与える影響について十分に説明を受けてから慎重に判断することが極めて重要です。

Q. 身元引受人になるために必要な書類はありますか?

身元引受人になる際に、捜査機関や裁判所に提出を求められる一般的な書類としては、主に以下のものが挙げられます。まず、最も重要なのは「身元引受書(誓約書)」です。この書類には、被疑者・被告人の身柄を監督し、逃亡や証拠隠滅を防ぎ、指定された期日には必ず出頭させることを約束する旨が記載されます。

その他、身元引受人の身分を証明するために、「身分証明書(運転免許証や健康保険証など)のコピー」や「住民票」の提出を求められることが一般的です。これらの書類は、身元引受人が実在し、被疑者・被告人との関係性や監督能力を有していることを示すために必要となります。具体的な書式や提出方法については、弁護士が全面的にサポートしてくれますので、手続き面での不安を感じる必要はありません。

万引き事件は弁護士へ相談を|費用と相談までの流れ

万引き事件は、ご家族が突然逮捕されてしまったり、身元引受人になるよう求められたりするなど、予期せぬ形で降りかかることが少なくありません。このような状況で、ご家族や大切な方が不利な立場に陥らないためには、弁護士への相談が不可欠です。このセクションでは、弁護士に依頼することで得られる具体的なメリット、気になる費用の内訳とその相場、そして実際に弁護士に相談し依頼するまでの具体的な流れを詳しく解説します。弁護士は単なる法律の専門家としてだけでなく、身元引受人であるご家族の強力な味方となり、不安な状況を乗り越えるためのサポートを提供します。

弁護士に相談・依頼するメリット

万引き事件において、身元引受人が弁護士に相談・依頼することで得られるメリットは多岐にわたります。まず、逮捕直後の非常に混乱した状況下で、弁護士はご本人に面会(接見)し、事件に関する正確な情報を得ることができます。これにより、ご本人も家族も今後の見通しや取り調べへの対応について的確なアドバイスを受けることができ、精神的な負担が大きく軽減されます。

また、弁護士は被害店舗との示談交渉を迅速かつ円滑に進めます。ご本人やご家族が直接交渉しようとしても、被害感情から応じてもらえないケースや、かえって感情的な対立を生んでしまうリスクがあります。弁護士が間に入ることで、被害者側も安心して交渉に応じやすくなり、適正な示談金の提示や、不起訴処分を得るために極めて重要な「宥恕(ゆうじょ)条項」を含んだ示談書作成など、専門的な対応が可能となります。示談が成立し、被害弁償がなされることは、検察官が不起訴処分を判断する上で非常に有利な材料となります。

さらに、弁護士は早期の身柄解放に向けた法的な手続きを適切に進めます。具体的には、勾留請求が不当であれば「勾留請求却下」を求める意見書を提出したり、勾留が決定してしまった後でも「準抗告」という不服申し立てを行ったり、起訴後には「保釈請求」を行うなど、あらゆる段階でご本人の身柄拘束を解くための弁護活動を行います。身元引受人として何をすべきか、今後の見通しなどを具体的に教えてもらえるため、ご家族の精神的な負担が軽減されることも大きなメリットです。弁護士は、法的な代理人としてだけでなく、身元引受人の強力なサポーターとして、ご家族を総合的に支援します。

弁護士費用の内訳と相場

弁護士に依頼する際に、費用について不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。弁護士費用は、主に「相談料」「着手金」「報酬金」「実費」の4つの要素で構成されます。

「相談料」は、弁護士に事件について相談する際に発生する費用で、一般的には30分5,000円程度が目安ですが、初回相談を無料としている法律事務所も多くあります。「着手金」は、弁護士が事件に着手する際に支払う費用で、依頼の結果に関わらず発生します。「報酬金」は、事件が解決した際や、不起訴処分、執行猶予判決、身柄解放などの成果が得られた際に支払う費用です。そして「実費」は、交通費、郵送費、書類作成費用など、事件処理に必要な費用を指します。

万引き事件の弁護を依頼した場合の総額相場は、事件の軽重や依頼する弁護活動の範囲によって変動します。例えば、示談交渉のみであれば数十万円程度、逮捕されている状況で起訴前の弁護活動を依頼する場合は40万円〜80万円程度、起訴後の公判弁護まで含めると60万円〜120万円程度が目安となることが多いでしょう。多くの法律事務所では、初回の相談を無料としているだけでなく、費用の分割払いに応じてくれる場合もありますので、まずは費用面での不安を解消するためにも、気軽に問い合わせてみることをおすすめします。

無料相談から依頼までの流れ

万引き事件に関して弁護士に相談したいと考えたら、以下のステップで進めるのが一般的です。まず、刑事事件に強い弁護士を探しましょう。インターネット検索で「万引き事件 弁護士」や「刑事事件 弁護士」といったキーワードで検索すると、多くの法律事務所が見つかります。その際、ご自身の地域に対応しているか、無料相談を受け付けているかを確認すると良いでしょう。

次に、電話やウェブサイトの問い合わせフォームから無料相談の予約を入れます。相談時には、家族が逮捕された警察署、万引きの経緯、被害品や被害額、ご本人のこれまでの経歴(初犯か、前科・前歴の有無など)といった、事件の概要を説明できるように準備しておくと、弁護士も状況をより正確に把握し、具体的なアドバイスを提供しやすくなります。弁護士との面談では、事件の状況説明に加え、今後の見通しや、弁護活動の方針、そして費用の見積もりなどについて詳細な説明を受けられます。

弁護士からの説明に納得し、この弁護士に依頼したいと思ったら、正式に委任契約を結びます。契約書の内容をよく確認し、不明な点があれば質問して解消しておきましょう。委任契約を結んだ後は、弁護士が速やかに弁護活動を開始してくれます。この一連の流れは、ご家族の不安を少しでも早く取り除き、最善の解決を目指すための大切な第一歩となるでしょう。

二度と繰り返さないために|家族ができる再発防止のサポート

万引き事件が解決へと向かい、身柄が解放されたり、刑事処分が決定したりした後も、身元引受人やご家族の役割は終わりではありません。むしろ、ここからが再発防止に向けた大切なスタート地点と言えます。二度と同じ過ちを繰り返さないために、ご家族がどのように本人を支え、適切な環境を整えることができるのかが、今後の生活において非常に重要です。

まず、ご家族で率直に話し合い、万引き行為の背景にある問題を深く理解することが不可欠です。経済的な困窮、職場や人間関係でのストレス、孤独感、あるいは精神的な疾患であるクレプトマニア(窃盗症)といった可能性も考慮し、本人だけで抱え込ませないことが大切です。もし、本人がこれらの問題を抱えているようであれば、心療内科や精神科の専門医による診断やカウンセリングを受けることを強く検討してください。早期に専門家のサポートを得ることで、根本的な問題解決に繋がり、再犯リスクを大幅に低減できます。家族だけで抱え込まず、外部の力を積極的に活用することも重要です。

また、本人の孤立を防ぎ、社会との繋がりを保つことも再犯防止には欠かせません。職場復帰や新しい居場所作りをサポートしたり、趣味や地域活動への参加を促したりするなど、前向きな社会復帰を温かく見守る姿勢が求められます。具体的なサポートとしては、規則正しい生活習慣を一緒に整えたり、経済的な管理を助けたりすることが挙げられます。ご家族の継続的な見守りと精神的な支えが、本人が再び立ち上がり、健全な生活を送るための大きな力となります。

まとめ:万引きの身元引受人になったら、まずは弁護士に相談を

万引き事件でご家族や知人が逮捕され、身元引受人になることを求められた場合、その役割は被疑者・被告人のその後の人生を左右するほど極めて重要です。身元引受人には、身柄解放の可能性を高めたり、不起訴処分や執行猶予付き判決を得るための有力な根拠となったりする大きなメリットがあります。しかし、身元引受人としての責任を適切に果たすためには、法的な知識と刑事手続きの流れを正確に理解しておく必要があります。

万引き事件は、逮捕直後の初動対応がその後の結果を大きく変える可能性があります。特に、被害店舗との示談交渉は専門的な知識と経験が必要であり、ご家族だけで進めることは非常に困難です。また、勾留の回避や保釈請求、そして裁判における有利な情状立証など、身柄拘束からの早期解放や刑事処分を軽減するためには、迅速かつ的確な弁護活動が不可欠となります。

したがって、もしご自身が万引き事件の身元引受人になった、あるいはなることを求められた場合は、決して一人で抱え込まず、できるだけ早く刑事事件に強い弁護士にご相談ください。弁護士は、被疑者・被告人の権利を守り、身元引受人の方々を法的にサポートする心強い味方です。弁護士に相談することは、不安な状況を打開し、ご本人とご家族が平穏な日常を取り戻すための最初の一歩となるでしょう。

刑事事件に詳しい弁護士はこちら

窃盗のコラムをもっと読む

※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。