家族が万引きしたらどう対応する?弁護士ができる活動・必要な家族のサポートを徹底解説
最終更新日: 2025年03月09日
- 息子が万引きで捕まってしまった。夫婦とも動揺しているが、どのような対応をとればよいのだろう?
- 配偶者がまた万引きで捕まった。今度は留置施設に拘束され、起訴されるかもしれない。家族には何ができるのだろう?
- 家族が万引きで捕まった場合、誰に相談したらよいのだろう?
家族が出来心で万引きを行なってしまったとしても、被害店舗側は警察に通報し、強い態度をとる場合があるでしょう。
万引きを繰り返すと、逮捕され、長期間の勾留や起訴される可能性があります。
何らかの対応を進めないと、万引きした本人は重い刑罰を受けるかもしれません。
そこで今回は、多くの刑事事件に携わってきた弁護士が、家族の誰かが万引きで逮捕されたときの家族の対応、弁護士に委任するメリット等を詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談できます。
- 家族の誰かが万引きで逮捕された場合は、弁護士と相談した方がよい
- 弁護士に依頼すれば逮捕された本人の勾留阻止や、被害店舗側と示談交渉を行う
- 万引きの再発防止のため、家族ができるサポートがある
家族の万引きですべき家族の対応
万引きした本人が店舗に留め置かれたり、警察に身柄を拘束された場合、基本的にその家族が身元引受人として対応することになるでしょう。
万引きした本人が初犯であれば店舗側から厳重な注意を受け、帰宅を許されるかもしれません。
しかし、万引きした商品が高価な物であったり、常習的に万引きを繰り返したりしていた場合は、警察に通報され、逮捕される可能性もあります。
弁護士に相談
万引きした本人が警察に拘束された場合、家族は弁護士と相談し、対応の仕方を協議した方がよいでしょう。
弁護士は事情をヒアリングしたうえで、次のようなアドバイスをします。
- 弁護士以外は自由に接見できない点
- 依頼すれば弁護士はすぐに弁護活動を行える旨
- 在宅事件になった場合の対応
- 逮捕・勾留後の弁護活動
- 不起訴処分や減刑の可能性
- 再発防止策を検討する必要性
弁護士を私選弁護人として依頼すれば、警察や検察を説得して早期釈放を目指すとともに、被害者との示談交渉にあたります。
送検された場合は不起訴処分を目指し、起訴されて刑事裁判に移行した場合は、減刑や執行猶予付き判決が得られるように最善を尽くします。
接見依頼
弁護士を通じて接見依頼しましょう。万引きした本人(被疑者)には弁護士と面会する権利(接見交通権)があるので、弁護士はいつでも接見できます(刑事訴訟法第39条第1項)。
しかし、弁護士以外はたとえ家族であっても、逮捕直後の3日間(72時間)は接見できません。
ただし、家族が弁護士を立てれば、本人の状況や早期釈放される見込みがあるかどうかなどを、弁護士を通じて把握できます。
釈放請求
弁護士に釈放請求を依頼しましょう。弁護士は万引きした本人と逮捕直後から接見でき、今後の対応を協議できます。
本人に何回か万引きの事実があっても、弁護士は警察に対して次のような主張を行い、早期釈放を目指すでしょう。
- 本人は万引きを反省し、店舗側に謝罪している
- 万引きの被害額は軽微である
- 店員に取り押さえられたとき、逃走や暴力を振るう等の抵抗はしなかった
- 本人に逃走や証拠隠滅のおそれはない
- 弁護士が身元引受人となる
弁護士の粘り強い説得で、警察側が納得し、万引きした本人は帰宅を許される可能性もあります。在宅事件となったときは、検察に書類送致となり捜査が継続されるでしょう。
示談交渉
示談交渉を弁護士に依頼しましょう。
万引きした本人や家族が被害店舗側と交渉してもよいのですが、店舗側から交渉の申し出を拒否されるかもしれません。
弁護士を交渉役とすれば、法律に精通した第三者であるため、店舗側も安心して交渉に応じる可能性があります。
示談が成立し被害店舗側が被害届や告訴状を取り下げれば、不起訴処分になる可能性も高まるでしょう。
再発防止策の検討
万引きした本人の再発防止策を、真剣に検討する必要があります。
万引きの再発防止のために、家族のサポートや、本人が精神疾患を患っていた場合の治療についても検討しましょう。
本人は万引きが犯罪だとわかっていても、「クレプトマニア(窃盗症)」である場合、容易に万引きはやめられない状態と考えられます。
クレプトマニア(窃盗症)とは、物を盗ろうとする衝動に抵抗できなくなる精神疾患です。この抑えられない万引きの衝動は、医療施設等での治療で抑えられる可能性があります。
家族が万引きした場合に弁護士ができる対応
弁護士は万引きした本人と家族の身体的・精神的な負担を軽減するため、粘り強く弁護活動を行うとともに、万引き問題の早期解決に向けて全力を尽くします。
勾留阻止
弁護士は、まず長期の勾留阻止を目指し、弁護活動を行います。
万引きした本人は、逮捕・留置後、最長20日間勾留される可能性があります。
検察官の勾留請求を裁判所が認めれば、警察の留置施設での身柄拘束が継続されます。
勾留中、自由に接見できるのは弁護士だけで、家族の接見は大幅に制約されるでしょう。
弁護士は勾留阻止・期間短縮のため、次のような対応をとる場合があります。
- 勾留理由開示請求:勾留理由を明らかにさせて、裁判所に勾留の再考を求める
- 準抗告:刑事裁判前に勾留決定の不服申立を行い、決定の変更・取消しを主張する
- 勾留取消の申立て:示談成立や万引きの証拠が出尽くした等、勾留する必要がなくなったとして、裁判所に勾留の取消しを申し立てる
弁護士の主張に裁判所側が納得し、勾留取消や短縮を認める可能性もあるでしょう。
示談交渉
弁護士は、交渉役として被害店舗側と示談交渉を行います。
店舗側の主張も聴きつつ双方が納得できるよう、示談内容をとりまとめていきます。
店舗側と調整する示談内容は、主に次の通りです。
- 加害者は万引き行為を反省し、被害店舗側に謝罪する
- 示談金の取り決め
- 加害者は二度と被害店舗に近づかない旨
- 加害者を家族が監視する旨
- (加害者がクレプトマニアの場合)治療を受け、再犯防止に努める旨
- 被害店舗側は被害届や告訴状を取り下げる旨
- 被害店舗側が検察官に嘆願書を送付し、加害者に寛大な処分を求める旨
- 示談成立後、加害者と被害店舗側は再び問題を蒸し返さないこと
双方が示談内容に合意したら示談書を2通作成し、加害者と被害店舗側が1通ずつ大切に保管しておきましょう。
減刑
たとえ検察官から万引き(窃盗罪)で起訴された場合でも、刑事裁判で減刑や執行猶予を得られる可能性があります。
窃盗罪で起訴され有罪になれば、10年以下の懲役(2025年6月1日以降は拘禁刑)または50万円以下の罰金に処されます(刑法第235条)。
ただし、裁判官は被害店舗との示談成立や再発防止策を評価し、罰金刑や執行猶予付き判決を言い渡す場合があります。
執行猶予付き判決とは、刑事裁判で懲役刑(拘禁刑)が宣告されても、一定期間にわたり問題なく過ごせば、刑の言渡しは効力を失うという判決です。
罰金刑や執行猶予付き判決は有罪判決のため前科が付きますが、刑事施設へ収容されずに日常生活を送れます。
被告人(万引きした本人)の身体的・精神的負担は、大きく軽減できるでしょう。
出典:刑法|e-GOV法令検索
家族の万引きで示談交渉を進めるポイント
示談交渉は交渉役である弁護士を通じ、被害店舗側の要望を聞きながら進めていきます。
日ごろから万引きの被害が大きい店舗は、万引き犯に対する恨みもあって、態度をかなり硬化させている可能性があります。
示談交渉では双方とも感情的にならず、冷静な交渉が必要です。
冷静な判断
冷静な対応が必要な示談交渉においては、万引きした本人・家族は直接関わらず、弁護士が交渉の窓口となった方がよいでしょう。
弁護士は、被害店舗の気持ちに配慮しつつ、万引きした本人が反省していることや、家族が協力して更生を目指していること等を伝えます。
被害店舗側が冷静に示談交渉できる状態であれば、示談金をはじめとした示談成立のための条件について話し合うことができるでしょう。
弁護士は穏やかな口調で加害者側の希望を伝え、被害店舗の同意を得られるよう尽力するので、冷静かつ円滑に交渉を進められます。
法的なアドバイス
交渉で揉める可能性がある示談金額についても、弁護士のアドバイスを得て合意に向けた歩みよりができます。
万引きの示談金額は、被害金額(万引きした商品の金額等)を少し上回る金額に収まる場合が多いでしょう。
被害店舗側から法外に高い請求を受けたときは、弁護士が適正額まで減額できるよう交渉を続けます。
被害店舗が大手の場合、示談自体を拒否するケースもあるでしょう。
示談できなければ検察の不起訴処分や、刑事裁判での減刑・執行猶予付き判決を得られない可能性があります。
このような場合、弁護士は次のような代替措置を、万引きした本人・家族に提案します。
- 被害弁償:万引きした商品の返品、すでに使用している場合は商品金額相当額を返金する。被害者から受取証書(領収書)をもらう。
- 供託:被害店舗が被害弁償額をいつでも受け取れるよう、供託所(国の機関)に金銭を預ける。被害弁償額に加え遅延損害金(年利3%)と合わせた金額を供託する。
- 贖罪寄付:都道府県弁護士会・法テラス等の団体に対し、寄付を行い反省の意思を示す。寄付先の団体から証明書が発行されるので、証明書を検察・裁判所に提出可能。
示談できない場合は、様々な代替措置を提案します。弁護士と相談のうえで、ニーズに合った措置を選択しましょう。
万引きからの更正のために家族ができるサポート
万引きした本人を更生させるには、家族のサポートが必要不可欠です。
家族による監督の他、精神疾患が原因である場合は、治療に全面的に協力する必要があります。
本人の話に耳を傾ける
家族は、万引きした本人を頭ごなしに責めずに、万引きに至った経緯や本人の気持ちを考えて、冷静に対話しましょう。
万引き行為の背景には家族への不満(学業の成績不振への苦言等)が一因の場合もあるため、不満のもとになるような言動を改める努力も必要です。
また、万引きした本人の話ぶりから「精神疾患を発症しているようだ」と感じたときは、専門の医療施設での診察・治療を勧めてみましょう。
更生サポート
万引き防止のため、本人の外出時に家族が付き添うなどして、本人の更正をサポートする必要があります。
本人がクレプトマニア(窃盗症)であると診断されたときは、次の施設での治療を勧めてみるのもよい方法です。
- 回復支援施設(精神疾患を持つ人のリハビリ施設)への入所・通所
- クレプトマニアを扱う専門病院やクリニックでの治療:集団精神療法がメイン
クレプトマニアの自助グループに参加し、ミーティング等を通して自分と向き合う方法も有効でしょう。
社会復帰のサポート
家族が知り合いの業者等に本人を雇ってもらえるよう依頼し、本人の社会復帰をサポートすることも大事です。
犯罪者更生のネットワークに参加し、自立のためのサポートを相談・依頼できる団体を利用することも検討すべきでしょう。
信頼できる弁護士を見つけるには
本人が予期せず逮捕された場合は、家族が弁護士を選ばなければいけません。
弁護士を選任する場合は、まず法律事務所のホームページ・サイト上で、具体的な相談実績数、万引きに関する話題、弁護活動の手順が具体的に掲載されているかを確認するとよいでしょう。
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今回は数多くの刑事事件を担当してきた弁護士が、家族の誰かが万引きで逮捕されたときの適切な対応等について詳しく解説しました。
春田法律事務所は、刑事事件の示談交渉や裁判を得意とする法律事務所です。まずは今後の対応をどうするかについて、弁護士とよく相談しましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。