高校生が薬物で逮捕されたら?問われる罪・対策・弁護活動を徹底解説
最終更新日: 2025年03月09日
- 高校に入った息子が違法薬物で逮捕されてしまった。息子はどうなってしまうのだろう?
- 未成年が薬物違反に問われたら、どのような刑罰を受けるのだろう?
- 息子は高校生でありながら薬物で逮捕された。誰に相談すべきか教えてほしい。
たとえ高校生のような未成年者でも、インターネットを利用し手軽に違法薬物を購入できるのが現状です。
高校生の子どもが違法薬物で逮捕された場合、家族は動揺するでしょう。早く弁護士と相談し、今後の対応の仕方を検討する必要があります。
そこで今回は、数多くの薬物事件を担当してきた弁護士が、高校生が違法薬物で逮捕されたらどうなるか、逮捕されたときの対策等を詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談できます。
- 高校生が違法薬物で逮捕されると、最悪の場合は退学処分となるケースもある
- 高校生が違法薬物で逮捕された場合、原則として保護観察処分になる
- 弁護士に相談し弁護を依頼すれば、様々なアドバイスやサポートを得られる
高校生が薬物で逮捕されたらどうなる
高校生が違法薬物で逮捕されたとしても、学校からいきなり退学処分を受けるとは限りません。
ただし、公立高校と私立高校では、退学処分の判断に違いが出てくる可能性もあります。
退学になるケース
違法薬物で逮捕された高校生が退学処分になるか否かは、通学している高校の判断次第です。
校則で定められた内容に抵触する場合、退学処分になるかもしれません。
学校教育法は、校長・教員が教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、学生に懲戒を加えられると規定しています(学校教育法第11条)。
また、学校教育法施行規則は「性行不良で改善の見込がないと認められる者」等に対し、退学処分を行えると明記しています(学校教育法施行規則第26条第3項)。
各法律・規則をみても、違法薬物に関する文言は明記されていません。退学処分にするかどうかは各高校の判断となります。
公立と私立の違い
公立高校と私立高校を比較すると、私立高校の校則はやや厳しいと言われています。
公立高校の校則は法令に従う傾向がある一方、私立高校では建学精神・校風に独自性があり、それに従った校則となっている場合が多いためです。
高校生が違法薬物で逮捕された場合、他の学生を違法薬物から保護する必要性や、建学精神・校風を汚す行為と判断し、高校側が退学処分を言い渡す可能性もあります。
薬物逮捕で問われる罪(高校生のケース)
高校生が違法薬物で逮捕されたとしても、原則として刑罰が科されず、保護観察処分となるケースが多いでしょう。
保護観察処分とは、社会の中で保護観察所の指導監督を受けつつ、更生を目指す処分です。
ただし、高校生に違法薬物の常習性が確認できる、違法薬物に関して組織的・営利目的が認められる悪質な行為をしていたときなどは、少年院送致となる場合があります。
薬物逮捕で問われる罪(成人のケース)
成人が違法薬物で逮捕された場合は、覚醒剤取締法や麻薬及び向精神薬取締法(麻薬取締法)等で処罰される可能性があります。
違法薬物違反で有罪になれば、懲役(2025年6月1日以降「拘禁刑」に変更)や罰金刑を科されるでしょう。
覚醒剤の場合
覚醒剤の使用や所持、製造等を行った者は、覚醒剤取締法違反で処罰される可能性があります。
覚醒剤を営利目的で輸出入や製造をした者は、次のいずれかの刑罰を科されるでしょう(覚醒剤取締法第41条第2項)。
- 無期または3年以上の懲役
- 情状により無期または3年以上の懲役および1,000万円以下の罰金
たとえ営利目的ではなくとも、1年以上の有期懲役(同法第41条第1項)となります。
その他、同法によって処罰される主な行為は次の通りです。
- 覚醒剤をみだりに所持、譲渡、譲り受ける行為:10年以下の懲役(同法第41条の2第1項)
- 覚醒剤を営利目的で所持、譲渡、譲り受ける行為:1年以上の有期懲役、または情状により1年以上の有期懲役および500万円以下の罰金(同法第41条の2第2項)
- 覚醒剤を使用した等:10年以下の懲役(同法第41条の3)
大麻の場合
大麻の規制や処罰に関しては、2023年12月より次のように改正されました。
- 大麻を「麻薬」に含め、所持や譲渡等は麻薬取締法での規制に変更
- 大麻の栽培に関しては、大麻取締法を「大麻草の栽培の規制に関する法律(大麻栽培規制法)」に改題し同法で規制する
大麻所持・譲渡等の行為は麻薬取締法で処罰されます。
- 大麻の使用:7年以下の懲役(麻薬取締法第66条の2第1項)
- 営利目的で使用:1年以上10年以下の懲役、情状により300万円以下の罰金を併科(同法第66条の2第2項)
- 所持・譲受・譲渡した:7年以下の懲役(同法第66条第1項)
- 営利目的で所持・譲受・譲渡した:1年以上10年以下の懲役、情状により300万円以下の罰金を併科(同法第66条第1項)
- 輸出・輸入した:1年以上10年以下の懲役(同法第65条第1項)
- 営利目的で輸出・輸入した:1年以上20年以下の懲役(同法第65条第2項)
一方、大麻の栽培は大麻栽培規制法で処罰されます。
- 栽培:1年以上10年以下の懲役(大麻栽培規制法第24条第1項)
- 営利目的の栽培:1年以上20年以下の懲役、情状により500万円以下の罰金を併科(同法第24条第2項)
危険ドラッグの場合
危険ドラッグの使用・所持や輸入、密売した者は次のような法律で処罰されます。
- 医薬品医療機器等法:厚生労働省令以外の用途で製造や輸入、販売、授与等を行うと3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、または併科される(医薬品医療機器等法第84条)
- 関税法:医薬品医療機器等法で定められている危険ドラッグを輸入すると10年以下の懲役もしくは3,000万円以下の罰金、または併科される(関税法第109条)
- 各都道府県の条例:知事指定薬物を販売または授与の目的で広告した場合や、所持や購入、譲り受けまたは使用した場合等を規制する。東京都では、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金となる(東京都薬物の濫用防止に関する条例第22条の2)。
出典:東京都薬物の濫用防止に関する条例|e東京都例規集データベース
高校生が薬物で逮捕された場合にすぐすべき対策
高校生が違法薬物で逮捕されると、刑罰を科される可能性は低いとしても、退学のリスクや薬物依存となるおそれがあります。
高校生本人・家族は、法律の専門家である弁護士と相談し、今後の対応について話し合いましょう。
弁護士への相談
弁護士は高校生本人・家族の事情をヒアリングし、次のようなアドバイスやサポートをします。
- 違法薬物で逮捕されても基本的に処罰されない旨
- 逮捕後の弁護活動の説明
- 保護観察処分の内容
- 再犯防止対策を検討する必要性
- 弁護士が高校側を説得する旨
弁護士と相談のうえで「私選付添人」を依頼すれば、逮捕された高校生のため、最後まで弁護活動に全力を尽くします。
違法薬物の依存を断ち切る再犯防止対策も、弁護士とよく相談しましょう。
説得力のある再犯防止対策を提示すれば、少年事件の処分を行う家庭裁判所は「更生の余地がある」と判断する可能性があります。
再発防止策の実施
家庭裁判所の審判で観察処分(保護観察や少年院送致等)を受けた後も、違法薬物の依存度が高かった少年には、再発防止策を実施しなければなりません。
家族による少年の監督・監視の他、次のような治療やリハビリも必要です。
- 薬物依存治療専門の医療機関、クリニックでの治療
- 回復支援施設への入所・通所によるリハビリ
- 薬物依存症者の自助グループのミーティングに参加し、自分自身を見直す 等
家族も、日常生活の中で違法薬物の欲望に負けそうになる子どもを支えていきましょう。
高校生が薬物で逮捕された後の弁護士の活動内容
違法薬物で逮捕された高校生の処分軽減のため、弁護士に「私選付添人」を依頼しましょう。
弁護士は高校生本人・家族のため弁護活動を開始します。
付添人
私選付添人となった弁護士は、高校生本人に次のようなサポートを行います。
- 逮捕されていない場合は高校生の自首に付き添う(自首同行)
- 高校生の身柄拘束を回避するため、検察や裁判官を説得する
- 高校が退学処分にしないよう説得する
- 再犯防止対策(治療計画)を策定し、検察や裁判官、高校側に更生する意思を示す
弁護士は、高校生本人・家族の意見を聴きながら、弁護活動を進めていきます。
更生サポート
弁護士は、薬物依存から脱却する方法の相談にも乗ります。
弁護士は本人の依存度や健康状態を考慮し、薬物依存からの脱却をサポートする治療機関(団体)を紹介することもあるでしょう。
- 回復支援施設:違法薬物から回復するためのリハビリ施設。回復プログラムや生活訓練等も行う。
- 薬物依存症外来:集団精神療法等を行う専門医療施設。
- 自助グループ:薬物依存の悩みを抱えた本人や家族が自発的に結びついた集まり。主に薬物依存経験者の体験談を通し、自ら学ぶスタイルをとる。
精神的なサポート
弁護士は高校生本人の心のケアにも努め、次のような対応を試みる場合もあります。
- 高校生本人が違法薬物の事実を争わないときは、面会して逮捕に至った要因を本人に考えてもらう
- 弁護士の差し入れた違法薬物の書籍・資料を読み、議論する等して一緒に考える
- 違法薬物に関することや、治療やリハビリの内容等を日記に書いてもらい、自分自身と向き合わせる
弁護士との対話により、本人は「自分の苦悩や不安を伝えたらわかってくれた」と心が軽くなり、薬物依存からの脱却へ前向きになるかもしれません。
退学回避
弁護士は本人が通学する高校側に、退学処分や自主退学を勧めるような対応は思いとどまるよう説得します。
- 違法薬物で逮捕された本人は真摯に反省している
- 再犯防止対策を実行し、薬物依存から脱却する
- 同じ高校の生徒が違法薬物の影響を受けるおそれはない
高校側が本人の反省の意思が強いと判断すれば、停学や謹慎処分にとどめる可能性もあるでしょう。
高校生が薬物で逮捕されたときは春田法律事務所まで
今回は薬物事件の弁護活動を行ってきた弁護士が、高校生が違法薬物で逮捕されたときの対策等について詳しく解説しました。
春田法律事務所は薬物問題の解決に実績のある法律事務所です。違法薬物で逮捕された本人・家族は、今後の対応の仕方について弁護士と相談しましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。