専業主婦(主夫)のための婚前契約書

最終更新日: 2023年06月13日

結婚後も女性が仕事を続けることは多くなりましたが、結婚や妊娠・出産を機に職場を退職して専業主婦になる女性も多くいます。

以下では、専業主婦のための婚前契約書についてご説明します。

夫の収入を共有財産とする

夫の収入を共有財産とする

妻が結婚後に仕事を辞めて専業主婦になった場合、家計は夫の収入に頼ることになります。

法律(民法)が定める夫婦の財産関係を法定財産制といいますが、これに従うと夫の収入やその収入によって買った物は夫の特有財産(固有財産)となります。

夫の特有財産も、離婚の際には、夫婦の実質的な共有財産であるとして財産分与の対象になりますが、形式的には、結婚生活においては夫の財産は形成されるけれども、妻の財産は形成されないことになります。

婚前契約書には、夫の収入について夫婦の共有財産と定めることができます。それとともに、共有財産の管理者を夫又は妻のいずれかに定めることができます。

このように財産の管理者を定めた場合、管理を任された夫又は妻が、浪費をするなどして共有財産を危うくしたときには、家庭裁判所に管理者の変更を求めることができます(民法758条2項)。

他方、このような婚前契約をしていない場合には、夫の所得は夫の特有財産ですから、夫が浪費をしたとしても、その財産の管理者を妻に変更することはできません。

夫婦生活が夫の収入に頼っている以上、妻としても財産の適正な維持・管理に関与できた方が良いでしょう。

専業主婦のための婚前契約としては、夫の収入は夫婦の共有財産であること及びその管理者を夫又は妻とする内容を定めることをお勧めします。

結婚生活における生活費

結婚生活における生活費

 

専業主婦の場合、経済的には夫の収入に頼って結婚生活を送ることになりますので、生活費の管理方法は結婚前にしっかりと話し合ってルールを定めておくことが良いでしょう。

具体的には、夫の収入を管理するのは夫と妻のいずれとするのか、夫が管理する場合は妻に管理を任せる毎月の生活費の金額の決め方、一定額以上の支出をする場合には事前に他方の同意を得ることなどのルールが考えられます。

また、家事育児は実際にお金を産むことはないものの、その経済的価値は家の外での労働と変わらないという考え方が一般的です。

そこで、婚前契約書には家事育児の対価として専業主婦が自由に使うことのできる金額を定めることも検討に値します。

このように夫の所得のうち一定金額又は一定割合を妻が自由に使うことのできるお金として定めておくことは、家事育児について評価されていると感じることができますし、家事育児に一層やりがいを感じられるかもしれません。

離婚後の扶助料

離婚後の扶助料

結婚や妊娠・出産を機に仕事を辞めて専業主婦になる女性は多くおられます。

しかし、離婚することになった場合、数年間、数十年間も会社勤めにブランクがありますので、安定した地位、収入の得られる職につくことは容易ではありません。

他方、夫は妻が家事育児に専従してくれたお陰で自身の仕事に専念をすることができたといえます。そうであれば、離婚によって、妻が経済的苦境に立たされることは不公平といえるかもしれません。

そこで、離婚後の妻の経済的自立を支援するために離婚後半年や1年の間、毎月一定額あるいは夫の給与の一定割合を離婚後の扶助料(扶養的財産分与)として妻に支払う内容を婚前契約書に定めることも検討に値します。

夫婦関係は破綻してしまっているのに離婚後の生活が不安で離婚に応じられないという女性も現実に多くいます。このような離婚後の扶助料を婚前契約書に定めることはお互いに新しいスタートを切りやすくする効果も期待できるでしょう。

なお、贈与とみなされ課税対象とならないよう、財産分与として(扶養的財産分与といいます。)位置付ける必要があります。

婚前契約についてより詳しく知りたい方は以下もご覧ください。

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