【離婚】財産分与をしない方法はある?拒否するとどうなる?弁護士が解説
最終更新日: 2024年12月16日
離婚は人生における大きな決断であり、経済的な面での不安はつきもの。特に、妻が専業主婦の場合、財産分与をどうするかという問題に頭を悩ませる方も多いでしょう。
結論から言うと、完全に財産分与を避けることは困難です。しかし、適切な手続きを行うことで、財産分与の額を減らすことは可能です。
この記事では、離婚時に財産分与を避けたいと考えている方に向けて、財産を守るための具体的な方法を解説します。
財産分与は拒否できるのか
離婚時の財産分与は、原則として拒否することはできません。
婚姻期間中に夫婦で築き上げた財産は、原則として共同のものであるとみなされ、離婚の際には公平に分けることが法律で定められているからです。たとえ専業主婦であったとしても、家事や育児に貢献したという点で、財産分与の対象となる可能性があります。
一方的に財産分与を拒否した場合、以下のような法的処置が取られることがあります。
・調停、訴訟:相手が家庭裁判所に調停を申し立て、話し合いによって解決を図ろうとします。調停が不調に終わった場合は、審判や訴訟によって、裁判所で財産分与の割合を決める必要があります。
・強制執行:裁判で財産分与の判決が出たにも関わらず、支払いを拒むと、相手が強制執行を申し立てる可能性があります。強制執行には、給料の差し押さえや不動産の売却などが含まれます。
財産分与を拒否することはできませんが、具体的にどの財産を分けるのか、どの割合で分けるのかについては、話し合いによって決めることが可能です。
隠し財産を持っていた時のリスク
相手が把握していないからといって、財産を隠してしまおうと考える方も中にはいますが、隠し財産が発覚した場合、相手から損害賠償を請求される可能性があります。これは、隠し財産があったことで、本来支払うべきだった財産分与額が減ってしまったという損害に対する賠償請求です。
また隠し財産を持っていることで、常に発覚するのではないかという不安を抱え、精神的な負担が大きくなることもあります。
財産の開示を求められた場合の対応
開示すべき財産と範囲を検討する
原則として、婚姻中に取得した財産は夫婦の共有財産とみなされ、財産分与の対象となります。先述の通り、財産を隠蔽した場合、裁判で不利な判断をされる可能性がありますので、財産隠しは避けましょう。
しかし、全ての財産を開示する必要はなく、婚姻中に取得した財産の範囲で開示すれば十分です。
共有財産に対して、夫婦の一方が婚姻前から所有していた財産や、婚姻中に相続や贈与によって取得した財産は「特有財産」と呼ばれ、原則として財産分与の対象にはならず、開示する必要はありません。ただし、財産資料の開示によって特有財産であることを積極的に明らかにしたほうが良いケースもあります。
相手から財産の開示を求められた際は、具体的にどの財産の開示を求めているのか確認し、どこまで開示するか検討することが重要です。
財産の開示を拒否した場合
財産の開示を拒否した場合、以下の方法で強制的に開示させれられることがあります。
・調査嘱託:調査嘱託とは、裁判所が、民事訴訟において、第三者に対して必要な事実の調査を依頼する手続きのことです。例えば、銀行口座の残高や株式、投資信託の保有など、裁判の争点となる事実を明らかにするために、第三者(金融機関、証券会社など)に直接調査を依頼します。
・弁護士会照会:弁護士照会とは、弁護士が依頼者のために、官公庁や企業などの団体に対して、必要な情報を調査し、報告を求める制度です。具体的には、弁護士が所属する弁護士会を通して、照会したい内容を記載した書類を提出することで、その内容について調査が行われます。弁護士会から照会を受けた場合は、原則として誠実に回答する必要があります。虚偽の回答をした場合、法的責任を追及される可能性があります。
財産を少しでも多く残すためには
財産付与を完全に避けることは法律上困難ですが、状況によっては、その額を少なくしたり、条件を有利にすることは可能です。こちらではいくつかの例を紹介します。
ただし、これらの方法は、状況や裁判所の判断によって異なるため、弁護士に相談し、個々のケースに合わせた最適な方法を見つけることをおすすめします。
財産の評価額を下げる
財産の評価額を低く見積もることで、分与額を少なくすることができる可能性があります。
不動産であれば、不動産鑑定士に評価を依頼するなど、客観的なデータに基づいて交渉を進めることが重要です。
婚姻期間中の貢献度を主張する
家事労働の貢献
収入がほぼ同じ夫婦で、すべての家事をしていたといった場合は、財産分与の割合を高くすることができる可能性があります。
婚姻期間中の生活費負担
一方の特有財産を消費することで生活費を負担し、夫婦の共有財産が蓄財できた場合には、分与額の割合で考慮できる可能性があります。
特有財産の主張をする
特有財産は財産分与の対象外となります。分与対象とされている財産が、特有財産であることを証明できれば、分与額を少なくできる可能性があります。
婚姻前の財産
婚姻前に取得した財産は、原則として特有財産であり、財産分与の対象とはなりません。
相続
相続で取得した財産も、原則として特有財産になります。
特別な事情を主張する
相手が不倫(不貞行為)やDVをしている場合には、配偶者に対して慰謝料を請求することができます。この場合、慰謝料請求とともに、財産分与の割合を少なくしてもらうよう求めることができる可能性があります。
財産分与をしなくてもよいケース
財産分与をしなくてもよいケースはいくつか考えられますが、いずれの場合においても、自分の主張を裏付ける証拠をしっかりと用意しておくことが重要です。
夫婦財産契約を結んでいる場合
結婚前に夫婦財産契約を結んでおり、その契約内容が財産分与を行わない、または特定の財産については分与を行わないと定められている場合は、原則として、その契約内容に従います。
婚姻期間中に財産分与を行わないと合意している場合
婚姻中に、夫婦間で財産分与を行わないという合意書を作成している場合、その合意に基づいて財産分与を免れる可能性があります。ただし、書面で明確に合意していることが重要です。
財産分与請求権の除斥期間が過ぎた場合
財産分与請求権には除斥期間があり、一定期間内に請求を行わないと、その権利を行使できなくなります。
婚姻期間中に築いた財産がない場合
そもそも婚姻期間中に夫婦で築いた財産がない場合、分与の対象となる財産がないため、財産分与は行われません。
まとめ
財産分与を完全に避けることは困難ですが、具体的にどの財産を分けるのか、どの割合で分けるのかについては、交渉次第で有利に決めることが可能です。
ただし、財産分与は法律が絡む複雑な問題のため、弁護士に相談し、アドバイスに従いながら進めることをおすすめします。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。