窃盗で余罪あり?ばれる?警察の調べ方などを専門弁護士が解説

最終更新日: 2023年12月08日

窃盗で余罪あり?ばれる?警察の調べ方などを専門弁護士が解説

・窃盗で捕まってしまった
・初犯だけど実は余罪がある
・余罪を疑われないための対応を知りたい

窃盗で捕まったが余罪をすでに自覚している場合、対処方法はどうすべきか迷うことも多いでしょう。また、初犯でも余罪があるとすれば、今後の処分への影響を心配に感じることもあるかと思います。

さらに、やってもいない余罪を疑われた場合には、毅然とした態度で反論する必要があります。しかし、相手が捜査機関ということもあり、適切に対応できないことも考えられます。

そこで今回は、多くの刑事事件を手掛けてきた実績のある専門弁護士が、窃盗で疑われる余罪について・余罪が発覚する理由・実際の取調べの方法・余罪の取調べでの自白の方法などのポイントについて解説します。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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窃盗での余罪の調べ方を知る前に確認しておきたいこと

窃盗での余罪の取調べ方法を知る前に確認しておきたいことを3つ解説します。

  • そもそも余罪とは
  • なぜ余罪が疑われるのか
  • 初犯でも余罪を疑われるのか

1つずつ解説します。

そもそも余罪とは

窃盗での余罪の取調べ方法を知る前に確認しておきたいことの1つ目は、そもそも余罪とはなにか、についてです。

余罪とは、被疑者の場合、被疑事実となっていない犯罪事実のことをいいます。また、被告人の場合には、起訴されていない犯罪事実のことをいいます。

たとえば、ある人がA店での貴金属類の窃盗で起訴された場合、B店で高級腕時計の窃盗を起こしている場合は、B店での窃盗が余罪です。

なぜ余罪が疑われるのか

窃盗での余罪の取調べ方法を知る前に確認しておきたいことの2つ目は、なぜ余罪が疑われるのか、についてです。

窃盗は、生活困窮という動機によるものであれ、窃盗症(クレプトマニア)や認知症といった精神疾患によるものであれば、繰り返し行われることが多い犯罪です。

そのため、捜査機関は、窃盗の取調べを進め、犯人が犯行に及ぶ事情についても究明できれば、一時的・単発的なものなのかそうでないかを経験上からある程度の見当をつけることが可能です。

捜査機関は、被疑者が逮捕されているか否かにかかわらず、検挙した窃盗が複数の窃盗の一部にすぎないと考えられる場合、余罪があるものとして捜査を進める可能性があります。

初犯でも余罪を疑われるのか

窃盗での余罪の取調べ方法を知る前に確認しておきたいことの3つ目は、初犯でも余罪を疑われるのか、についてです。

窃盗の初犯であっても、究明したその犯行の背景により余罪が疑われることはあります。検挙した窃盗が複数の窃盗の一部にすぎないものと捜査機関が判断した場合、余罪があるものとして捜査を進められます。

しかし、余罪がないのであれば、毅然とした態度で余罪はない旨を捜査機関に伝え、それ以上疑われないことが大切です。

窃盗で余罪ありの場合に発覚する調べ方

窃盗事件の取調べでの余罪発覚の仕方を2つ解説します。

  • 自白する
  • 警察の捜査

1つずつ解説します。

自白する

窃盗事件の取調べでの余罪発覚の仕方の1つ目は、自白することです。

被疑者は、逮捕・勾留されているか否かにかかわらず、捜査機関から取調べを受けます。その取調べ中に被疑者が自ら他の犯罪事実(余罪)を自白すると、余罪が発覚します。

被疑者が積極的に余罪を自白することもありますが、一方で、捜査機関が余罪があると判断して「他にやっていないか」「他にやっているのなら、話してしまったらどうだ」などと質問し、これを受けて被疑者が余罪を自白することにより、余罪が発覚する場合もあります。

警察の捜査

窃盗事件の取調べでの余罪発覚の仕方の2つ目は、警察の捜査です。

警察官は、被害者や被害者側関係者・警備会社・第三者などからの届出により認知した窃盗事件が、捜査対象の犯人が犯した窃盗事件(以下「本件」という)と犯行の手口が類似していれば、本件犯人との関係で余罪にあたるのではないかと疑うことにつながる場合があります。

たとえば、窃盗(ひったくり)で本件犯人を逮捕したところ、本件犯人の行動範囲内で頻繁に同様の手口のひったくり事件が発生していたとき、本件犯人には同種の余罪があるとの推測が成り立つといえます。

この場合、警察官は届出のあったひったくり事件について以下の裏付け捜査を行います。

  • 現場付近の防犯カメラの映像解析
  • 被害者による面通し
  • 本件犯人宅に対する本件に基づく捜索や差押えの実施
  • 目撃情報の収集や被害品の処分先の割り出し
  • 検出された指紋と本件犯人の指紋との照合

裏付け捜査の結果、別件の犯行が裏付けされれば余罪と判断され、さらにその別件事件で逮捕することもあります。

窃盗で余罪があるか調べられるのはなぜ?

窃盗事件の取調べでの余罪の疑われ方と背景について3つ解説します。

  • 背景1:地域で同様の事件が起こっている
  • 背景2:防犯カメラの映像が残っている
  • 背景3:窃盗事件自体の常習性が高い

1つずつ解説します。

背景1:地域で同様の事件が起こっている

窃盗事件の取調べでの余罪の疑われ方と背景の1つ目は、地域で同様の事件が起こっていることです。

被疑者の窃盗事件(以下「本件」という)の取調べを進める中で、被疑者の行動範囲内にある地域で同様の窃盗事件(以下「別件」という)が起こっている場合、同一犯人による連続窃盗事件として一連の事件を捜査対象とすることが一般的といえます。

そうした場合、本件と別件について、被害者の性別・年齢・被害物件・犯行の時間帯・犯行の場所・犯行の態様・犯行の手段や方法などを比較し、一致や類似点が多ければ、本件と別件は同一犯人による犯行の疑いが濃厚だといえます。

結果、別件が被疑者の余罪にあたるとして、捜査が進められる可能性が高まります。

背景2:防犯カメラの映像が残っている

窃盗事件の取調べでの余罪の疑われ方と背景の2つ目は、防犯カメラの映像が残っていることです。

被疑者の窃盗事件(以下「本件」という)の取調べを進める中で、防犯カメラの映像が残っている窃盗事件(以下「別件」という)が判明した場合には、映像解析が行われます。

そして、映像の鮮明化につとめて犯行状況や犯人像を確認するとともに、本件犯人と別件犯人との対人異同識別が行われます。しかし、その映像だけで両者の同一性を確認するには限界があることもあります。

そのため、犯行現場だけでなく、その周辺の防犯カメラ映像も参照し、犯人の逃走経路の割り出しや足取りの確認・防犯カメラの映像を公開しての追跡捜査・自動車が利用されていればナンバーの割り出しや車体の特徴などからの車両の特定、などが行われます。

これらの防犯カメラの映像の活用により別件犯人が特定され、本件犯人と同一人物となれば、別件についても被疑者の余罪にあたるとして、捜査が進められることになります。

背景3:窃盗事件自体の常習性が高い

窃盗事件の取調べでの余罪の疑われ方と背景の3つ目は、窃盗事件自体の常習性が高いことです。

被疑者の窃盗事件の取調べを進める中で同種余罪の存在が判明した場合、窃盗の常習性が疑われることが多いです。

犯罪における常習性とは、特定の犯行を繰り返す性格的・人格的な傾向のことをいいます。常習性の認定には、被疑者の前科前歴が最も重要な資料となります。その場合、犯罪の手口や手段の同質性、動機や原因の共通性を併せて検討すべきだとなります。

窃盗事件自体の常習性は高いですが、余罪の疑いがあるだけでは不十分で、余罪の存在を認定するには余罪の捜査を進める必要があります。

窃盗事件で余罪有りの場合の自白の仕方

窃盗事件の余罪の取調べでの自白の仕方は専門家に相談がおすすめです。そこで、余罪を自白することについて、以下の3つを解説します。

  • 余罪の自白は有利か不利か
  • 自白は必ずするべきか
  • 自白をするときはまず専門家に相談がおすすめ

1つずつ解説します。

余罪の自白は有利か不利か

1つ目は、余罪の自白は有利か不利かを解説します。

有利といえる点はまず、被疑者が犯罪の個数にとらわれず余罪(他の犯罪事実)を自ら自白するのは、真に反省・悔悟し、更生しようとする気持ちの表れであるというアピールができます。その結果、逮捕回避や不起訴につながる可能性が高まります。

一方で、不利といえる点は、自白した余罪でも逮捕・勾留された場合には身柄拘束が長期化する可能性があります。また、余罪でも起訴された場合には処罰される罪も多くなり、量刑が重くなることも考えられます。

自白は必ずするべきか

2つ目は、自白は必ずするべきかを解説します。

被疑者の供述が証拠となるのは、任意にした自己に不利益な事実の承認・自白に限られます。被疑者には黙秘権があるため、黙秘という供述態度を不利益に扱うのは本来は許されていません。

しかし、被疑者が黙秘権を行使したり、否認を続けたりした場合には、余罪を隠しているとして捜査機関の取調べが厳しくなる可能性があります。余罪を素直に自白し、反省の態度と更生の意欲を示していた場合には、不起訴処分あるいは罰金で終わる事件であっても、黙秘・否認などをしていれば、公判請求されることもあります。

検察官も、被疑者取調べ未了・裏付け捜査未了・補充捜査未了・同種余罪あり・処分決定上必要な余罪取調べのため、などを理由として、勾留期間の延長を請求することが考えられます。そうなると、被疑者の身柄拘束期間が長期化する可能性があります。

このように黙秘、否認をする不利益がある一方、黙秘、否認をすることで結局、捜査機関は犯罪を証明できるだけの証拠が得られず不起訴処分になる可能性もあります。自白するかしないかの判断にあたっては専門弁護士の助言が必須です。

自白をするときはまず専門家に相談がおすすめ

3つ目は、自白をするときはまず専門家に相談することがおすすめな理由を解説します。

自白を勧められたとしても、被疑者はなかなか決断がつかないことがあるでしょう。そのような場合にこそ、弁護士が強い味方となってくれるといえます。

弁護士は、被疑者の利益を守ることが仕事です。弁護士は、被疑者の身上経歴・前科前歴の有無・窃盗事件(以下「本件」という)や余罪の内容・家族状況などの全体像を把握し、被疑者の利益を最大限考慮して適切にアドバイスしてくれます。

被疑者は本件事件の取調べを受ける中で、余罪について自白すべきか迷った場合には、専門弁護士による検討、助言を踏まえて判断しましょう。

まとめ

今回は、多くの刑事事件を手掛けてきた実績のある専門弁護士が、窃盗で疑われる余罪について・余罪が発覚する理由・実際の取調べの方法・余罪の取調べでの自白の方法などのポイントについて解説しました。

余罪が疑われるにはそれなりの理由があり、被疑者にとって余罪を自白することが果たして有利なのか迷われることもあることでしょう。そして、被疑者だけで余罪を自白すべきかどうかの結論を出すことは難しい場合が多いものです。少しでも悩まれることがあれば、窃盗事件に精通している専門の弁護士に一度相談してください。

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