窃盗の初犯でも前科つく?事件の流れも専門弁護士が解説

最終更新日: 2023年12月22日

窃盗の初犯でも前科つく?事件の流れも専門弁護士が解説

  • 万引きは今回が初めてだが逮捕されるのか
  • 窃盗の初犯でも逮捕・起訴・前科のケースを知りたい
  • 弁護士に依頼することで初犯であることが有利に扱われるのか

初めて窃盗罪を犯したとき、初犯なのでなんとか穏便に済ませられないか・被害弁償を申し出たいがどう対処したらよいのか・弁護士に依頼すれば初犯ということで有利に取り計らってもらえるのではないかなど、ご自分の身が今後どうなるのか心配になっている方もいることでしょう。

そこで今回は、多くの刑事事件を解決に導いてきた実績のある専門弁護士が、万引きなどの窃盗罪の場合、初犯でも前科はつくのか、初犯で前科を回避するポイントなどについて解説します。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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窃盗罪の初犯の刑罰や逮捕後の流れ

窃盗罪の初犯の立場になったときの法的知識は以下の3つです。

  • 窃盗罪
  • 窃盗罪での逮捕は3種類
  • 逮捕されたあとどうなるのか

1つずつ解説します。

窃盗罪

1つ目は、窃盗罪についてです。

窃盗には、刑法235条の窃盗罪が適用されます。刑法235条は、

「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」

と規定しています。窃盗事件の場合、成年事件と少年事件で、逮捕後の手続きがそれぞれ異なります。

窃盗罪での逮捕は3種類

2つ目は、窃盗罪での逮捕は3種類ということについてです。

窃盗罪の逮捕には、現行犯逮捕、通常逮捕、緊急逮捕の3種類があります。

【現行犯逮捕】

現行犯逮捕とは、令状によらないで逮捕することをいいます。現行犯人は誰でも逮捕状なしに逮捕することができます。現行犯人とは「現に罪を行い、又は現に罪を行い終った者」をいいます(刑訴法212条1項)。

「現に罪を行っている者」とは、特定の犯罪の実行行為を行いつつある犯人であって、それが逮捕者の面前で行われている場合です。「現に罪を行い終った者」とは、特定の犯罪の実行行為を終了した直後の犯人であって、このことが逮捕者に明白である場合です。終了した直後とは、犯罪を行い終った瞬間又はこれと極めて接着した時間をいいます。

もっとも、犯罪を現認した私人が警察官に通報し、警察官が急行した場合に、犯人がなお現場におり、現場の状況から、罪を行い終った直後と認められるときは、現行犯人として逮捕できると考えられます。

万引きの例でいいますと、万引きを現認した店員、警備員や万引きGメンは、現行犯逮捕することができます。

【通常逮捕】

通常逮捕とは、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときに、裁判官があらかじめ発する逮捕状に基づいて逮捕することをいいます

万引きの例でいいますと、店員が万引きを現認したものの、客の混雑に紛れて犯人を見失い、逮捕できなかった場合、あるいは、買い物客の不自然な動きや怪しい行動を現認した店員、警備員や万引きGメンの情報、万引きを目撃した客からの通報などを受けて、監視カメラや防犯カメラの画像をチェックし、犯行を確認して犯人を特定した場合には、これらの証拠により発付された逮捕状に基づき、通常逮捕することができます。

【緊急逮捕】

緊急逮捕とは、検察官、検察事務官又は司法警察員が、殺人罪、傷害罪、窃盗罪や強盗罪のような、「死刑又は無期若しくは長期3年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないとき」(刑訴法210条1項)、その理由を告げて被疑者を逮捕することをいいます。

この場合には、事後に直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなければならず、逮捕状が発せられないときは、直ちに被疑者を釈放しなければなりません。

万引きの例でいいますと、店員の目撃情報に基づき、警察官が捜査を開始して巡回中、目撃情報に沿う者を発見して職務質問し、その者が盗品を所持している場合には、緊急逮捕することができます。

逮捕された後どうなるのか

窃盗犯人が逮捕されたあとの流れを成年事件と少年事件とに分けて見てみましょう。

【成年事件】

成年事件の場合は、次のような流れになります。

窃盗で逮捕された場合、自由が制限されるのは最大で72時間です。その後、引き続き身体を拘束するのが勾留です。

裁判官は、検察官から勾留の請求があると、勾留質問を行って、その当否を審査しますが、窃盗を犯した疑いがあり、住居不定、罪証隠滅のおそれ又は逃亡のおそれのいずれかにあたり、捜査を進めるうえで身体の拘束が必要だと判断した場合には、10日間の拘束を認める勾留決定をします

検察官は、原則としてこの10日間で起訴・不起訴の判断をしなければなりませんが、やむを得ない事情がある場合は10日を上限として勾留の延長を裁判官に請求することができ、裁判官は、請求に理由があれば10日を上限として勾留の延長を決定することができます

検察官から勾留請求があった場合でも、住居不定や逃亡のおそれ、罪証隠滅のおそれがなければ、勾留は認められません。

また、不起訴処分(起訴猶予)や罰金が考えられる窃盗事案の場合、あるいは早期に、示談により被害弁償がなされた場合には、事案によるとはいえ、検察官は、勾留請求前の段階で被疑者を釈放し、その後は在宅事件として、捜査が進められる場合もあります。

検察官は、捜査の結果を踏まえ、不起訴処分(起訴猶予)にするか公訴提起するかを決めます。公訴提起は、簡易裁判所あるいは地方裁判所にします。裁判結果としては、罰金、執行猶予付き、保護観察付き執行猶予、実刑の判決です。

【少年事件】

少年事件の場合は、次のような流れになります。

検察官は、逮捕された少年の身柄を受け取り、勾留の要件が備わっている場合に、裁判官に対して、勾留の請求に代え、観護措置を請求することができます。

観護措置には、身柄を拘束しない家庭裁判所調査官による観護と、少年鑑別所への収容を伴うものとがありますが、勾留に代わる観護措置は、後者を意味します。

後者の場合には、勾留とは異なり、刑事施設である拘置所あるいはそれに代用される警察の留置施設ではなく、少年の身柄の取扱いに精通している少年鑑別所にその身柄が収容されることになります。その期間は10日間とされており、勾留と違って延長は認められません。

検察官の少年に対する勾留請求は、「やむを得ない場合」にしかなしえず、それに対応して、裁判官も、「やむを得ない場合」にしか勾留状を発しえないとされています。そのため、少年による窃盗事件(その多くは万引き事件)のような場合には、規定上はもとより、事件の性質上からも、観護措置がとられることがあります。

少年が窃盗事件を起こすと、捜査機関は、犯罪の嫌疑がある限り、家庭裁判所に事件を送致しなければなりません(全件送致主義)。

家庭裁判所に送致されると、家庭裁判所が観護措置をとり、最長8週間、少年鑑別所に収容されます。

家庭裁判所は、送致された窃盗事件につき、調査の結果、少年を保護処分や検察官送致(窃盗の初犯の場合、検察官送致は考えられない)などの処分をしなくても、調査、審判等における様々な教育的働きかけにより、少年に再非行のおそれがないと認められる場合には、少年に処分をしないこととしたり、軽微な事件であって調査等における教育的な働きかけで十分な場合には、審判を開始せずに調査のみを行って事件を終らせたりすることもあります。

他方、少年に要保護性(将来再び非行を行う危険性があること)が認められる場合には、家庭裁判所は、決定をもって、保護観察、児童自立支援施設又は児童養護施設への送致、少年院送致のいずれかの保護処分にします。

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窃盗の初犯でも前科はつく?

同じ窃盗事件といっても、その態様には様々なものがあります。万引きの他、車上・部品ねらい、置き引き、自動販売機ねらい、空き巣、忍び込み、出店荒らし、乗り物盗(自転車盗や自動車盗など)、ひったくり、職業的な手口による犯行(スリなど)、金庫破りなどの大金を目的とした犯行、盗みの七つ道具を携行しての犯行などです。

上記のように、窃盗の犯行態様には様々なものがあることからも、被害額の多寡にかかわらず、悪質性の高いものについては、窃盗罪が初犯だからといって、不起訴処分といった、前科のつかない軽い処分で済むというものではありません。

そうなると、窃盗の初犯であっても、略式命令請求や公判請求され、罰金や懲役(執行猶予付きを含む)に処せられて前科がつくものもあれば、結果として、不起訴処分(起訴猶予)で終り、前科がつかない場合もあるということになります。

平成30年版犯罪白書(平成29年の統計)によりますと、万引きは窃盗罪の中で最も多いとされています(窃盗罪全体の36.8%)。そこで、万引きが初犯の場合の処分について考えてみましょう。

万引きをし、逮捕された者にとって、最も有利なのは検察官の不起訴処分となります。この処分は前歴とはなっても、前科がつくことはありません。処分結果が罰金であっても、前科がつくことになりますので、できれば、不起訴処分で済むことが望ましいといえます。

ここで統計を確認しておきましょう。2017年検察統計年報(平成29年の統計)によりますと、検察庁が窃盗罪で送致を受けた者の起訴率は39.8%(そのうち、公判請求が77.5%、略式命令請求が22.5%)、不起訴率は60.2%となっています。

また、上記の平成30年版犯罪白書によりますと、窃盗罪の科刑状況は、簡易裁判所では実刑率が31.3%、執行猶予率が68.7%、地方裁判所では実刑率が54.3%、執行猶予率が45.7%となっています。

このような統計に照らして考えると、初犯の万引きについては、被害店舗と示談がなされれば、検察官の不起訴処分の可能性が高いといえます。

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窃盗の初犯で前科を回避するには示談

窃盗の初犯で前科を回避するポイントは示談であることから、その基本事項を3つ解説します。

  • 示談交渉とは
  • 示談書とは
  • いわゆる示談金の相場は?

1つずつ解説します。

示談交渉とは

1つ目は、示談交渉とはについて解説します。

窃盗罪の場合、検察官が不起訴処分で処理するか、起訴の場合でも略式命令請求にするか公判請求にするか、起訴後の裁判結果が罰金あるいは執行猶予付き判決となるか、実刑としても刑期が軽減されるかに最も影響を与えるのが、被害者や被害店舗との示談です。

窃盗事件の場合には、被疑者が被害者や被害店舗の住所等を知っている場合もありますが、そのような場合であっても、被害者や被害店舗の心情に思いを致せば、被害金品の返還であれ、被害弁償であれ、被疑者の家族が被害者や被害店舗と直接交渉をもつことは避けなければなりません。

そのため被害者や被害店舗との折衝、そして示談交渉などは、法律のプロである弁護士に委ねるのが望ましいことになります。

弁護士であっても、捜査機関の意向を無視して被害者や被害店舗と直接接触をもったり、示談交渉をしたりすることは望ましいものではありません。弁護士は捜査機関を介して被害者や被害店舗の意向を打診してもらい、その了解が得られれば、直接会って示談交渉をすることになります。

そして弁護士であれば、被害者や被害店舗の心情にも配慮しながら被疑者の謝罪文を提示するなどして、適切な金額(被害額の弁償金に迷惑料を加味したもの)で示談成立に尽力しますし、場合によっては嘆願書まで作成してもらえるかもしれません。

示談書とは

2つ目は、示談書とはについて解説します。

被害者や被害店舗との間で示談が成立した場合には、示談書を作成します。

示談書の一般的な例を「店舗で万引きを行った」と仮定して示します。被害者や被害店舗を「甲」、被疑者を「乙」とします。

  • 「乙は、本件について深く反省し、甲に対して謝罪の意思を表し、甲はこれを受け入れる。」
  • 「乙は、甲に対し、本件の示談金として金〇〇円の支払義務があることを認める。」
  • 「乙は、甲に対し、前項の金員を本日支払い、甲はこれを受領した。」
  • 「甲は、本件につき、乙を許すこととし、刑事処分は求めない。」
  • 「甲と乙は、本件に関し、本示談書に定める他、何らの債権債務関係のないことを相互に確認する。」

起訴、不起訴を決定するにあたり、検察官は、被害者が「乙を許す」、「刑事処分を求めない」という意向を示談書において表明していることを重視します。

いわゆる示談金の相場は?

3つ目は、いわゆる示談金の相場は?ということについて解説します。

同じ窃盗罪であっても、犯行に至る経緯・動機・目的、犯行の方法、被害の結果が異なりますので、被害の深刻さ、その程度や被害感情は一律ではありません。

窃盗罪の場合は基本的に侵害された財産的価値が示談金の基準となります。しかし、その財産的価値も通常は金銭的な交換価値を意味するとはいえ、例外的に、交換価値はないものの、被害者である所有者・占有者にとって主観的価値がある物も少なくありません。

さらに、被害に遭ったことから受ける恐怖等の被害感情も無視できませんし、捜査協力などの被害者や被害店舗の負担も勘案する必要があります。また、被害額の多寡や深刻さ、被害者や被害店舗の今後に与える影響、被害感情の強さについては、被害者や被害店舗ごとに考慮すべき点とも言えます。

このように考えていくと、窃盗罪の場合には、基本的に財産的価値が基準とされるということから、被害者や被害店舗ごとに配慮すべき不確定要素があるとはいえ、窃盗事件では、被害額の弁償金及び迷惑料が示談金の相場ということになるといえます。

窃盗の初犯で示談可能な弁護士の特徴

窃盗の初犯での逮捕・前科を回避できるような示談交渉が可能な弁護士の特徴を2つ解説します。

  • 過去の示談交渉で逮捕・前科を回避した実績がある
  • 窃盗罪の被疑者側の立場の弁護に力を入れている

1つずつ解説します。

過去の示談交渉で逮捕・前科を回避した実績がある

1つ目は、過去の示談交渉で逮捕・前科を回避した実績があることです。

窃盗罪の場合、様々な被害者や被害店舗がいますので、示談交渉となると相手ごとに異なる対応を迫られることもあり、かなり高度な交渉になります。被害者や被害店舗といかに向き合うかは、過去において逮捕・前科を回避した実績のある弁護士にその対応を委任すべきです。

数件だけの実績では心もとないため、数十件の実績があった方が良いでしょう。

窃盗罪の被疑者側の立場の弁護に力を入れている

2つ目は、窃盗罪の被疑者側の立場の弁護に力を入れていることです。

弁護士としては、窃盗罪を犯した被疑者のため、早急に被害者や被害店舗と交渉し、被害を与えたことに見合う適切な金額(被害額の弁償金に迷惑料を加味したもの)を支払い、「処罰を希望しない」などの条項を含む示談を成立させることに尽力します。

【検察官に対する働きかけ】

弁護士は検察官に対し、被害者や被害店舗と示談が成立した場合にはその示談書を提示し、示談が成立していない場合にはその見通しや可能性について説明します。

そして、被疑者の反省の気持ちや今後再犯をしないための対策を具体的に示します。また、就労先が確保あるいは予定されていること、家族ら身元引受人による監督が期待できることも示します。

こうして、刑罰を科さないことが被疑者の社会復帰を容易かつ可能にすることなどを訴え、不起訴処分とするよう働きかけます。

示談が成立している場合には、不起訴処分の可能性は高くなります。窃盗事案の内容によるため、必ず不起訴処分になるとはいえないとはいえ、少なくとも、検察官の不起訴処分の判断を得るには、被害者や被害店舗との示談が重要なことになります。

【取調べに関するアドバイス】

弁護士としては、被疑者が捜査官から取調べを受けるとき、捜査官とどのようなやり取りをすればよいかなどについて、少なくとも被疑者の供述が不利に扱われることのないようにアドバイスします。

一方、犯行を否認している事件、つまり窃盗は身に覚えのない冤罪という場合には、取り調べに対してどのように対処すべきか、綿密に打ち合わせをして対応します。

まとめ

今回は、窃盗の初犯でも前科はつくのか、前科を回避するポイント、示談交渉が可能な弁護士の特徴などについて解説しました。窃盗の初犯のときには、被害者や被害店舗との示談成立が逮捕・前科を回避できる重要なポイントといえましょう。

また、そのためには示談交渉が可能な弁護士が必要となります。窃盗の初犯の方で、逮捕・起訴・前科がつくことを心配している方は、一度専門の弁護士に相談してください。

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