宗教法人を相続?宗教法人へ相続?専門弁護士が解説

2022年08月04日

宗教法人を相続?宗教法人へ相続?専門弁護士が解説

  • 宗教法人を相続することはできるの?
  • 宗教法人へ相続することはできるの?
  • 宗教法人への相続は税金がかかるの?

宗教法人の代表者は、どのように後継者へ承継すればよいのかということに関して疑問をもたれるかもしれません。また、宗教法人へ自分の財産を承継させることを考えておられる方も少なくないと思います。

そこで、今回は、宗教法人を専門とする弁護士が宗教法人の相続(承継)について解説します。

宗教法人を相続(承継)

まずは、宗教法人の財産や事業を後継者に承継させる方法について見ていきましょう。

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
愛知県弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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  • 財産の承継
  • 事業の承継

財産の承継

宗教法人化していない場合、宗教活動に必要な財産は、法的に宗教団体の代表者などの個人が所有していることになります。そのため、代表者などの個人は、後継者に対して代表者の所有する個人財産を遺贈することができます。

また、代表者が死亡した場合には、相続が発生し、代表者の所有する個人財産が相続人に承継されます。

他方、宗教法人の場合、宗教法人名義で財産を所有しておりますので、代表者が死亡したからといって、相続人に宗教法人の財産が承継されることにはなりません。

逆に言えば、代表者の死亡や代表者の遺贈によって、個人に宗教法人の財産が承継されないので、宗教法人としては安定的に宗教活動に必要な財産を維持することができます。

宗教法人は宗教法人法第23条の財産処分として、一定の財産を譲渡することが可能ですが、規則に定められた手続を経る必要があります。

事業の承継

宗教法人には、3人以上の責任役員が置かれ、そのうちの1人が代表役員を務めます(宗教法人法第18条1項)。そのため、宗教法人の事業を承継するためには、宗教法人法及び宗教法人内部の規則に従って、この代表役員の変更手続を行う必要があります。

寺院における代表役員は、住職の地位にある者とするという規則が定められている場合が多いです。また、現在の代表役員が任命する場合や選挙の場合もあります。他方、宗教法人の内部の規則に定めがない場合には、責任役員の互選によって選ばれます(宗教法人法第18条2項)。

そして、代表役員を変更した場合、2週間以内に代表役員の氏名、住所、資格の変更の登記が必要となります(宗教法人法第52条2項6号、第53条)。変更の登記を行なった場合は、所轄庁の認証は不要ですが、登記事項証明書を所轄庁に届け出る必要があります(宗教法人法第9条)。また、宗教法人の役員名簿も変更することが必要です。

なお、責任役員の氏名、住所、資格は登記事項ではないので、変更の登記は必要ありません。

宗教法人への遺贈と税金

少子高齢化が進んできた現代社会では、家族や親族のいない個人が自分の所有する財産を宗教法人に遺贈する人が増えてきました。宗教法人への遺贈の場合、税金面で優遇措置が採られています。ここではこのような宗教法人への遺贈について見ていきましょう。

  • 相続税、贈与税、譲渡所得税
  • 相続税と贈与税の注意点
  • 譲渡所得税の優遇措置

相続税、贈与税、譲渡所得税

まず、相続税、贈与税、譲渡所得税について、簡単に説明します。

相続税は、個人から相続または遺贈により財産を譲り受けた個人に課税されます。また、贈与税も個人から財産をもらった個人に課税されます。また会社の場合は遺贈や贈与を受けた場合、寄付金収入とされ、法人税が課されます。

しかし、宗教法人の場合、原則として遺贈や贈与によって得た財産に関して課税されません。

他方、宗教法人に対して土地や建物などの財産を有償で譲渡した者には、譲渡所得税が課されます。また、個人が宗教法人に対して財産を寄付した場合や、著しく低い価額により譲渡した場合でも、原則として時価で譲渡したものとみなされ、寄付などを行った個人に対して譲渡所得税が課税されます。

相続税と贈与税の注意点

以上のとおり、宗教法人への贈与や遺贈には原則として贈与税や相続税の課税はありません。しかし、注意しなければならない点があります。

宗教法人は、持分の定めのない法人のため、持分がないことを悪用して、相続税、贈与税の脱税に用いられることが少なくありません。そのため、個人に租税回避の意図が認められ、相続税、贈与税が不当に減少する結果となると認められる場合は、宗教法人を個人とみなして、相続税、贈与税が課されることになります(相続税法第66条4項)。

宗教法人が個人とみなされるかは、贈与または遺贈した者の被相続人や親族の相続税、贈与税が不当に減少するか否かにより判断されます(相続税法施行令第31条1項)。

もっとも、宗教法人が以下の要件を全て満たす場合は、贈与税、相続税の負担が不当に減少する結果となると認められるときに該当しないこととされています(相続税法施行令第33条3項)。

  1. 宗教法人の運営組織が適正であり、その役員等の中で親族関係を有する者などの数のうちに占める割合が3分の1以下とする定めがあること
  2. 贈与や遺贈した者やその親族などに、財産の運用及び事業の運営に関して特別の利益を与えないこと
  3. 宗教法人が解散した場合にその残余財産が国等に帰属する旨の定めがあること
  4. 法令違反等に反する事実がないこと

譲渡所得税の優遇措置

先ほどご説明しましたとおり、個人が宗教法人に対して、財産を贈与や遺贈により寄付した場合、譲渡取得税が課されます。

しかし、いかなる場合も譲渡所得税を課すことは、国民が自らの資産を公益のために役立てようとする意思を阻害することになります。そこで、例外として、以下の要件を満たし、国税庁長官の承認を受けた場合には、譲渡所得税が非課税となります(租税特別措置法第40条1項)。

もっとも、宗教法人がこれらの要件を満たし、国税庁長官の承認を受けるハードルは高いのが現状です。

  1. 贈与または遺贈が教育、文化の向上等その他公益の増進に寄与するところが著しいと認められること
  2. 贈与または遺贈に係る財産が贈与または遺贈のあった日以後2年以内にその宗教法人の目的とする公益事業に供されまたは供される見込みであること
  3. 贈与または遺贈により、贈与者、遺贈者の所得税を不当に減少させ、またはその者の親族等の相続税、贈与税を不当に減少させる結果とならないと認められること

宗教法人における収益事業の相続(承継)の注意点

最後に、宗教法人における収益事業の事業承継について、注意点をご紹介いたします。

宗教法人は、宗教活動や公益事業だけでなく、収益事業を行うことができます。そして、収益事業の譲渡について、宗教法人上、特別な規定が設けられてはいないので、収益事業を譲渡することは法的に可能です。

ただ、事業の譲渡にあたり、宗教法人法第23条に掲げられている一定の財産が含まれている場合には、宗教法人法に従った手続を行うことが必要となります。また、財産の譲渡については、宗教法人の規則に従って譲渡を行う必要がありますが、規則に定めがない場合には責任役員の定数の過半数の決議が必要になります(宗教法人法第19条)。そして、財産を譲渡した後は、財産台帳を整理する必要があります。

また、収益事業に関しては、法人税が課せられますので、注意が必要です。一見宗教活動や公益事業と同種の事業に見えても、収益事業であるといった微妙なケースもありますので、収益事業に当たるかどうかの管理が重要になります。

まとめ

以上、宗教法人の相続(承継)について解説しました。

宗教法人は代表役員を変更することで事業承継をすることができますが、宗教法人へ相続する場合には、税制面のメリットがあるものの、注意点があることをご説明しました。

宗教法人に関わる相続や承継には専門的知識を要しますので、宗教法人を専門とする弁護士に相談することをお勧めします。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
愛知県弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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