傷害事件で示談を成立させたい!流れや示談金を決定する要因を解説

最終更新日: 2023年07月11日

傷害事件で示談を成立させたい!流れや示談金を決定する要因を解説

  • 傷害事件を起こしてしまったが、穏便に解決できる方法はないか
  • 示談が成立すれば、加害者側にどのようなメリットがあるのか
  • 傷害事件の示談金の相場はどのくらいなのか

お酒に酔った勢いで他人に暴力行為をふるい負傷させてしまった、駅や電車内のような公共の場で他人とトラブルとなり殴って負傷させた、という事件をニュースや新聞でよく見聞きします。

傷害罪に問われると、最高15年の懲役刑が言い渡されるおそれがあります。しかし、示談が成立すれば減刑の他、不起訴処分で済む可能性もあるでしょう。

そこで今回は、多くの傷害事件に携わってきた刑事事件の専門弁護士が、傷害事件で示談交渉を行うメリット、示談金の相場等を詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • 弁護士が被害者と交渉後、書類に合意内容や示談金額を明記し、示談を成立させる
  • 傷害事件で示談が成立した場合、減刑や不起訴処分となる可能性も期待できる
  • 被害者の負傷の程度等によって、示談の金額は異なる

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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傷害事件で示談を成立させる必要性

他人に暴力をふるって負傷させてしまうと、傷害罪に問われる可能性があります。傷害罪は非親告罪であり、たとえ被害者から告訴されなくても、検察の判断で起訴されてしまうおそれがあります。

しかし、加害者と被害者の示談が成立した場合は、減刑や不起訴処分で済む可能性もあります。

傷害事件で示談を成立させる必要性として以下の3点を紹介します。

  • 不起訴処分になる可能性が高まる
  • 逮捕されても早期釈放の可能性が高まる
  • 処分が軽くなる可能性が高まる

不起訴処分になる可能性が高まる

傷害事件を起こし逮捕された場合、検察官は被疑者(加害者)を起訴するかどうか、一定期間内に判断しなければいけません。

起訴または不起訴の決定にあたり、主に次のポイントを考慮します。

  • 結果の重大性:被害者の負傷の程度は深刻か否か
  • 悪質性:事件が計画的で、凶器が使用されたか等
  • 反省の有無:被疑者が真摯に反省し謝罪しているのか
  • 示談の有無:被害者と示談が成立しているのか

負傷の程度が深刻ではなく、事件が突発的に起きたと判断され、更に示談も成立し被害者が被害届を取り下げた場合、検察官の判断が不起訴に傾く可能性は高くなります。

示談が成立しただけで必ず不起訴となるわけではありませんが、示談の成立は起訴または不起訴を決定する重要なポイントです。

逮捕されても早期釈放の可能性が高まる

傷害事件を起こすとその場で現行犯逮捕されたり、後日逮捕されたりする可能性があります。逮捕後は勾留され、長期間にわたり留置場で生活しなければいけません。

逮捕後は迅速に弁護士と面会し、被害者との示談交渉を依頼しましょう。速やかに示談が成立すれば、早期釈放の可能性が高まります

処分が軽くなる可能性が高まる

被害者との示談が成立しても、結果の重大性や悪質性を考慮し、検察官が起訴を決める場合もあります。

傷害罪で起訴されたときは刑事裁判となりますが、裁判官は検察官と被告人(加害者)双方の主張を聞いて、判決を下します。

その場合に、示談は成立していれば、執行猶予の付く可能性があるでしょう。

執行猶予が付くと、たとえ有罪判決でも刑務所に入らず普段通りの生活を送ることが可能です。無事に猶予期間が終了すれば、刑の言渡しの効力が失われます。

傷害で示談が成立するまでの流れ

傷害事件を起こし逮捕された場合、速やかに弁護士と面会し示談交渉を進めるよう依頼します。示談成立までの手順は次の通りです。

  • 被害者にコンタクト
  • 条件交渉
  • 示談書の作成
  • 示談内容の履行

それぞれを詳しくみていきましょう。

被害者にコンタクト

まず被害者と連絡を取るため、弁護士が検察官に被害者との示談交渉の申し入れを行います。

検察官は被害者に弁護士が交渉したい旨を伝え、交渉に応じるか否かの意思を確認します。

被害者が応じる場合は、検察官が弁護士に被害者の連絡先を伝え、交渉の準備が整います。

条件交渉

被害者側の同意を得て、交渉日時・場所を決定し、弁護士は被害者に直接会って、負傷の状態を聞いたり、被疑者(加害者)の謝罪の意を伝えたりした後、交渉を開始します。

弁護士は被害者の負傷の状態等を踏まえ、示談金額・示談の条件を提示し被害者側と話し合います。

被害者が被疑者(加害者)へ直接の謝罪を要求しない限り、被害者側の心情を考慮し、基本的には被疑者(加害者)と面会させることはありません。

示談書の作成

被害者側と示談金額・示談条件について合意できれば、示談書が作成されます。

示談書の作成は義務付けられていないものの、弁護士は示談成立後に加害者・被害者双方の認識のズレやトラブルが生じないよう文書化を行います。

示談書で明記されるのは主に次のような内容です。

  • 被疑者(加害者)と被害者の氏名等
  • 合意内容(被害者の被害届取り下げの手続き等も含む)
  • 示談金額および支払方法、期日

示談書の内容を当事者が最終確認、署名・押印すれば完成です。

示談内容の履行

示談書が完成すれば被疑者(加害者)と被害者双方が、合意内容を履行しなければいけません。合意内容が示談金の支払い、被害届の取り下げならば次の通りです。

  • 被疑者(加害者):示談書に明記された示談金額を、指定された期日に支払う
  • 被害者:警察署で被害届の取り下げ手続き

なお、示談書で当事者が事件内容・示談内容を口外しない「守秘義務」も定めている場合、継続して合意事項を守る必要があります。

傷害事件における示談金を決定する要因

傷害事件の示談金額は明確に法定されているわけではありません。被害者の負傷の状態、精神的苦痛等も考慮し金額を決めます。

ここでは示談金を決める主な要因として以下の5つを紹介します。

  • 被害者の被害状況
  • 被害者が加害者に抱く感情
  • 被害者が抱く精神的苦痛
  • 加害者の社会的立場や経済状況
  • 加害者の犯罪歴

被害者の被害状況

傷害事件の被害者の負傷の状態はケースごとに異なり、擦り傷や打撲程度で済む場合もあれば、後遺障害が残る重大な事態も想定されます。

当然ながら深刻な状態であるほど、示談金は高額になるでしょう。重大な被害ならば示談金が数百万円を超えるケースもあります。

被害者が加害者に抱く感情

傷害事件の被害者側は負傷していることもあり、加害者に対する処罰感情を強く持っています。

たとえ負傷の状態が深刻でなくても、高額な示談金を要求したり、示談にすら応じなかったりする場合があるかもしれません。

そのような場合、加害者本人の真摯な反省と謝罪に加え、弁護士の粘り強い交渉がなければ被害者側はなかなか納得しません。

被害者が抱く精神的苦痛

被害者は負傷が深刻でなくても暴力を受けたことによる精神的苦痛を感じている場合もあります。

被害者の精神的な苦痛が大きければ、その分だけ示談金も高額になるでしょう。

加害者の社会的立場や経済状況

加害者の社会的な立場や経済事情が示談金に影響を与える可能性があります。

例えば、会社経営者が他人を負傷させたのと、大学生が他人を負傷させたのでは、前者の方が示談金は高くなると考えられます。

もしも示談金額が20万円ならば、加害者が会社経営者の場合は高額ではないと感じるかもしれません。これでは反省し、苦労して支払ったとは言えません。

しかし、加害者が大学生でアルバイトにより生計を立てているなら、示談金額が20万円となると大金であり、苦労しながら支払ったと思われます。

一般的に社会的地位が高く、資産を多く持っている加害者の場合、示談金が高額になる可能性があるでしょう。

加害者の犯罪歴

加害者が以前にも傷害罪で起訴された等の事実があれば刑罰が重くなる可能性がありますが、それでも示談が成立すれば減刑がなされるかもしれません。

そのため、なんとか示談交渉を成功させたい場合は、示談金が高くなるケースも想定されます。

傷害事件における示談金の相場

示談金は基本的に被害者の負傷の程度で、支払額の相場が変わってきます。負傷が深刻なほど、その金額は高くなる傾向があります。

ここでは以下の4つのケースに分けて解説をします。

  • 全治1週間程度
  • 全治2週間程度
  • 全治1か月程度
  • 骨折がある場合

全治1週間程度

打撲やアザができた等の比較的軽微な負傷が該当します。入院は不要で被害者の治療費は高額とならず、後遺症の心配も無いはずです。金額としては10万円程度が目安となります。

ただし、加害者の犯罪歴や社会的地位によっては、目安を上回る金額が必要となる場合もあるでしょう。

全治2週間程度

軽いむち打ちや捻挫等の負傷が該当します。全治2週間を超える場合、入院は不要となる可能性が高いものの十分な治療を受けるため、仕事を休む必要はあるでしょう。

この休業による損害も示談金の算定へ影響を与えます。金額としては20〜40万円程度が目安となります。

全治1か月程度

骨折を伴わない負傷であっても、通院で全治1か月程度を要するケースもあります。治療費は比較的高額で、休業期間も長くなる傾向があります。

示談金は治療費・休業補償等も算定され、50〜100万円程度が目安です。ただし、入院すれば目安を上回る金額が必要となる場合もあります。

骨折がある場合

被害者を骨折させたら、長期の入院を必要とするケースも出てきます。入院費・治療費・休業補償を考慮するので、示談金は100万円以上の高額となる可能性が高いでしょう。

また、被害者に後遺症が残れば、逸失利益(被害に遭わなければ本来得られるはずの収入)を含めて算定され、損害賠償の金額が数百万円を超えてしまう場合もあります。

まとめ

今回は多くの傷害事件に携わってきた刑事事件の専門弁護士が、示談交渉を行う必要性、示談の金額の目安について詳しく解説しました。

傷害事件は示談金を支払いさえすれば、解決できる問題ではありません。示談金を支払うとともに誠心誠意、被害者へ謝罪し反省する姿勢が大切です。

傷害事件を引き起こしたら、弁護士に相談して早期の問題解決を目指してみてはいかがでしょうか。

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