住居侵入罪になる?時効は?基本知識を弁護士が解説
最終更新日: 2024年02月27日
どんな場合に住居侵入に当たるのか?時効は?と疑問に思う方はおられるかと思います。 専門の弁護士が住居侵入罪について説明します。
住居侵入罪の刑法の条文(罰条)、罰則
住居侵入罪の条文は、刑法第130条にあります。
「正当な理由がないのに、人の住居・・・に侵入し・・・た者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。」
このように住居侵入罪の罰則は、(1か月以上)3年以下の懲役又は(1万円以上)10万円以下の罰金です。
懲役刑となるのか罰金刑となるのかについては、前科前歴の有無や犯行態様の悪質性、被害感情の強さなど諸般の事情を考慮して裁判所が決定します。
住居侵入罪の構成要件(成立要件)
住居侵入罪の条文には、「正当な理由がないのに、人の住居・・・に侵入し」と規定されています。
この住居侵入罪の構成要件(成立要件)である、「正当な理由がない」、「人の住居」、「侵入」それぞれの意味について、以下ご説明します。
- 住居侵入罪の保護法益は、住居の管理権者の意思決定
- 住居侵入罪の「侵入」の定義(意味)
- 住居侵入罪の対象である住居とは
- 住居侵入罪の構成要件である正当な理由とは
- 不退去罪
住居侵入罪の保護法益は、住居の管理権者の意思決定
刑法は、何らかの利益を保護するために各犯罪を定めています。例えば、傷害罪であれば人の身体の安全が保護法益ですし、窃盗罪であれば他人の財産が保護法益です。
それでは住居侵入罪が保護している法益は何でしょうか。
この点については、判例上、管理権者の、住居に誰を立ち入らせるか、誰の滞留を許すかを決定する自由とされています。
無断で住居に侵入する行為はこのように管理者の管理権を侵害するということです。
住居侵入罪の「侵入」の定義(意味)
住居侵入罪に該当する「侵入」の意味ですが、これは先ほどの保護法益を侵害するような行為をいいます。
すなわち、「侵入」とは、住居にその管理権者の意思に反して立ち入る行為をいいます。
この管理者の意思に反するかどうかについては、住居の管理状態、立ち入りの目的などの事情を考慮して、管理者が当該立ち入りを容認していないといえるかどうかによって判断されます。
住居侵入罪の対象である住居とは
住居とは、人が起臥寝食する場所、日常の生活に使用する場所をいいます。
利用中のホテルの客室もその利用者の「住居」となります。
また、他人の家に許可を得て入った場合も、許可を得ていない他の部屋は「住居」に該当し得ますので、そこに立ち入った場合に住居侵入罪となります。
なお、住居の内部だけでなく、その庭(囲繞地)や屋根の上も「住居」に含まれます。
住居侵入罪の構成要件である正当な理由とは
住居侵入罪は、「正当な理由」なく「侵入」する場合に成立します。
この「正当な理由」という構成要件は、「違法に」という位の意味合いであって、正当な理由のない侵入行為が違法になることを注意的に規定したに過ぎません。
例えば、盗みを働く目的で侵入したり、住人に危害を加える目的で侵入する、覗き目的で侵入することは正当な理由のない侵入行為です。
不退去罪
先ほどご紹介した刑法第130条は、「正当な理由がないのに・・・要求を受けたにもかかわらず・・・退去しなかった」という行為も不退去罪として処罰しています。
不退去罪は、住居には適法に又は過失によって立ち入った場合で、住居権者から出ていくように言われたにもかかわらず、出ていかない場合に成立します。
住居侵入罪、邸宅侵入罪、建造物侵入罪 罪名の違い
刑法第130条は、「正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物・・・に侵入し・・・た者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。」と規定しています。
このように住居侵入罪以外にも邸宅侵入罪、建造物侵入罪が規定されています。それぞれどのように異なるのでしょうか。
空き家への侵入は住居侵入罪?
住居侵入罪、邸宅侵入罪、建造物侵入罪はいずれも「侵入」行為自体は同じですが、「侵入」先となる建物の種類、状態によって区別されます。
「邸宅」とは、日常的に使用はされていない住居のことで、別荘や空き家などがこれにあたります。
「建造物」とは住居、邸宅以外の建物です。
邸宅侵入罪と建造物侵入罪の対象はいずれも、「人の看守する」、すなわち施錠されている、監視員が置かれているなど、他人が事実上管理・支配している建物に限られます。
このような管理支配されていない廃屋に立ち入る行為は軽犯罪法違反(1条1号)となります。
住居侵入罪と不法侵入の違い
一般に、住居侵入や建造物侵入のことを「不法侵入」と言うことがあります。
この「不法侵入」は法律用語ではなく、広く、正当な理由なく他人の住居や建造物等に侵入することを意味します。
先にご説明しましたとおり、刑法上は、対象によって住居侵入罪や邸宅侵入罪など区別して罪名、構成要件を定めています。
住居侵入罪に関するその他の知識
最後に住居侵入罪に関するその他の知識を説明します。
同意・承諾がある場合の住居侵入罪
先ほどご説明しましたが、「侵入」とは、住居に管理権者の意思に反して立ち入る行為をいいます。
そのため、管理権、居住者が立ち入りについて同意・承諾しているのであれば、「侵入」には該当せず、住居侵入罪は成立しません。
もっとも、例えば、強盗の目的を秘して同意・承諾を得て立ち入ったとしても、その同意・承諾は無効です。
また、立ち入りの際には管理者、居住者が不在であったものの、管理者、居住者が立ち入りを同意・承諾したであろうと推定される場合にも「侵入」には該当しません。
ただし、このような場合も、例えば、別居して暮らす家族が窃盗目的で住居に立ち入ったケースなど、その本当の目的を知っていたら管理権者は同意・承諾しなかったであろうという場合には同意・承諾の推定は認められません。
住居侵入罪の公訴時効は何年か
公訴時効にかかる年数については、法定刑の重さによって法律が規定しています。
3年以下の懲役又は罰金が法定刑の住居侵入罪の公訴時効は、3年です(刑事訴訟法第250条2項6号)。
住居侵入罪は非親告罪
被害者の告訴がなければ起訴処分とすることができない犯罪を親告罪といいますが、法律上、住居侵入罪は親告罪となっていません。
そのため、被害者の被害届さえあれば、告訴がなくとも、検察官は起訴処分することができます。もっとも、前科の有無などにもよりますが、被害者と示談が成立している場合には、起訴処分にならないケースが多いでしょう。
住居侵入罪の未遂罪も処罰される
住居侵入罪については未遂罪も法律に定めがあります。
ですから、施錠を壊そうとした時点、塀を乗り越えようとした時点で逮捕された場合も未遂犯として処罰されます。
住居侵入罪は故意犯のみを処罰され、過失犯は処罰されない
住居侵入罪は故意犯のみが処罰対象となっています。そのため、例えば、泥酔して誤って他人の敷地に立ち入ってしまったというケースなどには、故意が認められず、処罰されない可能性があります。
まとめ
以上、住居侵入罪についてご説明しました。
住居侵入事件の被疑者として逮捕、勾留されたときには、弁護士の身柄解放活動によって早期の釈放を実現する必要があります。
また、住居侵入事件の被疑者として起訴処分とならないためには、被害者との示談が重要です。
早期釈放、示談をご希望の方は、刑事事件の経験豊富な弁護士にご相談ください。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。