住居侵入罪の初犯の捜査や刑事罰について専門弁護士が解説

最終更新日: 2023年12月22日

住居侵入罪の初犯の捜査や刑事罰について専門弁護士が解説

・住居侵入罪の被害者となってしまったが今後どうなるのか
・逮捕されて身柄拘束されてしまうのか
・初犯でも起訴されて前科がつくのか

初めて住居侵入罪を犯してしまい、上記のような不安をもっている方もおられるかもしれません。

今回は初犯の住居侵入罪の捜査や刑事罰について専門弁護士が解説します。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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住居侵入罪の初犯の捜査

まずは住居侵入罪の捜査方法や捜査機関について説明します。

住居侵入罪の検挙件数、起訴率

令和元年の統計によりますと、住居侵入事件の認知件数は1万2853件、うち犯人が検挙された件数は6332件です。

したがって検挙率は49.3%ですが、刑法犯の平均検挙率が39.3%であることを踏まえると、住居侵入事件の検挙率は比較的高いといえます。

住居侵入罪の捜査方法

ここで、住居侵入罪の典型的な捜査方法について簡単に確認しておきましょう。

防犯カメラ

現行犯逮捕された場合も、後日逮捕の場合も防犯カメラ映像の捜査は必ず行われます。犯行現場がマンションであれば侵入する一連の行動が映っている可能性は高いでしょう。

戸建てであっても最近は防犯カメラを設置していることも多くありますし、被害宅の近所の防犯カメラに犯人が映っている可能性も十分あります。

防犯カメラ映像は過去の動かぬ客観的証拠ですから、住居侵入事件の捜査においても非常に重要です。

家宅捜索

被疑者の家宅捜索も通常行われます。窃盗や盗撮など住居侵入後に続く犯罪の証拠が残っている可能性がありますし、防犯カメラ映像に映る犯行当日の服装も押収する必要があります。

また、窃盗などが目的の住居侵入の場合には余罪が強く疑われますので、余罪に関する証拠を収集するためにも家宅捜索は重要な捜査となります。

取り調べ

犯罪を証明する証拠として、被害者や目撃者の供述は重要ですから、被害者や目撃者の取り調べが実施されます。

被害者や目撃者の取り調べにおいても、被害を誇張している場合など事実に反する供述がなされることがありますので、その話を100%鵜呑みにするのではなく、客観的証拠や被疑者の供述と突き合わせて慎重に取り調べが行われます。

他方、被疑者の取り調べについては、犯行を認めている場合も全て真実を話しているとは限りませんし、被疑者の記憶違いの場合もあります。ですから、被害者や目撃者の供述や防犯カメラ映像などの客観的証拠と突き合わせて、被疑者の記憶に忠実な供述を引き出していきます。

犯行を否認している場合には、恫喝や虚偽による誘導で自白を引き出すことはもちろん違法ですが、他の証拠を踏まえて、記憶にしたがって正直に話すよう説得がなされます。

現場検証

犯人を特定するに至る犯人の痕跡が犯行現場に残っている可能性があります。

また、犯人が検挙されている場合も、被害者や目撃者、被疑者本人の供述に基づき、一連の犯行を把握するために現場検証は必須の捜査となります。

住居侵入罪の捜査期間

刑事事件では、逮捕され、裁判官の決定によって勾留された場合には10日間、さらに最大20日間の勾留延長期間内に捜査を終えて起訴処分又は不起訴処分を決定されるのが原則です。

このように逮捕・勾留されている刑事事件では法律上、捜査期間に制限があることから捜査はスピーディーに進みます。

他方、逮捕・勾留されていない在宅捜査の事件においては、捜査期間に法律上の制限はありません。

特に警察は非常に多数の事件を捜査していることから、在宅事件の捜査期間は半年以上の長期になることもしばしばあります。その後、検察庁に事件送致された後は通常は1,2か月以内には捜査を終え、起訴処分、不起訴処分が決定します。

住居侵入罪の初犯は起訴される?

次に住居侵入罪で検挙された場合に初犯であっても起訴されるのか説明します。

微罪処分になるか?

微罪処分とは、警察から検察庁に事件送致をしない処分です。ですから、微罪処分の場合には前科はつきません。

極めて軽微な犯罪で、検察庁に送致する必要はないと検察庁が指定している事件について、警察の判断で微罪処分となることがあります。

この指定されている事件については一般に公開はされていませんので、住居侵入罪が対象の犯罪となっているのかは明らかではありませんが、住居侵入罪は微罪処分の対象とはされていない可能性が高いです。

微罪処分ではありませんが、被害届が出て未だ本格的に捜査が始まっていない段階で被害者との示談が成立した場合には、被害届の取下げという形で事件が終結することもあるでしょう。

初犯の住居侵入罪も起訴されるのか

平成30年の統計によりますと、起訴処分・不起訴処分が決定した住居侵入事件4487件のうち、初犯は2774件でした。このうち起訴処分となったのは1172件です。

つまり、住居侵入事件では初犯の約42%が起訴処分となり、約58%が不起訴処分となっています。不起訴処分となった事件の相当数は被害者と示談が成立していると考えられます。

したがって、初犯であっても起訴される可能性は十分ありますので、弁護士に依頼をして被害者と示談することは重要となります。

住居侵入罪の初犯の刑罰の重さ

最後に、初犯の住居侵入罪で起訴された場合の刑罰の重さを確認しましょう。

執行猶予はつくのか

住居侵入罪の法定刑は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金です。

初犯で前科がない場合には、起訴されたとしても執行猶予が付くことはほぼ間違いないと考えて良いです。

罰金の金額

初犯の場合には起訴処分となっても略式起訴で罰金10万円となるケースもあります。

このようなケースは窃盗やわいせつ行為などの目的があったのか必ずしも明らかではなく、また無施錠の出入り口から侵入したなど侵入の方法も穏当なケースが多いようです。

初犯でも懲役刑となるケース

何らかの犯罪の前科がある場合には、起訴猶予や罰金刑ではなく、懲役刑となる可能性が高まります。他方、前科のない初犯の場合であっても懲役刑となるケースがあります。

どのようなケースかというと、窃盗の目的やわいせつ目的(盗撮、強制わいせつや強制性交など)での住居侵入の場合です。

このようなケースは、たまたま目的を遂げなかったものの、住居侵入後に予定していた犯罪を考慮すると悪質と評価できますので、罰金刑よりも重い刑罰になる可能性が高くなります。

もっとも、このようなケースでも起訴処分となる前に被害者と示談が成立していれば、起訴猶予処分となる可能性は十分あるでしょう。

住居侵入罪の判決の量刑(刑罰)

前科が多数ある場合には、懲役2年から3年の実刑判決となることがあります。

もっとも、このように実刑判決となるケースは稀で、公判(略式起訴ではなく正式な裁判)となったほとんどのケースでは、懲役6月から1年6月、執行猶予2年又は3年となっています。

まとめ

以上、住居侵入罪の初犯の捜査や刑事罰について説明しました。

住居侵入事件ではよほど多数の前科がない限り、実刑判決となることはありません。もっとも、重要なのは起訴処分となり前科がつくことを回避することです。そのために重要なのはやはり被害者との示談です。特に初犯の場合には示談が成立していれば起訴猶予処分(不起訴処分)となる可能性は高いでしょう。

住居侵入事件の被疑者となり、被害者との示談交渉を検討している方は、できる限り早期に刑事事件の経験豊富な弁護士にご相談ください。

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