器物損壊の示談金の内容や示談書のひな形について専門弁護士が解説

最終更新日: 2023年12月13日

器物損壊の示談金の内容や示談書のひな形について専門弁護士が解説

器物損壊事件の加害者となってしまった場合、その後に逮捕されたり裁判になることを不安に思うことでしょう。大事にせずに速やかに解決するためには被害者との示談が必須となります。

今回は器物破損における示談金や示談交渉について専門弁護士が解説します

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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器物損壊で示談しないと?

器物損壊罪は、親告罪です。つまり、被害者の告訴がなければ、検察官は被疑者を起訴することができない犯罪です。

したがって、加害者と被害者との間で示談が成立し、被害者が告訴をしない場合には、起訴されることはありません。

他方、器物損壊罪は軽微な犯罪ではありませんので、被害者と示談が成立していなければ、被疑者は起訴される可能性は高いといえます。

過去の事例を見ますと、画びょうで他人の自転車のタイヤをパンクさせたというだけでも起訴され罰金刑を受けています。

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器物損壊の示談金(迷惑料や慰謝料も)

示談の際に加害者が被害者に対して支払う金銭を示談金といいます。「示談金」の内容は様々で、損害賠償金であったり、迷惑料であったり、慰謝料であったり、これらの複合であったりします。

以下、それぞれについて見て行きましょう。

損害賠償金

器物損壊事件では他人の物を破損してしまっていますので、その被害を回復するための損害賠償が示談金の中心となります。

例えば、他人の自動車を傷つけてしまった場合には、被害者に修理費用の見積りをとってもらいその修理費用を損害賠償金として支払うこととなります。

迷惑料

器物損壊事件では、被害者から損害賠償金だけではなく、プラスアルファの金銭の支払いを求められることもあります。

被害者は、被害届を出すために警察署に出向き、数時間の事情聴取を受けたり、実況見分に同行したりと、事件対応のために多くの時間と労力を割くこと強いられます。

そのため、単に破損された物についての損害賠償をしただけでは納得がいかないと言うのも頷けるところです。

ですから、このような迷惑をかけたことについての迷惑料として数万円から10万円ほどの迷惑料を加えることはよくあります。

慰謝料

慰謝料とは精神的苦痛に対する損害賠償金です。

大切にしていた物を破損されたことで精神的苦痛を受けた、あるいは損壊行為を目の当たりにして精神的苦痛を受けたと被害者が主張することがあります。

もっとも、法的には、器物損壊事件では財産的損害が補填されたことをもって全ての損害は補填されたと考えるのが原則です。そのため、原則として、慰謝料の請求権は認められません。

ただ、示談交渉の場では損害賠償金にプラスアルファの金銭の支払いをしなければならないことは多く、最終的に「示談金」や「解決金」という名目で金銭を支払うのですから、その内容が慰謝料であろうと、迷惑料であろうと、被害者が納得する金額であれば良いのであって、器物損壊事件では慰謝料は認められないと反論するのは得策ではないでしょう。

加害者が原状回復しても良いか?

器物損壊事件においては、破損した物の修理は被害者が業者に依頼し、その修理費用を加害者が支払うのが通常です。では、修理費用の支払いに代えて、加害者が自ら破損した物の原状回復することは認められるのでしょうか。

もちろん、加害者自身が原状回復する、加害者が依頼した業者が原状回復することに被害者が同意するのであれば、そのような方法でも問題ありません。

もっとも、通常、被害者は加害者のことを信用していませんので、加害者自身による原状回復はもちろん、加害者が選定した業者による原状回復も受け入れてくれないでしょう。

被害者が提示する修理費用の見積りが不相当に高額な場合には、加害者においても見積りをとるなどして、妥当な修理費用について交渉する余地はあります。

保険で対応可能な場合

被害者が加入している家財保険や車両保険によって破損した物の修理費用を補填できる場合があります。そうであれば、加害者としては、被害者にその保険を使ってもらいたいと考えるでしょう。

もっとも、保険を使えば来期の保険料が上がってしまうことから被害者は保険を使うことを拒否するのが通常です。

そのため、被害者が保険を使用できる場合であっても、加害者は損害賠償をすることになります。

過失による器物損壊は罪ではないが弁償を

刑法で処罰される器物損壊罪は、故意による犯行のみを処罰しています。そのため、過失によって他人の物を破損してしまっても器物損壊罪には問われません。

もっとも、民事では過失による破損も不法行為として損害賠償責任を負います。したがって、過失で他人の物を破損してしまった場合にも被害者に対して弁償をする必要があります。

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器物損壊の示談交渉

次に、器物破損事件での示談交渉における謝罪の方法や示談書の内容について説明します。

謝罪文の作成方法

大半の方は、刑事事件を起こして被害者に対する謝罪文を作成した経験はありません。そのため、謝罪文を作成するにあたり、例文やひな形をインターネットで探しがちです。

ですが、そのようなインターネットに転がっている謝罪文はどのような事件にも当てはまるようにできていますので、表面的で、被害者に対して全く反省、謝罪の意は全く伝わらないでしょう。

そこで、以下のようなことについて、ご自身の頭でよく考え、その内容を謝罪文に盛り込むようにして謝罪文を作成することをおすすめします。

  1. なぜ器物損壊事件を起こしてしまったのか
  2. その結果、被害者や自身の周囲にどのような影響が生じたか
  3. 犯行を防ぐことはできなかったのか
  4. 未然に防ぐことができなかったとすればなぜなのか
  5. 今後二度と犯行に及ばないと言い切れるか
  6. 言い切れるすれば、なぜ言い切れるのか

示談書の例文

示談金の金額やその他の条件について被害者と合意ができたら、示談金を支払うに先だって必ず示談書を作成しましょう。

特に重要なのは示談金の金額とその支払方法の記載、そして本示談をもってこれ以上の賠償請求はできない(債権債務関係はない)ことの確認です。

基本的な示談書については、下記のテンプレートをダウンロードしてご覧ください。

被害届の取り下げになるのか

被害届とは犯罪があったことを被害者が捜査機関に届け出ることをいいます。そして、捜査機関は犯罪があったと認知したときは、捜査をする権限があります。そのため、仮に被害者が被害届を取り下げると言っても捜査機関は捜査を続けることができるのが原則です。

もっとも、先に説明しましたとおり、器物損壊罪は親告罪ですから、被害者の告訴がなければ被疑者は起訴されることはありません。

そのため、器物損壊罪については、加害者と被害者との間で示談が成立し、被害者が加害者の処罰を求めていない場合には、被害届を取り下げるまでもなく、捜査機関は捜査を打ち切ることも多いでしょう。

まとめ

以上、器物損壊事件の示談についてご説明しました。

通常、被害者は加害者との接触を拒否しますので、示談交渉をする際は弁護士に依頼する必要があります。また、仮に被害者が加害者と直接会ってくれる場合であっても、加害者という立場上、示談金額の交渉はしにくく、適正な金額での交渉は容易ではありません。

器物損壊事件の加害者となったときには、できる限り早期に、刑事事件の経験豊富な弁護士にご相談ください。

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