婚姻費用の請求で後悔しないためには?やり方・ポイント・逆請求の対応策を解説
2024年12月28日
- 配偶者とはすでに別居しているが、婚姻費用の請求は可能だろうか?
- 婚姻費用分担請求の流れが知りたい。調停の申し立て方法について知りたい。
- 婚姻費用分担請求を行う前に、弁護士に相談した方がよいのだろうか?
婚姻費用とは、夫婦が婚姻生活を維持するために必要な費用です。別居している場合でも、夫婦には互いの生活を保持する義務があります。
別居している方の収入が低い場合は、収入が高い方へ婚姻費用の請求が可能です。
そこで今回は、夫婦のトラブル解決に携わってきた専門弁護士が、婚姻費用の請求方法、支障なく請求を進めるポイント等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 婚姻費用を請求する場合は、まず夫婦間で話し合うのが一般的
- 夫婦間で話し合いが行き詰ったら、調停で解決を図る
- 婚姻費用を請求する側も、請求される側も、専門弁護士に相談し対応方法を検討しよう
婚姻費用の請求方法
配偶者とすでに別居している場合、相手に婚姻費用分担請求が行えます。
婚姻費用を相手に求める場合、まず夫婦で協議するのが一般的です。
自分たちで話し合い
別居中であっても、協議する日時を決めて婚姻費用について話し合いましょう。
婚姻費用の月額は夫婦間の話し合いで自由に決定できます。婚姻費用の算定には、裁判所が公表している「養育費・婚姻費用算定表」を利用しましょう。
算定表を参考にした場合、婚姻費用の月額は次の通りです。
・婚姻費用を支払う側:給与所得者(正社員)年収750万円
・婚姻費用を受け取る側:給与所得者(パート従業員)年収150万円
→月額約97,000円
内容証明郵便
婚姻費用について協議を申し込んでも、相手から話し合いを拒否されたり、無視されたりした場合、「内容証明郵便」で通知をしましょう。
内容証明郵便に婚姻費用の支払いを強制させるような効果はないものの、相手に心理的なプレッシャーを与え、婚姻費用の請求を行ったという証明にもなります。
また、婚姻費用の請求だけではなく、期限までに支払わないと調停を申し立てると明記しましょう。
相手は「請求者が本気で婚姻費用の問題を解決する気だ。」と考え、支払いに応じたり、交渉を申し出たりする場合もあります。
婚姻費用分担請求調停
内容証明郵便で通知しても相手が請求に応じない場合は、家庭裁判所に「婚姻費用の分担請求調停」を申し立てましょう。
調停では裁判官や調停委員が夫婦の仲立ちをして、婚姻費用の問題を解決していきます。夫婦の自主的な和解を促す方法なので、夫婦のどちらかが勝訴・敗訴するというわけではありません。
調停で和解ができなかった場合、自動的に審判手続が開始され、裁判官が審判を行います。
婚姻費用の請求で重要な婚姻費用分担請求のやり方
婚姻費用の問題について、夫婦の話し合いで解決できなかったときは、家庭裁判所に申し立てて和解を図りましょう。
申し立てる場合は、事前にどのくらいの婚姻費用が適正なのかを判断し、提出書類の準備も必要です。
婚姻費用算定表の確認
まず婚姻費用の月額の適正金額を確認しましょう。
婚姻費用の月額は夫婦の話し合いで自由に決定できるものの、あまりに高額な婚姻費用を請求すると、相手から大きな反発を招く可能性があります。
婚姻費用の月額(目安)は、「養育費・婚姻費用算定表」で確認できます。この算定表を参考に、夫婦の話し合いで金額を決定しましょう。
話し合いで決まらなかった場合は、婚姻費用の分担請求調停で解決を図ります。
参考:婚姻費用の分担請求調停 | 裁判所
費用の確認
婚姻費用の分担請求調停を申し立てるときは、「収入印紙」「連絡用の郵便切手」が必要です。
- 収入印紙:1,200円
- 連絡用の郵便切手:申し立てる家庭裁判所に要確認
収入印紙は婚姻費用分担請求申立書に貼り付けて提出します。収入印紙の購入場所は郵便局や法務局、市区町村役場、コンビニ等です。
ただし、コンビニでは200円の額面のみしか購入できません。
申立書に200円の収入印紙を6枚も貼り付けるのが面倒ならば、郵便局や法務局で1,000円の収入印紙、200円の収入印紙を購入して貼り付けましょう。
また、連絡用の郵便切手は東京家庭裁判所の場合、1,022円分(100円×2枚、84円×8枚、10円×14枚、1円×10枚)を用意します。
申し立てる費用は約2,000円で済みます。なお、弁護士を代理人にするならば、弁護士費用も必要です。
婚姻費用の分担請求調停の代理人を依頼する場合、約60〜90万円が費用相場となります。
必要書類の準備
調停を申し立てるときは申立書の他に、様々な書類を準備しなければいけません。
- 婚姻費用分担請求申立書とその写し1通:申立書は家庭裁判所窓口、裁判所のホームページで取得可能
- 夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書):本籍地の市区町村役場で取得可能(1通450円)
- 申立人の収入関係の資料:源泉徴収票、給与明細、確定申告書等の写し
なお、家庭裁判所が必要と判断した場合は、さらに追加の資料を求められる場合があります。
申立書の作成と提出
調停を申し立てるときは、まず婚姻費用分担請求申立書に必要事項を記入しましょう。
申立書用紙には、申立人の個人情報(住所・氏名・生年月日・年齢)、相手方や対象となる子どもの個人情報等を記載します。
また、「請求及び申立ての趣旨」「請求の原因等」欄に、婚姻費用の支払い状況に関する、正確な事実の記載が必要です。
申立書用紙には収入印紙を貼り付ける欄もあるので、忘れずに貼付します。
申立書に加え提出する書類をすべて揃えたら、相手方の住所地の家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所の窓口に申し込みましょう。
呼出状の受け取り
申し立て後、2週間くらいで家庭裁判所から申立人・相手方に、調停期日通知書(呼出状)が送付されます。
なお、相手方には呼び出し状の他、申立人が提出した調停申立書も送付されます。申立書で事実と違う内容を記載すると、調停期日に相手方から反論される可能性もあるので注意しましょう。
呼出状には、初回調停期日を開く日時が明記されているので、基本的に夫婦双方が出席しなければいけません。
調停期日
初回調停期日では、まず調停の流れの説明を受けた後、夫婦が1人ずつ調停室に呼び出されます。
呼び出された後は調停委員による30分程度の事情聴取が、約2往復行われます。
初回調停期日では和解成立までに至らない可能性があり、2回目の調停期日を必要とする場合が多いです。
2回目以降の調停期日は、1か月くらい期間をおいて開催されます。婚姻費用に関する調停期日は、2〜3回となるケースが一般的です。
調停成立
調停委員から婚姻費用問題の解決のため、必要な助言や解決案の提示を受け、和解に合意したら、調停調書が作成されます。
調停調書には婚姻費用の月額や支払方法等、合意された内容が記載されます。
もしも、相手方が調停調書に反して婚姻費用を支払わない場合、裁判所に強制執行の申し立てが可能です。
一方、調停不成立の場合は、自動的に婚姻費用分担請求の審判が開始されます。
審判へ移行
婚姻費用分担請求の審判では、再び夫婦が和解を目指すのではなく、裁判官が必要な審理を行った後、婚姻費用についての審判を下します。
審判の手順は次の通りです。
2.追加の主張がある場合:審問期日の原則1週間前までに、家庭裁判所と相手方に主張書面や証拠を提出する。
3.審問期日に出席:指定された期日に夫婦双方が出席する。
審問期日
指定された期日に夫婦双方が出席し、夫婦同時に審問する部屋に呼ばれて、裁判官からの審問を受けます。
以後、裁判官から「審判が十分に可能だ。」と判断されるまで審問期日は継続します。必要ならば、追加の主張書面・証拠の提出も可能です。
比較的短期間で終わるケースでは、審問期日が1〜2回開かれた後、裁判官から審判が下されます。
結果通知
最後の審問期日後、1〜2か月くらいで審判が告知されます。裁判所に直接出向くか、郵送による方法で審判書の入手が可能です。
審判の告知を受けてから2週間が経過すれば、審判は確定します。もしも審判結果に不満があれば、告知を受けた翌日から2週間以内に即時抗告を行い、高等裁判所に判断を求めましょう。
審判にかかる期間は、調停不成立となってから概ね半年が目安になります。
もしも、相手方が審判書に反して婚姻費用を支払わなければ、裁判所に強制執行の申し立てができます。
婚姻費用の請求が認められないケース
婚姻費用の分担請求が認められないケースは、主に次の通りです。
- 婚姻費用の請求者が有責配偶者である:婚姻関係の破綻の原因をつくった側が婚姻費用の請求をするのは、権利濫用と考えられるため。
- すでに離婚が成立:夫婦がすでに離婚をしていると、基本的に婚姻費用の請求はできない。ただし、未払い婚姻費用がある場合は請求できる可能性もある。
- 正当な理由もないのに別居を開始した:身勝手な理由で相手の同意もなく別居を開始した場合、同居義務に違反する状態なので請求は認められない可能性が高い。
- 夫婦が同居して生活費を分担:同居しながら離婚を協議し、生活費を分担しているならば請求は難しい。
婚姻費用の請求をスムーズに進めるポイント
婚姻費用分担請求を円滑に進めたいならば、弁護士にサポートを依頼しましょう。
すでに別居中なら夫婦の関係がすっかり冷え切っており、相手と直接協議するときは強いストレスを感じるかもしれません。また、調停で解決を図る場合は手続きが煩雑でわかりにくいです。
弁護士がサポート役になれば次の役割を任せられます。
- 相手との協議:弁護士が交渉役となり、相手に婚姻費用を支払うよう説得する。
- 調停および審判:依頼者の代わりに申立書・提出書類の作成や収集、申し立ての代行、期日での主張、証拠の提出も任せられる。
弁護士は法律に精通している他、手続きや交渉の実績も豊富に有しているので、スムーズに婚姻費用の問題解決を図れることでしょう。
婚姻費用を請求された場合の対応策
婚姻費用を請求された側であっても冷静に通知を確認し、主張内容が事実と相違していないかを判断しましょう。
婚姻費用を請求されたら、弁護士と相談し今後の対応を話し合うのもよい方法です。
内容確認
夫婦間で婚姻費用に関する協議をしない状態であった場合、次のような方法で婚姻費用の請求を通知される可能性があります。
- 請求者からの内容証明郵便
- 婚姻費用の分担請求調停を行う旨の調停期日通知書(呼出状)
請求者から内容証明郵便が通知されたとき、婚姻費用の請求額が高すぎないか、婚姻費用算定表で確認してみましょう。請求額に納得できない場合は、請求者側との協議を試みます。
一方、調停期日通知書(呼出状)が届いたならば、申立書も同封されています。申立書の内容に相違があれば、証拠を収集・提出し調停期日に主張する準備を進めましょう。
拒否できるか確認
婚姻費用を拒否または減額できるかについて確認します。次の事実があれば、拒否または減額可能な場合があります。
- 婚姻費用の請求者が有責配偶者
- 請求者に生活費等の一部を支払っている
- すでに離婚が成立した
婚姻費用の拒否または減額の主張を裏付ける証拠(有責配偶者によるDVや不倫の証拠、お金の動きがわかる預金取引履歴等)は、調停期日前に提出しておきましょう。
弁護士へ相談する
自分の力だけで婚姻費用の問題解決が難しいと感じたら、弁護士に相談しましょう。
弁護士は請求された側の立場にたって、次のようなアドバイスを行います。
- 婚姻費用を支払う必要があるかどうか
- 婚姻費用の適正な金額の算定
- 内容証明郵便の通知が届いた後の対応
- 調停、審判で解決を図る場合の注意点 等
相談後、「弁護士に代理人を任せた方がよい。」と感じたら、そのまま委任契約を締結しても構いません。
婚姻費用の請求なら春田法律事務所にご相談を
今回は夫婦のトラブル解決に尽力してきた専門弁護士が、婚姻費用の請求方法の手順や、請求するときの注意点等について詳しく解説しました。
春田法律事務所は、婚姻費用請求調停・審判に実績豊富な事務所です。まずは弁護士に、婚姻費用に関する不安や悩みを打ち明けてみましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。