離婚の公正証書とは何か?作成理由・作成ステップも詳しく紹介
最終更新日: 2023年09月28日
- 協議離婚の場合、話し合うだけでなくどのような対策をとればよいのだろう?
- 協議離婚で合意した内容は公正証書にするべきなのだろうか?
- 離婚で合意した内容を公正証書にする手順を知りたい
夫婦間で協議し、離婚したときの養育費や面会交流、慰謝料、財産分与等を取り決めた場合は、離婚協議書として文書化し、その内容を忘れないようにするべきです。
そして、離婚協議書を作成するときは、公正証書にする方法も検討しておきましょう。
離婚協議の内容を公正証書にすれば、極めて強力な証拠力を有する公文書となります。
そこで今回は、多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、離婚における公正証書の有効性、公正証書を作成する流れ等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 離婚における公正証書は公証人が作成する
- 強制執行認諾が記載された公正証書であれば、支払が履行されないとき、裁判手続を経ずに強制執行が可能
- 離婚における公正証書は有料だが、より確実に取り決めた内容の履行が期待できる
離婚における公正証書とは?
離婚協議で取り決めた内容を公正証書にすれば、より安心できるといわれています。それだけ公正証書は、証拠力のある文書と評価されているわけです。
こちらでは公正証書とはそもそも何か、公正証書にする必要性等を解説します。
公正証書
公正証書は公証役場にて公証人(公証作用を担う公務員)が作成する公文書です。
公証人が当事者の意思を聴き取り作成するので信頼性は高く、原本は公証役場に保管されるため、元配偶者はもちろん第三者等から偽造・変造されるリスクもありません。
公証人は、原則として裁判官や検察官、弁護士として法律実務に携わってきた人で、公募に応じた中から法務大臣が任命します(公証人法第13条)。
つまり、法律の専門家が公正証書の作成を担当するので、安心して任せられるのです。
離婚における公正証書とは
離婚協議で取り決めた内容を公正証書にする手続きは任意で行います。
しかし、義務ではないものの、離婚後、元配偶者に取り決めた内容(慰謝料の支払や養育費等の支払等)をしっかり守ってもらうため、高い証拠力と執行力を有する公正証書の作成は有効な措置になります。
なお、執行力とは強制執行を成し得る効力です。たとえば「強制執行認諾」の記載のある公正証書ならば、たとえ慰謝料支払等の不履行があったとしても、裁判手続を経ずに強制執行が可能です。
離婚届との関係
市区町村役場に離婚届を提出する場合、離婚の公正証書は必要ありません。
離婚届とは、戸籍へ離婚した事実を反映させるための手続きです。
協議による離婚の場合、提出書類は基本的に離婚届と届出人の本人確認資料(マイナンバーカードや運転免許証など)だけで足ります。
しかし、離婚の公正証書を作成する夫婦は、この公正証書が完成した後に離婚届を提出するでしょう。
なぜなら離婚する条件を公正証書でしっかりと確定させた後で、離婚を成立させたいからです。
なお、離婚の公正証書が完成した後すぐに離婚届出を提出すれば、離婚内容を取り決めた後に、相手がそれを取り消し、条件変更を迫る事態も回避できます。
離婚で公正証書を作成する理由
養育費や慰謝料を受け取る側は、支払う側から約束通りに支払ってもらわなければ、離婚後の生活に大きな影響が出るかもしれません。
そのときに離婚の公正証書を作成していれば、公正証書の効力で支払をより確実なものにできます。
金銭面での約束
離婚の協議で夫婦の財産分与をはじめ、慰謝料や子どもの養育費等も取り決めます。 財産分与、慰謝料、養育費の支払を確保するため、公正証書に次の内容を明記します。
- 一定額の金銭の支払についての合意
- 債務者(支払う側)が金銭の支払をしないとき、「強制執行されてもかまわない」と受諾した旨の定めを記載(強制執行認諾)
これらの記載があれば、万一、相手側の支払義務が履行されなくても、裁判手続を経ずに強制執行が可能です。
支払う側は強制執行をおそれ、取り決めた内容通りに財産分与、慰謝料、養育費を支払っていきます。
公正証書を作成するときの注意点
強制執行認諾の記載された公正証書で強制執行が可能なのは、金銭による財産分与、慰謝料や養育費のような金銭債務だけです。
たとえば財産分与に基づく不動産の引き渡し等は、金銭以外の財産の給付なので、公正証書による強制執行は認められません。
金銭以外の財産の給付が履行されない場合、訴訟を起こして勝訴すれば強制執行が可能です。
離婚で公正証書を作成するステップ
離婚の取り決めを公正証書にすれば、強力な証拠力を有する公文書となります。そのため、協議離婚するときに定める内容は、お互いによく話し合って決める必要があります。
こちらでは、離婚の公正証書を作成する流れについて説明しましょう。
条件項目の確認
公正証書に記載する条件項目を確認します。
離婚条件として主に次のような項目を定めます。
親権・監護権
夫婦の間に未成年の子どもがいるときは、離婚の届出時、父母のどちらか一方を親権者に指定します。もちろん、公正証書にもどちらを親権者とするか明記します。
養育費
経済的に自立できない子どもを扶養するため、養育費の金額や支払期間、支払方法等を決めます。通常、親権者とならない方の親が養育費を負担します。
面会交流
親権を失くした親が、子どもと定期的に会って交流する方法・日時等も取り決めます。面会交流は子どもの喪失感を緩和し、精神面における成長を助ける役割があります。
財産分与
婚姻期間に夫婦で協力し形成した財産は、離婚で共同生活を解消するとき清算し、夫婦で配分します。
慰謝料
夫婦のどちらか一方が離婚原因をつくったのであれば、原因をつくった人が支払う慰謝料の金額・支払方法等も決めます。
その他
住宅の使用契約をどうするかや年金分割、住宅ローンの清算、夫婦間の金銭貸借の清算等、夫婦の事情に応じた取り決めも定めます。
夫婦間の話し合い
条件項目を確認したら夫婦で冷静に話し合い、具体的な内容を取り決めていきます。 ただし、具体的な内容を決めるときは、双方の主張がぶつかり合い、話がなかなかまとまらない場合もあります。
そのようなときは、離婚問題に詳しい弁護士へ相談してみましょう。
弁護士は裁判例等を踏まえ、離婚条件についてどのような水準が合理的なのか、的確にアドバイスをします。
また、相手方との話し合いのため、弁護士を代理人にすれば、離婚条件の話し合いを全面的に代行するので、精神的なストレスも軽減されます。
書類準備
話し合いがまとまったら、公証人に離婚の公正証書を作成してもらうため、必要書類を準備しましょう。
主な必要書類は次の通りです。
- 離婚の内容を明記したメモ(離婚協議書)
- 夫婦双方の戸籍謄本:本籍地の市区町村役場で取得、1通450円
- 印鑑登録証明書:住所地の市区町村役場で取得、1通300円
- 実印
- 夫婦双方の本人確認書類:運転免許証、パスポート等
- 財産分与等がある場合の書類:不動産の登記簿謄本、物件目録等
- 年金分割を行う場合の書類:年金手帳、年金分割のための情報通知書
公証役場への説明・申込
公証役場に、離婚の内容を取り決めたので、公正証書の作成をしたいと説明し、必要書類を提出して申し込みましょう。
申し込んだ当日に公正証書は完成しないので、後日あらためて公証役場を訪問します。
完成
予約した日時に、原則として夫婦揃って公証役場を訪問し、契約手続きを済ませたうえで公正証書を完成させます。
ただし、やむを得ない事情があると認められるときは、公証人から事前に承諾を得て、本人が弁護士等を代理人に指定し、その代理人が公正証書の契約をする場合もあります。
手数料支払い・受け取り
公証役場から提示された公証人手数料を支払い、完成した離婚公正証書を受け取りましょう。気になる手数料ですが、公正証書へ記載された目的の価額に応じ金額は変わってきます。
下表を参考にしてください。
目的の価額 | 手数料 |
~100万円 | 5,000円 |
100万円超~200万円 | 7,000円 |
200万円超~500万円 | 11,000円 |
500万円超~1,000万円 | 17,000円 |
1,000万円超~3,000万円 | 23,000円 |
3,000万円超~5,000万円 | 29,000円 |
5,000万円超~1億円 | 43,000円 |
1億円超~3億円 | 43,000円+超過額5,000万円ごとに13,000円を加算した金額 |
3億円超~10億円 | 95,000円+超過額5,000万円ごとに11,000円を加算した金額 |
10億円超~ | 249,000円+超過額5,000万円ごとに8,000円を加算した金額 |
まとめ
今回は多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、離婚の公正証書にはどのような効果があるのか、公正証書を作成する手順や必要書類・手数料等について詳しく解説しました。
当事者間で離婚の取り決めを行ったら、速やかに公正証書の作成を公証人へ申込みましょう。そうすれば、取り決めた慰謝料や養育費の支払等が円滑に進められていくでしょう。
協議離婚や離婚の公正証書を作成する場合は、弁護士へ相談し手厚いサポートを受けましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。