離婚協議書とは?概要から作成のメリット・ステップ・ポイントを専門弁護士が解説

最終更新日: 2023年07月04日

  • 離婚協議書とはなんなのかを知りたい
  • 離婚協議書を作成するメリットとは何か?
  • 離婚協議書作成のステップとポイントは何か?

離婚が成立すれば、基本的にお互いに協力する義務はなくなります。しかし、お互いの権利関係を確定していなければ、一定の期間において元配偶者に対して慰謝料や財産分与などの権利を主張することが可能です。

これらは大きなトラブルに発展する可能性があるため、離婚に関する条件を離婚協議書で確定させておくことは重要だと言えます。この記事では離婚協議書について詳しく説明するとともに、作成のステップについても専門弁護士が解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • 離婚協議書とは離婚する際に夫婦で合意した取り決めを記載したもの
  • 離婚協議書のメリットは、「離婚後のイレギュラーな金銭支払いを避けられる」「協議離婚の場合でも離婚条件を確定できる」「約束履行の根拠資料にできる」の3つ
  • 離婚協議書作成のステップは、「内容の協議」→「合意事項の文書化」→「離婚協議書への押印」→「離婚協議書の保管」

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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離婚協議書とは?何を取り決めるのか詳細を解説

離婚協議書とは離婚する際に夫婦で合意した取り決めを記載します。夫婦によって事情は様々なため、記載内容について一律の制限があるわけではありません。

ここでは、離婚協議書で特に重要になる、7つの事項を解説します。

  • 親権者・監護者
  • 養育費
  • 面会交流
  • 財産分与
  • 年金分割
  • 離婚慰謝料
  • 清算条項

それでは1つずつ、見ていきましょう。

親権者・監護者

離婚協議書で取り決めることの1つ目は、親権者・監護者です。

離婚をする際、夫婦の全ての未成年の子どもの親権者(監護者)を指定する必要があります。通常、夫婦は共同で子どもの身の回りの世話などを行う「身上監護権」と、財産を管理したり契約を代行したりする「財産管理権」を有しています。

離婚した場合、夫婦のいずれかを親権者に指定する必要があります。離婚において、親権者の指定は必須事項となっているため、夫婦間に感情的なもつれがある場合などにはトラブルのもとにもなりやすいと言えます。

そのため、親権者・監護者に関する事項は、確実に離婚協議書に記載しておきましょう。

養育費

離婚協議書で取り決めることの2つ目は、養育費です。

夫婦は離婚後においても、未成熟の子どもに対する扶養義務を負っています。扶養義務とは親の生活と同程度の生活を子どもに提供する義務を指し、履行しなければ悪意の遺棄とみなされます。したがって、経済的な余裕の有無に関係なく、養育に必要な費用を親同士で分担しなければなりません。

離婚によって親権を手放した側から、親権者に対して養育のために支払われるお金のことを養育費といいます。養育費は離婚協議書に必ず記入しなければならない事項ではありません。しかし、子どもの健やかな成長を願うのであれば、養育費のことも明記したほうがよいです。

面会交流

離婚協議書で取り決めることの3つ目は、面会交流です。

離婚すると、夫婦のうちいずれかが単独で親権をもつことになります。しかし、親権を有しない側も親であることに変わりはなく、今後どのように子育てに関わっていくかを決めておく必要があります。

このように、親権を有しない側が子どもともつ交流を面会交流といいます。面会交流の実施方法について明確に離婚協議書に定めておくことで不定期な関わり合いを避け、子どもの安定的な成長を望むことができるでしょう。

財産分与

離婚協議書で取り決めることの4つ目は、財産分与です。

夫婦の間で共同して築いてきた財産を夫婦の共有財産といいます。共有財産は半分ずつ分け合うことを基本としていますが、不動産などの財産を分け合うことは難しい面もあるでしょう。

一方、夫婦になる前から有しているそれぞれの財産は共有財産ではなく、財産分与の対象になりません。このように、財産分与においては高度の専門的な知識が必要です。

トラブルに発展しないように離婚協議書に明記しておくために、弁護士などの専門家のサポートを受けることをおすすめします。

年金分割

離婚協議書で取り決めることの5つ目は、年金分割です。

婚姻期間が長かった夫婦にとって、特に重要なことは年金分割に関する条項です。年金分割とは、婚姻期間に納付した厚生年金を離婚時に分け合うことです。

離婚して2年以内に年金分割の請求をすれば、受給時に分割が反映された年金を受給できます。年金分割請求をしたタイミングで現金で支払われるわけではありません。

多くの夫婦にとっては少し先の将来に関する事項であるため見落としがちですが、老後の収入に関わるとても大事なことです。しっかり協議して離婚協議書に明記しておきましょう。

離婚慰謝料

離婚協議書で取り決めることの6つ目は、離婚慰謝料です。

夫婦の片方に明確な離婚事由がある場合は、有責側は相手側に慰謝料を支払わなければなりません。慰謝料の額は、さまざまな条件が複雑に絡み合うこともあり、夫婦によって違いが出てきます。よく話し合って合意形成する必要があります。

離婚協議書に離婚慰謝料の金額や支払い方法をきちんと明記しておけば、安心できます。有責側にとっても、離婚後に再度過剰な請求を受けるなどのトラブルを防止できるメリットがあるものです。

清算条項

離婚協議書で取り決めることの7つ目は、清算条項です。

契約書や離婚協議書に記載されている内容がすべての支払い義務を網羅しており、それ以上の支払いが発生しないことを確定するための条項を清算条項といいます。

離婚には財産分与や養育費・慰謝料などの多くの金銭的なやりとりが発生します。離婚後にお互いが歩む人生を、不安なく過ごすためにも清算条項に漏れがないことを双方が十分に確認することが大事です。

離婚協議書のメリット

離婚のときに作成する、離婚協議書のメリットとは何なのでしょうか。ここでは以下の3つを紹介します。

  • 離婚後のイレギュラーな金銭支払いを避けられる
  • 協議離婚の場合でも離婚条件を確定できる
  • 約束履行の根拠資料にできる

それでは1つずつ、見ていきましょう。

離婚後のイレギュラーな金銭支払いを避けられる

メリットの1つ目は、離婚後のイレギュラーな金銭支払いを避けられることです。

離婚事由が夫婦の片方に見られる場合、非有責者は有責者に対して離婚成立後3年以内であれば慰謝料を請求できます。しかし、夫婦間に激しいあつれきがあり離婚に至った場合は、離婚後に慰謝料で合意に至ることは難しく、場合によっては裁判になる可能性もあります。

離婚協議書に金銭支払いに関する条項を明記しておくことは、離婚後に歩む双方の人生を平穏なものにするメリットがあるのです。

協議離婚の場合でも離婚条件を確定できる

メリットの2つ目は、協議離婚の場合でも離婚条件を確定できることです。

家庭裁判所などを利用した調停離婚や裁判離婚の場合は調書や判決書などが作成され、離婚の条件が公的書面で明らかにできます。しかし、夫婦間の話し合いで合意に至る協議離婚の場合は、公的書面が自動的に作成されるわけではありません。

そこで大事なのが離婚協議書を作成することです。離婚協議書を作っておけば、協議離婚でも離婚条件を公的に確定することができます。離婚後に「言った・言わない」のトラブルが発生する事態を避けられます。

約束履行の根拠資料にできる

メリットの3つ目は、約束履行の根拠資料にできることです。

養育費の支払いなどは長期にわたって行われる場合が多く、先々不払いになるおそれもあります。離婚条件が口約束だけにとどまる場合、約束の不履行が起こっても、履行を強制することが難しくなってしまいます。

離婚協議書に約束事項を明記しておけば、約束履行を求める明確な根拠となります。必要であれば法的な手続きをとることで、強制履行を求めることも可能となるメリットがあるのです。

離婚協議書作成のステップ

実際に離婚協議書を作成するためにはどのようにすればよいのでしょうか。ここでは、以下の4つのステップについて解説します。

  • 内容の協議
  • 合意事項の文書化
  • 離婚協議書への押印
  • 離婚協議書の保管

それでは1つずつ、見ていきましょう。

内容の協議

離婚協議書作成のステップ1つ目は、内容の協議です。

お互いが冷静に話し合いができる場を用意して、落ち着いて離婚条件をすり合わせていきましょう。

離婚協議書に盛り込むべき事項は、夫婦の事情によって異なります。協議に入る前に、取り決めるべき事項を想定して整理しておき、建設的な協議になるように工夫しましょう。

合意事項の文書化

離婚協議書作成のステップ2つ目は、合意事項の文書化です。

夫婦間で離婚条件に関する合意ができたら、文書に書き起こしましょう。離婚協議書はパソコンで作っても、手書きでも効力に違いはありません。

弁護士事務所などでは離婚協議書のテンプレートを用意している場合もあるので、有効活用しましょう。また、直筆で離婚協議書を作成する場合は、油性のボールペンを利用しましょう。

離婚協議書への押印

離婚協議書作成のステップ3つ目は、離婚協議書への押印です。

離婚協議書を作成したら、お互いが合意したことを証明するために押印しましょう。認印でも実印でも構いませんが、大事な書面ですので実印を使うことをおすすめします。

離婚協議書の保管

離婚協議書作成のステップ4つ目は、離婚協議書の保管です。

離婚協議書は署名捺印済みのものを2部用意して、互いに1部ずつ保管します。

なお、離婚協議書を作成する場合、相手から脅しなどを受けないように、第三者を立会人などとする場合もあります。そのような場合は、その第三者の保管分も作成して渡しましょう。

離婚協議書作成のポイント

離婚の条件を取り決める離婚協議書はとても重要なものです。後悔しない離婚協議書を作るために押さえておくべきポイントとして、以下の3つを紹介します。

  • 離婚届を出す前に作成する
  • 離婚協議書の内容は後から変更できる
  • トラブルを回避したいなら弁護士に相談する

それでは1つずつ、見ていきましょう。

離婚届を出す前に作成する

ポイントの1つ目は、離婚届を出す前に作成することです。

とにかく早く離婚したいと思っている場合は、離婚さえできれば細かなことは離婚後に話し合えばよいと考える人もいるでしょう。しかし、離婚後になってしまうと相手とますます疎遠になり、コミュニケーションをとりづらくなるものです。

しかも、離婚後に慰謝料や養育費を請求できる期間には法的な制限があります。ですから、不利な状況にならないように離婚が確定する前に協議書を作成しておきましょう。

離婚協議書の内容は後から変更できる

作成のポイント2つ目は、離婚協議書の内容は後から変更できることです。

離婚協議書作成後に内容を変更するために必要なことは当事者双方の合意です。

ただ、合意さえできればよいのですが、説明してきたように離婚後に合意に至ることは簡単ではなく、往々にしてかなりの労力が必要になります。ですから、できるだけ変更する必要がないように作成しておきておきましょう。

トラブルを回避したいなら弁護士に相談する

作成のポイント3つ目は、トラブルを回避したいのであれば、弁護士に相談することです。

離婚協議書は離婚条件を確定させることができ、協議離婚の場合でも法的な効力を発揮できる重要な書面です。だからこそ、作成にあたって専門的な法律知識を有する弁護士のサポートを受けてスムーズにかつ確実に作成する必要があります。

まとめ

この記事では、離婚協議書について、その内容やメリット、作成のステップや注意すべきポイントまでを網羅的に解説しました。

離婚は、当事者の人生にとって大きな決断です。

後悔しない形での離婚を成立させるうえで離婚協議書の作成は必須といってよいでしょう。離婚後のトラブルを回避するためにもぜひ専門弁護士に頼ってください。

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