ペット霊園

最終更新日: 2023年11月17日

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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ペット霊園の納骨は法律で規制されるか

ペット霊園も人間のお墓と同様に墓地埋葬法の規制を受けるのでしょうか。

結論として、ペット霊園は墓地埋葬法の規制対象外です。

墓地埋葬法は、「墓地」について、「墳墓を設けるために、墓地として都道府県知事・・・の許可を受けた区域をいう。」と定義しています。そして、「墳墓」とは、「死体を埋葬し、又は焼骨を埋蔵する施設をいう。」と定義されており、死体とは、人間の死体です。

よって、ペット霊園は、墓地埋葬法の「墓地」には該当しません。

また、「納骨堂」とは、「他人の委託をうけて焼骨を収蔵するために、納骨堂として都道府県知事の許可を受けた施設をいう。」と定義されています。焼骨とは人間の死体を火葬した後に残る骨のことですから、ペット霊園は「納骨堂」にも該当しないこととなります。

したがって、ペット霊園は、墓地埋葬法の規制対象外です。

ペットの火葬は条例で許可が必要

ペットの遺骨を墓地に納める場合、その前段階としてペットの焼却が必要です。人間の火葬については墓地埋葬法が規制していますが、前記のとおり、ペットは墓地埋葬法の規制対象外です。

では、ペットの焼却に規制はないのでしょうか。

廃棄物処理法においては、動物の死体は「廃棄物」とされ(同法第2条1項)、勝手に焼却してはならないと規制されています。また、他人の土地などに捨てれば不法投棄となってしまいます。

そうすると、ペットは廃棄物として焼却されることになるとも思えます。

しかし、ペット霊園で扱われるペットの死体については「廃棄物」には該当しないという行政通知があり(環計78号)、廃棄物の焼却としての規制は受けません。

とはいえ、ペットの死体は適切に扱われなければ深刻な感染症の発生原因となりかねませんので、その焼却施設の設置については条例で許可制としている地方公共団体も多くあります。

したがって、ペットの焼却施設をつくるときは、当該地域の条例を確認する必要があります。

ペット霊園の経営は課税対象か

ペットの死体の運搬、火葬は収益事業ですが、その葬儀、供養は宗教活動ですから、収益事業にはあたらないとも思えます。

しかし、この点について収益事業に該当すると判断した最高裁判例があります(最判平20.9.12判時2022・11)。

そのため、寺院がペット霊園を行う場合も、そのお布施には法人税が課税され、ペット霊園は、非課税の「境内地」には該当せず固定資産税の課税対象となる可能性が高いです。

もっとも、同最高裁判例は、いかなるペット霊園も収益事業に該当するとしているわけではありません。宗教上の形式によって供養され、宗旨宗派不問ではなく檀信徒に限定され、支払われる金銭が寺院が提供する役務等の対価と評価されるような料金表がないケースでは、収益事業に該当しないと判断される余地はあります。

なお、古くから動物の供養を受け入れてきた歴史のある寺院について、ペット霊園について非課税と判断した裁判例があります(東京地裁H18.3.24)。

ペットの納骨をめぐる問題

ペットは家族同然ですから、自身が埋蔵されるときは、ペットの焼骨も一緒にお墓に埋蔵して欲しいというご要望がしばしばあります。

ご存知のとおり、墓地管理者には応諾義務があります。

すなわち、墓地埋葬法第13条は、「墓地、納骨堂又は火葬場の管理者は、埋葬、埋蔵、収蔵又は火葬の求めを受けたときは、正当の理由がなければこれを拒んではならない。」と規定しています。

しかし、前記のとおり、ペットは、墓地埋葬法の規制対象外です。

したがって、寺院はペットの焼骨の埋蔵依頼があってもこれを拒否することができます。

かかるご要望を受け入れるか否かは、寺院墓地管理者の判断に委ねられますが、墓地管理規則や他の墓地使用者との関係を考慮して慎重に判断する必要があります。

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