婚前契約で財産分与について定めておくと安心?専門弁護士が解説

最終更新日: 2024年01月29日

婚前契約で財産分与について定めておくと安心?専門弁護士が解説

婚前契約は、必ずしも離婚するときを想定した契約ではなく、結婚生活をより円満に送るための契約と考えるべきものではありますが、実際に、離婚する際に大いに役立つのは間違いありません。

そして、離婚する際に特にもめやすいのは財産分与です。婚前契約書で資産の分割方法を予め明確に定めておけば、資産の取り合いという、できれば避けたい事態に時間、お金、労力を費やすことを防ぐことができます。

そこで、今回は、ご説明します。財産分与について婚前契約にどのような規定を盛り込むとよいかについてです。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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婚前契約に定める財産分与とは?

財産分与とは、基本的には、婚姻中に夫婦の協力によって築かれた財産を離婚の際に原則として半々に分ける手続きです。

財産分与の対象となるのは、夫婦の共有財産と、一方の名義の特有財産でもその維持・形成に他方の直接的・間接的な協力があったとみなせる実質的共有財産です。財産分与で一番もめやすいのが、財産分与の対象になるのかどうかという点です。

そのため、婚前契約書には、何が共有財産で、何が特有財産であるのかという点を明確に定め、特有財産について財産分与の対象とするのかしないのか(実質的共有財産を認めるのか)について定めておくことが重要です。

なお、財産分与の割合は原則として5:5ですが、資産形成に寄与した度合いは自分の方が大きいと主張して6:4とすることを求められることもありますので、財産分与の割合についても、確認的に5:5と婚前契約書に明記しておくと良いでしょう。

それでは、以下財産の種類ごとに婚前契約へ盛り込む際のポイントを見て行きましょう。

婚前契約に定める預貯金や相続財産など

さて、以下では、各種財産ごとに財産分与について婚前契約に定める場合のポイントについて説明いたします。

預貯金

預貯金は結婚後も入出金があるのが通常です。そのため、結婚後に残高が変動していると、離婚の話し合いをしている現時点で、結婚前の残高がそのまま残っているとは認められにくいでしょう。

そこで、もし結婚前の預貯金について財産分与の対象となることを防ぎたいという場合には、当該預金は、結婚後に入金がない口座に移しておき(入金があると結婚後の共有財産と区別がつきにくくなります。)、その口座は特有財産と婚前契約書に明記しておくとよいでしょう。

相続した財産

相続した財産は、夫婦が協力して形成した共有財産ではなく、財産分与の対象とはなりません。

もっとも、不動産であれば相続したことが登記から明らかですが、現預金には相続したものというラベルが付いているわけではありませんので、共有財産である現預金と混ざってしまい、相続した現預金であることを証明することが難しくなってしまいます。

相続した動産や不動産、金融商品も換金してしまえば同様のことが言えます。

そこで、共有財産である預貯金とは分離して別の口座で管理しておくとよいでしょう。

退職金

退職金についても支給される可能性が高ければ、財産分与の対象となりえます。

もっとも、定年退職が相当先である場合、それまで在職しているかどうかも不確実です。そこで、婚前契約書において、例えば、離婚時点において5年以内に定年退職を迎える場合にのみ退職金を財産分与の対象とするといった規定を盛り込むことが考えられます。

高価な動産

例えば高級ブランドのバッグや高価な宝飾品など、資産として価値のある動産については、夫から妻にプレゼントしたものであっても、共有財産であるとして財産分与の対象とすべきだと主張されることがあります。

とはいえ、これらの動産は、プレゼントとして贈られたものですから、財産分与の対象とするのは納得いかないと思う方もおられるでしょう。そこで、婚前契約書において、夫又は妻が専用で使う高価な動産については財産分与の対象としないと規定すると良いでしょう。

婚前契約に定める居住用不動産の財産分与

預貯金や動産などについて説明しました。ここでは、離婚の際にもその処理方法が問題になることが多い不動産について説明します。

オーバーローンの場合

多くのカップルが、結婚後、いずれかのタイミングで自宅として不動産を購入します。通常、住宅ローンを組んで不動産を購入しますが、離婚する時点で、不動産の時価よりもローン残高の方が高い場合(オーバーローン)、不動産としての資産価値はゼロのため、財産分与の対象とはなりません。

オーバーローンの場合に、負債であるローン残高をどのように処理するかが問題となります。売却後、残った負債を折半する、居住を継続する方が負担するなど様々な処理方法があります。

ローン残高よりも時価が高い場合

ローンが完済済みの場合や、不動産の時価がローン残高よりも高い場合には、不動産の資産価値を分与することになります。

夫婦のいずれも、離婚後にその不動産に住まない場合には、不動産を売却して、その売却代金を分けることになります。

一方、夫婦のいずれかが離婚後もその不動産に住む場合には、住み続ける方が、その不動産の時価評価額からローン残高を引いた金額の半分を他方に支払うことになります。

不動産を購入する際に特有財産を充てている場合

不動産の時価評価額を、購入資金に対する夫と妻それぞれの寄与度によって分けることになります。

例えば、購入時の頭金を結婚後の夫婦の預貯金から支出した場合には、寄与度は50%ずつですが、不動産を購入するにあたり、結婚前の預貯金や、どちらかの親が援助したお金を購入資金に充てるケースでは、それらのお金は特有財産からの支出ということになりますから、その分購入資金に対する寄与度は大きくなり、時価評価額に対する取り分も大きくなります。

不動産の購入資金に対する寄与度の計算方法や、そもそも購入資金に特有財産を充てたという事実自体が争われることがあります。

そこで、婚前契約書の中に、不動産の購入資金に対する寄与度の計算方法を予め定めておくことが考えられます。

また、不動産の購入資金に特有財産を充てたという事実を、後々になって否定されないためには、不動産を購入する際にそれぞれが特有財産から支出した金額やお金の出所について確認する書面を作成しておくと良いでしょう。

離婚後の経済的な自立をサポートする条項

例えば、結婚や出産を機に妻が仕事を辞め、家庭に入り専業主婦として生活している場合、離婚することになれば妻の家計は突如として苦しくなるかもしれません。

仕事を辞め、家庭に入って夫を支えてきたからこそ、夫は仕事に専念することができたと考えることもできますが、それにもかかわらず離婚によって何のサポートもなく突如として社会に出されるというのは酷だという考えもあるでしょう。

そこで、婚前契約書に、離婚後〇か月間は、夫は妻に対して毎月〇万円を支払うというような、離婚後、妻が経済的に自立することをサポートする規定を盛り込むことも検討してよいかもしれません。

最後に

以上、婚前契約書に盛り込むとよい財産分与に関する定めを見てきました。婚前契約書は、円満な夫婦関係を持続するための契約書と考えるべきものですが、離婚の際に大きな効力を発揮することも間違いありません。

結婚する前から離婚するときのことを考えるのは気持ち良いことではありませんが、万が一のときに無用なコストが発生することを避けるために、婚前契約書の作成をお勧めします。

婚前契約書を作成する際には、離婚と婚前契約書に詳しい弁護士にご相談ください。

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