再婚禁止期間とは何か?理由・例外・すべきことを解説

最終更新日: 2023年11月02日

再婚禁止期間とは何か?理由・例外・すべきことを解説

※2022年12月10日に再婚禁止期間の撤廃等を盛り込んだ民法改正法が成立していますが、改正法施行日(2024年4月1日)前の婚姻には、従来の規定が適用されます。(文末参照)

  • 女性は離婚した後すぐに再婚できないの?
  • 女性の再婚禁止期間の例外となるケースはあるか?
  • 再婚禁止期間を守らければどうなるのか知りたい

再婚禁止期間とは、法律で離婚後100日間にわたり再婚が禁止されている期間を指します。

この再婚禁止期間が決められているため、女性が早く再婚したいと考えても、基本的に離婚後100日間は我慢しなければいけません。

再婚禁止期間に例外はあるのか?再婚禁止期間を守らないとどうなるのか?気になる女性は多いでしょう。

そこで今回は、多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、再婚禁止期間はなぜ設定されているのか、当該期間を守らなかった場合の影響等について詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • 再婚禁止期間は子の利益・権利を保護するために定められている
  • 再婚禁止期間は離婚時点で妊娠していない等の事情があれば適用されない
  • 再婚禁止期間を守らないと子が無戸籍となるおそれもある

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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再婚禁止期間とは何か

「再婚禁止期間」とは、元夫と離婚をした日から再婚するまでに空けなければならない待機期間です。

民法によると、女性は夫と離婚した日から100日間再婚を待つ必要があります(民法第733条)。離婚日を1日目とカウントし、100日後までが再婚禁止期間です。

たとえば3月1日に離婚した場合、それから100日後の6月8日までが再婚禁止期間で、6月9日以降であれば再婚できます。

出典:民法|e-GOV法令検索|法務省

再婚禁止期間が定められていた理由

女性にだけ適用される期間なので、やはり「不平等だ」と考える女性は多いかもしれません。

女性に再婚禁止期間が定められている理由は、子の利益・権利を保護するためです。

民法では、妻が婚姻中に妊娠した子を法律上、夫の子と推定する「嫡出推定制度」が設けられています。

つまり、婚姻の成立の日から200日が経過した後か離婚後300日以内に生まれた子を、婚姻中に妊娠した子として戸籍に記載すると規定されています(民法第772条第2項)。

しかし、100日間の再婚禁止期間を設けないと、元夫の子なのか、それとも再婚した夫の子なのかすぐに判別できません。

父親を判別できなければ、子に関する様々なトラブルが発生するおそれがあるので、法律で子を守るために、この再婚禁止期間が設けられているのです。

再婚禁止期間の例外となるケース

再婚禁止期間は、再婚しようとする女性全てに適用されるわけではありません。

こちらでは、すぐに再婚が可能な4つのケースを取り上げます。

妊娠していない場合

離婚時点で妊娠していない事実が確認できれば、すぐに再婚が可能です。

夫と離婚する時点で妊娠していなければ、その後にできた子は再婚後の夫の子と容易に推定できます。

ただし、再婚禁止期間に再婚するときは、妊娠していない事実を確認するため、医師から妊娠していないという診断書を作成してもらう必要があります。

妊娠の可能性がない場合

妊娠の可能性がないまたは極めて低い場合は適用されません。次のケースが該当します。

  • 女性が高齢である
  • 何らかの事情で子宮を全摘出した

なお、子宮を全摘出したケースでは、再婚するときに医療機関の診断書が必要となります。

離婚後に出産した場合

離婚後に出産した場合は、生まれてくる子の権利保護のために再婚を禁止する必要はありません。そのため、民法は、元妻の出産後は再婚禁止期間の適用を除外しています(民法第733条第2項2号)。ちなみに、婚姻中に妊娠していた場合などは、民法により元夫との子であると推定されています(民法第772条)。

出典:民法|e-GOV法令検索|法務省

同じ相手と再婚する場合

同じ相手と再婚した場合、再婚禁止期間は適用されません。

離婚した元夫婦が離婚を後悔し、2人の合意の下で再婚するケースが該当します。

再婚相手が元夫であるなら、父親と推定される人物は元夫のみです。

そのため、嫡出推定で混乱やトラブルが起きたり、子に不利益が生じたりする危険性も低いと考えられます。

再婚禁止期間を守らければどうなるか

なるべく早く再婚したいからと再婚禁止期間を無視してしまうと、子の権利に大きな影響が出る可能性があります。

こちらでは、再婚禁止期間を守らない場合のリスクについて解説しましょう。

罰則はない

再婚禁止期間を守らなかったからといって、「再婚禁止期間に違反したものは、〇万円の罰金に処す」などの罰則はありません。

ただし、子の父親が前夫なのか、それとも再婚した夫なのか、どちらかがわからないと、子の権利が不安定になります。

そのような事態を避けるためには、煩雑な手続きを経て、子の父親がどちらなのかを決める必要があります。

父親決定の手続きがある

再婚禁止期間に違反してその期間中に子が生まれたときは、戸籍謄本には「父未定の子」と記載された状態となります。

この場合について、民法は、「子の父を定めることができないときは、家庭裁判所がこれを定める」としています(民法773条)。

そのため、「父を定めることを目的とする訴え」が必要ですが、その前段として「父を定めることを目的とする調停」を申し立てなければなりません。

調停では、現在幅広く活用されている「DNA鑑定」の結果も提示されます。

DNA鑑定とは、毛髪やわずかな皮膚片等を利用して、ヒトの遺伝子の本体であるDNAの配列部分のわずかな違いを読み取り、個人を識別する技術です。

夫の子であるならば、夫のDNA配列に近い結果がでます。

DNA鑑定の結果に争いがなければ、「合意に相当する審判」によって父親を定めます(家事事件手続法第277条)。

もし、DNA鑑定の結果に当事者の一方が納得できないときは、訴訟の提起も可能です。裁判所が父親が前夫なのか再婚した夫なのかを改めて決定します。

出典:民法|e-GOV法令検索|法務省

出典:家事事件手続法 | e-Gov法令検索|法務省

元夫の子の扱いとなる可能性も

離婚後300日以内に子が出生した場合は、たとえ子の血縁上の父が前夫でなくても、戸籍上は前夫の子として扱われます。

このようなケースが発生した場合、前夫との間の子であるとの推定を否定するためには、家庭裁判所に、前夫からその子は「自分の子ではない」という否認を求める「嫡出否認調停」を申し立てる必要があります。

嫡出否認調停は、夫が子の出生を知ったときから1年以内にしなければなりません。

調停で元夫婦双方が夫の子ではないと合意した後、家庭裁判所が必要な調査等を行い、その合意が正当であると認められれば、合意に従った審判が下されます。

出典:嫡出否認調停 | 裁判所

無戸籍の可能性も

再婚禁止期間に違反した場合、子が「無戸籍者」となる可能性もあるので注意が必要です。

無戸籍者とは、戸籍を有しない人を指します。日本では戸籍法49条で「出生から14日以内に届出をしなければならない」と規定されています。

しかし、出生届を出す義務のある親等が、何らかの理由で届出をしなかった場合に子が無戸籍者となってしまうのです。

無戸籍者となるケースで最も多いのが、離婚後300日以内に新たなパートナーとの子ができた場合です。

離婚後300日以内に子が出生した場合は、戸籍上は前夫の子と扱われてしまうので、それを否定するためには、前夫から「嫡出否認調停」を申し立ててもらう必要があります。

しかし、嫡出否認調停の申立てを、前夫に依頼することに抵抗を感じる人もいるでしょう。

前夫に依頼できずに出生届も出さない状態が続き、結果として子が無戸籍になってしまうのです。

無戸籍の場合は住民票も作られないため、次のような制約やトラブルが発生する可能性もあります。

  • 市区町村から「就学通知」が来ないので、義務教育を受けるのが困難となる
  • 健康保険証を持てないため、医療費が全額自己負担となってしまう
  • 18歳になっても選挙権を持てない
  • 運転免許証やパスポートを取得できない
  • 銀行口座の開設、携帯電話の契約もできない
  • 身分を証明するものがないので就職も難しくなる
  • 結婚や出産に支障が出る

子の人生を守るため、親としての責任ある行動が求められます。

出典:戸籍法 | e-Gov法令検索|法務省

再婚禁止期間で悩んだらすべきこと

再婚禁止期間で何らかのトラブルが起きた場合は弁護士と相談した方がよいです。

弁護士は事情を聴いたうえで、どのように対応すればよいかをわかりやすく説明します。

たとえば、離婚後300日以内に新たなパートナーの子を出産した場合、弁護士に依頼すれば、依頼者の代理人として前夫と会い、嫡出否認調停の申立てを働きかけることも可能です。

子が無戸籍となる事態は避けたいが、もう前夫と話したくない、頭を下げたくないという場合は、法律の専門家である弁護士に任せて、子の権利を守りましょう。

まとめ

今回は多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、再婚禁止期間でトラブルが起きた場合の対応策等について詳しく解説しました。

2022年12月10日に再婚禁止期間の撤廃等を盛り込んだ民法改正法が成立しており、2024年4月1日から施行されます。しかし、改正法施行前の婚姻には、従来の規定が適用されるので注意が必要です。

再婚禁止期間に関する悩みがある場合は、早く弁護士に相談し、今後の対応の仕方を話し合ってみましょう。

<参考>民法改正による嫡出推定制度の見直しのポイント

  • 婚姻解消から300日以内に生まれた子も、母が前夫以外の男性と再婚後に生まれたときは、再婚後の夫の子と推定する
  • 女性の再婚禁止期間を廃止
  • 夫のみに認められていた嫡出否認権を子及び母にも認めた
  • 嫡出否認の訴えの出訴期間を1年から3年に伸長

出典:民法等の一部を改正する法律について(2023年1月13日)|法務省

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