再婚したら養育費はどうなるのか?減額できるケース・方法・すべきことを解説

最終更新日: 2023年09月28日

再婚で養育費はどうなるのか?減額できるケース・方法・すべきことを解説

  • 養育費を受け取る側が再婚したようだ、私の支払い義務はなくなるのだろうか?
  • 再婚により養育費を減額できる方法があるなら是非知りたい
  • 再婚で養育費を決め直したい場合、弁護士に相談すべきだろうか?

養育費とは、子どもが成人して自立できるようになるまで、子育てにかかる費用を指します。

養育費は親権(身上監護権)を持たない親が支払います。

ただし、離婚後に養育費を受け取る側、あるいは支払う側が再婚する場合があります。そのようなときに、養育費の支払を免除または減額できるのか、気になるところでしょう。

そこで今回は、多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、再婚が養育費に与える影響、支払方法、再婚で養育費を免除・減額できるケース等について詳しく解説します。

  • 離婚後、養育費を受け取る側・支払う側が再婚しただけでは、支払義務は消えない
  • 離婚後、受け取る側・支払う側に事情の変化があれば、家庭裁判所に養育費減額等の調停の申立てができる
  • 再婚で養育費の変更をしたいときは、まず弁護士に相談してアドバイスを受けた方がよい

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

再婚したら養育費はどうなるのか?

離婚を話し合うときに、親権の帰属や財産分与、慰謝料、面会交流とともに、子どもの養育費をどうするかも大切な決定事項です。

養育費とは、子どもが成人して自立するまでの子育てに要する費用です。

こちらでは、離婚後に養育費を受け取る側・支払う側が再婚した場合、養育費がどうなるのかを解説します。

支払い義務はなくならない

離婚後、養育費を受け取る側・支払う側が再婚した場合、養育費を減額・免除しなければならない、という法律の規定はありません。

法律では「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」と明記されています(民法第877条第1項)。

未成年の子どもに対する法律上の扶養義務がある限り、再婚後も当然に養育費を支払い続ける必要があります。

出典:民法(成年年齢関係)改正 Q&A|法務省

状況によっては減額等のケースも

一度、養育費について取り決めをしたからといって、全く変更できないわけではありません。「事情の変更」により減額等が認められる可能性もあります。

再婚後に事情が変更した例としては、未成年の子どもが養子縁組をした、新しく子どもが誕生した、扶養家族の増減等が該当します。

ただし、養育費を支払う側は事情の変更があったと勝手に判断し、一方的に養育費の減額や不払いを行ってはいけません。

養育費の減額や免除を希望するのであれば、受け取る側との協議や、法定された手続きを進める必要があります。

再婚で養育費の減額等ができるケース

養育費を受け取る側・支払う側が単に再婚しただけでは、養育費の減額や免除は認められません。

しかし、受け取る側・支払う側に事情の変化があれば、減額や免除が可能な場合もあります。

養子縁組

再婚後、未成年の子どもが再婚相手と養子縁組をすれば、養育費の免除を認められる可能性が高いです。

なぜなら、養親となった再婚相手が子どもに対し第一次的な扶養義務を負うからです。その結果、実親(養育費を支払う親)は第二次的な扶養義務者となります。

ただし、養親となった再婚相手が病気やケガ等で働けないという状態では、免除や減額は認められない場合があるでしょう。

また、「再婚しても、これまで通り養育費を支払い続ける」という内容で合意していたときは、養子縁組をしても原則として合意は維持されます。

支払う側に扶養家族が増えた

支払う側が再婚し、再婚相手との間に子どもができた、再婚相手の連れ子と養子縁組をした等、扶養家族が増えた場合、養育費の減額等が認められる可能性もあります。

なぜなら、新たに誕生した子どもも、養子縁組で養子となった子どもも、しっかり扶養する義務があるからです。

ただし、再婚相手の連れ子と養子縁組をしていない場合は、扶養義務は発生しないので、養育費の減額は困難です。

再婚で養育費の減額等をするための方法

養育費を受け取る側・支払う側に事情の変更があった場合に、養育費の減額・免除を求めるためには、再び協議や調停等が必要となります。

こちらでは、協議・調停・審判と3つのステップに分けて解説しましょう。

協議

まずは養育費を受け取る側・支払う側が直接、減額や免除を話し合います。

養育費を支払う側は減額したい理由をしっかりと説明し、受け取る側の理解を求めましょう。

養育費の減額または免除内容の合意ができたときは、変更内容が明記された「養育費変更の合意書」を作成します。

合意書は2通作成し双方が署名・押印したうえで、1通ずつそれぞれが大切に保管します。

調停

養育費を受け取る側・支払う側の話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に「養育費(減額等)調停」の申立てを行いましょう。

この調停は、相手方の住所地または当事者が合意で決めた家庭裁判所に、「養育費(減額等)調停」の申立てを行わなければいけません。

申し立てるときは、次の書類を提出します。

  • 申立書原本と写し:各1通
  • 送達場所の届出書:1通
  • 事情説明書:1通
  • 進行に関する照会回答書:1通
  • 未成年者の戸籍謄本:1通(本籍地の市区町村役場で取得、1通450円)
  • 申立人の収入関係の資料:源泉徴収票、給料明細、確定申告書等の写し
  • 収入印紙:子ども一人につき1200円
  • 郵便切手:子ども一人につき100円2枚、84円10枚、10円20枚
  • 非開示の希望に関する申出書:必要があれば

家庭裁判所から選出された調停委員(2名)が夫婦の間に入り、養育費の支払金額を維持するか、減額(または免除)するか、互いの主張を聴きます。

そのうえで、養育費に関するアドバイスや、双方が妥協できそうな提案を行う等、合意のための調整を図ります。

夫婦双方が合意し話し合いがまとまったときは、家庭裁判所が調停調書を作成します。

審判

養育費の減額や免除に関する調停が不成立となった場合は、自動的に養育費(減額等)審判に移行します。審判に移行するために、当事者が特別な手続きをする必要はありません。

審判では裁判官が調停委員の意見を踏まえ、当事者の主張や資料等、一切の事情を考慮したうえで、決定を下します。審判の決定について審判書が作成されます。

再婚で養育費を決めるときにすべきこと

離婚するときに裁判所が公表している「養育費・婚姻費用算定表」を参考にして費用を取り決めた方も多いでしょう。

しかし、事情の変更がある場合は、現在の事情にあてはめて計算し直す必要があります。

養育費算定表を参考に決めること

再婚し事情変更があった場合は、現状を養育費・婚姻費用算定表にあてはめて再計算します。

事例をあげ、離婚時と再婚時で世帯員等の変更があった場合を算定してみましょう。

離婚時

支払う側の夫が給与所得者(年収800万円)で、受け取る側の妻がパート従業員(年収150万円)・子ども1人(8歳)の場合、算定表を用いると養育費は次の通りです。

  • 養育費:約8万4,000円

再婚(4年後、支払う側が再婚し、子どもが1人できた)

支払う側の夫が給与所得者(年収900万円)で、受け取る側の妻がパート従業員(年収200万円)・子ども1人(12歳)の場合、算定表を用いると養育費は次のとおりです。

  • 養育費:約5万2,000円

事例では離婚時よりも3万2,000円の減額が可能となります。

出典:養育費・婚姻費用算定表 | 裁判所

弁護士への相談

離婚後、受け取る側の子どもが再婚相手と養子縁組をした、支払う側の再婚で再婚相手との間に子どもができたというケースも想定されます。

しかし、養育費を支払う側が、このような事実を確認したからといって、一方的に養育費の免除や減額を行えば、受け取る側から強制執行を受けるおそれがあります。

支払う側が、事情の変更で養育費の減額や免除を希望するのであれば、まずは弁護士に相談しましょう。

弁護士は相談者の事情をよく聴いたうえで、養育費の減額や免除を行うコツ、手続き方法などについて適切なアドバイスをします。初回相談無料の法律事務所もあります。

まとめ

今回は多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、再婚で養育費を免除・減額する方法、養育費を再計算する方法等について詳しく解説しました。

養育費の免除・減額をしてもらいたいとしても、受け取る側の事情もよく考慮しつつ、冷静に話し合いを進める必要があります。

再婚で養育費を免除・減額したいのであれば、まず弁護士に相談し、対応の仕方を話し合ってみましょう。

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