財産処分

最終更新日: 2023年11月17日

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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寺院の財産

寺院の財産には、基本財産、特別財産、普通財産があります。

基本財産とは、境内地、境内建物など宗教活動の基礎となる財産として寺院規則に規定されたものです。

特別財産とは、宗教活動に不可欠な宝物として寺院規則に規定されたものです。

普通財産とは、基本財産、特別財産以外の財産で寺院規則に規定されたものです。

寺院の永続的存続のためには、これらの財産が適正に管理される必要がありますので、宗教法人法、寺院規則において、処分方法について規制が加えられています。

財産処分の手続き

寺院が以下の行為をする場合には、寺院規則の定める手続きと公告が必要となります(宗教法人法23条)。

  1.  不動産又は財産目録に掲げる宝物を処分し、又は担保に供すること

  2.  借入又は保証(但し、当該会計年度内の収入で償還する一時の借入を除く)

    「借入」は借金だけでなく、工事業者に対して多額の請負代金債務を負うことも含まれます。

  3.  主要な境内建物の新築、改築、増築、移築、除却又は著しい模様替をすること。

  4.  境内地の著しい模様替をすること

  5.  主要な境内建物又は境内地の用途を変更すること又は、これらを宗教法人の目的以外の目的のために供すること(境内地の一部を保育園や駐車場にするなど)

多くの寺院規則では、財産処分について、総代の同意や包括宗教法人の承認が必要としています。

また、公告については、当該処分行為の1か月前までに寺院規則所定の公告期間を終えている必要があります。

なお、公告期間が1日足りなかったからといって直ちに取引が無効になるわけではありませんが(東京地裁S38.5.10判タ151号79頁)、紛争の種になりますので、期間はしっかり守ることが重要です。

手続きに違反した財産処分の効力

境内建物、境内地、財産目録記載の宝物については、寺院規則所定の手続きや公告手続を取らなかった場合、当該行為は無効となります(宗教法人法24条)。

そのため、寺院は当該取引の無効を主張して売却等した財産の返還を求めることができます(もちろん、売買代金等は返還しなければなりません。)。

ただし、取引相手が手続違反について知らなかったのであれば(善意であれば)、当該取引は有効となります(同条但書)。

もっとも、手続違反を疑ってしかるべき状況があり、容易に手続を履践しているか確認できたような場合には、取引相手に重大な過失があるとして(悪意と同視)、取引の有効を主張することはできません(最高裁S47.11.28判タ286号228頁)。

なお、檀信徒には原告適格はなく、原告となって取引の無効を主張することはできません(京都地裁S48.2.9判タ292号293頁)。

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