婚前契約と財産分与|春田法律事務所

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婚前契約と財産分与

婚前契約と財産分与

2019年08月17日

婚前契約は、必ずしも離婚するときを想定した契約ではなく、結婚生活をより円満に送るための契約と考えるべきものではありますが、実際に、離婚する際に大いに役立つのは間違いありません。
そして、離婚する際に特にもめやすいのは財産分与です。婚前契約書で資産の分割方法を予め明確に定めておけば、資産の取り合いという、できれば避けたい事態に時間、お金、労力を費やすことを防ぐことができます。

そこで、今回は、財産分与について婚前契約にどのような規定を盛り込むとよいかについて、ご説明します。

1 そもそも財産分与とは、何をどうするのか?

 財産分与とは、基本的には、婚姻中に夫婦の協力によって築かれた財産(資産だけでなく借金も)を離婚の際に原則として半々に分ける手続きです。
そして、離婚時の財産分与で一番もめやすいのが、財産分与の対象なのかどうか、つまり婚姻中に夫婦の協力によって築かれた共有財産なのか、それとも各自の固有の財産である特有財産なのかという点です。
そのため、婚前契約書には、何が共有財産で、何が特有財産であるのか、できる限り明確になるよう定めることが重要です。

 なお、財産分与の割合は原則として5:5ですが、資産形成に寄与した度合いは自分の方が大きいと主張して6:4とすることを求められることもありますので、財産分与の割合についても、確認的に5:5と婚前契約書に明記しておくと良いでしょう。

 また、財産分与の対象は共有財産ですが、特有財産の生成や維持に貢献したとして寄与した程度に応じた金銭の支払いを求められることがありますので、特有財産に対する寄与は主張しないことを婚前契約書に明記しておくことも考えられます。

 それでは、以下財産の種類ごとに婚前契約へ盛り込む際のポイントを見て行きましょう。

2 居住用不動産

(1) オーバーローンの場合

 ほとんどのカップルが、結婚後、いずれかのタイミングで自宅として不動産を購入します。
通常、住宅ローンを組んで不動産を購入しますが、離婚する時点で、不動産の時価よりもローン残高の方が高い場合(オーバーローン)、不動産としての資産価値はゼロのため、財産分与の対象とはなりません。
むしろ負債であるローン残高をどのように処理するかが問題となります。

(2) ローン残高よりも時価が高い場合

 他方、ローンが完済済みの場合や、不動産の時価がローン残高よりも高い場合には、不動産の資産価値を分与することになります。
夫婦のいずれも、離婚後にその不動産に住まない場合には、不動産を売却して、その売却代金を分けることになります。
一方、夫婦のいずれかが離婚後もその不動産に住む場合には、住み続ける方が、その不動産の時価評価額からローン残高を引いた金額の半分を他方に支払うことになります。

(3) 不動産を購入する際に特有財産を充てている場合

不動産の時価評価額を、購入資金に対する夫と妻それぞれの寄与度によって分けることになります。
例えば、購入時の頭金を結婚後の夫婦の預貯金から支出した場合には、寄与度は50%ずつですが、不動産を購入するにあたり、結婚前の預貯金や、どちらかの親が援助したお金を購入資金に充てるケースでは、それらのお金は特有財産からの支出ということになりますから、その分購入資金に対する寄与度は大きくなり、時価評価額に対する取り分も大きくなります。

 不動産の購入資金に対する寄与度の計算方法や、そもそも購入資金に特有財産を充てたという事実自体が争われることがあります。
そこで、婚前契約書の中に、不動産の購入資金に対する寄与度の計算方法を予め定めておくことが考えられます。
また、不動産の購入資金に特有財産を充てたという事実を、後々になって否定されないためには、不動産を購入する際にそれぞれが特有財産から支出した金額やお金の出所について確認する書面を作成しておくと良いでしょう。

3 預貯金

預貯金は結婚後も入出金があるのが通常です。
そのため、結婚後に残高が変動していると、離婚の話し合いをしている現時点で、結婚前の残高がそのまま残っているとは認められにくいでしょう。
そのため、もし結婚前の預貯金について財産分与の対象となることを防ぎたいという場合には、当該預金は、結婚後に入金がない口座に移しておき(入金があると結婚後の共有財産と区別がつきにくくなります。)、その口座は特有財産と婚前契約書に明記しておくとよいでしょう。

4 退職金

退職金についても支給される可能性が高ければ、財産分与の対象となりえます。
もっとも、定年退職が相当先である場合、それまで在職しているかどうかも不確実です。そこで、婚前契約書において、例えば、離婚時点において5年以内に定年退職を迎える場合にのみ退職金を財産分与の対象とするといった規定を盛り込むことが考えられます。

6 高価な動産

 例えばエルメスのバッグや高価な宝飾品など、資産として価値のある動産については、夫から妻にプレゼントしたものであっても、共有財産であるとして財産分与の対象とすべきだと主張されることがあります。
とはいえ、これらの動産は、プレゼントとして贈られたものですから、財産分与の対象とするのは納得いかないと思う方もおられるでしょうから、婚前契約書において、夫又は妻が専用で使う高価な動産については財産分与の対象としないと規定すると良いでしょう。

7 相続した財産

 相続した財産は、夫婦が協力して形成した共有財産ではなく、特有財産ですから、財産分与の対象とはなりません。
もっとも、不動産であれば相続したことが登記から明らかですが、現預金には相続したものというラベルが付いているわけではありませんので、共有財産である現預金と混ざってしまい、相続した現預金であることを証明することが難しくなってしまいます。
相続した動産や不動産、金融商品も換金してしまえば同様のことが言えます。

 共有財産と混ざってしまうことを防ぐ対策としては、相続した後に相続した財産一覧を作成し、それらについては財産分与の対象としないことを合意した公正証書を作成することが考えられます。
それと同時に相続した現預金や、相続した財産を換金した際に預け入れる専用の預金口座を開設し、共有財産である預貯金とは分離しておくとよいでしょう。

8 離婚後の経済的な自立をサポートする条項

 例えば、結婚や出産を機に妻が仕事を辞め、家庭に入り専業主婦として生活している場合、離婚することになれば妻の家計は突如として苦しくなります。
仕事を辞め、家庭に入って夫を支えてきたからこそ、夫は仕事に専念することができたと考えることもできますが、それにもかかわらず離婚によって何のサポートもなく突如として社会に放り出されるというのは酷だと考えるカップルもあるでしょう。

そこで、婚前契約書に、離婚後6か月間は、夫は妻に対して毎月15万円を支払うというような、離婚後、妻が経済的に自立することをサポートする規定を盛り込むことも検討してよいかもしれません。

最後に

 以上、婚前契約書に盛り込むとよい財産分与に関する定めを見てきました。
婚前契約書は、円満な夫婦関係を持続するための契約書と考えるべきものですが、離婚の際に絶大な効力を発揮することも間違いありません。
結婚する前から離婚するときのことを考えるのは気持ち良いことではありませんが、万が一のときに無用なコストが発生することを避けるために、婚前契約書の作成をお勧めします。
婚前契約書を作成する際には、離婚と婚前契約書に詳しい弁護士にご相談ください。

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