宗教法人の不動産売買は無効?注意点を専門弁護士が解説

2022年07月21日

  • 宗教法人は不動産を売買できるの?
  • 宗教法人の不動産売買が無効になることはあるの?
  • 宗教法人の不動産売買で注意すべき点は?

顧問弁護士がいて日頃から弁護士に相談している宗教法人は多くありません。そのため、不動産売買をしようとする宗教法人の方がこのような疑問をもつことがあるかもしれません。

また、宗教法人と不動産売買をすることは多くはありませんので、初めて宗教法人と取引をする方も上記のような疑問をもたれるかもしれません。

実際、宗教法人の不動産売買においては、通常の取引とは異なり、注意しなければならないポイントがあります。

そこで、今回は、宗教法人を専門とする弁護士が宗教法人の不動産売買について解説します。

この記事を監修したのは

春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
愛知県弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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宗教法人の不動産売買は自由ではない

個人や会社であれば、自分の所有する財産は自由に処分することができます。一般的な不動産取引は、買主が不動産を購入する意思を示せば、売主との間で売買契約が成立します。

しかし、宗教法人が所有する不動産には、信者から寄進されたものも多く含まれています。また、信仰の場である境内地や境内建物を自由に処分されては、信者は困ってしまいます。そのため、宗教法人による不動産の売却には一定の制約が課されているのです。

なお、不動産の購入のために多額借入をする場合にも、宗教法人の財産的基盤に影響を及ぼしますので、一定の制約があります。

このように宗教法人の不動産売買には個人や会社の取引とは異なる制約があることを知らずに取引をした場合、後に取引の効力が否定されるなどして不測の損害を被る恐れがあります。

宗教法人の不動産売買に必要な手続

このように宗教法人の不動産売買には特別な制約が課されています。ここではどのような手続きが必要となるのかについてご説明します。

規則上の手続

まず、宗教法人の規則上求められる手続きがあります。

求められる手続きは宗教法人によって異なりますが、一般的には、責任役員会の議決や総代の同意が必要とされていることが多いようです。被包括宗教法人の場合は、包括宗教法人の承認が必要になるケースもあります。

宗教法人が被包括宗教法人の場合には、注意すべきポイントがあります。宗派によっては、包括宗教法人の承認を得るための必要書類として、責任役員「全員」の議決を得た議事録の提出を求められるケースがあります。

このような場合、たとえ宗教法人の規則では責任役員の過半数の賛成があれば良くても、それだけでは包括宗教法人の承認を得ることができないのです。そのため、被包括宗教法人の場合は、包括宗教法人の承認を得る要件についても確認が必須となります。

公告

宗教法人が不動産を売却する場合、その1か月前までに信者その他の利害関係人に対して財産処分の要旨を示して公告する必要があります(宗教法人法23条1号)。

公告の方法は宗教法人の規則に規定されていますので、その方法に従って公告します。公告の期間については注意を要します。

例えば、規則に10日間掲示すると規定されている場合を考えます。民法は初日不算入としていますので、7月12日に掲示を開始した場合、10日間の掲示が終わるのは7月23日午前0時です。

そして、公告が終わってから1か月後に不動産を売却可能となりますので、上記例では不動産を売却できるのは8月23日午前0時以降です。

宗教法人の不動産売買が無効になることも

以上のとおり、宗教法人の不動産売買には特別な手続きが要求されています。では、このような手続きを踏まずになされた不動産取引は有効なのでしょうか。以下ご説明します。

無効となる場合も

宗教法人が不動産売買にあたって公告や規則上の手続を怠った場合は、無効とされる場合があります。それは、売買の対象となった不動産が「境内地や境内建物である不動産」に当たる場合です。

これらの不動産は、宗教活動を行う上で特に重要な財産であるため、信者や利害関係人に大きな影響が生じることからその不動産売買が無効とされています(宗教法人法24条本文)。ただし、手続違反について買主が善意無重過失の場合には取引は有効です(同条但書)。

善意無重過失とは、法律用語で、平たく言えば、手続違反を知らず、かつ容易には手続違反の存在を知りえなかったという場合をいいます。

一方、境内地や境内建物以外の不動産については、手続違反があったとしても取引は有効です。

買主側のチェックポイント

このように無効な不動産取引に巻き込まれないために、買主も気を付ける必要があります。宗教法人から不動産を購入する買主がチェックすべきポイントは以下の点です。

  • 宗教法人の規則の確認
    宗教法人の規則、責任役員会議事録を確認し、有効な議決があるか確認します。
  • 公告の有無の確認
    宗教法人の登記事項証明書に記載されている公告方法を確認し、適法な公告がなされたか確認します。
  • 包括宗教法人の確認
    被包括宗教法人の場合、包括宗教法人の承認を得ているか確認します。

売買契約締結時の特約

以上のチェックポイントに加え、宗教法人との不動産売買では、リスク回避のために不動産売買契約書に以下のような特約を加えるとよいでしょう。

  • 宗教法人規則で定められた手続及び宗教法人法の公告が適法に実施されたことを売買契約の停止条件(効力発生要件)とすること
  • 一定の期日までに条件が成就しないときは買主が白紙解約できること
  • 所有権の移転時期は、停止条件が成就した後、売買代金が支払われた時とすること

売主側で注意しておくべきこと

売主側である宗教法人としては、以下のリスクがあることを承知しておく必要があります。

まず、売買の対象となった不動産が「境内地や境内建物である不動産」以外の場合には、不動産売買は有効ですが、手続違反は、不動産売買が有効であるか無効であるか否かにかかわらず、10万円以下の過料という罰則規定があります(宗教法人法88条3号)。

また、代表役員及び責任役員は、法令、規則を遵守し、寺院の業務及び事業の適切な運営を図る義務があります。そのため、これらの義務に違反し、宗教法人に損害が生じた場合は、損害賠償の請求をされる可能性がありますし、背任罪(刑法247条)に問われる可能性もあります。

まとめ

以上、宗教法人の不動産売買について解説しました。

宗教法人の不動産売買は特別な手続きがあり、その違反は買主に損害を与え、買主から訴えられるリスクがあります。一方、買主としても通常の取引とは異なる注意点があります。

宗教法人の不動産売買については売主側も買主側も、契約前に宗教法人を専門とする弁護士にご相談ください。

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代表弁護士春田 藤麿
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経歴
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慶應義塾大学法科大学院卒業
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