離婚慰謝料はモラハラでどう変わる?必要な証拠から影響しないケースまで徹底解説
最終更新日: 2024年12月30日
- パートナーからモラハラを受けている。離婚を決めたが、慰謝料はどれくらい請求できるのだろう?
- パートナーのモラハラを理由に慰謝料請求するとき、どのような証拠が必要なのだろう?
- モラハラによる慰謝料請求を進めるとき、どのような手続きがあるのだろうか?
パートナーは暴力は振るわないものの、暴言や過剰な束縛を受ける等の「モラハラ」で、離婚を決意する方々が数多くいます。
離婚するとき、モラハラを理由に慰謝料請求が可能です。ただし、どのくらいの慰謝料が認められるか気になることでしょう。
そこで今回は、モラハラ・離婚問題の解決に実績のある専門弁護士が、モラハラを理由に離婚慰謝料を請求できるのか、モラハラの証拠を集めるポイント等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- モラハラを理由に離婚慰謝料を請求できるが、金額の相場は約50~300万円と差がある
- モラハラの証拠を揃えなければ、慰謝料を請求できないばかりか離婚すら認められない可能性もある
- モラハラが原因の離婚慰謝料を決める場合、様々な方法が存在する
離婚慰謝料はモラハラでどう変わるのか
パートナーからのモラハラが原因で離婚する場合、離婚慰謝料はモラハラの内容によって決定されます。
パートナーがモラハラの他にDVや不倫等を行っていた場合、慰謝料は増額される可能性が高いです。
モラハラとは
モラハラとは、いわゆる「悪口」「威圧的な言葉」で相手を精神的に傷つける行為です。
具体的には次のような言葉による暴力が該当します。
- 人格を否定する発言:「お前はクズ人間だ。」「生きる価値すらない。」
- 束縛や行動の制限:「一人で勝手に家を出るな。」「私が同伴しなければ旅行は認めない。」
- 育児や家事の否定:「お前のしつけが悪いから、子どもが泣き止まないんだ。」「家事なんて女のやることだ。くだらない。」
- その他:無視、ため息、突然不機嫌になる、ルールの押し付け等
慰謝料への影響
離婚のときに慰謝料を協議する場合は、夫婦間で自由に金額の取り決めが可能です。
裁判離婚(離婚訴訟)で認められるモラハラの慰謝料額は、約50〜300万円といわれています。モラハラの慰謝料額は悪質性や、継続した期間、被害者の精神的苦痛(精神疾患で入院した等)が考慮されます。
深刻なモラハラでないと認められると、慰謝料は請求できても数万円に収まる場合があるでしょう。
一方、モラハラに加えDVや不倫の事実が認められると、慰謝料額は300万円を超える可能性があります。
ただし、モラハラは殴る蹴るの暴力を伴わないため、精神的な苦痛を受けたという明白な証拠が揃わないと、慰謝料請求が認められない場合もある点に注意しましょう。
離婚慰謝料請求に必要なモラハラ証拠
パートナーによるモラハラの慰謝料請求をする場合は、モラハラを受けたという証拠が必要です。
家庭裁判所で調停や裁判を行うときは、様々な証拠を集め提出できるように準備しておきましょう。
医師の診断書
医師の診断書はモラハラの重要な証拠となります。
パートナーのモラハラが原因となり、うつ病や不眠症のような精神疾病を発症し、精神科・心療内科を受診したならば、医師にモラハラの具体的な内容等を伝えておきましょう。
医師が作成した診断書を証拠にできる他、精神科・心療内科等への通院履歴やカルテも、パートナーから精神的な苦痛を受けた証明となります。
動画・音声
パートナーがモラハラしている動画や音声を撮影できれば、重要な証拠として裁判所に提出できる可能性があります。
動画や音声には、モラハラを行ったパートナーの暴言や行動の具体的な内容を記録することで、状況を証明しやすくなる利点があります。
ただし、一部のみを撮影した場合、意図的に都合の悪い部分を編集していると疑われることもあるため注意が必要です。証拠の信頼性を高めるためには、以下の点を心がけてください。
- モラハラの全体の流れや状況が分かるように長めに録音・録画を行うこと
- 複数回の録音や録画を行い、モラハラが頻繁に行われている事実を示すこと
- 録音や録画を行うときは、自分自身や第三者の権利を侵害しないこと
録音・録画が合法かどうかは状況によって異なります。適切な録音・録画を行うために弁護士に相談し、証拠を収集することをお勧めします。
メール・チャット
パートナーから非難・侮辱されたり、人格を否定されたりするメールやチャットを受け取った場合は、これをしっかりと保存しておくことが重要です。これらは、モラハラを裏付ける証拠の一部として提出できる場合があります。
以下のポイントを参考に、メッセージを適切に保存しましょう、
- メールやチャットの保存設定を有効にすること
- スクリーンショットを撮影し、日時が分かる形で保存すること
- バックアップを取り、データの紛失に備えること
ただし、送信された文脈や文章表現の内容によっては、必ずしもモラハラと判断されるわけではありません。これらの証拠が有効に機能するためには、弁護士などの専門家に確認し、他の証拠と組み合わせて提出することを検討する必要があります。
第三者の証言
家族以外の親族や友人等の第三者の前で、パートナーが人格を否定するような暴言や行動をとったならば、その第三者の目撃証言も証拠となります。
特に裁判離婚(離婚訴訟)では、証人の出頭が可能なので、協力してくれる第三者がいれば、法廷の場での証言や陳述書の作成を依頼しましょう。
相談履歴
公的機関に相談した履歴も証拠の一つです。
パートナーのモラハラに悩み、女性センターや精神保健福祉センター等で相談をした事実も、証拠となるケースがあります。
公的機関に相談した内容は、「相談票」という書面で保管される場合が多く、それらの写しを取得すれば、モラハラの事実を証明するのに役立ちます。
日記
パートナーから受けたモラハラの内容を、日記やメモという形で残しましょう。
日記やメモで手書きしておく他、スマートフォンのアプリやパソコンを使って記録しておいても構いません。
いずれで記録する場合でも、モラハラされた日時や場所、相手の言動をなるべく具体的に記録しておきます。手書きするなら、パートナーから書き換えられないようボールペンで記載しましょう。
また、パートナーが日記・メモの破棄や、記録データの証拠隠滅を図る事態が想定されるので、パートナーの手の届かない場所・方法で保管する必要があります。
離婚慰謝料にモラハラが影響しないケース
パートナーからモラハラを受けても、必ず離婚慰謝料が請求できるとは限りません。
証拠が不十分である場合や軽微な被害である場合、慰謝料請求が認められないか、請求は認められても低額となる可能性があります。
証拠が不十分
パートナーから受けたモラハラの証拠を集めておかないと、調停や裁判で説得力のある主張ができないおそれもあるでしょう。
日記やメモを残しただけでは、パートナー側から「勝手に創作した。」と反論されてしまう可能性があります。
自己の主張を有利に進めるため、モラハラを保存した動画や音声、メールやSNSの他、医師の診断書や公的機関の相談履歴等、可能な限り証拠を揃えておく必要があります。
婚姻関係の破綻
モラハラ当時、すでに婚姻関係が破綻していた場合、離婚慰謝料という形では請求できない可能性が高いです。
ただし、いかに婚姻関係が破綻しているとはいえ、夫婦の一方の人格を否定する言動は許されません。
そのため、離婚に関する手続きとは別に、不法行為責任を理由とした損害賠償(慰謝料)請求が可能です(民法第709条・710条)。
軽微な被害
一時的な暴言や軽い嫌がらせ等、精神的苦痛が継続しているような状況といえない場合、離婚慰謝料請求は認められない可能性が高いです。
また、離婚したい原因がパートナーの主にDVや不倫であったならば、モラハラを伴うケースもあります。
ただし、主原因とそれに伴うモラハラで、心身ともに追い詰められたと認められなければ、モラハラが離婚慰謝料に大きな影響を与えることはないでしょう。
被害者側の故意・過失
パートナーの悪口に対し同じような口調で言い返す、いわゆる「罵り合い」では慰謝料請求が認められません。
性格の不一致や価値観の違いが原因で、夫婦が不仲となり、お互いを罵倒する場合が該当します。
たとえば「誰が生活費をあげているのだバカ野郎!」というパートナーの暴言に対し、他方が「安月給が偉そうに語るな!」と反論するケースです。
このような罵り合いが長期間続き、婚姻関係が破綻しても、夫婦の一方に有責行為があったとは認められません。
モラハラが原因の離婚慰謝料を決める方法
モラハラをはじめとした離婚慰謝料の請求には様々な方法があります。
離婚慰謝料は夫婦間で自由に決められる他、裁判による金額の決定も可能です。
協議離婚
夫婦の話し合いで自由に離婚慰謝料の金額や支払方法を決定できます。
パートナーと離婚条件に合意できたなら、「離婚協議書」を作成しましょう。離婚協議書として離婚慰謝料等の内容を書面化すれば、離婚当事者が内容を忘れる心配はありません。
ただし、パートナーがモラハラの慰謝料の他、離婚給付を約束通り支払うか不安なときは、「強制執行認諾文言付き公正証書」を作成しましょう。
公正証書は公証人が作成する公文書で強い証明力を有します。公正証書に、離婚給付を支払う側が約束通り支払わなかったとき、強制執行による財産差押を承諾する条項も加えます。
強制執行認諾文言を付加すれば、民事訴訟を経ずに強制執行の申立てが可能です。
強制執行を恐れるパートナーは、約束通りに離婚慰謝料等を支払うことでしょう。
調停離婚
協議離婚で話し合いがつかない場合、家庭裁判所に「夫婦関係調整調停(離婚)」を申し立て、問題解決を図りましょう。
相手方の住所地または当事者が合意で定めた家庭裁判所に、申立書・必要書類を提出します。
その後、家庭裁判所が夫婦に「呼出状」を送付するので、指定された調停期日に出席しなければいけません。
調停期日で調停委員にモラハラの被害等を主張する場合は、事前に証拠書類を提出しましょう。
夫婦が和解をした場合、離婚や慰謝料の合意内容を明記した「調停調書」が作成されます。
裁判離婚
調停でも夫婦の和解が成立しなかった場合は、家庭裁判所に「離婚訴訟」を提起し、解決を図ります。
夫または妻の住所地を管轄する家庭裁判所に、訴状と必要書類を提出します。
離婚訴訟を提起できるのは、離婚原因が次のケースに該当する場合です(民法第770条)。
- 配偶者に不貞な行為があった
- 配偶者から悪意で遺棄された
- 配偶者の生死が3年以上明らかでない
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
- その他婚姻を継続し難い重大な事由がある
モラハラは「その他婚姻を継続し難い重大な事由がある」に該当します。
なお、モラハラが唯一の離婚理由の場合、十分な証拠を提出しないと、慰謝料請求はもちろん離婚も認められない可能性が高いです。
モラハラの証拠を提出したり、証人を呼んだりして、モラハラ被害を主張・立証すれば、訴訟を提起した側(原告)に有利な判決となるでしょう。
ただし、原告が勝訴しても、被告が判決に不満があるとき、判決書の送達を受けた日の翌日から14日以内に控訴するケースもあります。
モラハラによる離婚慰謝料は春田法律事務所にご相談を
今回はモラハラ・離婚問題の解決に尽力してきた専門弁護士が、モラハラに対する離婚慰謝料請求のポイント等を詳しく解説しました。
春田法律事務所は、モラハラ・離婚問題の解決に実績がある事務所です。まずは弁護士と、モラハラを理由とした慰謝料請求の方法について話し合ってみましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。