離婚で税金はこう変わる!増加・減少パターン・対処法も解説
最終更新日: 2023年11月14日
- 離婚が成立したら税金はどうなるのだろう?
- 離婚した人に対する税金の優遇措置のようなものはあるだろうか
- 夫から財産分与や養育費の支払いを受けた分にも課税されるのか不安
離婚をすれば夫婦とも税金の負担に影響が出てきます。所得の高い配偶者は税金の負担が重くなるかもしれません。
一方、所得の低い配偶者や子どもを連れて離婚する側なら、税金が軽減される可能性は高いです。
所得の低い配偶者は、どのような税金の優遇措置が受けられるのか、慎重に確認する必要があるでしょう。
そこで今回は、多くの離婚問題に携わってきた専門弁護士が、離婚後の税金の変化、離婚のとき受け取る離婚給付に税金はかかるのか等を詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 所得の高い配偶者は年末調整や確定申告時、配偶者控除や扶養控除が受けられず、税負担は重くなる可能性がある
- 所得の低い配偶者は様々な税の控除制度を利用できる可能性がある
- 財産分与のとき、金銭で受け取る場合は基本的に所得税がかからない
離婚したら税金はどう変わる?
夫婦が離婚した場合は、多少なりとも納付する税金に変化があります。
一般的に所得が多い納税者は年末調整・確定申告時、配偶者控除や扶養控除等が利用できなくなり、その分だけ税金は重くなってしまいます。
一方、所得が少ない納税者は、様々な控除をうまく利用し税の軽減が可能です。
なお、離婚成立のときに取り決めた養育費や財産分与、慰謝料いずれもケースによっては、税務署から納税を指摘される可能性があるので注意しましょう。
不安ならば、離婚時に受け取った給付額が課税対象となるのかどうか、税務署に確認した方が無難です。
離婚で増える可能性がある税金
所得が多い納税者は配偶者控除、扶養控除等、年末調整や確定申告で得られた税制上の優遇措置が認められない点に注意しましょう。
一方、財産分与を受け取る側はケースによって贈与税が課される可能性もあります。
配偶者控除
納税者に控除対象となる配偶者がいた場合、一定金額の所得控除が認められる制度です。
配偶者控除の条件に該当する配偶者がいた場合、申告すれば基本的に13万円〜38万円が毎年控除されます。
離婚後は、離婚前に控除されていた金額分が適用されなくなります。
扶養控除
納税者に扶養親族で年齢16歳以上の人がいる場合、一定の所得控除を受けられる制度です。
扶養控除の条件に該当する親族がいた場合、申告すれば基本的に38万円(特定扶養親族となる19歳以上23歳未満の人がいる場合は63万円)が毎年控除されます。
しかし、離婚し配偶者や子どもが扶養から外れた場合は、離婚前に控除されていた金額分が、離婚後には適用されなくなります。
財産が多すぎる場合
離婚した場合は控除制度だけでなく、財産分与の方法によっては「贈与税」がかかるケースもあります。
まずは分配された財産額が、婚姻中の夫婦の協力で得た財産額、およびその他の事情を考慮しても多過ぎると判断された場合、その多過ぎる部分に贈与税が課されてしまいます。
たとえば、夫婦の協力で得た財産の大半を夫の収入で得たにもかかわらず、財産分与のときその全額を妻に与えたというケースが該当します。
また、離婚が贈与税・相続税を免れるためになされたと認められる場合は、離婚で得た財産すべてに贈与税が課せられるので注意しましょう。
離婚で減る可能性がある税金
所得が少ない納税者は寡婦控除、ひとり親控除を年末調整や確定申告で申告すれば、減税措置が得られる可能性もあります。
寡婦控除
夫と離婚または死別した妻が適用できる控除制度です(寡夫は対象外)。控除額は27万円となります。
納税者に事実上婚姻関係と同様の相手がおらず、合計所得金額500万円以下の場合に適用されます。
また、上記の条件に加え再婚しておらず、扶養親族である子がいる場合、「特定の寡婦」として控除額を35万円とする特例も利用可能です。
ひとり親控除
寡婦控除より適用範囲が広く寡夫や未婚の母も対象となる控除制度です。控除額は35万円となります。
こちらの控除制度の適用を受けたい場合は、次の条件全てを満たす必要があります。
- 原則としてその年の12月31日の現況で婚姻していない
- 事実上婚姻関係と同様の相手がいない
- 合計所得金額が500万円以下
- 生計を一にする子がいる(子の年分の総所得金額が48万円以内、他の人の扶養親族等になっていない)
離婚の影響を受けない税金
離婚で受け取った給付は、基本的に課税されません。離婚給付に該当するのは、具体的に養育費、慰謝料、財産分与です。
ただし、離婚給付もあまりに大きな支払いとなれば、課税対象となるおそれもあります。
養育費
養育費とは、離婚後に未成年の子どもが自立するまでの間、親権を持たない親が子どもの養育のために支払う費用です。
養育費は子どもの成長を支える大切なお金なので、支払う側も受け取る側も原則として非課税となります。
ただし、養育費を一括で受け取る場合は注意しましょう。その金額があまりに大きい(例:一括で3,000万円等)ならば、贈与税が課される可能性もあります。
金額があまりに大きい(社会的に相当な範囲を超えている)かどうかは、ケースバイケースで判断しますが、税務署から使途を疑われてしまうかもしれません。
贈与税が心配な人は、養育費を分割で支払ってもらう方法を選びましょう。
なお、養育費を決めるときは、裁判所の公表している「養育費・婚姻費用算定表」が参考になります。
慰謝料
離婚の原因をつくった配偶者が支払うお金です。こちらも原則として非課税となります。
ただし、離婚慰謝料の相場は100万~300万円程度なので、やはり数千万円も支払うと社会的に相当な範囲を超えている、と判断されてしまうかもしれません。
このように判断された場合は、受け取った側に贈与税がかかります。
また、慰謝料として金銭以外の不動産を譲渡された場合は、基本的に不動産取得税および登録免許税が課されます。
財産分与
財産分与は夫婦で協力して得たお金を離婚時に分ける方法です。夫婦が1/2ずつ分けるのが一般的です。
財産分与を金銭で分けるならば、原則として非課税となります。しかし、妻に財産を全額与えたという場合は不相当な財産分与として贈与税が課される可能性があります。
また、婚姻中に得た財産ならば現金の他に、不動産や動産等も分与対象となります。
金銭以外に受け取った財産が、婚姻中に(元)配偶者が購入した不動産ならば、基本的に不動産取得税および登録免許税が課されます。
離婚で税金が変わるときの対処方法
離婚を決意したものの、税金の問題等の不安がある場合は、離婚問題に詳しい弁護士へ相談してみましょう。
離婚の影響で変わってしまう税負担等をアドバイスします。
財産分与や慰謝料、養育費の請求額を弁護士と相談するときは、課税対象となるかどうかも話し合って決める必要があります。
なお、弁護士から税の専門家である「税理士」を紹介してもらえるかもしれません。
税理士はどのような控除が利用できなくなるのか、またはどのような控除を利用した方がよいかをわかりやすく指摘します。
法律事務所では税理士等とも提携している場合があるので、弁護士に離婚の相談をするとき、税の影響について詳しく知りたい人は紹介を頼んでみましょう。
まとめ
今回は、多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、離婚後の税金が重くなるケース、軽くなるケース等について詳しく解説しました。
離婚後、所得が低い納税者は控除制度をうまく利用して、税負担の軽減を図りましょう。
離婚後の税負担が不安なら、弁護士や税理士に相談し、対応を話し合ってみてはいかがでしょうか。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。