買い物依存症を理由に離婚できる?返済義務や財産分与の疑問も解消
最終更新日: 2023年02月25日
- 配偶者が買い物依存症で浪費が激しく、離婚したい
- 買い物依存症を理由に離婚できるか?
- 離婚時の返済義務や財産分与の疑問を解消したい
食料や衣服などの買い物は多くの人が日常的にする行為です。ただし、欲しいものを購入するというより買い物自体が目的となる買い物依存症と呼ばれる行動に出てしまう方もいます。配偶者が過度な買い物依存に陥ってしまうと、離婚を考えるケースもあるでしょう。
そこで本記事では、離婚問題に詳しい弁護士が、買い物依存症を理由に離婚できるのか、離婚時の返済義務や財産分与はどうなるのかについて、詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 買い物依存症が理由による離婚は、相手も合意すればできる。できない場合は調停・裁判へと発展する可能性もある
- 買い物依存症での離婚成立に向けた手順は、「協議離婚」→「調停離婚」→「審判離婚」→「裁判離婚」
- 買い物依存症を理由に離婚する前に、「借金の返済義務」「財産分与の割合」「親権の獲得」「慰謝料の請求」の4つを押さえておくと良い
買い物依存症とは?離婚を考える前の知識
そもそも、買い物依存症とはどのような状態を指し、何が問題になるのでしょうか。ここでは、買い物依存症とは何かと、症状や買い物依存症で起こりうるトラブルについて解説します。
買い物依存症とは
買い物依存症とは、買い物をやめたくてもコントロールできない状態のことです。買い物をして不安やつらい気持ちを発散させたり、ストレスを解消させたりするために、繰り返し行ってしまいます。さらに、大抵の場合、買い物したいという欲求を抑えられません。
現代はクレジットカードやスマホ決済での支払いが可能であり、お金を使っているという認識が薄れている方も少なくありません。また、ネットショッピングの普及に伴い、より手軽に買い物ができるようになりました。
そのため、買い物がやめられなくなり、借金をしてまで買物を繰り返し、ついには自己破産に至るケースもあるのです。買い物依存症は男女問わずに陥る可能性があり、場合によっては治療が必要なこともあります。
買い物依存症の症状は
買い物依存症の症状として、借金の返済中にもかかわらず過度な買い物をしてしまうことなどがあります。家の中が購入した物で埋まってしまう・未開封のまま放置しているものが散乱している、などの状態に陥る場合も少なくありません。
給料内で支払いが可能であればよいのですが、症状が悪化すると買い物代金の返済に苦慮し、友人や金融会社から借金をしてしまうこともあるでしょう。最悪の場合、精神的に追い詰められて、自ら命を絶つことを考える方もいます。ひどくなる前に、適切な対策を講じるべきです。
買い物依存症で起こるトラブルは
買い物依存症で起こり得るトラブルの代表的なものは、貯金を使い果たしても買い物がやめられずに借金を繰り返してしまうことです。その結果買い物依存症が原因で離婚に至るなどさまざまな事態に陥ることがあります。
たとえば、子どもの教育費のつもりで貯めていたお金を、買い物依存症のパートナーが勝手に買い物に浪費してしまった場合、夫婦間に亀裂が入ってしまうこともあるでしょう。夫婦の信頼関係が崩れてしまえば、離婚に至ることもあるのです。
買い物依存症を理由に離婚したいときの疑問
買い物依存症の配偶者と離婚するときには、借金の返済義務や財産分与などについて疑問に思うことがあるでしょう。また、親権や慰謝料はどうなるのでしょうか。
ここでは買い物依存症を理由に離婚したいときの疑問について解説していきます。
借金の返済義務はある?
配偶者が作った借金は、連帯債務者や保証人でなければ返済義務はありません。夫婦であったとしても別人格である配偶者には、支払義務はないのです。
たとえば、夫が収入と比べてあまりに高額な時計や高級車を購入して借金を作った場合、連帯債務者でない妻は、返済する必要がありません。ただし、日常家事債務に該当する生活を維持するための借金については、支払い義務を追う可能性があります。
日常家事債務に該当するかどうかは、購入したものや価格・家庭の収入の程度を考慮して、総合的に判断されます。
財産分与の割合はどうなる?
配偶者の買い物依存症による浪費の結果、共同財産が減った事実が明確であれば、他方の配偶者は浪費の事実を立証して財産分与の額や割合について主張できます。
たとえば、夫が共有財産を買い物依存症が原因で浪費し、目減りしたことが明らかになれば、相手方の分与額を減らす主張ができます。ただし、主張が合理的であると認められなければなりません。
財産分与の割合は、原則として2分の1とされますが、状況によっては変更されることもあります。
親権は獲得できる?
親権を獲得するためには、子どもの監護実績が重要です。監護実績とは、家庭の内外において子どものそばで養育した実績です。子ども学校で行われる授業参観やPTAなども含まれます。
監護実績を証明することで、親権を獲得する可能性が高くなるでしょう。
慰謝料は請求できる?
配偶者の買い物依存症が原因で離婚する場合、配偶者に婚姻関係を破綻させたという有責性が認められれば慰謝料を請求できる可能性があります。
慰謝料の一般的な考慮要素は、婚姻の期間・子どもの有無・経済状況・双方の有責などです。これらの考慮要素を総合的にみて、慰謝料の金額が決定しますが、謝料の相場は個々の状況により異なります。
問題は相手の買い物依存症が理由の離婚の場合、相手側が大きな借金を抱えているケースや相手に全く財産がないことも少なくないことです。状況によっては慰謝料の支払いを期待できないことも考えられますが、諦めずに交渉することをおすすめします。
買い物依存症を理由に離婚するときの手順
買い物依存症の配偶者と離婚するときには、どのような手順を踏めばよいのでしょうか。ここでは離婚するときの手順について、下記の4つを解説します。
- 協議離婚
- 調停離婚
- 審判離婚
- 裁判離婚
協議離婚
協議離婚は夫婦の話し合い・双方の合意により成立します。離婚の理由は問題にならず、離婚の話を持ちかけて相手が受け入れれば離婚可能です。
もちろん、離婚を成立させるためには離婚届を作成して提出しなければなりません。また、慰謝料や養育費などの問題も話し合って書面にまとめておくべきです。
財産分与や慰謝料・養育費などの不払いに備えて、公正証書を作成しておくことをおすすめします。
調停離婚
夫婦間での話し合いがまとまらない場合や離婚条件が合意に至らない場合に、家庭裁判所の調停委員が両者の間に入り、調整することで離婚が成立します。こうして成立する離婚のことを、調停離婚と言います。状況に応じて、調停員が調整しながら、話し合いがまとまるように進めていきます。
ただし、調停は強制力がないため、どちらかの配偶者が納得しなければ離婚が成立しない可能性があります。あくまでも話し合いにより双方が納得した場合に成立する手段であり、他の方法を取った方がよいケースもあるでしょう。
審判離婚
調停離婚が成立しなかった場合、裁判所が離婚の成立について判断するケースがあり、これを審判離婚といいます。夫婦が離婚自体には合意していても、些細なことで揉めたり、当事者が調停に欠席したりしたときは最終的に調停では離婚が成立しません。
そこで裁判官が、調停に代わる審判で離婚を成立させることがあります。ただし、当事者が告知を受けた日から2週間の間に異議申し立てをすることができるため、審判離婚が利用されるケースは多くありません。
裁判離婚
裁判離婚は、調停離婚でも審判離婚でも離婚が成立しない場合に、裁判所に離婚訴訟を提起して、判決で成立させる離婚のことをいいます。離婚裁判で離婚が成立するには、法律上の離婚事由が必要です。
買い物依存症が離婚の原因として認められるためには、配偶者が収入を大幅に超える費用を買い物に費やし、生活費を意図的に渡さないなどの事情が必要になります。
裁判離婚では裁判所が調査した内容や提出された証拠をもとに、離婚原因があると判断すれば、離婚が成立します。
まとめ
本記事では、離婚問題に詳しい弁護士が、買い物依存症を理由に離婚できるのか・借金の返済義務や財産分与はどうなるのかについて解説しました。
夫婦間で離婚について話し合い、合意を得れば協議離婚や調停離婚の手続きを踏んで離婚できます。ただし、離婚の話合い・協議では、財産分与や慰謝料、養育費などについての離婚条件で揉めることも少なくありません。
買い物依存症の配偶者と離婚したいと思ったら、離婚問題の解決実績のある弁護士に、相談してみてはいかがでしょうか。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。