財産分与の2分の1ルールは絶対?例外ケース・変更方法を専門家が解説
最終更新日: 2023年10月31日
- 財産分与を2分の1より多くもらう方法が知りたい
- 財産分与の割合は夫婦の間で自由に取り決めてよいのか
- 財産分与の割合で揉めたときに誰に相談するのがよいのか
財産分与とは、夫婦が婚姻中に協力して得た財産を、離婚時または離婚後に分配することです。財産分与の割合は夫婦それぞれ2分の1にするのが一般的です。
ただし、分与割合は法律で決まっているわけではなく、夫婦が話し合って自由に取り決めても構いません。
そこで今回は、多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、財産分与はなぜ2分の1が一般的なのか、例外的なケース等についても詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 夫婦が婚姻中に財産を築いてきた貢献度は同等と考えられるので、財産分与の割合は一般的に2分の1ずつとなる
- 財産分与の割合は、夫婦の合意があれば自由に取り決めできる
- 財産分与をどうするかで揉めたときは、弁護士と相談した方がよい
財産分与は2分の1が原則
財産分与は夫婦が離婚するときに、親権、養育費、慰謝料、面会交流とともに、話し合って決める必要がある大切な取り決め事項の1つです。
こちらでは財産分与とは何か、分与割合はなぜ2分の1が原則なのかについて解説します。
財産分与とは
夫婦が婚姻中に協力して得た財産を、離婚時または離婚後に分配することです。
ただし、分与の対象となるのは婚姻中に協力して得た財産(共有財産)となります。
夫婦が婚姻前にそれぞれ所有していた財産、夫または妻を特定して贈与されたもの、相続財産等は「特有財産」と呼ばれ、基本的に分与の対象外です。
2分の1である理由
財産分与の割合は夫婦2分の1ずつが原則です。
理由としては、夫婦が婚姻中に財産を築いてきた貢献度は同等であり、公平に2分の1で分けるのが妥当とされているからです。
この考え方は婚姻中、夫が家庭の全収入を担い、妻が専業主婦であったとしても変わりません。
なぜなら、夫婦の財産が夫の収入で形成されてはいるものの、専業主婦である妻が家事や育児を一手に引き受けたことで、夫婦の財産形成や維持が実現できたと考えられるからです。
財産分与が2分の1ではない例外ケース
財産分与の割合は法律で、夫婦それぞれ2分の1にしなければならない、と規定されているわけではありません。
そのため、財産分与が2分の1ずつにならないケースもあります。
夫婦の合意がある場合
財産分与の割合が法律で定められているわけではないので、離婚の話し合いのときに、夫婦で自由に取り決めが可能です。
夫婦の一方が、財産分与で揉めるのは嫌だからと配偶者に大部分を分与し、迅速に離婚を成立させても構いません。
また、夫婦の一方から不満が出なければ、分与割合を10:0にする取り決めも有効です。
財産形成の貢献度
夫婦の一方の特殊な才能や努力で、婚姻中の共有財産の大部分が形成されたときは、財産分与の割合を修正し、財産形成に貢献した配偶者がより多く得る場合もあります。
たとえば、給与所得者の夫と結婚した妻が、婚姻中にベンチャー企業を起ち上げ、経営能力を開花させ、夫よりもはるかに多くの収入を得たというケースが該当します。
この場合は、妻の才能や努力、人脈により多くの財産を形成してきたと考えられるので、貢献度の判断が修正される可能性が高いです。
特有財産
夫婦の婚姻中の協力関係とは無関係に形成された「特有財産」は、基本的に財産分与の対象外です。
特有財産とは、具体的には次のような財産を指します。
- 夫婦の一方が相続した遺産
- 夫婦の一方が婚姻前に得た現金、株
- 夫婦の一方が婚姻前に購入した不動産や自動車
- 夫婦の一方に贈与されたもの 等
たとえば、夫が親(被相続人)の遺産を相続し、親が所有していたアパートを引き継いだ場合、賃借人から得た賃料収入は、特有財産から派生した利益です。
つまり、婚姻中に賃料収入を得ていても、夫婦の協力関係とは無関係です。
そのため、賃料収入は夫婦の共有財産と認められず、他に夫婦共有とされた財産の範囲内から分与されます。
ただし、妻が夫の所有するアパートのメンテナンス費用等を共有財産の中から支払っていた場合、その費用分が財産分与の対象として考慮される可能性があります。
別居している場合
離婚はしていないものの、夫婦が既に別居している場合、別居後に得た財産は分与の対象となりません。なぜなら、婚姻中に夫婦が協力して得た財産とは言えないからです。
そのため、夫婦の一方が別居後に莫大な財産を得たとしても、基本的にその財産は分与対象外です。
片方の浪費が激しい場合
夫婦の一方が婚姻中の財産形成や維持に対して、貢献度が著しく低いと認められる場合は、財産分与の割合は修正される可能性があります。
次のようなケースがあげられます。
- 夫は給与所得者だったがギャンブルや性風俗店で散財し、妻がパートで生活費を維持した
- 妻は専業主婦だが、夫が生活費として渡したお金をブランド品やホスト通いに消費した
このような浪費をした夫婦の一方は、共有財産を著しく減少させた原因をつくっているので、財産分与割合は2分の1より低くなる可能性があります。
婚前契約で取り決めがあった場合
婚前契約とは、結婚後の夫婦の生活をどうしていくか、万一離婚するときの離婚給付の内容等を、結婚前に夫婦間で取り交わす契約を指します。
契約内容は自由に設定できます。家計負担の割合、子育ての役割分担、結婚生活における合意の他、離婚のときの財産分与も取り決めが可能です。
そのため、離婚のときに夫婦双方が合意し、契約を破棄しない限り、契約書通りに財産分与が行われます。
この契約書は、調停離婚や裁判離婚のときに証拠となる書類です。契約書で財産分与割合が明記されているにもかかわらず、それに従わない配偶者は不利となるでしょう。
財産分与を2分の1の割合から変更する方法
夫婦間で財産分与を話し合っても分与割合で揉めている、2分の1の分与割合では到底納得できない、という場合は家庭裁判所に調停を申し立てて解決を図りましょう。
財産分与に関する調停は2種類が用意されています。
- 離婚前に申し立てる場合→夫婦関係調整調停(離婚)
- 離婚後に申し立てる場合→財産分与請求調停
いずれも、相手方の住所地または当事者が合意で決めた家庭裁判所に申し立てます。
申し立てるときの書類等は主に次の通りです。
- 調停申立書とその写し1通
- 夫婦の戸籍謄本または離婚時の夫婦の戸籍謄本(夫婦の一方が除籍された旨の記載のあるもの):本籍地の市区町村役場で取得
- 夫婦の財産に関する資料(不動産登記事項証明書や預貯金通帳写し、残高証明書等)
- 収入印紙1,200円
- 連絡用切手
調停では家庭裁判所から選出された調停委員が、財産分与に関する夫婦それぞれの意見をヒアリング後、アドバイスや解決案を示し、合意するように働きかけます。
弁護士をたてれば家庭裁判所での調停に同席し、依頼者側に立った主張が可能です。
調停で夫婦が共に納得すれば、家庭裁判所は調停調書を作成します。調停不成立の場合は、次の手続きに移行します。
- 夫婦関係調整調停(離婚)不成立→裁判離婚へ
- 財産分与請求調停不成立→自動的に審判に移行、家庭裁判所が財産分与の内容を決定
財産分与を弁護士に相談するメリット
夫婦で財産分与割合を話し合っているが、自分たちで決めた分与額が適正なのかよくわからない、という方もいるでしょう。
そのような場合は弁護士に相談し、アドバイスを求めましょう。
適正な財産分与の決定が可能
離婚問題に詳しい弁護士は、離婚交渉を数多く経験してきたため、適正な財産分与割合の算定方法もよく把握しています。
一見夫婦いずれかの特有財産と思われる財産でも、弁護士は財産の使用経緯を詳しく確認し、財産分与の算定をし直すこともできます。
たとえば、弁護士は次のようなケースを確認し、共有財産に加え正確な算定が可能です。
- 夫が独身前から使用している預金口座だが、婚姻後は妻との共有口座としても利用
- 夫が引き継いだ旅館ではあるものの、妻が女将として収益の向上に貢献した 等
上記のようなケースでは、たとえ元は特有財産であっても、共有財産として認められる可能性があります。
弁護士は豊富な経験から、一般的に特有財産なのか共有財産なのかを見極める能力を有しています。
代理人として交渉が可能
夫婦間で愛情がすっかり冷めてしまい、既に夫婦の一方が別居している場合、相手と顔を合わせるのが嫌になっているかもしれません。
そのような場合は弁護士に代理人を依頼すれば、弁護士は依頼者の代わりに相手と交渉が可能です。
弁護士は法律の専門家で、法律の知識に則り理性的な交渉ができるので、離婚交渉が有利に進められます。
調停・審判・裁判への対応
弁護士に依頼をすれば離婚の交渉がうまくいかなくても、弁護士は依頼者に確認の上、すぐに調停や審判、裁判の手続きを進めます。
書類の作成や証拠収集は弁護士に任せられるので、スムーズな申立てが可能です。
調停や裁判等では、弁護士が依頼者側にたった主張・立証を行います。
まとめ
今回は多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、財産分与を2分の1の割合から変更する方法や、財産分与を進めるポイント等について詳しく解説しました。
婚姻中に得られた財産か、それ以外の財産か、素人では区別が難しいケースもあります。そのような場合は弁護士のサポートを得つつ、財産分与を進めていきましょう。
財産分与で悩んだときは、弁護士と相談し、対応の仕方を話し合いましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。