覚醒剤で逮捕されると懲役何年?刑期を短くする方法&弁護士の戦略を解説
最終更新日: 2025年03月09日
- 覚醒剤で逮捕されてしまった。どのような罪になるのだろう?
- 覚醒剤で逮捕された場合、営利目的と非営利目的で刑罰の重さに違いがあるのだろうか?
- 覚醒剤で逮捕されても減刑になるだろうか?よい方法があれば知りたい。
覚醒剤は、製造や輸出入の他、譲渡・譲受、使用、所持、流通のすべてが規制対象です。所持しただけでも逮捕されます。
覚醒剤取締法違反で有罪になれば、ケースにより無期懲役(無期拘禁刑)および1,000万円以下の罰金、という非常に重い刑罰を受けます。
そこで今回は、多くの刑事事件に携わってきた弁護士が、覚醒剤取締法違反で有罪となった場合の刑罰、減刑を目指す方法等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談できます。
- 覚醒剤を営利目的で輸出入や製造すると、非常に重い刑罰を受ける可能性がある
- 覚醒剤の初犯の場合は、ケースによっては執行猶予付き判決を受ける場合もある
- 不起訴処分や減刑を望むのであれば、早く弁護士と相談した方がよい
覚醒剤で逮捕されると懲役はどれくらい?
覚醒剤での逮捕が営利目的かどうかによって、刑罰の軽重には大きな差があります。
なお、懲役刑は2025年6月1日以降、拘禁刑に変更されます。
営利目的の場合
覚醒剤で利益を得ようと考えている者は、重い刑罰を受ける可能性が高いです。
- 営利目的で覚醒剤の輸出入や製造をした:無期もしくは3年以上の懲役、または情状により無期もしくは3年以上の懲役および1,000万円以下の罰金(覚醒剤取締法第41条第2項)
- 営利目的で覚醒剤を所持、譲渡、譲り受けた:1年以上の有期懲役、または情状により1年以上の有期懲役および500万円以下の罰金(同法第41条の2第2項)
営利目的で覚醒剤の輸出や輸入、製造をすれば、大量の薬物依存患者が国内外に溢れ、深刻な社会不安を招く事態もあり得るでしょう。
そのため「営利目的の覚醒剤取締法違反者は非常に重い刑罰を受ける」という、警告の意味での規定ともいえます。
営利目的でない場合
営利目的でない場合も、受ける刑罰は懲役(拘禁刑)のみです。実刑判決を受けた場合、刑事施設に収容されます。
主に次のような刑罰が科されるでしょう。
- 覚醒剤をみだりに輸出入し、製造した:1年以上の有期懲役(覚醒剤取締法第41条第1項)
- 覚醒剤をみだりに所持、譲渡、譲り受けた:10年以下の懲役(同法第41条の2第1項)
- 覚醒剤を使用した等:10年以下の懲役(同法第41条の3)
初犯の場合
覚醒剤の所持や使用等を行った者が初犯の場合、懲役(拘禁刑)1年6か月程度が相場とされています。
たとえ初犯であっても1年以上、刑事施設に収容される可能性があるのです。
一方、執行猶予付き判決を受けた場合は、概ね3年の執行猶予が言い渡される場合もあります。
ただし、全く反省をしていない、覚醒剤を常習的に使用していた、捜査に協力しないという事実が認められる場合、執行猶予となる可能性は低いでしょう。
再犯の場合
覚醒剤の所持や使用等を行った者が再犯の場合、懲役(拘禁刑)2年前後の実刑判決が相場とされています。
再犯の場合、執行猶予付き判決を受ける可能性は低いでしょう。
再犯とは、以前に懲役(拘禁刑)に処せられ、刑の執行後5年以内に再び罪を犯し、有期懲役となったケースです。
再犯の場合、懲役(拘禁刑)の上限が2倍以下に延長されます(再犯加重:刑法第57条)。
たとえば、覚醒剤の使用で再犯となると、10年以下の懲役は、20年以下の懲役(拘禁刑)に加重されるのです。
なお、刑の執行後5年以内を超えていて再犯にならない場合でも、覚醒剤取締法違反で複数回逮捕されれば、刑が重くなる可能性は高いでしょう。
出典:刑法|e-GOV法令検索
覚醒剤で逮捕され・懲役になる行為
覚醒剤の流通過程のすべてが覚醒剤取締法の規制対象です。
たとえ自分が使用していなくとも、逮捕・起訴される可能性があります。
輸入・輸出
覚醒剤の輸入・輸出を企て、逮捕・起訴されるケースです。
密輸の方法は手の込んだ方法(ナッツ類の粒の中や、冷凍マグロの腹の中に詰める等)もありますが、手荷物検査で発見される場合がほとんどです。
税関職員の経験やX線CT検査装置、麻薬探知犬等の活躍によって、覚醒剤の輸入・輸出は高確率で発覚するでしょう。
所持
覚醒剤の所持が発覚し、現行犯逮捕されるケースです。
警察官が繁華街を中心に巡回中、不審な人物を発見すれば、職務質問が行われます。所持品を検査し、覚醒剤が発見されれば現行犯逮捕となります。
覚醒剤の発見後は、警察署に連行され、厳しい取り調べを受けるでしょう。
製造
薬局製剤の製造以外で覚醒剤を製造する行為は、覚醒剤取締法違反になります。
覚醒剤原料取扱者による薬局製剤の製造や厚生労働大臣の許可を得た研究のための製造以外の目的の製造は、処罰の対象です。
営利目的で覚醒剤を製造した場合、輸出入と同様に厳罰を受ける可能性が高いでしょう。
譲渡・譲受
覚醒剤の売買、贈与、交換等が行われた場合、覚醒剤取締法違反で逮捕されます。
ただし、譲り受ける約束をしただけで、実際に覚醒剤の所持の移転がない場合は、逮捕されません。
単なる売買契約等、所持の移転を伴わない譲渡の合意だけの場合、譲渡の着手がないため、未遂罪も成立しないでしょう。
使用
覚醒剤使用を疑われ、尿検査を実施した結果、覚醒剤の陽性反応が出たケースです。
尿検査が任意の場合は、拒否できます。しかし、拒否し続けると、警察は裁判所の発付した令状に基づいて、強制採尿に踏み切る場合があります。
強制採尿は医療機関で尿道からカテーテルを挿入後、尿を強制的に採取する方法です。自主的に尿を提出するより、採尿時の苦痛や屈辱感は大きいでしょう。
覚醒剤で逮捕された場合に懲役を短くする方法
覚醒剤取締法違反で有罪となった場合、必ず懲役(拘禁刑)が言い渡されます。
逮捕前に弁護士と相談しておけば、有益なアドバイスが得られ、減刑につながる弁護活動も任せられます。
弁護士に相談
弁護士は相談者の事情を聴き、次のようなアドバイスやサポートを行います。
- 相談者はどれくらいの罪になるか
- 自首の有効性
- 逮捕された場合の弁護活動
- 再犯となったときのリスク
- 再犯防止対策に関する助言
- 刑事裁判の手順
相談後、弁護士に私選弁護人を依頼すれば、逮捕されても弁護士と面会し、今後の対応を協議できます。
自首を望む場合は弁護士が付き添い(自首同行)、警察側への自首した経緯の説明も任せられます。
経済的な理由等で私選弁護人を依頼できないときは、国費で裁判所から弁護士を選んでもらえる「国選弁護制度」も利用可能です(刑事訴訟法第37条の2)。
基本的に無料で弁護士(国選弁護人)を立てられる点はメリットですが、次の点に注意しましょう。
- 被疑者が自由に国選弁護人を選任できない
- 起訴後または勾留後でしか依頼できない
自分で選べないうえに、逮捕後すぐに弁護士と面会できないというデメリットがあります。
治療計画
弁護士と相談しつつ、更生ための治療計画を策定できます。
説得力のある治療計画を立てれば、検察や裁判所に更生する強い意志をアピールでき、減刑を受ける場合もあるでしょう。
たとえば、刑の執行を終えた後に実行する、次のような治療計画を立てられます。
2.回復支援施設退所後、専門医療施設・クリニックで覚醒剤依存から脱却する通院治療を継続する。
3.覚醒剤をはじめとする薬物依存症者の自助グループのミーティング等に参加し、自分自身を見つめ直す。
弁護士は、本人の覚醒剤依存の状態を考慮し、焦らずに覚醒剤依存から抜け出せるような治療計画を提案できます。
再発防止策の実施
弁護士が治療計画を立てた後、再発防止策を実施するための施設を紹介するので、本人と家族で検討しましょう。
- 回復支援施設:覚醒剤等の依存症から回復するためのリハビリ施設。入所または通所しながら回復プログラムの他に生活訓練、自立支援等も実施する。
- 薬物依存症外来施設:覚醒剤等の依存症専門の医療施設。集団精神療法を中心に回復を目指す。
- 自助グループ:覚醒剤依存等を持つ本人やその家族が自発的に結びついた集まり。主に参加者の話から自らの経験や苦悩を回想し、学びを得ながら覚醒剤依存の脱却を目指す。
監視員の設定
弁護士のサポートだけではなく、本人の家族や支援者が「監視員」となることも、覚醒剤依存から脱却する方法の1つです。
本人を覚醒剤が手に入る環境から引き離せば、更生する可能性が高くなります。
本人だけで覚醒剤への欲望を抑えられるようになるまでは、外出時も監視員が本人に付き添い、再犯予防のための役割を担った方がよいでしょう。
覚醒剤による逮捕で弁護士が取るべき戦略
弁護士は覚醒剤取締法違反者の状況をよく判断し、有利な処分が下されるように全力を尽くします。
弁護士の弁護活動によって不起訴処分や減刑を得られる可能性もあるでしょう。
身柄解放
覚醒剤取締法違反で逮捕されても、弁護士に私選弁護人を依頼すれば、すぐに早期の身柄解放に動き出します。
弁護士は次のような事実を主張し、警察に身柄解放を訴えるでしょう。
- 被疑者(覚醒剤取締法違反者)は初犯で反省している
- 捜査に全面的に協力する
- 被疑者が逃亡・証拠隠滅のおそれはない
- 常習性が認められない
- 弁護士が身元引受人となる
弁護士の説明に納得すれば警察は被疑者を解放し、以後、在宅事件として捜査を継続する場合があります。
現行犯逮捕や後日逮捕(通常逮捕)されても、慌てず次の方法で弁護士に連絡をとりましょう。
- 現行犯逮捕:警察官に家族へ連絡したいと申し出て、家族から弁護士に依頼してもらう。
- 後日逮捕:逮捕を想定し、事前に弁護士に相談して私選弁護人の依頼をしておく。
不起訴処分獲得
被疑者が取り調べに協力し、弁護士が粘り強い弁護活動を行え、検察官が不起訴処分を決定する可能性があります。
ただし、次のような事情を考慮したうえで判断されることになるでしょう。
- 被疑者が初犯である
- 真摯に反省し、捜査に協力的だった
- 常習的な使用は確認できない
- 販売目的の所持ではなかった
- 所持していた覚醒剤の量が非常に少なかった
- 家族の監視強化を約束している
減刑
覚醒剤取締法違反で起訴されたとしても、弁護士は刑事裁判において被告人の立場に立った主張・立証を行います。
たとえ被告人に常習性が認められても、弁護士のアドバイスのもとで、しっかりとした治療計画を立てれば、更生を目指すよいアピールになるでしょう。
懲役(拘禁刑)2年以下の実刑判決が言い渡される可能性もあります。
再発防止策のアドバイス
依頼した弁護士から、回復支援施設や専門病院、自助グループや民間のネットワーク等を紹介してもらえる場合があります。
家族で再犯防止策を検討するときも、前もって弁護士に相談すれば、本人の現状に見合った施設・サービスのアドバイスが得られるでしょう。
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今回は多くの刑事事件を担当してきた弁護士が、覚醒剤取締法違反の初犯や再犯で減刑を目指す方法等について詳しく解説しました。
春田法律事務所は刑事問題の解決に力を入れている法律事務所です。覚醒剤取締法違反で逮捕され懲役に処されることが心配なときは、弁護士とよく相談しましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。