不倫相手に社会的制裁?制裁を与える方法を専門弁護士が解説
最終更新日: 2024年01月08日
この苦しい思いを不倫相手にも味わって欲しい
不倫相手の夫婦がのうのうと生活しているのは許せない
不倫した配偶者を徹底的に懲らしめたい
芸能人などの著名人が不倫をして、番組やCMを降板させられるなど重い社会的制裁を受けるのを我々はニュースでよく目にします。ご自身が不倫の被害者になったときは、不倫相手や配偶者に同様の重い制裁を与えたいと考えるのは当然のことです。
しかし、不倫相手や配偶者が著名人でない場合には自ら手をくださなければ制裁を与えることはできません。そして、このような制裁方法について人によっては誤った方法をとってしまい、自滅することがあります。
今回は不倫の制裁方法について専門弁護士が解説します。
不倫相手への制裁をする5つの方法
まずは不倫相手への制裁方法についてご説明します。正当な制裁方法もあれば、ついやりがちなハイリスクな制裁方法もあります。不貞行為が発覚した配偶者にダメージを与えることばかりに気を取られないようにしましょう。
- 職場にばらす
- 不倫相手の配偶者に知らせる
- 退職、転居してもらう
- SNSでの拡散は絶対NG
- 慰謝料を請求する
職場にばらす
職場不倫の場合、不倫をされた配偶者としては、不倫を公にして不倫相手を苦しめたい、職場での立場を無くしてやりたいと考えるのは普通でしょう。しかし、不倫の事実を職場にばらせば名誉棄損として逮捕され、刑事罰を受け、前科が付く可能性があります。
また、職場にばらした結果、不倫相手が失職した場合、慰謝料に加えて半年や1年分の給料相当額という多額の損害賠償を請求される可能性があります。
このように職場に不倫をばらす制裁のリスクは非常に高いものがありますのでお勧めできません。
上司など一部の人間にだけ不倫を報告するのであれば名誉棄損にはならないのではないかというご相談もありますが、そこから多数の人に伝わりうることから、やはり名誉棄損に問われる可能性があります。
不倫相手の配偶者に知らせる
ダブル不倫の場合、こちらの夫婦は破綻させられたのに相手の夫婦は平穏にやっているのは許せないと考えることもあるでしょう。そこで、何も知らない不倫相手の配偶者に不倫の事実を知らせて、相手夫婦も破綻させようと考えるかもしれません。ところが、不倫の事実を知らせたところ、そのような事実を知らせて来た配偶者を共通の敵とみなして相手夫婦が結束することが実はよくあります。
その結果、相手夫婦の間で不倫の事実が大事にならず、夫婦関係にはほとんど影響がない、それどこかより円満になるというケースがあるのです。
そうすると、相手夫婦は破綻しない、かつ、慰謝料請求をしても不倫相手の配偶者もこちらの配偶者に慰謝料を請求してきてプラスマイナスゼロになってしまうので慰謝料を請求することもできないという、目も当てられない事態になります。
思惑どおり相手夫婦が破綻して離婚するケースもあるでしょうが、そうなると不倫相手からとれる慰謝料よりも、こちらの配偶者が不倫相手の配偶者に支払う慰謝料の方が大きくなりますので、経済的な損失は大きくなります。
このように必ずしも不倫相手の配偶者に知らせることが制裁になるとは限りませんので、慎重に検討する必要があります。
退職、転居してもらう
同僚との不倫の場合、不倫相手に退職してもらいたいと考えるでしょうし、近所、ましてや同じマンションの住人と不倫をしていたのであれば不倫相手に転居してもらいたいと考えるでしょう。
退職や転居を不倫相手に強制する法律はありませんので、これらは不倫相手が了承しなければ実現できません。例えば、慰謝料を譲歩するなどの交渉次第では退職、転居を了承させられるケースもあります。
SNSでの拡散はNG
最近はTwitterなどのSNSにおいて不倫についての投稿が増えています。
SNSでは勢い余ってつい不倫相手が特定できる内容で不倫について言及してしまうことがありえます。そして、一度拡散してしまうと収拾がつきません。
この場合、内容によっては名誉棄損罪や侮辱罪で逮捕される可能性がありますし、かえって不倫相手から慰謝料などの損害賠償請求を受ける可能性もあります。
ですから、SNSで不倫の事実を拡散させる事態は絶対に避けなければなりません。
慰謝料を請求する
不倫相手に対する制裁の王道は、慰謝料請求です。これについては合法的な制裁のため、他の制裁とは異なりリスクはありません。慰謝料請求については後ほどもう少し詳しくご説明します。
不倫相手への社会的制裁を与えられる?
以上、不倫相手への制裁について一通り見てきましたが、慰謝料請求しか制裁の方法はないのでしょうか。社会的制裁を与えられるケースはないのでしょうか。ここでは職場において不倫相手に制裁を受けさせられる可能性について説明します。
職場に内容証明を送る
先ほど職場に不倫の事実を知らせた場合には名誉棄損など法的責任を問われる可能性があるとご説明しました。しかし、一定の条件・証拠がそろった場合には、合法的に職場に不倫の事実を知らせることができるケースがあります。
職場に内容証明を送ることが許されるのは不倫相手の氏名と勤務先しかわからない場合です。
慰謝料請求をする場合、内容証明郵便などで不倫相手に書面を送りますが、自宅住所がわからない以上、勤務先に送るしかないのです。裁判を起こした場合にも裁判所から不倫相手に訴状が送られますが、これについても自宅住所がわからない場合には、勤務先に郵送されることとなります。
このように合法的に勤務先に不倫を訴える書面を送ったところ不倫相手の目にしか触れないこともありますが、他の従業員が開封した場合には不倫の事実が職場に知れ渡る可能性があります。
なお、自宅住所は知っているものの不倫相手が書面を受領しない場合にも勤務先へ送ることが許容されるケースもあります。
不倫について職場から制裁される?
このようにして職場に不倫を知られた場合、周囲から白い目で見られるなどの事実上の制裁を不倫相手は受けるでしょう。
さらに、不倫相手は職場から懲戒解雇されることはあるのでしょうか。
不倫はプライベートな話ですから、会社の業務と関係はなく、それを理由に懲戒解雇することはできないのが原則です。
就業規則の懲戒事由のなかに「素行不良」など不倫も該当しそうな事由が定められていることもありますが、直ちに懲戒解雇ができるわけではありません。不倫を理由として有効に懲戒解雇をするためには、職場の風紀・秩序を乱し、企業の正常な業務運営を具体的に阻害するような影響が生じることが必要です。
例えば、繰り返し業務時間内に職場で性交渉に及んでいた場合には懲戒解雇が有効になる可能性はあるでしょう。
また、リクルーターだった社員が面接をした学生と不倫し、そのことが就活生の間でも噂になったというような場合には、会社の採用活動に悪影響を与えますので懲戒解雇が有効になる可能性はあるでしょう。
懲戒解雇は懲戒処分の中で最も重い処分ですから、懲戒解雇はできなくとも、それより軽い減給や降格の処分はありうるでしょうし、懲戒処分ではなく制裁人事として左遷、異動させられる可能性もあります。
不倫相手への制裁の王道は慰謝料請求
不倫相手への制裁方法についてご説明してきましたが、やはり王道の制裁方法は慰謝料請求です。以下では慰謝料相場の考え方や慰謝料と社会的制裁との関係についてご説明します。
慰謝料の相場
不倫の慰謝料は、不倫した配偶者と離婚する場合には200万円、夫婦関係を続ける場合は100万円が基本となります。
この基本金額から、婚姻期間や不倫期間の長短、従前の夫婦関係の良し悪し、不倫相手の反省態度など様々な事情を考慮して慰謝料金額は増減します。
社会的制裁は減額要素
不倫を職場に知らせたことで職場から処分を受けたり、不倫相手の配偶者に不倫を知らせた結果、相手夫婦が離婚することになったなど一定の制裁を受けたことは、慰謝料を減額する要素として考慮されることがあります。
もし、社会的制裁よりも慰謝料による金銭的な制裁を重視するのであれば、慰謝料請求以外の制裁方法は控えるべきでしょう。
不倫をした妻や夫への制裁方法まとめ
最後に、不倫をした配偶者、つまり妻や夫への制裁方法についてご紹介します。
- 不倫された配偶者の親に謝罪させる
- 離婚する
- 離婚を拒否して婚姻費用を請求する
- 夫婦間契約を結ぶ
不倫された配偶者の親に謝罪させる
まずは、法的な制裁ではありませんが、例えば、不倫をされた妻が自身の両親に謝罪するよう夫に求めることが考えられます。
大切な娘を裏切った夫に対して相当な怒りがぶつけられ、夫は針のむしろとなるでしょう。妻からだけでなく親族からも非難されることで、真摯に反省する機会となるかもしれません。
離婚する
最もオーソドックスな制裁は、不倫をした配偶者と離婚することでしょう。不倫をされた配偶者もそうですが、不倫をした配偶者は生活、人生が一変し、自らが犯した過ちについて後悔することになります。
不倫の事実は直接的には離婚時の慰謝料金額に影響しますが、進め方次第では、財産分与や親権についても不倫をされた配偶者に有利に取り決めることができます。
これによって経済的な制裁、また子供とも容易に会えなくなるという制裁を与えることができます。
離婚を拒否して婚姻費用を請求する
不倫をした配偶者が離婚をしたがっている場合には、離婚をすることは制裁になりません。このような場合には、逆に離婚を拒否することが制裁となります。
不倫をして夫婦関係を壊した張本人からの離婚請求は認められないこととなっています。そのため、不倫をされた配偶者が了承しない限り、離婚はできないのです。
さらに、不倫をした配偶者とは一緒に生活できないと考えて別居を開始した場合、不倫をした配偶者は、別居開始から一方が亡くなるか離婚が成立するまでの間、毎月、生活費として婚姻費用を支払い続けなければなりません。終わりの見えない毎月の婚姻費用の支払いは不倫をした配偶者にとって非常にきつい制裁となります。
そして、数年後に、離婚して欲しいのであればと、通常よりもはるかに高い条件の慰謝料や財産分与を離婚条件と提示してそれが了承されれば、不倫をした配偶者に対する経済的制裁は最大化されます。
夫婦間契約を結ぶ
離婚も別居もせず引き続き不倫をした配偶者と結婚生活を続けていく場合にお勧めの制裁方法として夫婦間契約があります。
この契約には、再び不倫をしたときは即離婚すること、慰謝料について例えば300万円とすること、財産分与の割合を5割ではなく8割とすること、養育費は通常の金額の1.5倍とすることなどを定めておきます。
これによって不倫の抑止力を期待できますし、万が一不倫があったときは相当有利な条件で離婚することが可能となります。
まとめ
以上、不倫相手や不倫をした配偶者への制裁方法について解説しました。
不倫相手への制裁は選択を誤るとかえって制裁を受けることになってしまいますので注意が必要ですし、配偶者への制裁は進め方によってその効果が大きくことなってきます。
不倫相手や配偶者への制裁をお考えの方は、今後の問題解決に向けて、自分で制裁に動く前に不倫問題専門の弁護士にご相談ください。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。