弁護士が解説!窃盗で示談をする意義と示談金の相場

最終更新日: 2022年01月13日

窃盗事件を起こしてしまい,被害者との示談についてお悩みの方からは

  • 示談はどのような流れで進めるべきか
  • 示談の方法は
  • 示談金の相場は
  • 示談できない場合はどうなるのか
  • 不起訴になるのか
  • 前科がついてしまうのか

などたくさんの疑問・質問が寄せられます。

今回は,窃盗事件を多数扱う弁護士が窃盗事件の示談について解説いたします。

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この記事を監修したのは

弁護士 南 佳祐
弁護士南 佳祐
大阪弁護士会 所属
経歴
京都大学法学部卒業
京都大学法科大学院卒業
大阪市内の総合法律事務所勤務
当事務所入所

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窃盗で示談をする意義は?

窃盗事件において,示談をすることにはどういったメリットがあるのでしょうか。

示談の意義

窃盗罪の法定刑は,「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」です(刑法235条)。

示談は,主として,示談金を支払うことで窃盗によって与えてしまった経済的な被害を弁償し,謝罪や反省を伝えることで,被害者から許しを得て,当事者間で事件を解決する意味があります。

そして,示談をすることで,刑事手続においても,寛大な処分が得られる可能性が高まります。

示談をするタイミング

では,示談は,いつすべきでしょう。

上記のとおり,示談が成立することで,刑事手続において寛大な処分を得ることが可能である以上,刑事手続中であればいつでも示談をするメリットはあるといえます。

ただ,事件からあまりに時間が経過した状況で示談を申し入れれば,被害者側は謝罪に来るのが遅いと不誠実さを感じるかもしれません。

また,示談の交渉にも一定の時間を要する以上,刑事手続中に示談を完了し,被害弁償を終えるためにも,可能な限り早くに示談の申入れをすることが望ましいといえます。

示談の流れと方法

では,示談はどのようにして進めるのがよいでしょうか。

まずは,示談を申入れすることからスタートです。
たとえば,加害者が,被害者と面識がある場合や店舗での万引きなどの事案では,加害者本人が,被害者に示談の申入れをすることも可能です。

他方,面識がない場合や,加害者と被害者との接触を避けるべきケースでは,弁護士が間に入り,弁護士を通じて示談申入れをすることが望ましいでしょう。

中には,加害者本人とは話さないが,弁護士であれば話を聞いてもよいと言われることもあり,弁護士が示談申入れをしなければならないケースも存在します。

その後,具体的な示談交渉が始まります。
方法について決まりやルールがあるわけではなく,あくまでも当事者間で合意ができるか否かです。

ただ,まずは,犯行に及んだこと,被害を与えたことについて誠実に謝罪をし,再犯を行わないことを誓約すべきでしょう。

そのうえで,実際に窃盗の被害にあった物品の価格(被害額)や,犯行態様なども考慮に入れ,被害者が宥恕(許すこと)してもよいと思えるような提案をする必要があります。

示談が成立すれば,約束した期限までに示談金を支払い,示談は完了となります。

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窃盗の示談のメリットをタイミングごとに解説

窃盗事件について,具体的な捜査の進行と,各タイミングでの示談のメリットについて解説いたします。

タイミング別示談のメリット
  1. 刑事事件化する前・逮捕前
  2. 逮捕後
  3. 終局処分前
  4. 起訴後
  5. 示談の拒否や示談が出来ない場合は?

刑事事件化する前・逮捕前

刑事事件化する前に,被害者と示談が成立する場合には,警察に事件が発覚せずに解決する可能性があります。

また,仮に被害届が出されており,警察が事件を把握していたとしても,早期に示談ができれば,被害届の取下げも期待でき,また逮捕を回避することにもつながるでしょう。

逮捕後

逮捕後も速やかに示談が成立すれば,検察官への送致なしに「微罪処分」で事件が終了する可能性があります。

また,検察官に事件送致された場合でも,勾留請求されない可能性や裁判所が勾留請求を認めない可能性もあり,示談成立は,終局処分だけでなく,身柄解放にも大きなメリットを与えます。

終局処分前

終局処分とは,検察官が事件を起訴するのか,不起訴とするのかを決めることを言いますが,検察官は終局処分にあたって,被害回復の程度,被害感情,加害者の反省,再犯の可能性,犯行の悪質性,結果の重大性などを勘案します。

示談が成立した場合には,一般的には被害回復がなされ,被害感情も和らいでいることになるので,加害者にとって最も有利に考慮される事情です。

窃盗が初犯で,被害額が高額ではなく,示談が成立している場合には,不起訴処分となる可能性が高いでしょう。

このように,示談は終局処分に有利な影響を与えます。

起訴後

では,起訴後に,示談が成立した場合はどうでしょうか。

起訴後であっても示談によって,量刑に有利な影響を与えます。
示談はどのタイミングであっても重要な事情です。

示談の拒否や示談が出来ない場合は?

大手チェーンの店舗などは,万引きなどの事案について,会社として示談交渉には一切応じないとの対応をすることがあります。
この場合には,弁護士が介入したとしても,示談交渉の余地がないことが多く,示談成立自体は断念せざるを得ません。

また,加害者と接触したくないとの理由から,被害者が示談交渉を受け付けないとの対応をする場合もあります。

この場合は,加害者自身との接触を懸念しているのであれば,弁護士が介入し,弁護士が捜査機関を通じて被害者に接触を試みることで,示談が可能となることもあります。

とはいえ,弁護士が介入しても,加害者自身が交渉をしても,示談には至らないこともあるでしょう。

示談ができないときも,単に示談を断念するのではなく,示談を申し入れたこと,その後の交渉経過などを書面にまとめて検察官に事情を説明することが肝要です。

また,贖罪寄付(罪を償うために寄付をする)を利用し,寄附をして,反省や謝罪の意向を検察官に伝える場合もあります。

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窃盗の示談金の相場は?

ここまで,窃盗の示談の流れや方法について確認してきました。
では,窃盗の示談金はどの程度を準備すればよいのでしょうか。

  • 示談金と被害弁償の違いは?
  • 窃盗罪の罰金は?
  • 示談金の相場は?
  • 示談金は分割払いが可能?

示談金と被害弁償の違いは?

まず,示談は,示談金を支払うことで,損害賠償の問題を解決し,被害者からの許しを得るものです。

窃盗事件において,被害者は,民事上の損害賠償請求権を得ます。
もっとも,その権利を被害者が積極的に行使することは面倒なことであり,示談は,被害者にとっても迅速かつ確実に,被害弁償や慰謝料などの損害の賠償を受けられるというメリットがあります。

他方,加害者にとっては,示談をすることで刑事事件において寛大な処分を受けられる(場合によっては前科がつかずに済む)というメリットがあります。

このように,示談は,被害者が受けた「損害」を基本とするものですが,加害者・被害者双方にメリットがあるため,示談金額は,必ずしも被害額や損害と合致するものではありません。

双方のメリットなどが考慮されたうえ,双方の交渉・協議によって,双方が納得する金額が示談金として設定されるのです。

これに対し,被害弁償はあくまでも,被害に対する弁償を行うものです。
たとえば,コンビニの万引き事案などでは,万引きした商品の代金相当額を店に支払った(つまり,被害弁償はした)が,示談はできていないといった状況があり得るのです。

窃盗罪の罰金は?

窃盗罪の法定刑は,「50万円以下」の罰金刑を定めています。
示談が成立した場合でも,初犯でない場合,被害額が大きい場合などは罰金刑が科される可能性があり,その点を考慮して金銭面の工面をする必要があります。

示談金の相場は?

さて,示談金の相場はどれくらいでしょうか。

窃盗事件における示談金の額は,被害額の大きさや行為態様,加害者側の資力(経済力)、など事情により異なります。

窃盗の示談金の相場としては,「被害額」~「被害額+20~50万円」が一つの目安であろうと考えます。

被害額が非常に高額なケースでは,被害回復を最優先するため,「盗んだ金品の金額」のみで示談が成立することもしばしばあるでしょう。

示談金は分割払いが可能?

示談金は分割払いが可能でしょうか。

さきほど,示談は,加害者と被害者の納得する内容で合意に至ると説明しました。
この説明のように,双方が納得するのであれば,示談金を分割払いとすることは可能です。

ただ,分割払いとなった場合には,完全に被害弁償がなされるまでに一定の期間を要するおそれがあり,刑事処分において,被害弁償がなされたとは評価されない可能性があります。

また,被害者側にも,加害者との関係が継続してしまうという心理的抵抗も発生するでしょう。

したがって,分割自体は理屈上は可能ですが,できる限り,一括払いでの解決が望ましいといえます。

窃盗の示談を弁護士に依頼するメリット

さて,ここまで窃盗の示談について様々な検討をしてまいりました。
では,窃盗の示談は加害者自身ですべきことなのでしょうか。それとも弁護士が介入すべきなのでしょうか。

窃盗の示談は自分でできるのか?

そもそも,窃盗の示談は自分でできるのでしょうか。

性犯罪とは異なり,窃盗事件においては加害者本人と被害者とが接触し,示談交渉をすることもあるようです。

ただし,(もともとの人間関係次第とはいえ,)やはり加害者と被害者とが接触することは望ましいことではありません。

仮に,示談が成立したとしても,被害者側から「脅迫」があった等との指摘があり,二次トラブルにつながるおそれも否定はできません。

したがって,窃盗の示談については専門家たる弁護士に任せることが,望ましいでしょう。

弁護士に依頼するメリット

刑事事件ではスピードが重要ですが,弁護士に依頼をすれば刑事事件のスピード感を十分に理解したうえでの迅速な対応が可能です。

また,弁護士は交渉の専門家であり,被害者との交渉もスムーズに進む可能性が高まります。特に,「脅迫」だったなどと,交渉の過程が問題視されるおそれもなくなるでしょう。

万が一,示談に至らない場合にも,示談の経過報告書などの書面を作成し,検察官に働きかけを行うことができますので,可能な限り寛大な処分を得ることにもつながるはずです。

このように,窃盗の示談を弁護士に任せるメリットは十分にあるといえます。

まとめ

いかがだったでしょうか。
今回は,窃盗の示談について説明をいたしました。

窃盗において示談は重要な意味を持ちます。
そして,示談を円滑に進めるには,専門家である弁護士に早期に相談することが重要です。

窃盗の示談でお悩みの方は少しでも早く弁護士にご相談ください。

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