実家のお墓に入れない?

最終更新日: 2023年11月17日

はじめに

高齢になった、妻子のいない弟が、実家のお墓に入りたいと兄に伝えたところ、拒否されてしまった場合、弟は実家のお墓に入れないのでしょうか。

親族との折り合いが悪く、先祖代々のお墓に入れてもらえないというお話はしばしば聞くところです。今回はこのようなケースについて考えてみます。

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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納骨できる焼骨の範囲

墓地に埋蔵することのできる焼骨の範囲について、特に制限を設けていない墓地もありますが、多くの墓地では墓地使用規則で一定の範囲に制限しています。

例えば、「直系血族及び配偶者」と制限しているケースや、「3親等以内の親族」と制限している墓地があります。

このように一つのお墓に入ることのできる者の範囲を制限する理由は専ら、その範囲が広がり過ぎると、墓地の使用関係が複雑になり、将来、墓地の承継者をめぐって争いが生じるリスクが高まるのを回避する点にあります。

墓地埋葬法第13条には、墓地管理者は「正当の理由」がなければ埋蔵を拒否してはならないと規定されていますが、上記のような理由は、墓地を適切に管理運営するための合理的な理由ですから、「正当の理由」に該当するといえるでしょう。

他方で、埋蔵できる焼骨の範囲を制限することは、墓地の無縁化のリスクを高めることになります。そのため、無縁化対策として埋蔵可能な焼骨の範囲を多少広げることも考えられますし、無縁化した場合に手続き負担の大きい無縁改葬手続によらずに済む契約内容を検討するべきです。

結局、実家のお墓には入れない

以上を踏まえると、墓地使用規則に定める埋蔵範囲に弟が含まれない場合には、弟が実家のお墓に入ることはできないことになります。

一方、墓地使用規則の定める埋蔵範囲に弟が含まれる場合であっても、誰の焼骨の埋蔵を認めるかの決定権は墓地使用者である兄にありますので、兄が拒否する限り、や

はり弟は実家のお墓には入れません。

なお、祭祀承継者が兄ではなく、弟自身であることを主張して、祭祀承継者の決定を求めて家庭裁判所に申し立て、その結果、弟が祭祀承継者であると判断されれば、墓地使用者の変更を行い、実家のお墓に入ることができますが、兄がお墓を管理してきた実績があるときは、兄が祭祀承継者と判断される可能性が高いでしょう。

無断で焼骨を埋蔵

弟亡き後、弟の依頼を受けた第三者が、兄及び墓地管理者に無断で弟の焼骨を実家のお墓に埋蔵した場合、礼拝所不敬罪、墳墓発掘罪に問われ、刑事罰を受ける可能性があります(もっとも、埋蔵から相当年数が経過した後に発覚した場合には、犯人の特定や犯罪の証明は困難でしょう。)。

無断で埋蔵された焼骨も、無碍に処分をすると遺骨遺棄罪に問われる可能性がありますので、墓地管理者に依頼して合祀墓へ改葬してもらうこととなります。

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