盗撮事件の慰謝料相場について
最終更新日: 2023年07月08日
盗撮事件の被害に遭ったので、警察に被害届を出したが、加害者から慰謝料を払ってもらうことはできるのか?
被害者と示談をしたいが、慰謝料の相場はどれくらいなのか?
このようなご相談はよくあります。今回は、盗撮事件の慰謝料相場についてご説明します。
盗撮事件の罰金と慰謝料
盗撮行為は多くの場合、都道府県の迷惑防止条例違反となります。そして、初犯であれば20万円又は30万円の罰金刑となるケースがほとんどです。
この罰金というのは被疑者が国に納めるものであって、被害者に対して慰謝料として支払われるものではありません。
罰金の金額と慰謝料の金額の間に関連性はありませんが、加害者側も被害者側も示談金額を決めるにあたり、罰金刑となった場合の金額を参考にすることはあります。
被害者が高校生など未成年者の場合の慰謝料相場
盗撮事件の被害者が高校生など未成年者の場合には、保護者が被害者の代理人として加害者に対して慰謝料を請求することができます。
娘に対する盗撮事件ということで、被害者が成人の場合に比べて示談金額は高くなるケースが多く、慰謝料としての示談金額は30万円から50万円ほどになることがあります。
電車内、職場、更衣室、トイレでの盗撮事件と慰謝料
一口に盗撮事件といっても、電車内でスマートフォンでスカートの中を盗撮する事件、小型カメラやスマートフォンを設置して職場でスカートの中を盗撮する事件、更衣室で着替えを盗撮する事件、トイレで排泄行為を盗撮する事件など様々です。
電車内や職場でスカートの中を盗撮するよりも、更衣室で着替えを盗撮される方が、またそれらよりもトイレでの排泄を盗撮される方が、より一層見られたくないものですから精神的苦痛も一層大きくなるでしょう。
とはいえ、慰謝料としてはいずれのケースも大きな違いはなく、10万円から30万円ほどになることがほとんどです。
盗撮事件の加害者に慰謝料請求したい場合
盗撮事件の被害にあったので加害者に慰謝料請求をしたい場合はどうすれば良いのでしょうか。
加害者の弁護士から示談交渉の申し入れがあれば、示談金として慰謝料を請求することができます。
一方、そのような申し入れがない場合には、担当の警察官や検察官を通じて、加害者に対して示談に応じる意思があることを伝えてもらうことが考えられます。加害者に弁護士がついていない場合には、被害者は加害者と直接会うことは避けたいのが通常でしょうから、家族や友人に代理人となってもらって加害者と示談交渉をすることがありえます。
相場よりも高い慰謝料の支払いを求めると、加害者によっては、前科がついてもいいから慰謝料を支払うよりも起訴されて罰金刑を受けた方がましだと考えてしまう場合がありますので、慎重に交渉をする必要があります。
そして、加害者が慰謝料の支払いに応じない場合には、民事訴訟(裁判)を起こす必要があります。
民事訴訟(裁判)で盗撮事件の慰謝料請求をする
損害賠償の金額
民事訴訟で請求する主たる損害賠償は慰謝料です。100万円や200万円の慰謝料が請求されるケースはよくありますが、判決で認容される慰謝料の金額は20万、30万円ほどになります。
その他、捜査協力のために仕事を休むことになった場合の休業損害や交通費の損害賠償は認められる可能性は十分あるでしょう。
他方、盗撮事件が原因でメンタルクリニック通院することになったという場合にその治療費の損害賠償が認められるかどうかは、因果関係の立証に依ります。
慰謝料請求に加えて、被害者にかかる弁護士費用も請求できるのか
訴訟を起こす場合、専門家である弁護士に依頼するのが通常です。弁護士に依頼して訴訟をする場合、着手金と成功報酬金を合わせると30万円から60万円ほどは弁護士費用がかかることが多いでしょう。
このような弁護士費用は盗撮事件に遭わなければ支出する必要がなかったのですから、加害者にその全額を支払ってもらいたいと考えるのが通常です。
ところが、訴訟は弁護士に依頼をしなくても被害者本人ですることもできますので、弁護士に依頼をしたのは被害者自身の判断ともいえます。そのため、裁判では弁護士費用の全額の賠償を受けることはできず、判決で認容された慰謝料金額の1割だけが弁護士費用相当の賠償金として認容されることになります。
慰謝料請求の時効
盗撮行為は民法上の不法行為に該当します。不法行為に基づく損害賠償請求権は、被害者が「損害及び加害者を知った時から三年間」(民法724条)で時効にかかります。
そのため、加害者が現行犯逮捕されたケースでは盗撮事件のあった日の翌日から3年間の経過で慰謝料請求権は時効にかかると考えるべきでしょう。
最後に
以上、盗撮事件の慰謝料相場についてご説明しました。盗撮事件の慰謝料はそれほど大きな金額は認められませんので、弁護士に依頼して民事裁判を起こすと費用倒れになる可能性が高いです。
そのため、費用対効果という観点では、刑事事件の中で、加害者と示談交渉をして慰謝料を支払ってもらうことが望ましいといえます。