【弁護士が解説】トイレでの盗撮は犯罪が成立しない!?迷惑防止条例やその他の法令による盗撮の規制とは?

最終更新日: 2022年09月12日

トイレ内で盗撮行為があった場合,犯罪が成立するのは当たり前だと感じる方が多いのではないでしょうか。

もっとも,「盗撮罪」という犯罪は存在せず,盗撮を取り締まる法律や条例は複数存在しますが,それぞれ守備範囲が異なります。

現在は,盗撮行為を取り締まる法律・条例は,主として各都道府県が定める迷惑防止条例です。

しかし,少し前までは,学校や職場など公共の場所以外での盗撮の場合には,迷惑防止条例の適用がないとされる事態が続いていました。

つまり,信じられないかもしれませんが,冒頭のトイレ内での盗撮の場合も,盗撮行為自体を罰せない状況があり得たのです。

そこで,今回は,盗撮事件を多く取り扱う弁護士が,迷惑防止条例の改正や守備範囲などを中心に盗撮の規制についてご説明をしたいと思います。

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この記事を監修したのは

弁護士 南 佳祐
弁護士南 佳祐
大阪弁護士会 所属
経歴
京都大学法学部卒業
京都大学法科大学院卒業
大阪市内の総合法律事務所勤務
当事務所入所

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トイレでの盗撮行為を犯罪として規制する法令

まずは,トイレ内での盗撮行為を規制する法律や条例について確認してみましょう。

  • 迷惑防止条例
  • 軽犯罪法
  • 住居侵入・建造物侵入罪(刑法130条)
  • 児童ポルノ禁止法

迷惑防止条例

もともと,迷惑防止条例は,「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止」について規定した条例であり,不特定多数の人が出入りする公共の場所や乗り物が,その規制の範囲内であることに争いはありません。

従来の規定

従来は,迷惑防止条例による規制の範囲が狭い都道府県も多く,たとえば,公共の場所や乗り物以外の場所での盗撮行為自体を取り締まることができない事態もしばしばありました。

こういった場合,後で説明する軽犯罪法違反や住居侵入(建造物侵入)等で,加害者を罰すること自体は可能ですが,盗撮行為そのものを正面から取り締まっているわけではなく 、いびつな状況でした。

現在の規定

近年,スマートフォンの普及により誰もが手軽に写真や動画の撮影を楽しめるようになった結果,盗撮行為が増加しています。

また,SNSの利用が拡大することで,盗撮データが拡散される事態も広がっており,これまでにも増して,盗撮行為が深刻な被害を引き起こすことは明らかです。

ところが,上記のとおり,従来,多くの都道府県において,公共の場所以外での盗撮行為を取り締まることができない現状がありました。

そこで,現在までに多くの都道府県で条例の改正が進み,迷惑防止条例によって取り締まることのできる盗撮の範囲が広がっています。

つまり,多くの都道府県が,条例の守備範囲を広く捉えており,「公衆」だけでなく,「人」が衣服の全部や一部を付けない状態でいる場所を規制の対象とすることで,プライベートな場所(たとえば,学校や会社のトイレのみならず,個人宅のトイレ,浴室も含まれる)への盗撮行為を罰することも可能とされるようになりました。

もっとも,現在でも,まだ迷惑防止条例の範囲が公共の場所にとどまるとされている都道府県も存在し,都道府県ごとに条例の守備範囲が異なるという状態が生じています。

本来は,盗撮行為の規制を都道府県に委ねるべきではなく,国が一律に,盗撮行為を規制するべきでしょう。

軽犯罪法

仮に,各都道府県の迷惑防止条例に該当しない場合,軽犯罪法における取り締まりの対象か否か,検討をする必要があります。

軽犯罪法第1条23号は,以下のとおり規定しています。

「左の各号の一に該当する者は,これを拘留又は科料に処する。
二十三  正当な理由がなくて人の住居,浴場,更衣場,便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」

住居侵入・建造物侵入罪(刑法130条)

盗撮などの目的で商業施設などに侵入した場合には,建造物侵入罪(刑法130条)が成立する可能性もあります。

実務上,盗撮事件の場合,盗撮自体だけでなく建造物侵入罪も同時に立件されることもあれば,盗撮のみが立件されることもあり,事案によって,立件される内容・範囲はまちまちです。

児童ポルノ禁止法

児童ポルノ禁止法(正式名称は,児童買春,児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律)においても,規制がなされています。

具体的には,第2条・第7条で,18歳に満たない者の写真や電磁的記録を所持,保管,提供,製造を規制しています。

つまり,盗撮の被害者が18歳未満の場合には,児童ポルノ「製造」の罪に該当する可能性があります。

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トイレでの盗撮に犯罪が成立する場合の刑罰は?

トイレ内での盗撮に犯罪が成立する場合,刑罰はどれくらいなのでしょうか。
盗撮行為を規制する法律・条例の法定刑を確認してみましょう。

迷惑防止条例

まずは迷惑防止条例です。
たとえば,東京都や大阪府では,1年以下の懲役,または100万円以下の罰金と規定されています。

軽犯罪法

軽犯罪法は,拘留(1日以上30日未満)または科料(1000円以上1万円未満)と規定されています。

住居侵入・建造物侵入罪(刑法130条)

3年以下の懲役または10万円以下の罰金と規定されています。

児童ポルノ

3年以下の懲役または300万円以下の罰金とされています。

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トイレでの盗撮が犯罪に該当する場合の弁護活動は?

では,トイレ内での盗撮が何らかの犯罪に該当する場合,加害者は,どのような弁護活動をしてもらうべきなのでしょうか。

被害者との示談交渉

何よりも重要なことは,被害者との示談交渉です。

もちろん,被害者に謝意を伝えることも倫理上,大切なことですが,被害者との示談が成立した場合には,検察官の終局処分や量刑が,加害者にとって有利に働きます。

また,身柄拘束されている場合には,示談によって身柄解放が実現できることも多く,この意味でも弁護士に依頼をして示談交渉を進めることが大切です。

仮に示談交渉が奏功しない場合でも,贖罪寄付(罪を償うために寄付をすること)や,加害者の反省,再犯防止への取組みなどの有利な事情を可能な限り主張し,できる限り寛大な処分を求めることも可能です。

取調べへの対応

盗撮事犯の場合,1度目の盗撮行為がすぐに発覚することは珍しく,何度も継続的に犯行を繰り返すうちの1回が発覚することが多いです。

つまり,捜査機関に犯行が発覚した時点で余罪があるケースが大半です。

そのため,加害者としては,余罪について捜査機関に立件されるリスクを抱えることになります。

そこで,弁護士としては黙秘権の行使の適否や,取調べの際の不用意な発言を避けることなど,捜査機関の取調べに対するアドバイスを行うことも可能です。

このように,取調べ対応を不利にしないためにも,弁護士への依頼は重要です。

まとめ

今回は,盗撮行為の規制についての歴史や,現在の状況,課題を中心に説明をいたしましたが,いかがだったでしょうか。

もちろん盗撮行為はあってはならない犯罪行為です。
しかし,加害者になった場合には,適切な弁護を受け,被害弁償などできる限りの誠意を示すことが倫理上も,刑事事件上も重要であると考えます。

盗撮事件の加害者となった場合には,まずは弁護士にご相談ください。

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