職場での窃盗がバレたら逮捕?クビ?専門弁護士が解説

最終更新日: 2023年12月20日

職場での窃盗がバレたら逮捕?クビ?専門弁護士が解説

  • 職場で同僚の物を盗んだことがバレてしまった
  • 職場での領得行為はどのような罪になるのか
  • 窃盗を犯しても穏便に処分してもらえるよう力になってくれる弁護士の見極め方を知りたい

職場で同僚の物を盗んだことがバレてしまったが、何とか穏便に処分してもらえないものか、そのために力になってくれる弁護士がいてくれれば心強いのにといったように、弁護士の見極め方を知りたいと切望している方もいるでしょう。

そこで今回は、数多くの刑事事件や労働事件を解決に導いてきた実績のある専門弁護士が、職場での窃盗や横領、それがバレた場合に直面する懲戒処分のポイントなどについて解説します。

刑事事件に強い弁護士はこちら

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

職場での窃盗がバレたらまず知っておくべきこと

職場で窃盗を犯したことがバレてしまった場合にまず知っておくべきこととして以下の2つの観点から解説します。

  • 窃盗に適用される法律は?
  • ある物の領得行為は窃盗罪?横領罪?

1つずつ解説します。

窃盗に適用される法律は?

1つ目に、窃盗に適用される法律は?ということについて解説します。

窃盗には、刑法235条の窃盗罪が適用されます。刑法235条は、

「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」

と規定しています。

「他人の財物」とは、他人が占有する財物の意味です。そして、「窃取」とは、財物の占有者の意思に反してその占有を侵害し、自己又は第三者の占有下に置くことをいいます。なお、横領罪(刑法252条)は、自己が占有する他人の物及び公務所から保管を命ぜられた自己の物を横領することによって成立します。

横領罪は、財物を委託された者が委託した者との信頼関係に背いてこれを領得する点に特徴があり、5年以下の懲役に処せられます。

ある物の領得行為は窃盗罪?横領罪?

2つ目は、ある物の領得行為は窃盗罪?横領罪?ということについて解説します。

窃盗罪と横領罪の区別は、ある物の占有が誰に帰属するかによって決まります。占有とは、その物を事実上支配していることをいいます。ある物が他人の占有に帰属する場合には窃盗罪が成立し、自己の占有に帰属する場合には横領罪が成立します。

次のような事例は、以下の通り窃盗罪と横領罪のいずれが成立します。

会社のトイレ内に忘れてあった財布を持ち去った行為

⇒財布を置き忘れた者に占有がありますから、いわゆる置き引きにあたり、財布を持ち去った者には窃盗罪が成立します。

職場に設置されている金庫からお金を取り出して持ち去った行為

⇒職場の会計責任者のように、金庫内のお金を管理する立場の者が上記の行為を行った場合には、横領罪が成立します。他方、そのような立場にない、単なる社員が上記の行為を行った場合には、窃盗罪が成立します。

会社の備品を対等の立場で共同管理していた場合に、その備品を持ち出した行為

⇒備品を持ち出した者には、窃盗罪が成立します。

会社の備品の管理を任されていた場合に、その備品を持ち出した行為

⇒備品を持ち出した者には、横領罪が成立します。

職場での窃盗がバレた場合の処分は2つ

職場で犯した窃盗がバレてしまった場合、刑法235条に該当する行為をしたことにより刑事処分を受ける他、職場からも懲戒処分を受ける可能性があります。

  • 【刑事処分】刑訴法による逮捕・起訴
  • 【懲戒処分】職場の規則による処分

1つずつ解説します。

【刑事処分】刑訴法による逮捕・起訴

1つ目は、【刑事処分】刑訴法による逮捕・起訴です。

被疑者は、警察官に逮捕された後、警察署において、窃盗罪について弁解の機会を与えられます。そのとき、供述調書を作成するなどの捜査活動の対象とされ、逮捕から48時間以内に検察官に送致されます(刑訴法203条1項)。

検察官は、被疑者から窃盗罪について弁解を聴くなどして、被疑者の身体を拘束したまま更に捜査を行う必要があると判断した場合は、被疑者を受け取ってから24時間以内、逮捕から72時間以内に、裁判官に勾留を請求します(刑訴法205条1項2項)。

裁判官は検察官の勾留請求を受け、勾留質問を行ってその当否を審査しますが、被疑者が窃盗罪を犯した疑いがあり、住居不定、罪証隠滅のおそれ又は逃亡のおそれのいずれかにあたり、捜査を進めるうえで身体の拘束が必要だと判断した場合には、10日間の拘束を認める勾留決定をします(刑訴法207条1項、60条、61条)。

勾留される期間は、検察官が勾留請求をした日から10日間ですが、検察官はやむを得ない事情がある場合は10日を上限として勾留の延長を裁判官に請求することができ、裁判官は、請求に理由があれば10日を上限として勾留の延長を決定することができます(刑訴法208条)。

検察官は勾留の期間内に、1.起訴する、2.不起訴として釈放する、3.処分を保留したまま釈放する、の3つの選択肢の中から取扱いを決めなければなりません(刑訴法208条)。

【懲戒処分】職場の規則による処分

2つ目は、【懲戒処分】職場の規則による処分、についてです。

職場で窃盗を犯すと、刑事処分の他、職場から懲戒処分を受ける可能性があります。

職場が行う懲戒処分は、職場の就業規則に基づいて行われます。

従業員が職場で窃盗を犯せば、職場のルールを破り秩序を乱したことになりますので、使用者は職場の秩序維持のため、従業員に制裁を科すことになります。これを懲戒処分といいます。

従業員に懲戒処分を科すには、就業規則の中でどのようなことが処分の対象になるのかということと、懲戒処分の種類が具体的に定められていることが必要です。

懲戒処分には、一般的に次のようなものがあります。

  • 戒告・・・・・将来を戒めるのみで、始末書の提出を伴わないものです。
  • けん責・・・・始末書を提出させて将来を戒めることです。
  • 減給・・・・・従業員が受け取ることができる賃金から一定額を差し引くことです。
  • 出勤停止・・・停職ともいわれ、労働契約をそのままとして就労を禁止することです。
  • 降格・・・・・役職・職位・職能資格などを引き下げる降格は、企業の人事権の行使としてのみならず、懲戒権の行使としても行われることがあります。
  • 懲戒休職・・・出勤停止の期間を数か月以内とすることです。
  • 諭旨解雇・・・企業によって異なりますが、おおむね退職願や辞表の提出を勧告し、即時退職を求め、催告期間内に勧告に応じない場合は懲戒解雇に付するものです。
  • 懲戒解雇・・・懲戒処分の極刑であって、通常は解雇予告も予告手当の支払もせずに即時になされ、退職金の全部又は一部が支給されないものです。

職場での窃盗がバレたら直ぐに弁護士へ相談!

職場での窃盗がバレた場合、まずコンタクトをとるべきは弁護士です。弁護士への相談・依頼が早ければ早いほど弁護士から適切なアドバイスを受けられ、刑事処分や職場での処分につき、早期の望ましい解決が期待できるからです。ここでは、なぜ弁護士にコンタクトをとるべきなのかのポイントを3つ解説します。

  • 弁護士はどのタイミングで介入するのか?
  • 弁護士に任せたあとの流れは?
  • 弁護士ヘの依頼が遅れた場合のデメリットは?

1つずつ解説します。

弁護士はどのタイミングで介入するのか?

1つ目は、弁護士はどのタイミングで介入するのか?についてです。

職場での窃盗がバレている場合、早晩、刑事処分あるいは職場での処分があることを覚悟しなければなりません。

しかし、窃盗を犯したとしても、できれば穏便に済ませたいと考えるのが人情です。そのためには、法律のプロである弁護士のアドバイスを受けるのが望ましく、弁護士への相談・依頼が早ければ早いほど、よい結果が得られやすくなります。

弁護士としても、早期の相談・依頼であればあるほど、できる弁護活動の幅も増え、被疑者にとって有利な方向に導きやすいといえます。被害者や職場との示談交渉、警察に対する働きかけ、あるいは警察との情報交換も含め、弁護士のサポートが必要になります。弁護士から早期のサポートが得られれば、逮捕を免れる可能性も出てきます。

すでに逮捕されている場合

逮捕に続き勾留となれば、身体拘束が長くなりますので、解雇の危険性が高まります。このような日常生活への影響は避けたいものです。勾留に至る前の段階で釈放されれば、不利益は最小限にとどめることができます。

職場での窃盗で逮捕されても、被疑者が窃盗の事実を認めている場合、逃亡のおそれがないかぎりは、捜査機関側が任意に釈放する可能性があります。しかし、その場合も弁護士の力添えと働きかけは欠かせません。

また、逮捕後であっても、弁護士が依頼を受ければ、被疑者が勾留請求される前に、被害者や職場に対する被害弁償や示談交渉を進め、弁護士の主張を記載した意見書や被害者や職場と示談する用意がある旨の上申書を提出したり、勾留の理由や必要性のないことを訴えたりして、勾留請求が回避できるように働きかけます。

すでに逮捕されている場合は、直ちに弁護士に依頼して、1日でも早く釈放してもらうようサポートしてもらうのが大事なことなのです。

釈放後の場合

職場での窃盗で逮捕後、勾留中に釈放された場合、釈放後速やかに弁護士に相談・依頼するようにしましょう。

捜査段階において示談が成立した場合、検察官は、起訴・不起訴の決定をするに際して、公訴提起ではなく略式命令請求にとどめたり、あるいは、不起訴処分(起訴猶予)で終らせたりします。被疑者の釈放後に依頼された弁護士としては、直ちに被害者や職場との示談交渉に取りかかる必要があります。

そして、検察官の起訴・不起訴が決まるまでの間に、示談を成立させる必要があります。

弁護士に任せたあとの流れは?

2つ目は、弁護士に任せたあとの流れは?についてです。

弁護士に相談・依頼したあとは、刑事処分や職場の処分を含めて、弁護士に任せたことになりますので、被疑者は弁護士のサポートやアドバイスを受けながら、対処していくことになります。

弁護士への依頼が遅れた場合のデメリットは?

3つ目は、弁護士への依頼が遅れた場合のデメリットは?、についてです。

弁護士への依頼が遅れた場合には、被害者や職場との示談交渉が進展しないため被疑者が逮捕されたり、逮捕後の身柄拘束が長引いたりすることが考えられます。そして、身柄拘束が長くなると、解雇の危険性も高くなり家族の生活を支える基盤を失うおそれが高まるなど、日常生活に多大な不利益が生じてしまいます。

また、弁護士への依頼が遅れれば、取調べに関するアドバイスも受けることができず、被疑者が不利な供述をしてしまうことも危惧されるのです。

さらに、弁護士への依頼が遅れれば検察官の起訴・不起訴の処分前までに、被害者や職場との示談がなされないことになり、結局、被疑者は起訴(略式命令請求あるいは公判請求)され、罰金であっても前科がついてしまう可能性があります。

職場での窃盗がバレたときに頼りになる弁護士の特徴

職場での窃盗がバレてしまった場合に力になってくれる弁護士の特徴は以下の3つです。

  • 解決実績が豊富な弁護士
  • いつでも連絡が取れる弁護士
  • 最後まで諦めずに徹底的に味方でいてくれる弁護士

1つずつ解説します。

解決実績が豊富な弁護士

1つ目は、解決実績が豊富な弁護士です。

職場での窃盗に多くの解決実績がある場合、刑事処分や職場からの処分について正確な見通しを立て、それを回避するために必要な無駄のない、最善の弁護が可能となります。

示談交渉についても多くの示談交渉を経験していることで、示談の成立確率も高まります。

よって、解決実績が豊富な弁護士、具体的には職場での窃盗について20件以上は経験がある弁護士が望ましいといえます。

いつでも連絡が取れる弁護士

2つ目は、いつでも連絡が取れる弁護士です。

職場での窃盗がバレてしまった場合、刑事処分及び職場の処分が考えられるため、自分で全てを解決することはかなり困難です。まだ逮捕に至っていないとしても、早晩、逮捕の可能性がありますし、日中に限らず、深夜に逮捕されることもありえます。

そのように逮捕の可能性がある場合はいつでも弁護士に連絡が取れることは重要です。また、そのような場合でなくとも、窃盗の被疑者となった場合、日々、不安を抱えて生活することになります。そのようなとき、いつでも連絡が取れて、疑問や不安を解消してくれる弁護士はとても頼もしいものです。

よって、いつでも連絡が取れる弁護士であることが望ましいといえます。

最後まで諦めずに徹底的に味方でいてくれる弁護士

3つ目は、最後まで諦めずに徹底的に味方でいてくれる弁護士です。

被疑者の反省と謝罪の気持ちが被害者や職場に伝わり、示談が成立した場合には示談書の中に、被疑者を許すという文言を条項として入れられるように尽力してくれ、さらに、逮捕・起訴を防げるよう、被害者や職場に対して諦めずに交渉してくれる弁護士は、心強い存在です。

被疑者の置かれている現状を訴え、前科のつかない不起訴処分となった場合、社会内で更生する可能性がより高まる旨理解してもらえるようにし、併せて、被疑者の更生を考慮した処分を職場に求めてくれる弁護士が、被疑者にとって最大の味方といえます。

よって、最後まで諦めずに徹底的に味方でいてくれる弁護士が望ましいといえます。

まとめ

今回は、職場で窃盗をしたことがバレてしまった場合に、刑事処分と職場の処分はどうなるのか、その場合にコンタクトすべき弁護士や力になってくれる弁護士の特徴などについて解説しました。逮捕を免れたり、逮捕後に釈放されたり、不起訴処分で終るためには、被害者や職場との示談が欠かせません。

示談交渉は、弁護士に頼らざるを得ないのが現状です。職場で犯した窃盗がバレてしまい、自分の今後に不安を感じている方は、一度専門の弁護士に相談してください。

刑事事件に強い弁護士はこちら

窃盗のコラムをもっと読む

※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。