改葬の手続き
最終更新日: 2023年11月17日
改葬とは
改葬とは、「埋葬した死体を他の墳墓に移し、又は埋蔵し、若しくは収蔵した焼骨を、他の墳墓又は納骨堂に移すこと」をいいます(墓地埋葬法第2条3項)。
この法律上の定義を整理すると、改葬とは以下のとおりです。
- 埋葬していた死体を他の墳墓に移すこと
- 墳墓に埋蔵していた遺骨や納骨堂に収蔵していた遺骨を他の墳墓や納骨堂に移すこと
改葬の流れ
寺院墓地の場合、それぞれの寺院の典礼方式や墓地規則上の手続がありますが、以下では行政上の手続についてのみご説明します。
- 改葬先の墓地の管理者から受入証明(使用許可証)をもらう。
- 墓地管理者から埋蔵(埋葬)証明を受ける。
多くの場合、行政から交付される改葬許可申請書の一部に墓地管理者の記入欄があり、そこに記入してもらうことで埋蔵(埋葬)証明を受けます。申請者と墓地使用者が異なる場合には、墓地使用者の承諾書又はこれに対抗できる裁判の謄本が必要となります(墓地埋葬法規則第2条2項2号)。その他、市区町村によって異なる添付書類を求められることがありますので、行政の窓口に確認が必要です。 - 市区町村から改葬許可証の交付を受ける(墓地埋葬法第5条1項、第8条)
- 現在の墓地から新しい墓地へ遺骨を移す
東京都新宿区の改葬許可申請書の例
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改葬する焼骨が多数ある場合
改葬許可申請書は死亡者1名用の体裁になっていることが通常です。しかし、納められている遺骨を全部改葬する場合などには改葬する死亡者が多数になることがあります。
このような場合に改葬許可申請書を死亡者1名ごとに作成するのは負担ですから、1通の改葬許可申請書に別紙として死亡者の一覧を付けて申請することが認められています(S32.4.16環衛第26号)。
また、古いお墓の場合には、墓地の台帳に記載された遺骨の数よりも多くの遺骨が埋蔵されている場合があります。そのような場合、改葬許可を受けた死亡者の数と遺骨の数が合わないと新しい墓地の管理者から受入を拒否される可能性があります。
しかし、台帳に記載されていない遺骨について、死亡者の氏名や生年月日は不明であり、改葬許可申請書を記載することができません。そこで、このような場合には、改葬許可申請書には「不明〇件」と記載することが認められています(S32.4.16環衛第26号)。
改葬先に遺骨が収まらない場合
改葬先のお墓が改葬元のお墓よりも小さいことがあります。そのような場合に、改葬元のお墓には収まっていた遺骨の全ては改葬先に収まらないことがあります。
とはいえ、収まらなかった遺骨を廃棄処分するわけにもいきません。
そこで、このような場合には、改葬許可申請とは別途に、墓地管理者から分骨証明書を交付してもらいます。この分骨証明書をもって、残った遺骨を永代供養墓に収めるなどすることができます(墓地埋葬法第5条1項、2項)。
なお、分骨した遺骨を他のお墓に納めるのではなく、手元供養する場合や散骨する場合には分骨証明書は必要ありません。
しかし、手元供養していた遺骨を将来お墓に納める可能性は否定できません。その際に改葬許可証も分骨証明書もないと、手続きが面倒になりますので、手元供養をする場合でも分骨証明書の交付を受けておくと良いでしょう。
埋葬と改葬
土葬と条例
現在は、47都道府県の全てにおいて火葬率は99.9%を超えています。このように日本で火葬が主になったのは比較的最近のことで、20世紀初頭には70%ほどが土葬でした。
土葬は衛生上の懸念がありますので、1.5m以上の深さに埋葬するといった規制や土葬禁止地域の指定をする条例はありますが、土葬について何ら言及していない条例も多くあります。
つまり、火葬がほとんどとはいえ、土葬が全面禁止されているわけではありません。なお、土葬を全面禁止している都道府県はありません。
土葬と法律
前記のとおり条例によって土葬が全面禁止されているわけではないのですが、土葬を認めている墓地は非常に少ないです。
焼骨ではなく死体の場合には衛生上の懸念があるので、土葬をした場合、墓地管理者は、毎月5日までに埋葬状況を市区町村に報告する必要があります(墓地埋葬法第17条)。
このように土葬を認めると墓地管理者にとっては非常に負担となる報告義務が発生することから、ほとんどの墓地が土葬を認めていないのかもしれません。そして、土葬を認める墓地が少ないことも火葬率の高さに寄与しているのかもしれません。
土葬と改葬
土葬された遺体を改葬する場合、改葬先の墓地は遺骨の埋蔵のみを許している場合がほとんどです。そのため、改葬する場合、火葬場を経由する必要があります。
土葬された遺体であっても、十分に骨化している場合がよくあります。もっとも、あくまで法律上の扱いは「遺骨」ではなく「死体」ですから、形式として火葬場を経由する必要があります。
「形式として」といいますのは、十分に骨化していると火葬場の管理者が確認した場合には、実際には火葬はせずに、改葬許可証に必要事項を記入することも許されているからです。なお、改葬時に火葬する場合には、改葬許可証が火葬許可証の代わりとなります。
このようにして、法律上、焼骨として扱われる遺骨を埋蔵しますので、改葬先の墓地に埋葬の報告義務はありません。
なお、遺体が骨化し、さらに進んで、遺骨が土に戻り、遺骨が存在しなくなっている場合もあります。このような場合には、「改葬」の定義に該当しませんので、その土を改葬先に移す場合には、改葬許可証は必要ありません(S32.3.28環衛第23号)。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。