離婚届を書いてくれない夫や妻への対処法を専門弁護士が解説
最終更新日: 2024年01月07日
- 配偶者が離婚に合意してくれなくて離婚届を出せない、どうすればよい?
- 配偶者が離婚を拒否していても、代筆で離婚届を提出できるか?
- 離婚届を書いてくれない場合、どのような対処法があるのだろう?
離婚届は、夫婦が離婚に合意したうえで、基本的に双方が署名し市区町村役場へ提出するものです。しかし、夫婦の一方が離婚に納得せず、署名を拒んで離婚届が出せない事態も考えられます。
離婚届を書いてくれない配偶者に対しては、諦めず働きかけ、何とか離婚を成立させたいものです。
そこで今回は、多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、離婚届を書いてくれない配偶者への対応、そして避けるべき対応等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 離婚届を書いてくれない配偶者と、まず話し合いをして署名に応じてもらえるよう働きかける
- 配偶者の同意も得ず離婚届を代筆・提出すれば無効となるだけでなく、ペナルティを受ける可能性もある
- 配偶者との話し合いがうまくいかないときは、調停または裁判で解決を図る
夫や妻が離婚届を書いてくれないときの対処法
夫婦の一方が離婚を拒否し、署名に応じない場合は離婚届を提出できません。
こちらでは、夫婦の一方が離婚届を書いてくれない場合の対応について解説します。
相手と話す
配偶者が離婚に不安や不満を抱き、離婚届の署名を拒否する場合があります。
離婚に際してどのような点が納得できないのか、どのような取り決めがあれば不安や不満を解消できるのか、配偶者とよく話し合いましょう。
夫婦が納得できる離婚条件を決めないと、離婚手続きは進まなくなります。
相手を尊重する
配偶者が離婚に同意しないのは、主に次の理由が考えられます。
- 離婚条件に不満がある
- まだ愛情がある
- 世間体を気にしている
- 子どもが傷ついたり、困窮したりしないか不安
- 離婚に応じたら負けだと思っている 等
このような配偶者の意思を尊重しつつ、自分の意思も率直に伝え、離婚が成立するよう粘り強く交渉していきましょう。
条件の譲歩
配偶者が主張する条件を認め、離婚が成立するよう柔軟に対応しましょう。たとえば、配偶者が離婚に同意する代わりに慰謝料を支払わないと主張した場合は、慰謝料請求を離婚の条件から外してもよいでしょう。
また、配偶者が子どもへの影響(例:精神的ストレス、学校でのいじめ等)が心配で離婚をしたくない場合は、「子どもが高校を卒業するまで」「新社会人になるまで」という形で、離婚を猶予するのもよい方法です。
弁護士への相談
配偶者との離婚の話し合いが行き詰ったら、弁護士に相談しましょう。
弁護士は夫婦の事情を踏まえ、離婚交渉のポイントをアドバイスできます。また、弁護士に依頼すれば配偶者との話し合いを任せられます。
夫婦で話し合うと感情的になってしまうかもしれませんが、弁護士は理性的かつ法律に則り協議を進めていきます。
離婚届を書いてくれないときのNG行動
夫婦の話し合いが行き詰って焦りだし、軽率な行動をとらないようにしましょう。
こちらでは、離婚を協議するときにとってはならない行動4つについて解説します。
感情的になる
自分の主張する離婚条件が配偶者から拒否されても、冷静に話し合いを続ける必要があります。
夫婦間で口論になると、離婚の手続きがますます進まなくなります。
あくまで協議は離婚を成立させるための方法の1つと考え、うまくいかなかった場合の措置を事前に検討しておけば、焦りは感じなくなるでしょう。
相手を批判する
話し合いが進まずにいきり立ち、配偶者の過去の浮気等を掘り返すのは禁物です。
自分が容認できない離婚条件を主張する配偶者に対し、「浮気したあなたに離婚条件を語る資格はない!」と、すでに解決していた過ちを持ち出し、批判するのは避けましょう。
離婚の話し合いが行き詰っても、配偶者の過去の過ちを批判するのではなく、未来志向で話し合いを進める努力が必要です。
何度も促す
夫婦の話し合いが進まないからといって、毎日離婚について話し合いを働きかけると、配偶者はうんざりしてしまいます。
そのようなときは、まず自分が別居する等して配偶者と距離をおき、1か月に1回程度協議の場を設け、話し合いを継続した方がよいでしょう。
配偶者が自分との話し合いになかなか応じない場合は、弁護士を立てて、交渉を促す方法も有効です。
離婚届を勝手に出す
一刻も早く離婚したいからといって、離婚の合意がないまま勝手に離婚届を出しても無効です。
まして離婚届を偽造して提出すれば、次のような刑事罰を受ける可能性があります。
- 有印私文書偽造罪:離婚届の署名・押印を偽造した場合に適用、3か月以上5年以下の懲役(刑法第159条第1項)。
- 偽造有印私文書行使罪:偽造した離婚届を市区町村役場に提出した場合に適用、3か月以上5年以下の懲役(刑法第161条第1項)。
- 電磁的公正証書原本不実記載罪:市区町村役場の職員に嘘の申立をして、戸籍等へ間違った記載をさせたとき適用、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金(刑法第157条第1項)。
離婚届を書いてくれないときの法的手続
たとえ配偶者が離婚届を書いてくれなくとも、所定の手続きを経れば、夫婦の一方から有効な離婚届を提出できます。
こちらでは、協議離婚・調停離婚・離婚裁判について解説します。
協議
夫婦の話し合いがまとまらない場合でも、すぐ家庭裁判所に調停を申し立てるのではなく、今一度話し合いをしてみましょう。
弁護士が自分の代わりに配偶者と協議すれば、配偶者が納得し離婚届に署名するケースもあります。
調停離婚・離婚裁判による対処方法もありますが、問題の解決までに時間がかかってしまいます。
協議で合意できれば、離婚届をすぐに提出して解決できます。
調停
調停離婚は夫婦間での協議がうまくいかなかったとき、相手方の住所地または当事者が合意で決めた家庭裁判所に「夫婦関係調整調停(離婚)」を申し立て、話し合いを継続する方法です。
家庭裁判所から選ばれた調停委員(2名)が夫婦の間に入って、アドバイスや意見の調整を図ります。調停のときは基本的に夫婦双方の出席が必要です。
調停で話し合いがまとまると、家庭裁判所が調停調書を作成します。調停後、夫婦の一方が離婚届に調停調書の謄本を添付して市区町村役場に提出すれば、有効な届出となります。
裁判
離婚裁判とは、調停がうまくいかなかった場合に、家庭裁判所に訴訟を提起し、裁判官に離婚に関する決定を行ってもらう方法です。
公開の法廷で「原告」「被告」となった夫婦が、自分の主張や証拠を提示します。その後、裁判官はそれぞれの主張や証拠、その他の一切の事情を考慮し、判決を言い渡します。また、和解を勧める場合もあります。
離婚裁判で判決が言い渡されるときは「判決書」、和解するときは「和解調書」が作成されます。
裁判後、夫婦の一方が届書に、
- 判決が言い渡された場合:判決書謄本 ・確定証明書
- 和解に応じた場合:和解調書謄本
を添付して市区町村役場に提出すれば、有効な届出となります。
まとめ
今回は多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、離婚届を書いてくれない配偶者にどのように対応すべきか、具体的な対処方法等について詳しく解説しました。
まず配偶者が離婚届に署名してくれない理由を聞き、どのように溝を埋めていくかよく考えてみましょう。
離婚交渉が難航するときは、早く弁護士と相談し、対応の仕方を話し合ってみましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。