妻の体調不良を理由に離婚できる?確認すべき3つのポイントを解説

最終更新日: 2023年11月01日

妻の体調不良を理由に離婚できる?確認すべき3つのポイントを解説

  • 妻の精神的な病を理由に離婚は可能だろうか
  • 妻の介護に疲れ切ってしまったが、それを理由に離婚できるだろうか
  • 妻の体調不良を理由に離婚を進める上で押さえておくべきポイントを知りたい

妻の浮気や暴力が原因の離婚はよく耳にしますが、妻の体調不良が原因で離婚できるのか、疑問に思う人は多いでしょう。

妻の病気や体調不良で離婚できるケースはあるものの、裁判で離婚を争う場合、厳格に裁判所が離婚の是非を判断します。

夫が妻の体調不良を理由に離婚を望むのであれば、できる限り穏便な方法で離婚手続きを進めたいものです。

そこで今回は、多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、妻の体調不良で離婚できるケース、夫が離婚手続きを進めていくポイント等について詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • 妻の体調不良を理由に夫から離婚を申し出た場合は、妻が納得すれば離婚は成立する
  • 妻の体調不良を理由に裁判で離婚を争う場合は、厳格な要件が必要である
  • 夫が妻の体調不良を理由に離婚したい場合は、事前に弁護士と相談した方がよい

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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妻の体調不良を理由に離婚したいときの確認ポイント

夫が妻の体調不良を理由に離婚したい場合、協議離婚・調停離婚・裁判離婚のいずれかで問題の解決を図ります。

ここでは、それぞれの方法で解決を図る場合の条件等について解説します。

相手の同意を得られるか

協議離婚の場合、夫婦の自由な話し合いで離婚するか否かを決定できます。

妻がもともと健康に不安のある人で、入院すれば回復して日常生活に戻れる場合でも、夫が離婚を切り出し妻がそれに同意すれば離婚成立となります。

一方、夫が離婚したいとしても、妻が離婚したくなければ協議離婚は成立しません。

協議離婚が不成立の場合は、夫は調停離婚の申立てが可能です。この調停は「夫婦関係調整調停(離婚)」と呼ばれています。

調停では調停委員が夫婦の間に立って、アドバイスや解決案を提示します。

そのため、妻の体調不良を理由に離婚したいというだけでは、調停委員から「もう少し夫が努力して妻を支えるように」とアドバイスされ、妻側に立った解決案を提示される可能性が高いでしょう。

妻の体調不良を理由とした離婚は、妻の同意がなければなかなか認められないと考えた方がよいです。

法定離婚事由に当てはまるか

妻の体調不良だけを理由に裁判で離婚したい場合は、民法で定められた離婚事由のうち「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」に該当する必要があります(民法第770条第1項)。

単に妻が病気がちだからというだけではこの離婚事由に該当せず、裁判離婚は認められません。たとえ精神病でも、治療により回復が可能と見込まれるときは、裁判での離婚は困難です。

出典:民法|e-GOV法令検索|法務省

夫婦関係が破綻しているか

単に妻が体調不良というだけで夫婦関係が良好な場合は、妻は夫の申し出を受け入れないのが一般的です。

離婚が成立するためには、妻の体調不良の他に以下のような夫婦間の問題の存在がより大きなポイントになります。

  • 同じ部屋にいるだけで気が滅入る
  • すでに夫婦が別居している
  • 顔を合わせると言い争いになる

妻の体調不良から離婚につながるケース

妻の体調不良が原因で離婚にまで発展してしまう経緯としては、次のようなケースがあげられます。

夫婦関係の変化

妻が医療機関で長期療養を余儀なくされると、この間に次のような夫婦の意識の変化が生じることが考えられます。

  • 夫婦で一緒に生活できない日々が増え、互いの生活にすれ違いが生じてきた
  • 妻の医療費の負担で夫が苦しみ、言い争いとなり、夫婦の愛情が冷めてしまった

自宅から遠方の医療施設に入院していると、頻繁に面会できないため、夫は妻のいない生活に慣れてしまうかもしれません。

また、妻の医療費を夫が負担しているときは、金銭的な面で妻と揉めてしまい、愛情が次第に薄れてしまう可能性もあるでしょう。

子どもへの考え方の違い

病弱な妻が子どもを妊娠・出産する場合は、ある程度のリスクを伴うかもしれません。

それでも夫婦の一方が子どもを強く望み、もう一方が健康面へ配慮し子どもをつくることに消極的な場合、意見の相違から次第に夫婦関係が冷え切るケースも考えられます。

妻の体調不良で離婚を決意する前に夫がやるべきこと

妻が病気にかかったが世話できないので離婚する、という理由は法的に認められません。

こちらでは、妻に離婚を申し出る前に夫が把握しておくべき事柄や、検討すべき対策等について解説します。

体調不良の原因理解

夫は妻の体調不良の原因が何なのか、よく考えてみましょう。もしも、次のような原因であれば、離婚を思いとどまり、献身的に妻の世話をすべきと言われるかもしれません。

  • 夫の浮気が原因でうつ病になった
  • 子どもを流産し健康状態が回復しない

夫の浮気が原因であれば夫は「有責配偶者」に該当し、原則として夫からの離婚の訴えは認められません。妻の症状が回復するよう、誠心誠意サポートすべきかもしれません。

また、妻が子どもを流産しショックで体調不良となっているときに、夫が精神的な支えになるのは当然ともいえそうです。

一方、夫婦の性格の不一致が原因で、妻が精神的に追いつめられ体調不良となっている場合は、離婚により症状が回復する可能性もあります。

このようなケースでは、夫が妻の症状に配慮しつつ、合意できそうな離婚条件を提示し、離婚の話し合いを進めていきましょう。

妻の気持ちや症状理解

夫は妻の症状を理解したうえで、冷静に対話をしていきましょう。

たとえば、性格の不一致や同居している家族との不和で妻がうつになっているときは、夫は離婚や別居が解決方法の1つになる旨を伝え、夫婦で今後どうしていくかを話し合う必要があります。

外部のサポート

うつ病等になった妻を、夫や家族だけでサポートするのは限界があることもあります。

場合によっては医療機関や市区町役場と相談し、外部の支援を受けた方がよいでしょう。

たとえば妻が精神障害を患った場合は、主に次のような公的支援を受けられます。

(1)精神障害者保健福祉手帳

統合失調症、うつ病・そううつ病などの気分障害、薬物やアルコールによる急性中毒またはその依存症、ストレス関連障害等を発症した人が対象です。

申請は市区町村役場で行います。この手帳が交付されれば主に次のような支援を受けられます。

  • 生活福祉資金の貸付
  • 税金の控除や減免
  • 公共料金等の割引
  • 福祉手当 等

出典:精神障害者保健福祉手帳|国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター

(2)自立支援医療

病院(精神科)で治療を受ける場合、外来への通院、投薬、訪問看護等の費用負担を支援する制度です。申請は市区町村役場で行います。

本制度が利用できると、患者の自己負担額が原則1割となります。

出典:自立支援医療制度の概要|厚生労働省

(3)特別障害者手当

精神または身体に著しく重度の障害を有し、日常生活において常時特別の介護を必要とする特別障害者が対象となる手当です。申請は市区町村役場で行います。

20歳以上で、在宅で生活している人が対象となります。支給月額は2万7,980円(2023年10月時点)です。

出典:特別障害者手当について|厚生労働省

妻の体調不良を理由に離婚したいときにすべきこと

妻の体調不良を理由に離婚したいのであれば、次のような方法で離婚手続きを進めていきましょう。

体調不良の程度を理解する

夫が勝手に妻の病状を判断するのではなく、医師の診断をしっかりと受けたうえで、医師から回復の見込みがあるのかどうかを聞きましょう。

裁判離婚では妻が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない場合に離婚が認められる可能性があります。医師から回復の見込みがあると診断されたときは、裁判離婚は認められません。

介護の経緯を説明できるようにする

裁判離婚の場合は、妻の介護や世話をしてきた経緯について、いろいろな書面を提出して裁判所に説明する必要があります。

そのため、次のような記録や領収書等を保管しておきましょう。

  • 介護日誌をつけておく(共に通院した記録、自宅での生活のサポート等について詳細に記載する)
  • 妻が医療機関で通院治療した領収書等を保管しておく
  • 医師の診断書(妻の回復が見込めない旨を明記されたもの)を取得する

これらの書面は裁判所が妻の病気の程度や婚姻関係の継続が難しいか否かを判断する資料となります。

離婚後の見通しを立てる

妻が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないという理由で安易に離婚が認められてしまうと、妻は夫から生活費や療養費等の経済的支援が得られなくなる恐れがあります。

そこで、精神病を離婚原因とする場合、裁判所は妻を継続的に支援する方法の有無等も考慮し厳格に離婚の是非を判断します。

したがって、夫は次のように離婚後の明確な見通しを主張する必要があります。

  • 妻が金銭面で窮乏しないよう多めに財産分与する、今後も継続的に支援する
  • 妻の家族や専門家が成年後見人となり、妻に関する法律的な手続きや財産管理を行う
  • 妻が実家に戻り家族のサポートを受けられる環境が整備されている 等

離婚すれば夫婦の同居・協力・扶助義務はなくなります。

しかし、夫が自ら離婚後も継続的な支援を約束すれば、裁判所は妻の生活が十分維持できると判断し、離婚を認める可能性もあります。

弁護士への相談

妻の体調不良を理由に離婚したいのであれば、まず弁護士と相談してみましょう。

離婚問題の交渉や調停・裁判に詳しい弁護士であれば、妻の体調不良を理由に離婚できる可能性や、有利に離婚手続きを進めるポイントをアドバイスします。

まとめ

今回は多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、妻の体調不良が原因で離婚できる条件やポイント等について詳しく解説しました。

夫が裁判で妻の体調不良を理由に離婚裁判を起こした場合、裁判所は厳格な判断のもとで、離婚の是非を決めます。

妻と離婚できるか否かで悩むときは、まずは弁護士と相談し、そのアドバイスを受けてみましょう。

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