不貞相手に訴訟告知すべきか?メリット・デメリット・流れを専門家が解説

最終更新日: 2023年10月31日

不貞相手に訴訟告知すべきか?メリット・デメリット・流れを専門家が解説

  • 不貞相手の配偶者から慰謝料を請求されている。自分だけがその責任を負わなければいけないのだろうか?
  • 自分が訴えられたら、不貞相手に訴訟告知できると聞いたがどのような制度なのだろう?
  • 訴訟告知をすれば、自分にとって何か有利な効果があるのだろうか?

不貞行為をされた人から、自分だけが慰謝料を支払うように訴えられてしまう可能性もあります。

もしも、不貞相手が不貞行為をされた人から慰謝料請求されず、自分だけが慰謝料を請求されたら、同じく不貞行為をしたのに不公平と感じるかもしれません。

そのようなとき、不貞行為した自分に言い渡された裁判の効果を、不貞相手へも及ぼす制度が「訴訟告知」です。

そこで今回は、多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、訴訟告知の仕組みや、訴訟告知のメリット・デメリット等について詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • 訴訟告知は訴訟告知者が裁判で言い渡された結果を、被告知者にもたらす制度
  • 不貞行為をされた人から慰謝料請求された場合、訴えられた本人が訴訟告知をすれば有利となる可能性もある
  • 訴訟告知の手順は、告知者がまず訴訟告知書を裁判所に提出し、裁判所が訴訟告知書を被告知者へ通知する

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

不貞相手に対する訴訟告知とは

こちらでは訴訟告知がどのような制度なのか、訴訟告知できる対象について解説します。

訴訟告知とは

訴訟告知とは、訴訟当事者が訴訟対象の紛争に関係している第三者に対し、訴訟が係属している事実を、裁判所を通じて告知する方法です(民事訴訟法第53条1項)。

訴訟告知をすれば、第三者がたとえ訴訟参加しなくても、訴訟当事者の受けた判決と同じ結果を相手にもたらす効果があります。

不貞行為の慰謝料請求で訴えが提起され、訴訟告知を利用した場合の関係者は次の通りです。

  • 慰謝料請求をした人(原告):不貞行為をされた人
  • 訴訟告知者(被告):不貞行為をされた人から訴えられた人
  • 被告知者(第三者):訴訟告知者の不貞相手(不貞行為をされた人の配偶者)

出典:民事訴訟法|e-GOV法令検索

訴訟告知できる対象

慰謝料請求訴訟で利害関係のある人が告知対象となります。

告知対象はいわゆる「訴訟告知者の不貞相手」であり、不貞行為をされた人の配偶者が該当します。

なお、訴訟告知を受ければ「参加的効力(訴訟告知者の受けた判決が被告知者にも及ぶ効果)」が生じるものの、実際に裁判に参加するかどうかは被告知者の自由です。

一方、不貞行為とは何の関係もない親や子ども等は、告知対象となる被告知者に該当しません。

不貞相手に訴訟告知するメリット

訴訟告知をすれば、訴訟告知者・被告知者・慰謝料請求をした人それぞれにメリットがあります。

訴訟告知者のメリット

訴訟告知者には、第三者(不貞相手)に対する求償権を有する場合、慰謝料請求をした人との訴訟中に訴訟告知をすれば、求償権の確保が可能となります。

求償権とは、一般的に他人の債務を弁済した者が、その他人に対して返還請求ができる権利を指します。

求償権を有していれば、不貞行為に関する慰謝料の支払いを訴えられた場合、次の主張が可能です。

(例)裁判所の判決が言い渡される前に和解の話となり、慰謝料請求をした妻(原告)は200万円の支払いを主張し、請求をされた本人(被告)は90万円しか支払わないと主張している。

原告・被告の主張が平行線となっている場合、被告が不貞相手に訴訟告知を行ったとします。

そのうえで被告は「あなた(原告)とあなたの夫(不貞相手)は夫婦なのだから、よく話し合って下さい。訴訟告知をしたので、あなたの夫も慰謝料を負担する事態になりますよ。」と主張できます。

原告が夫に慰謝料の負担をさせたくないならば、主張(慰謝料200万円)を撤回し、被告である訴訟告知者の主張に同意する可能性があります。

被告知者のメリット

被告知者は、訴訟告知者の訴訟の結果について利害関係があり、訴訟参加をして訴訟当事者のために主張・立証が可能です。

被告知者本人が、自分の招いた不貞行為を悔いているならば、次のような迅速な和解も図れます。

(例)裁判にて慰謝料請求をした妻は200万円の支払いを主張し、請求をされた訴訟告知者は90万円しか支払わないと主張している。

被告知者である夫は訴訟告知者に対して、「慰謝料のうち110万円を負担するから、妻と和解して欲しい。」と伝えた場合、訴訟告知者がそれに同意し、慰謝料請求をした妻と和解する可能性があります。

慰謝料請求をした人のメリット

慰謝料請求をした人(原告)にも訴訟告知のメリットはあります。

慰謝料請求をした人の配偶者が、自分の責任から逃げている場合、訴訟告知が行われれば、裁判の効果は配偶者本人にも及びます。

配偶者本人はその責任に嫌でも向き合わざるを得なくなるでしょう。

つまり、配偶者本人の行った軽率で無責任な行動が、いかに多くの人を巻き込んでしまったかを痛感させ、自分の不貞行為を反省させる意味で、訴訟告知は有効な方法といえます。

不貞相手に訴訟告知するデメリット

訴訟告知には次のようなデメリットがある点も確認しておきましょう。

訴訟告知者のデメリット

紛争の激化が懸念されます。

第三者であった不貞相手にまで影響を及ぼす形となるので、責任を負いたくない不貞相手が反発する可能性もあります。

また、自分の配偶者を訴訟に巻き込みたくない慰謝料請求者側からも、訴訟告知者が反感を買ってしまうかもしれません。

被告知者のデメリット

裁判は公開の法廷で行われます。被告知者は傍聴人がいる裁判で恥をかきたくないと思うかもしれません。

被告知者は、自分自身が原因の裁判へ参加したくなかったのに、訴訟告知者から訴訟告知されてしまい、求償権を行使されるリスクに怯える状況となる可能性があります。

慰謝料請求をした人のデメリット

不貞行為の張本人ではあるものの、訴訟に巻き込みたくなかった配偶者が被告知者になってしまいます。

訴訟告知者には求償権が確保されてしまうので、自分が主張する慰謝料の金額の大幅な減額を余儀なくされてしまうおそれもあるのです。

もしも不貞行為をした配偶者と離婚する場合、訴訟告知の有無はあまり関係ないでしょう。不貞行為を行った側(訴訟告知者・被告知者)それぞれに、慰謝料支払という責任を取ってもらえます。

ただし、被告知者との関係修復を図りたいならば、求償権の問題は新たな夫婦間のトラブルに発展する可能性もあるでしょう。

そのため、訴訟告知者の主張に同意せざるを得ない状況となるかもしれません。

不貞相手に訴訟告知をする流れ

こちらでは訴訟告知の流れ、被告知者の参加の必要性を説明します。

訴訟告知書の提出

訴訟告知はまず訴訟告知書を裁判所に提出し、手続きを進める必要があります。

訴訟告知書には、次の内容を具体的に明記しなければいけません。

  • 告知する理由:被告知者が本訴訟にどのような利害関係を有しているのか
  • 訴訟の程度:訴訟中の裁判所名、事件番号、事件名、何月何日の口頭弁論期日でどのような書面を提出したか、次回期日がいつ指定されているのか

裁判所用の正本1通、被告知者用の副本1通、相手方当事者用の副本1通の合計3通を作成後、裁判所に提出しなければいけません。

なお、裁判所からの送達費用として郵便切手の予納も行います(1,000円程度)。

不貞相手への通知

不貞相手(被告知者)には裁判所から告知書が送付されます。

この訴訟告知は訴訟が係属中ならばいつでも可能です。ただし、訴訟告知者がなるべく早く不貞相手に補助参加してもらいたいなら、早い段階で訴訟告知をした方がよいでしょう。

一般的に答弁書の提出と同時、またはその直後のタイミングで行われるケースが多いです。

裁判への出席・欠席

実際に参加するかどうかは被告知者の自由です。

ただし、慰謝料請求をした人(原告)、訴訟告知者(被告)間の訴訟で、慰謝料相場を大幅に超える慰謝料額(例:500万円以上)が確定した場合、その金額を前提に被告知者への求償義務も確定してしまいます。

被告知者は「自分が妻(原告)と愛人(被告)との和解のため出席し、自分の言い分を主張していたなら、こんな事態にはならなかった。」と、後悔するリスクもあるので注意しましょう。

また、原告・被告どちら側に付いて参加するのか、判断しなければいけません。一方から反感を買いたくないならば、被告知者が積極的に双方の和解を図る努力も必要です。

まとめ

今回は、多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、訴訟告知の利点や気を付けるべき点等について詳しく解説しました。

訴訟告知を利用する前に、得られる効果や更なるトラブルに発展しないか、慎重に検討する必要があるでしょう。

訴訟告知に関する不明点・疑問点があれば、まず弁護士に相談しアドバイスを受けてみてはいかがでしょうか。

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